[0353] 『明日』と『来週』に賭ける思い?:イタリアでのデジクリ生活

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【日刊・デジタルクリエイターズ】 No.0353  1999/06/19.Sat発行
http://www.dgcr.com/      1998/04/13創刊
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前号の発行部数 12827部
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  <ひさしぶりにアキ・ダモーレのイタリア物語>

●連載「CIAO from Italy」4
 『明日』と『来週』に賭ける思い?:イタリアでのデジクリ生活 
 アキ・ダモーレ
 
●デジクリトーク
 自分が楽しめる世界を
 大島宏文

●イベント情報
 日刊デジクリ、初オフ交流会開催決定!



■連載「CIAO from Italy」4
「『明日』と『来週』に賭ける思い?:イタリアでのデジクリ生活」

アキ・ダモーレ
(イタリア在住/フリーのグラフィックデザイナー&イラストレーター/
イタリア珍事件簿のサイトを今夏公開予定)
STUDIO D'AMORE(akin@iol.it)
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「デザインの仕事なんか出来やしない!」と思っていたナポリにて、今まで私
が経験してきた中では最高のデザインレベルの広告代理店から採用になり、身
も心も躍るようなそんな日々が続きました。

私が感心したのは、その会社が手がけた『ゴミ処理問題に関する会議資料』で
した。ナポリ市が開催する会議の、いわゆるお役所仕事ですが、パンフレット、
ペラの資料、それらをまとめるホルダー、どれを見てもシンプルなデザインで
お洒落(市のゴミ会議資料に、ここまでのハイレベルな仕事とは! お役所の
人達、よくこういうデザイン理解してくれるなぁ。さすがお洒落なイタリア人
~! ここではマジに色々な事できそうで嬉しい!! いっぱい仕事して頑張
ろう!)と、俄然張り切っていました。

始めの内は、ミラノや東京の仕事も抱えていた故、そのナポリの会社の仕事も
自宅で作業する完璧なフリーとしてやっていました。パッケージやノベルティ、
雑誌広告やイベント関連のデザインなど、5つ程度の仕事をこなした頃でしょ
うか、ある中堅企業のCIの仕事があると聞きました。かなり大がかりな仕事で
したので、それを機会に社内に移動し、出来高制の準社員に、という事で幹部
とも話をしていました。

美人副社長さんは「アキ、これからが本番ですね」と優しい言葉を投げかけて
くれ、私は「はぁ、とにかく頑張ります!」と答えましたが、続いて出た彼女
の言葉に一瞬不安がよぎりました。

「今まではデザインだけやってもらっていて、以後の流れはこちらで済ませて
いましたが、これからはアキが出力センターや印刷屋さん達と掛け合いをして
くださいね。アキも良くわかっていると思うけれど、ナポリ人は、ミラノや東
京の人達と比べ、全く働く気力のない人々です。こちらが黙っていては、彼ら
は仕事しません。納期の約束をしても、平気で何回も破る人達です。そういう
人達を管理して、仕事を難なく運ぶというのも、アキの仕事の内ですから、頑
張ってちょうだいね。始めはこちらも助けますけど」

(げげー!! 日本人でも印刷屋さんとか気難しいオヤジとかいるのに、それ
がナポリ人になると、想像がつかない程に強力になるのかしらぁ? どどど、
どーしよー?)と、一歩も百歩も引いてしまった私ですが、(ま、その時はそ
の時だ。今から考え込んでも仕方ないぞ! それにいい仕事できるのなら、ど
んな事もやってのけるかな?)と思い、副社長に「私がナポリの方々と駆け引
きして上手く仕事が運ぶかわからないですけど、とにかくやってみます」と答
えました。

それを聞いた副社長は「では、今回の仕事は本当に大がかりなので、アキの体
を完璧に空けておいて欲しいの。ここ2週間は殆ど他の仕事もできなくなる筈
です。明日、私はクライアントに電話して、この仕事のゴーサインを出します
から、アキもいつでも社に移動する準備をしておいてね」とおっしゃっていま
した。

私は自宅に戻り、ミラノの会社に「ナポリ仕事が入って、最低2週間は仕事で
きない状態ですのでヨロシク」と伝えました。そして翌日、副社長に電話をし
て「クライアントに連絡しました? いつから始めればいいですか?」と尋ね
ると「ああ、今日はとても忙しくて電話できなかったわ。明日しますから」と
の返事。「他のクライアントには連絡して、体はバッチリ空けてますので、お
待ちしてますね!」と私は電話を切りました。

そして翌日、なんとまた同じ返事を受けてしまったのです……。「今日も一日
中外にいましたから、電話しなかったの。ごめんなさい」

むむむ!!……若干の苛立ちと共に、私の脳裏には様々な事がかすめました。
(そういえば、ここで生活して来て「XXには…」と言われ、それが実行され
た事はなかったなぁ……)

この町は一体どのように社会が機能しているのか、我が身をその地に置きなが
ら、真面目に考え込んでしまう事もあります。何もかも全てが『いい加減』。
お店で何か商品注文し「来週には入ります」と言われても『来週』に入荷され
たためしがありません。たいていは『来月』になり、酷い時には『来年』に持
ち越す事も……。そして最悪のケースでは一生入荷されない事も……。

滞在ビザを申請する時もそうでした。初めてナポリでビザ申請をし「来週に発
行しますから」と言われ、(『来週』はきっと『来週』ではないから、『再来
週』に行ってみよう)と、こちらも予防線を張って再び警察に訪れると「まだ
できてません。再来週に来てください」と言われ、これもきっと違うだろうと
予測し、『来月』に行くと「まだです。来月来てください」と。そして気が付
いてみたら、申請したビザの有効期限が、発行されないまま切れてしまったの
です。(注:これは5年前の話で、現在はそのような事はなく、改善されてい
る模様ですが)

彼らは悪気があって、このような受け答えをするのではなく、どうやら本気で
その時はそう思っているようなのです。ですが、あまり仕事意欲のない事は確
かですので、「来週って言ったじゃないか! それなのにこの対応はなんだ!
さっさとしてくれ! さっさと!!」などと、こちらが異議申し立て(?)し
なくては、彼らの重い腰を上げさせ、自分が望む物、事を得る事はできないよ
うなのです。

お役所やお店などで、このようなナポリのシステムは十分に理解していました
が、まさか美人副社長さんまでが、そのような一面を持っているとは考えたく
ありませんでした。
(彼女もナポリ人だし、彼女の言う『明日』も『明日』ではないのかな? で
も彼女から体を空けておくようにって言ってきたんだから、もう少し信じて待
ってみようか)

が、しかし、それ以後、もう一度電話しても同じ返答を受け、私は「ではあな
たからの連絡を待つ事にします。私は言われた通り、2週間仕事を受けずに待
機していますので、どうぞそれをお忘れなく」と言いました。

そして彼女から連絡を受けたのは、始めての打ち合わせから3週間過ぎた時で
した。クライアントともめていたならまだしも、ただ彼女の多忙故、この仕事
が延期になってしまった様子。「クライアントにようやく電話しました。さぁ
仕事を始めてくださいね」と彼女は言いました。

私は「申し訳ありませんが、私はもうその仕事を受けられません。約束の2週
間は過ぎてしまったので、他の仕事入れました。ナポリの人達はいい加減だと
は知ってます。明日が明日でない、来週が来週でない事も知っています。でも
私の仕事はそうではないのです。そうしたくもないのです!!」と啖呵を切っ
てしまいました。

しかし、副社長の反応は「どうしてアキがそんなに怒るのかわからない」でし
た。一瞬私は言葉を失ってしまいましたが、「あなたの言葉をそのまま受けて、
2週間待っていた私が世間知らず(ナポリ知らず?)だったのでしょうか。と
にかく私は、こういうやり方はキライなんです!」と益々怒りがエスカレート
して、以後彼女から、そして社長からも電話が何回も来ましたが、私は「でき
ない」「もう社内にも移動する気がない」と一点張りでした。

今思えば、短気過ぎたかもしれません。ナポリ流のビジネスの流れを学んで、
「2週間体を空けておけ」と言われても、適当に受け流し、仕事を入れてしま
えば良かったのかもしれません。

でも私が他に持っていたミラノや東京の仕事は、明日が明日である仕事です。
ナポリ流ばかりでやってはいけません。だから私は、そのナポリの会社がどん
なにデザイン的には最高の仕事をしていたとしても、このように気ままな理由
で、私の2週間が棒に振られる事は我慢できませんでした。そして、上司がこ
の状態では、私は、出力センターや印刷屋さんの方々と向き合える自信も完璧
に失ないました。

そして、自らナポリの最高の仕事を失なった私ですが、へこたれてはいません
でした(笑)。「もう、本当にナポリ人と仕事はしたくない。やっぱ疲れる! 
私はナポリにいながら、他の町や国と仕事しよう。そう、今はもう、インター
ネットっていう手段があるのだから、私は何でもできるハズよ!!」そう思い、
ネットを介しての仕事を見つけていくようになったのです。(つづく)

・久しぶりの登場ますます波乱含み、どうなるアキ・ダモーレ! (デジ栗)

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■デジクリトーク
自分が楽しめる世界を

大島宏文
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僕の世界、貴方の世界、があるようにイラストを描く中にも世界が存在してい
る。実はこの「世界」というのが、イラストを描く際、意外と重要な事だと僕
は思っている。

イラストを描く手順はみないろいろとあるのだが、僕の場合はなぜが文章から
の構想に入ってしまう。だからと言って400 字詰め原稿用紙を用意して机に向
かって書いている訳ではない。まっ、勝手に自分の世界を広げて、それを頭の
中で物語りを作っていたりするのである。どんなキャラを登場させようか、キ
ャラクター達は何をさせようか、夜にしようか昼にしようか夕方にしようか、
季節感は、などなど、いろんな事を頭の中で考えているのである。

実は僕にとって、この時間というか、想像の世界が一番楽しい時だったりする
訳なのである。周りから見ると、この時間の僕は少し変に見えてしまうかもし
れない。構成を考えている内にいきなり微笑んだり、つい笑ってしまう事があ
るからである。

このキャラクターにあんな事をさせて、こんなせりふを言っている感じに描こ
うなどと考えていると、つい自分で考えた構図に笑ってしまうのである。そん
な事を考えている訳だから、自然とひとり言も多くなってしまう。自分で考え
た構図に向かって「これいいじゃん」「やっぱつまんないな~」などと言って
しまう時もあるのだ(やっぱ変かもしれないな~)。

実はこの構想の時間で自分で笑えるか、可愛いなこの構図は、などと考える事
でいろいろと頭の中で全体の構図やバランスを考えていたりするのだ(ちょっ
と言い訳)。

キャラクター1点物ならスケッチブックに向かって描くのだが、これをイラス
トに仕上げるとなると全体のバランスや登場キャラや動き、においや空気を感
じとれる作品にしたいな~などと、思ったりしたりするのである。だけど、実
際ラフスケッチ段階に入ると、描いている段階でもいろいろと案が浮かんでく
るので、構想とは若干違った構図になってしまう(手が勝手に動いてしまうと
言うやつである)。

僕の場合、構想が出来上がったら、次に下絵(ラフ)作業に入る。ラフといっ
ても鉛筆画で終わりでなく、ペン入れをして基本線をしっかりと押さえてしま
う。このラフ画がまた面白いのである。

ラフ画作業では実際にキャラなどを描くので、構想段階よりもさらに顔がニタ
ニタしてしまう事もある。僕のイラストは可愛い動物などを描いているので、
少しでも自然体で、可愛い表情、表現を求めている。この表情、表現を描く段
階がイラストを描いている中で一番気持ちの良い時間でもあるのだ。

想像がどんどん膨らみ、いつの間にか自分もその世界に入り込んでいて、キャ
ラクター達と同化してしまうのである。キャラクター達の気持ちになり、この
子はここにいて、あの子と遊んでいる、その子も笑顔で遊んでいる感じにしよ
うかな~などと、自分が主人公になり、そこで遊んでいる感覚にさえなってし
まう。

最近気付いたのだが、僕の描く世界には僕が幼き頃の思い出などが入り込んで
いるのかもしれない。一種のトラウマ的要素がいつの間にか僕の世界を作り上
げていて、それが自分にとって居心地の良い場所になっている。だから僕は、
このイラストに何処かしら懐かしさを感じてしまうのかもしれない。トラウマ
的要素はものを作ったり想像したり、いろんな世界の基盤になっていると感じ
ている。

僕の作品の基本概念として、見る人に優しく、つい微笑んでしまうような、何
か懐かしさを感じ取ってもらいたいという考えがある。これは、もしかすると
僕自信が求めている世界なのかもしれない。

僕の作品を見た事のない人は、ホームページに作品が掲載してあるので、一度
見てもらえるとより理解してもらえるかな。

【大島宏文】Hirofumi Oshima/BukiBukihouse
1969東京都出身。90年東京デザイナー学院卒業。卒業後制作活動に入る。91年
株式会社協和入社。94年よりフリーとして独立。現在イラストレーターとして
活動中。98年より日本ディジタル・イメージ参加。

http://www.amiso.com/
e-mail amiso@amiso.com

・大島さんの独特の世界はWebサイトでお楽しみください。amisoってなんです
かって聞いたら、osimaを逆にしただけ、とのこと。(デジ栗)

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■イベント情報
日刊デジクリ、初オフ交流会開催決定!
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といいましても、現在のところ時間と場所しか決まっていません。予定空けて
おいてくださ~い! 詳細は後日アップデート。企画、協賛会社募集中!

日時:7月30日(金)18:00~20:00
場所:WTCホール
   大阪市住之江区南港北1丁目14番16号 WTCコスモタワー2F
   OTS線トレードセンター前駅(梅田から地下鉄本町経由で約30分)
定員:200人

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■現在募集中
http://www.dgcr.com/etc/invite.html

読者プロフィール(投稿大歓迎!)
ホームページリニューアルインフォメーション(見て見て更新したよ!)
新刊情報(編集者が著者が宣伝しちゃう!)
デジクリClassifieds(売ります買います)など、
クリエイターに有益なもの全般!!

■編集後記(6/19)
・朝7時のNHK ニュースをみながら朝食というのが普通の生活。朝っぱらから
民放局は男も女もキャンキャンと高音でうるさいうるさい。NHK 以外は絶対見
ないことにしているのだったが、とうとうNHK にもうるさい女アナが現われて
しまった。スポーツコーナー担当だ。もの静かに落ち着いたトーンで報道する
NHK アナの中でこの素人キャンキャン声は耳障りである。投書しちゃおうか。
それにしても、ナイターの掛布はうるさい。業界一の悪声によけいなおしゃべ
り。野球選手は敬称略でいいのだが、バカケフは「松井君」「高橋君」などと
クン付けで言うが、だれもおまえさんにクン付けされたくねえよ、と思うのだ
が。とにかく本当にきらいなんだなあ。ビールがまずくなるもの。(柴田)

・笠居さんとまつむらさんがスピーカーの U-CONプログラムにチャットで参加
した。嬉しかった。でも本当は見に行きたかったよぅ~。デジクリ初オフ決定。
何をしようか。プレゼントや協賛してくれる会社求む! 坂本サトル、ミュー
ジックステーション出演。生の方が良かったな~。(ハマムラ)
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発行   デジタルクリエイターズ
     <http://www.dgcr.com/>

編集長     柴田忠男 
デスク     濱村和恵 
アソシエーツ  神田敏晶 
        森川眞行 

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 担当:濱村和恵
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