[0445] 機械と電子機器の違い

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【日刊デジタルクリエイターズ】 No.0445   1999/10/19.Tue発行
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 <I shall return.>

●デジクリトーク
 機械と電子機器の違い
 海津宜則
 
●ニューウェーブ漫才
 マゼンダだったらあんなことに…
 T&B
  
●セミナー案内
 JPC プリント・オン・デマンド部会情報交換会
 「新世代ワークフローを探る」



■デジクリトーク
機械と電子機器の違い

海津宜則
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柴田編集長は機械が嫌いなのではないかと思うことがある。「スーパーデザイ
ニング」創刊直後の武勇伝や、モバイルしない発言(?)などからプンプン臭
ってくるのである。ついつい、新しモノに浮気してしまう軽薄で飽きっぽい私
から見れば、実にカッコいい生き方である。私もそろそろ頑固になってもいい
年かもしれないと薄々感じてはいるが、まだまだ早い。と、思う。

機械と言えば、電子機器とどう違うのだろうか? またまた悪い癖のどうでも
よい疑問が頭の中を過ぎった。世の中、知らない間に電子機器で溢れてしまっ
た。一昔前であれば高機能パソコンのCPUであったものが、さりげなく家電
製品に組み込まれている。凄い事だと感心する反面、なんだか、段々と人間は
モノを考えなくても生活出来るような方向に向いているのではないかと心配に
なったりする。電気の供給路を心配したほうがいいかもしれないが、本当にコ
レでいいんだろうか。横着な私はそう思う反面、便利な世界に憧れてしまう平
凡な小市民でもある。電子機器万歳と言ったところかだろうか?

さて、私の場合、電子機器という言葉で最初に頭に浮かぶのはパソコンではな
くカメラである。カメラマニアの密度は日本が世界一らしい。高級一丸レフを
持っていない人を探し出すほうが難しいと言ったほうがいいのかもしれない。
かく言う私も、数年前まで簡単な商品撮影もするカメラマンでもあったので、
35mm版から6×7まで、カメラは20台ほど持っている。もう完全に病気で
ある。当然、新しいカメラが出ると今でもショップに釘付けとなってアレコレ
動作確認したりしてしまう悪い癖は未だに直っていない。カメラというのは、
私にとって魔性の機械と言うと大げさかもしれないが、似たようなものだ。な
んでだろう。写真の面白さからだろうか? 本当のところは自分でもよく解ら
ない。ところで、写真と言えば卒論でも少し触れていたことを思い出した。

写真というのは、もともとは絵画の補助器具の一つとして考案されたものであ
る。そしてその装置がカメラの始まりである。それが一つのアートの世界を確
立し、現在に至っているわけだが、絵画の世界と異なり報道という、まったく
新しいジャンルも生み出している。もちろん絵画やイラストの世界にも報道と
しての一面をもっているものもあるが、リアリティーという意味においては写
真が初めてと言って良いだろう。極論だが、カメラは最初から機械であった。
ノコギリや鉋とは一線を引いている。そして、電子部品で武装した現代のカメ
ラと識別するために往年のカメラを機械式カメラという。

機械式カメラというのは電池が無くてもすべての機能が利用出来るカメラの事
である。露出計のための電池は必要だが、露出計を使わなければ電池は不要と
いうものもコレに含まれる。次に現れたのがプログラム測光方式の電子制御カ
メラである。このあたりからシャッター速度の調整も電池がなければ利用出来
ないというモノに変貌していった。そして、オートフォーカスカメラが登場す
るに至り、一気に電子制御機能が加速し、現在に至っている。

当初このオートフォーカス機能には賛否両論あったようだ。初めてオートフォ
ーカスが登場した頃の機能から見たら、反論する方が出て当然の稚拙なもので
あったので、当然と言えば当然である。ところが近年のオートフォーカス機能
は恐ろしいほど進化している。そして、これに連動してた測光方式も格段に進
歩した。しかし、それらは銀塩写真という括りの中では同じ道具である。そし
て、時代は突然出現した黒船のごとく世間を騒がすデジタルカメラに、王座を
明け渡しそうな今日この頃である。

余談だが、個人的には将来カメラというのは死滅するのではないかと感じてい
る。そんな馬鹿なことは無いと思う方も居るだろう。デジタルになろうとも、
写真は永遠に残ると。しかし、私が描く未来のカメラはカメラではなくビデオ
である。超高画質デビオの1コマをプリントアウトすれば写真となってしまう
のではないだろうか。もちろんプロの世界の話をしているわけではない。あく
までもコンシューマーの世界の話だ。

しかし……改革は常にコンシューマ世界から始まることを考えると近未来のカ
メラマンはビデオカメラを持っているかもしれない。いやいや、テクノロジー
の進化のスピードと、その異常なまでの加速度を見れば、ヒデオすら死滅して、
まったく新しい道具が出ていることは大いに想像出来る。

さて、カメラが一般大衆に普及した要因は、大量生産によるリーズナブルな価
格帯の製品が登場した恩恵もあるが、やはり、露出計の組み込みではないだろ
うかと個人的に推測している。もっとも、露出計が初めてカメラに組み込まれ
た頃のセレン方式から見たら現代のコンピュータ制御による測光方式を比べた
ら、江戸時代と現代の違いぐらいあると言っても過言ではない。たかだか50
年も経っていないのにである。

ところが、この古き良き時代の露出計のほうが、迷いが出ないという利点があ
る。順光のアスファルト、あるいは自分の手を測光し、その値で撮影すればま
ず安全だ。いやいや、28mmのレンズを装着したカメラに、ISO400のフ
ィルムを装填して、シャッター速度は1/125程度、絞りは11程度、距離
は2mあたりに固定してしまえば、使い捨てカメラと同等の設定で、取りあえ
ず映る。ところが現代のカメラのように、あまりに敏感になってしまった測光
方式は時として苦手な被写体というものを生んでしまう。オートフォーカス機
構もそうである。しかし、こういったアクシデントへの対応として、高級カメ
ラにはマニュアル制御という機構がある。要は電子制御を使わない古き良き時
代の対応(解る人にしか出来ない測光や設定)というわけだ。

かつて、レンズ交換方式のレンジカメラでピントは目測、露出は勘というアバ
ウトな環境でスナップ写真の神とまで言われた名カメラマンがいた。彼がもし
現代によみがえって最新のマシンを手にいれた時、かつてのような傑作を連発
出来るのだろうか? という疑問が私の中を走った。

いやいや、古ければ良いというものではない事ぐらい私にも解る。だけど、便
利になったことによって失われてしまう事もあるはずだ。それは目に見える具
体的な事ではなく本来動物が持ち合わせているはずの感覚的な第六感とでも言
うべき制御機器ではないかと……。だとすると、唐突だがコンピュータソフト
ウェアって無味乾燥として融通のきかない無愛想な機械ということになるのだ
ろうか?

コンピュータソフトウェアとて、無愛想や無味乾燥といった状況は、どのよう
な場合でも出来るだけ避けたいものだ。そして、道具である以上、愛着とでも
言うべきものが欲しいと思うのは、私だけではないだろう。コンピーュターと
て、例外であってほしくない。例えば、手になじんだ道具という言葉がある。
昔、大工さんや板前さんからこれにまつわる話を聞いたことがある。

『新品の道具は使えない。ある程度使い込んだものでないとダメだ。だから新
品を幾つも買い込み、すべてが手になじむまで同時に使い込む』

この言葉に触発されたわけではないが、かつてコンピュータが世の中に出現す
る前の私は、写植の切り張りに使うピンセットを数本買い込んでは先端の角度
を調整したり、場合によっては砥石で研いだりして使っていた。同じ道具で何
処が違うのかと言う意見も有るだろう。しかし、使い手の微妙な癖を受け入れ
てくれるのが道具なのである。私はそう信じている。そう言えば私のマウスや
タブレットは手の跡がクッキリ残っているが、それは才能無い故についつい力
んでしまうからに他ならない事実は、自分が一番良く解っている。

こんな私でも、精進して長生きすれば、人工知能(死語何年でしたっけ?)搭
載で使い込めば使い込むほどユーザーに特化した使いやすいソフトに変貌する
ファジー制御(これまた死語何年だか忘れてしまった)ソフト……とか。でも、
これが実現してしまうと、データ互換に問題が出たりするかも? その前にセ
ンスを磨かないと、私には使いこなせない気もする……。いやいや、そんなの
が出たら、一億総アーティストになってしまう。これでは失業だ!

【かいづ・よしのり】グラフィックデザイナー/イラストレーター。
http://www.kaizu.com
mailto:yoshinori@kaizu.com
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ということで、大変申し訳有りませんが、一身上の都合(一度言ってみたかっ
たカッコイイ言葉だけど、実状は悪夢)により、しばらくお休みさせていただ
きます。本当はキリのいい10回までいってからと思っていましたが、状況が
変化してしまったためお許しください。         I shall return.
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・海津さんの巻頭柴田ネタにいつも弁解するわたしです。機械好きですよ。と
くにカメラはいくつあっても、まだ欲しいのはなぜか? もっとも気に入って
いたのがオリンパス・ペンFT。最近はそれでも重いので、オリンパスAF-
1で、これも長いこと使っている。自転車は美しい。安いクロスバイクだけど
見飽きない造形だ。海津さんは身辺でたいへんな事態が発生しているらしい。
でも、解決次第戻ってくるとお約束。待っていますよ。(柴田)

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■ニューウェーブ漫才
マゼンダだったらあんなことに…

T&B             作:PAGOS(mailto:pagos1@mail.goo.ne.jp)
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B>これ以上もう画質向上は必要ないと思ってたのに、さらに技術を積み上げて
 エプソンが新しいプリンタを出しましたねぇ。
T>もう銀塩写真と変わらんよな。
B>これで心霊写真の意味も薄れたね。
T>意味がわかんないよ。
B>カラーレーザーとかもどんどん安くなって品質もよくなるんでしょうね。
T>レーザーは温度や湿度でトナー定着時に色が変化しちゃうから、そういった
 センサーによる自動コントロールとか難しいと聞いたことがある。
B>だったらオゾンホールがでかくなった時とかはどうなるんだよ。
T>関係ないよ…。しかし、それに比べて印刷会社の大型印刷機は自動化が進ん
 でるようで、未だ職人が手と目で色をコントロールしてるらしいよ。刷りな
 がら「もうちょっとシアンを足せっ」とか…。
B>でもこないだは入れすぎて臨界に達してたねぇ。
T>それはシアンじゃなくてウランだろ!!
B>マゼンダだったらあんなことにならなかったのに。
T>あれは印刷機の話じゃねぇよ。
B>それにしてもJPCはずさんな作業をしたもんだね。
T>JCOだよっ!!
B>どうもパッケージについてくるマニュアルはわかりにくくて、インプレスの
 「できる」シリーズを使ってたらしいね。
T>パソコンじゃないよっ。だいたいどういうシリーズなんだよっ。
B>「できる 硝酸ウラニル」とか。
T>…。
B>「沈殿槽の達人3」とか。
T>なんだよ、その具体的な3ってのは…。
B>3ではCD-Rの他にステンレス容器も付録でついてたって。
T>もういいよ。
B>作業ミスった時はMdNの「びっくり 高速増殖炉用燃料デザイン」を使ってた
 らしいね。
T>しゃれにならんよっ。
B>まあしかしマニュアルに違反して作業しちゃいけませんね。私なんかマニュ
 アル通りにCGアート作品を作っているから安心だよ。
T>そういうのはマニュアル通りでアートにはなりえないんだよ。
B>いや少なくともアラートは出ないよ。
T>なんの話なんだよ…。エラーアラート出てこそ駆使してるって言い方もでき
 るだろ。
B>予期せぬエラーが発生しました。科学技術庁に連絡してください…。
T>もういいって言ってるだろっ!!
B>でもヒューマンエラーは防げないから、ここは神頼みしかないよな。
T>安全を祈願しとけよ。そういやクリスチャンのためのLinux ってのが出るら
 しいからクリスチャンになって祈りながらそれを使えよ。
B>んっ、機能的に何か違いがあるの?
T>クリスチャンに隠し事はないので暗号機能はいっさい提供されないんだって。
B>じゃあイスラム版Linux はラマダン時にシステム起動すらできないんだね。
T>知らないよ…。
B>ヘッドギアが同梱されてて電源ON時に「起動するぞっ、起動するぞっ、起動
 するぞっ…」って繰り返すのは何版Linuxでしたっけ?
T>ないよっ!!
B>それはそうと、iMac の新しいのが出たのにウキウキしてたらG4のCPUクロッ
 クスピードを落とすとか発表しましたねぇ。
T>あれ値段がそのままってのが顧客の怒りをかってるけど、そりゃそうだろ。
B>自分とこの製造上の問題なのに、それを顧客にかぶせたらダメですよねぇ。
 トンネルに工事上の問題あるもののスピードは落とさず、値段も据え置いて
 いるJR西日本を少しは見習えって言うんだよね!!
T>見習えないよっ。

【参考】
・エプソン、インクジェットプリンタの新モデルを発表
http://www.zdnet.co.jp/macwire/9910/13/n_eppm.html

・クリスチャンのためのLinux
http://www.zdnet.co.jp/news/9909/28/jesux.html

・搭載チップの変更に腰を抜かすアップルの顧客
http://japan.cnet.com/News/1999/Item/991015-1.html?mn

・今回もだいぶアブナイねたですが、これでいいのだ。(柴田)

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■セミナー案内
JPC プリント・オン・デマンド部会情報交換会
「新世代ワークフローを探る」
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<以下は主催者情報>

プリント・オン・デマンド部会情報交換会
日時:10月27日(水)18:30~20:00(18時受付開始)
会場:アドビシステムズ (株)会議室

内容:プリント・オンデマンドからオンデマンドパブリッシングに変貌しつつ
ある現在、製版機器ベンダー各社のワークフローが新しくなりつつあります。
今回は「新世代ワークフローを探る」と題してIGASで発表のあった新しいワー
クフローをベンダー各社をお招きし、新しいワークフローによる変革とそれに
よるオンデマンドパブリッシングの可能性を探ります。

1、「TrueFlow」(大日本スクリーン製造株式会社)
2、「Valiano」(富士写真フイルム株式会社)
3、「Prinergy」(ハイデルベルグ・ジャパン株式会社)
4、「Apogee」(日本アグフア・ゲバルト株式会社)

参加費:会員無料 非会員2000円

申し込み方法:参加申込はE-mailにて受付させていただきます。
・会社名
・参加者お名前
・電話番号
・FAX番号
・メールアドレス
をご記入いただきまして以下まで。
info@jpc.gr.jp

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■編集後記(10/19)
・平凡社新書「牧野植物図鑑の謎」は久々に面白いノンフィクションだった。
天才植物学者には村越三千男という、図鑑出版のライバルがいた。いままで誰
も指摘していないこの事実を堀り起しただけでなく、牧野との葛藤のドラマま
で発見した。仮説を実証していくプロセスはまるでミステリーだ。村越という
天才的図鑑編集者も魅力あふれる人物だ。うらやましいのは、筆者がたまたま
入手した2冊の植物図鑑を見比べていたときのヒラメキである。これでライフ
ワークを得た、という感触でなかったろうか。芯からうらやましい。(柴田)

・青春と時間の浪費。ああ、もう。さっさと自分のことを考えましょう。回り
道は必要だけど、出口がないものはイヤだ。(hammer.mule)

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編集長     柴田忠男 
デスク     濱村和恵 
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        森川眞行 

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