[0454] HTML書きに熱中する

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【日刊デジタルクリエイターズ】 No.0454   1999/10/29.Fri発行
http://www.dgcr.com/    1998/04/13創刊   前号の発行部数 14225部
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 <市民のための、市民によるパトロンシップを作る>

●デジクリトーク
 HTML書きに熱中する
 須貝 弦
 
●デジクリトーク 
 情報の作り手を支援するインフラを作るために
 投げ銭ワークショップ第二段(9月29日)の報告
 松本 功(ひつじ書房)isao@hituzi.co.jp 



■デジクリトーク
HTML書きに熱中する

須貝 弦
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Web マガジン「マッカー」を立ち上げてからというもの、HTMLエディタと向き
合う時間がグンと増えた。いま使っているHTMLエディタは「クラリスホームペ
ージ 2.0」で、後継の「ファイルメーカー ホームページPro」にアップグレ
ードしないで使い続けている。

私がはじめてHTMLを書き始めたころは、HTMLエディタという製品はほとんどな
かった。Macの世界にはHyperCardベースのHTMLエディタもあったように記憶し
ているが、私は、他のみんながそうしていたようにテキストエディタだけで作
っていた。

その後クラリスホームページを買ったのは、当時作っていたミニコミのWeb 版
を作ろうとしていたときだった。その頃私は、写真やイラストを使って見栄え
のするレイアウトをしようと思ったら、どうしてもテーブルやフレームを使う
必要があると感じていたが、「そんなの手書きでやってられっか!」とも思っ
てしまったのがHTMLエディタ導入(ってほどでもないんだけど)のそもそもの
原因?だったのだ。

ただ、いくらHTMLエディタがWYSWYGでの編集を実現していると言っても、細か
い部分ではやはり限界がある。だから最初は、クラリスホームページでテーブ
ルの大枠だけ作ってタグをテキストエディタにコピーしたりしていたが、だん
だん面倒になってきて全部クラリスホームページ上でやるようになってしまっ
た。そっちのほうが楽だったからだ。

ところが先日、久しぶりにタグを真剣に読んだ。というのも永遠の初心者であ
る知り合いが、「ホームページの作り方を教えてほしい」と言ってきたのだ。
相手はHTMLエディタは持ていない(Win95ユーザーだからFrontPageもない)か
ら、「メモ帳」でタグを打ってもらうしかない。

最初はタグなんてほとんど忘れていて、自分でもショックだった。HTMLエディ
タで取りあえずデータを作って、それをテキストエディタで開いてみてようや
く、「ここはこう指定するんだったな」と思い出す始末。

スクーターばかり乗っていてスポーツバイクの乗り方を忘れてしまったような
感じがして、カッコ悪いことこの上ない。しかし何日かやっているうちに、だ
いぶ思い出してきた。

思い出してしまえば楽しいもので、あれこれと打ったタグがブラウザで全然違
って見えるというあたり前のことが、とても楽しい。人に教える以外にも、自
分でもいろんなタグの指定を試してしまった。WYSWYGよりもこっちのほうが、
ぜんぜん面白い(イケナイ日本語)。

そして、あらためてタグが見えてくるようになると、HTMLエディタを使ってい
るときも「タグを意識して」作業ができるようになってくるという効果もある。
HTMLがわかっているのといないのとでは、HTMLエディタを使う楽しみも違って
くる。

先日、人さまのマシンでGo Live を試す機会があった。レイアウトモードでテ
ーブルなどを作りこんだファイルを作り、後からそのタグを見て「よくできて
るな~」とつぶやきながら、「コレ欲しい!」と思ってしまった私である。

【すがい・げん】gsugai@hh.iij4u.or.jp
相変わらず秋葉原通いを続けるライター。「秋葉原に住めば?」という声多数。
しかし私は、笹塚(マイクロソフトのある街)あたりに住みたいと思っている。

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■デジクリトーク 
情報の作り手を支援するインフラを作るために
投げ銭ワークショップ第二段(9月29日)の報告

松本 功(ひつじ書房)isao@hituzi.co.jp 
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6月6日に開催した「投げ銭システムをすべてのホームページへ」ワークショ
ップから、3カ月ぶりに開いた第2回のワークショップの内容を報告する。

■報告:投げ銭はどこまで来たか
まず、前回以降の進展を主催者の私が説明した。

投げ銭は、最終的には「市民のための、市民によるパトロンシップを作る」こ
とを目的としているが、そのための手段として「少額決済の仕組みを実現する」
ことを最初の段階の目標に置いている。

その少額決済の自体を実現する仕組みが、次々、現れてきている。6月のワー
クショップの時点で話した「スパイスネット」は現在、投げ銭では使えなくな
っているが、ビットキャッシュ、KDD の「ミリセント」、NTTの「Calle」など
などのサービスが、登場し、あるいはより使いやすくなってきている。

なかでも、新しく現れたミリセントは投げ銭が理想とするインターフェイスに
近い。財布をパソコンの中にバーチュアルに持て、お金を払うときも、いちい
ち暗証番号を入れなくても良い。実際に1円からの決済ができる(ただ、現状
ではWindowsとWindowsNTでしか使えないという点が問題。ただし、後でお聞き
した話によるとJAVAを用いたネットワークウォレットの開発をしているとのこ
と)。

NTTのCalleは、Q2のインターネット版とでも呼べるサービスだが、今年の11
月に決済方法が変わり、コンテンツ提供者の運営コストが大幅に減る。世帯の
95パーセントが、固定電話を持っていることが強みだろう。完全に問題が解
決したわけではないが、少額決済の仕組み自体が予想外の早さで実現しつつあ
ることに正直、とても驚いている。個々のサービスの詳しい情報は、最後に付
けたURLで見てほしい。

少額の決済が、実際にできるようになれば、より本質的な問題に突入する。つ
まり、実際に人々が、投げ銭するのか、されるのかということだ。できるだけ、
急いで投げ銭の行き交うテキストフリーマーケットを作り、具体的な実験に入
ろう。12月1日にスタートさせるつもりである。

ここまでが、報告であった。

■公立図書館が私設電子図書館や書き手を支援することができるのだろうか

さて、今回のワークショップのの主旨は、公立図書館が私設電子図書館や書き
手を支援することができるのだろうか、ということだった。電子図書館が、出
現しようとしている今、情報の公開・共有と、作り手、あるいは書き手への支
援との間に矛盾はないのか、すべてを無料で公開してしまうということが生じ
たときに、書き手は生きていけるのか。

「図書館の、情報を蓄積してそれを公開するという役割の他に、情報の作り手
を支援するということもあっていいのではないか」という願いで、先進的な公
立図書館、浦安市立図書館の常世田さん、ジャーナリストであり、青空文庫と
いう私設電子図書館を運営もされている富田さん、ホームレスなどの問題を追
究している市民のための情報を提供している北村さんの3氏をお呼びした。

3者の発言を箇条書き風にまとめてみる。

●常世田良さん(浦安市立図書館)

図書館というと、物理的な本の貸し借りをするところと思いがちだが、本当は
その中の知識や情報を提供する場所。知識や情報、もっといえば文化の総体を
共有化し、市民の「知る権利」を守ることが図書館のコンセプトだ。

電子的なデータベースの出現は、一見、知の共有化に見えるが、データベース
には多大なコストがかかるため、使用料を払う一部の人にしか使えない。それ
は新しい知の独占である。図書館のコンセプトを守るために、図書館はそこを
打破しなければならない。

全国2800館の図書館でお金を出し合ってお金を払うなどして、利用者が無
料で使えるよう工夫すべきだ。そして、市民が知識情報を共有化するというこ
とに大きなコンセンサスを持つような世論形成をすすめていきたい。

●富田倫生さん(青空文庫主催者)

青空文庫は、インターネット上に開かれた「図書館」だから、公共図書館同様
ただで入館でき、ただで本を借りられる。また、年中無休で24時間開いてお
くことも可能で、地球の裏側の海外の人も利用することができる。収録されて
いる作品は、著作権の切れたものと、著作権が切れてはなくて、著者も生存し
ているが、著者が収録してもかまわないとした作品の2種類に分かれる。

ただ、残念ながら、現在の青空文庫には、生きている作家の生活を支えるシス
テムは存在していない。投げ銭については、反対しているわけではないが、諸
手を上げて賛成というわけでもなく、心が乱れているところ。

●北村年子さん(ルポライター)

青空文庫のようなシステムを見ると「いい」と思うが、その反面、こういった
もので自分達の文章が出されたら、どうやって生きていけばいいのかとも思う。
また、パソコンはまだ皆が持てるというものではないから、図書館はやはり必
要だろう。物理的な「本」というものに対する愛着も強く、デジタルテキスト
だけでなく、どちらも残していければいいのではないか。

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『本とコンピュータ』の仲俣さんから質問があった。質問は、マンガ喫茶が、
投げ銭のようなものを使うことで、漫画家を支援することができる可能性があ
ると思うが、どう思うか、というものだった。

また、投げ銭の考えの大本である「シェアテキスト」の命名者である古瀬さん
によるコメントが差し挟まれた。シェアテキストのパソコンの持つコピーとい
う機能を、逆手に取って、紙の本の流通を超えようとめざしたシェアテキスト
の理念を話してくれた。

私自身は、シェアテキスト運動は、お金を実際に送るという点についての注意
を払うことが少ないのではないか、と思っているが、やはり、投げ銭は、シェ
アテキスト運動の子供なのだ。

さて、後半に入った。

青空文庫には、広告がないのではないかとの会場からの質問に対して、ひつじ
書房が、(割引値段で)広告をだしていると述べた後、富田さんは青空文庫の
活動と資金の実際について説明をした。

青空文庫に関する活動は基本的にボランティアでやっている。広告による収入
も期待するが、青空文庫のテキストから派生する日本人の漢字の利用の研究で
公的資金援助を受けている現状を説明した。現在の機能していない出版産業が、
ライターを支えるものだというのは不自由。もっと書いた人が自分の気持ちを
伝えるために、自分から公表していくようなことがあってもいいのではないか
と述べた。

常世田さんが、アメリカの「図書館友の会」というものについて説明。おどろ
くべきことに、市民一人一人が図書館を支えていこうとしている。それは、経
済的なカンパを、募るようなそういう経営の実践的なことをも行っている。み
んなで、実際にお金を回しているようなのだ。

ここで、流れが変わる。富田さんが、(たぶん)意図的に図書館と出版社とい
うものを、過去のものとして、批判したのである。富田さんの「短期的に見て、
図書館と出版社の共存共栄ということは良く分かるが、長期的には図書館と出
版社が共存共栄しては、一市民として困る」との発言は、会場に緊張をもたら
した。

富田さんの発言は、本当は、図書館関係者の痛いところ、出版社の痛いところ
をついていたと思う。予算がないと嘆き、図書館の機能を発揮できない図書館
関係者。本を次から次へと品切れにし、情報の公開よりも埋葬人になっている
出版の人々。その両者を信用せず、できることをやる。少なくとも、青空文庫
としてはやるのだということだったろう。

ただ、その思い切りは、「本を大事にしたい」という気持ちを切り捨てるよう
に受け取られ兼ねないものでもあったので、北村さんが、反論として、道を一
つだけに限らないでほしい、本をそんなに性急に断念しないで欲しいとの発言
が、一方で、静かな感動を生んだ。

終えた後の私の感想として2つのことを述べる。

■1 起承転結の起がなかった

そんな中で、最後に会場からある方が、「現在の出版制度なり、再版制度とい
うものが、本当に日本文化の進行に役立っているのかというのは、非常に大き
な疑問があるがそのようなことを出発点としてきちんと立てていれば、市民が
コンテンツ自身へ支援する投げ銭の議論まで到達したのに残念であった」と述
べたが、この発言の意味は重要であった。

たしかに、現状認識として、本というもの、紙の本というものを作る人、ある
いは流通している人々がもうどうしようもないことになっていて、電子テキス
トを活用しなければ、物事は変わっていかないのではないか、という起承転結
の起の部分こそが出発点のはずだったのだ。

■2 起承転結の結にたどりつけなかった

今回の目的である「図書館が市民あるいは私設電子図書館を支援できるか」と
いう点については、残念ながら、踏み込むことができなかった。実際に、青空
文庫などの個人が運営している「公的」なサイトを支援するにはどうしたらよ
いか、その場合どのような問題が生じるのか、本当にそれで成り立ち得るのか、
市民のための情報源をどう支援し、育てていくのかという実際的な議論までい
たらなかったこと。

これは予定調和的な「投げ銭って必要だよね」という結論にならなかったこと
は、良かったとも思うが、時間切れもあって議論を中途半端にしか、進めるこ
とができなかった。投げ銭が機能して、書き手を本当に育てることができるの
か、そのためには何が必要なのかという議論が次には必要になってくるだろう。

今回は、前回と違い、朝日新聞にも毎日新聞にも紹介されることがなかったの
に、前回を上回る参加者、60名以上も集まった。2次会にも30人以上が参
加した。こんなに集まるということは、問題意識をすでに共有しつつある人々
がいて、その人々が探していた場所を提供できたということだろう。

実際的な議論については、継続していく。投げ銭についてのメーリングリスト
兼アーカイブを作って継続しようという提案がすでにでている。小さな知恵を
出し合うこと、それが投げ銭を実現する重要なことだと思う。

今回のレポートについては、ひつじ書房にアルバイトに来てくれている田中絢
子さん(早稲田大学第一文学部3年生)の筆記とテープ起こしに助けられたこ
とを記しておく。

関連するURL

投げ銭システムをすべてのhomepageに
http://www.shohyo.co.jp/nagesen/

青空文庫
http://www.aozora.gr.jp/

ビットキャッシュ
http://www.bitcash.co.jp/

Calle
http://www.calle.ne.jp/

ミリセント
http://www.millicent.gr.jp/

ミリセントオルグ
http://www.millicent.org/

シェアテキスト(ディジタルアーカイブズ)
http://www.honya.co.jp/

21世紀の出版社をめざすひつじ書房
http://www.hituzi.co.jp/

本の紹介の投稿をお願いします
http://www.shohyo.co.jp/

知のデータベースを目指して
http://fleamarket.shohyo.co.jp/index/index.html

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■編集後記(10/29)
・フィラリアの予防薬を飲ませるため、「柴田ハニー殿」の診察券を持ってペ
ット病院に行く。相変わらずの弱虫で、尻尾を巻き込んで腰がこきざみにふる
えている。よその犬(と飼い主)の手前みっともないことおびただしい。終っ
て一歩病院から出ると、何くわぬ顔して虚勢をはるのがおかしい。先日はかな
りの雨で、日中から玄関にいれていたら、濡れた犬ってくさい。「今日は家中
が犬臭い」と言ったら、女房が「犬って言わないで」と大いに怒る。犬を猫っ
かわいがりしてるわけで、だから弱虫に育つのだ。人間の子供で失敗している
くせに、犬でも同じことをしている。薄情よりはいいけど、、、。(柴田)

・豆腐のことを書いていたら、のらねこ商会の益田氏よりメールが。むかしの
大阪フォントでは網掛けの四角いのが並んできて、豆腐といえばこの焼豆腐が
主流だったとか。最近のフォントでは、焼豆腐もみな絹ごしになってるのかな、
というコメントが。わはは。とってもディープな彼のサイト。私は全部制覇し
ていないが、視点が好きさ。メールありがとうございます。(hammer.mule)
http://www2.gol.com/users/nora/
http://www2.gol.com/users/nora/Senri/Osaka/index.html
http://www2.gol.com/users/nora/Senri/5kai/index.html ←こういう感じ。

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http://www.shohyo.co.jp/nagesen/ <投げ銭システムをすべてのhomepageに>
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デスク     濱村和恵 
アソシエーツ  神田敏晶 
        森川眞行 

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