[0488] どうしてデジタル始めたんですか?」の答えに代えて。最終回

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【日刊デジタルクリエイターズ】 No.0488   1999/12/10.Fri発行
http://www.dgcr.com/    1998/04/13創刊   前号の発行部数 14631部
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 <これじゃぁ完全に機械とソフトの奴隷>

●デジクリトーク 夢賣新聞
 「どうしてデジタル始めたんですか?」の答えに代えて。最終回
 "Yume"(竹久マサオ)

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 我が妻との闘争
 



■デジクリトーク 夢賣新聞
「どうしてデジタル始めたんですか?」の答えに代えて。最終回

"Yume"(竹久マサオ)
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<前回まで>
92年の秋、MacとPhotoshopを買っていよいよ写真の画像処理を始めた。以来、
寝ても醒めてもコラージュの制作に没頭するが、2カ月ほど過ぎた頃から…

見事にパタッと作れなくなってしまった。困ったなぁ、その頃は「Mac 使って
こんなこと出来るんだよ」と言ってクライアントに自分の作ったコラージュを
得意気に見せ、写真だけではなくフォトコラージュの仕事もぼちぼちと始めて
いた(CG自体がまだ今より珍しかったので、クライアントの少ない私でも結
構仕事はあった。これが今ならなぁ。おっと、つい…。)

※このあたりから、いま考えている事もオーバーラップして書き進んでしまう
ので、時の前後はご了承のほど。

夢中になってとにかくPhotoshop を使えるようになろうとした当初は、勢いに
任せてコピー&ペーストそして変型のオンパレード。それをフィルターで味付
けして色補正すれば何となくまあ見栄えのするものが出来てしまう。ところが
逆にそれしか出来ないので、あっという間に飽きてしまう。もともと飽き性で
はあるが、このハイスピードでのスランプ到来には参ってしまった。

あれこれと悩むうちに、制作したフォトコラージュが雑誌に見開き全面で掲載
された。デジタルを使い始めてひと月そこそこで作ったものが、さっそく大き
く扱われて嬉しいのだが…。

アンダーで無気味な色のビルがぐにゃぐにゃに変型したその画像は、確かにデ
ジタル処理でなくては出来ないものだ。「面白いよねっ」とデザイナーも言っ
てくれた。何か嬉しさ半分の私は「ウーン…?」と唸ってしまった。「本当に
こんなのしたくてデジタル始めたのかなぁ?」という気持ちがスランプとも重
なって作る意欲が余計に減速してしまう始末。

さらには一連の作品をみて「Yumeちゃんの元々の写真の良さが全然出てないよ」
という友人の言葉も追い討ちをかける。「カラーコピーで遊んだ頃のミーハー
さが良かったのになぁ。これじゃストレートな写真のほうが絶対良いって」と
まで言われてしまう。「そりゃあんまりじゃぁないの?」とか思いながらも冷
静に考えると友人の言葉は正しい!

もともとなぜデジタルを使って制作したかったのかといえば、自分の写真をも
っと面白くしたかったから。ところが、いざPhotoshop を使ってみると「あれ
も出来る、こんな事も出来る」と目移りはなはだしい。結果それで自分が何を
したいのか腹にカチッとはまらないままに、ただソフトの機能にひきずられて
しまう。とりあえず見てくれだけ整え、気持ちが全然追い付いていかないまま
にフィニッシュ! これじゃぁ完全に機械とソフトの奴隷。

それでも「こんなこと続けてたら自分で飽きても仕方がないわなぁ」と納得す
るまでにしばらく時間はかかった。3カ月目あたりでやっと仕切り直し。

素材の写真のセレクトをし直して、今度はかなり意識的に自分のコンパスの振
れを確認しながら制作を進めた。もともと私は何でも始めは「これで行こう!」
とラインを決めるものの、それひとすじに邁進し続けられるタイプではない。
その場その場で面白そうな事に出くわしては寄り道をし、最初と全然ちがう方
向に歩いて行ってしまったりと、日和見この上ない性格である。

そんな奴がPhotoshop を使うものだから、最初と最後の脈絡が見えなくなって
しまうのも当然の結果である。そこで今回はその破たんを極力おさえるべく、
健気な目標としては「心の前後の統一感」のようなものを心掛けた。そして少
しずつ、自分の気持ちと一致するものが出来はじめた。

仕切り直して作ったものを持って東京へ出かけたのが93年の2月ごろ。以前
世話になった出版社などを回った。そしてこの連載1回目に書いた、玄光社の
今はなき「スーパー・デザイニング」の柴田編集長に出会った。ご存知、現デ
ジクリ編集長がSOHO者へと道を踏み外す前の、最後のカタギの仕事場だ。
「ディジタル・イメージ」というデジタルアーティスト集団の首謀者である彼
に勧められるままにポートフォリオを送り、以来そのメンバーに加えてもらっ
ている。

その後、同じデジタルだからという理由だけで、無謀にも業界誌のDTP化を
請け負って上京。でもやっぱり体に悪いからと帰阪、今度は針医者を目指すが
見事受験に失敗。相変わらず無節操な日々だ。

現在は昨年から制作を始めた「フォラストレーション」のシリーズを軸に、デ
ジタルを使って何が出来るか出来ないか、試行錯誤が続いている。

…そして今も、制作過程で思わぬものに出くわした時には、「心の前後の統一
感」はひとつのキーワード。その時々の気持ちの座標軸の再確認だけはしよう
と心掛けている。でもせっかく面白いものが出てきてくれたんだから、そこは
インタラクティブにフレキシブルに対応したくなるのが人情ってもんじゃあな
いかい?(なぜか突然に寅さん調子)。

そして、もし座標軸が軌道修正不可能な程にずれてしまいそうなら、そのまま
つっ走るかイチから出直すかの二つにひとつ。自分の腹のくくり方次第。「吉
と出るか凶と出るかは転んでみないとわからない」と、もっぱらバクチ感覚。

心身で感じる事を画面に落とし込むと、ハードとソフトがそれを形にしてくれ
る。そのフィードバックから次のステップに進む。それは瞬時のインタラクテ
ィブ。ぼやぼやすると「おい次はどうする?」と問い詰められる。ハードの処
理がどんどん速くなるにつれて、こちらもクロック数を上げないと機械に尻を
叩かれそう。思わぬ反応が返って来ることもたびたびなので、せいぜいチャッ
プリンの映画のごとくにならぬように心身ともに鍛えている必要はありそうだ。
でもあんまり叩かれるのが嫌になったら、終了ボタンを押して「マシンを捨て、
街にでよ」。

終わりに

かつて美術史などをカジったせいで、各時代に生まれた技術が芸術制作にあた
える影響と、その変化の過程に興味がある。洞窟の壁面に狩猟の成功を祈願し
て獲物の姿を描いた先史時代以来、人類が描き続ける行為は現在も綿々と続い
ている。どんな時代のものであれ、その根底には制作者の描く行為の必然性が
ある。

デジタル技術は、それが私達に新たな描くツールを与えてくれてから本当にわ
ずかの期間に、その特性と時代ゆえにとてつもない進化をし続けている。果た
してその進化に私自身の描く必然性がどこまでつきあいきれるのか、はたまた
つきあう事自体の必然性がどこまであるのか。まだ結論は見えない。

デジタル技術は、描くという行為に限ってみても、まだまだ新たな技術や素材
を与えてくれるだろう。そしてそれをどう使いこなしてどんな形に落とし込ん
で行くかの方程式も無限に存在する。

私がこれからも見続けて行きたいのは、デジタル技術がこれまで営々と築かれ
てきたアートのセオリーなど軽く凌駕してしまえるポテンシャルな部分。

突拍子もない話になるが、デジタル技術によって、ナスカの地上絵やイースタ
ー島のモアイ像のような想像を絶する桁はずれな制作物が再び現れるのではと
思っている。多分その技術はかなり整って来ていると思うが、問題はそのダイ
ナミズムに果たして私達自身がシフトしきれるかどうかという事のような気が
する。

「どうしてデジタル始めたんですか?」と聞いてくれた学生さんへ。

あなたの質問に出来るだけ正直に答えたくて長々と書いた割には、最後にケム
にまいたような話になってしまいました。うまく伝わったでしょうか? そん
な訳で、もうしばらくデジタルやっていようと思ってます。では。

【Yume/たけひさ・まさお】YUMEWORK@aol.com
http://members.aol.com/yumework
Digital Iconography 【WORKSHOP YUME】主宰
写真家/フォラストレーター/ディジタル・イメージ会員 第3回日本デジタ
ルアートコンテスト準グランプリ受賞。

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■セミナー案内
JPC定例セミナー12月
ユーザー事例にみるオンデマンド印刷の活用法と最新オンデマンド印刷機情報
ttp://www.jpc.gr.jp/index2.html
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<以下は主催者情報>

日時 12月17日(金)13時半~17時(13時より受付開始)
会場 東京オペラシティタワー48階 アップルコンピュータ(株)本社セミ
ナールーム 京王新線・都営地下鉄新宿線「初台駅」前/新宿より笹塚方面に
一駅
参加費 JPC会員5000円 JPC団体会員7000円 非会員1万円

内容 IGASも終わり、オンデマンド印刷機の最新機種が披露された。同時
に、オンデマンド印刷を活用し、新しいビジネスモデルを構築しようという動
きも盛んである。今回は、前後半に分け、最新機種の紹介とユーザー事例にみ
るオンデマンド印刷の活用法をユーザーをお招きしてノウハウと技術について
学ぶ。
第1部「ユーザー事例にみるオンデマンド印刷の活用法」13時半~15時 
スピーカー 桧山 栄二(プリントオンデマンド部会 ディレクター)
オンデマンド印刷機活用ユーザー(調整中)
第2部「最新オンデマンド印刷機情報」15時20分~17時 
スピーカー ハイデルベルグ・ジャパン(株)マーケティング本部DI・デジ
タル印刷部プロダクトマネージャー 西野高嶺
大日本スクリーン製造(株) GA事業本部マーケティング部 販売企画課 
田中嘉一
申込み方法 JPCホームページから申し込みが可能

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■展覧会案内
第10回もも展覧会開催中
http://www.3dcg.ne.jp/~momo/momo.html
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オンライン最大のCG展「もも展」が開催中である。開催期間12月31日ま
でだが、応募の締め切りは12月14日23時59分。
作品の種類は、2DCG、3DCG、ムービー、音楽など、題材は自由。一人
1点。メールアドレスが無い場合は登録できない。

なお、第9回もも展のようすは「もも本」としてアゴストから発売中。定価は
2800円+税だが、第9回、第10回の参加者(および参加予定者)には特
別価格でのサービスがある。相当にオトク。ももサイトのトップページに告知
されている。

アゴスト
http://www.agosto.com

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■デジクリWebサイト案内
我が妻との闘争
http://www.117.ne.jp/~kure/waga/yometop.html
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わたしの友人に、仕事があまりにもないのでネット上の面白いサイトを見て回
るのが商売(なわけないが)の悲しい男がいるが、ほぼ毎日ひとつは新サイト
を教えてくれる。今回は「我が妻との闘争」だ。

呉エイジさんのホームページに掲載されている「我が妻との闘争」がおもしろ
い(けど悲しい、けど面白い)。連載のタイトルからしてこんな具合(コワイ
のばかり選んだんだけど)。土下座のシステム8、私のインターネットライフ
をことごとくジャまする鬼嫁、地獄の五個条、直訴の200メガヘルツ、破滅
への序曲~悲壮マーチ~、血みどろの抗争、忍の一文字、怒りの温度……。

「この物語は、ホームページ作成に生き甲斐を見い出してしまった男と、そん
な情熱など微塵も理解しない嫁との闘争を記録した、愛と感動と血と汗と涙と
情熱と失禁の様子を描いた物語である」

とくに独身男性にはおすすめ。結婚間近かという男性はもう必読。ところで、
わたしは「結婚します」という男には、必ず忠告することがひとつだけある。
妻に知られぬ銀行口座を持ち月給半年分くらいはストックしておけ、ト。家庭
を持ったら、独身時代と違ってコンピュータにお金を使えなくなる。金食い虫
に金かけられないのだ。まあ、同類の配偶者ならいいけど、コンピュータなん
か無関心、そんなものに金出せるかという嫁のほうが多いだろう。自分の愛機
は自分で育てよう。

ホームページにきてくれるお客のことを、かの鬼嫁はこういう。
「そのお客様はお金でもくれるんかいな」(決定打)

この連載がアスキーの目にするところとなり、「マックピープル」に6月から
連載されている(トいう、未確認)。マックピープル版の「ワガツマRemix 」
3大セールスポイントは、Web版をベースに毎回約30パーセント(当社比)
の加筆、連載は豪華カラーの2ページ、イラストは毎回蛭子能収大先生が担当、
蛭子というのが悲しいハマリ具合ではないか。

さっそく呉エイジさんに励ましのお便りを出そうとしたが、この連載ではどこ
にもメールにつながっていない。そこで、URLの後ろの方を消してリターン
してみたら、「Kure's Homepage 」という人気ありそうなサイトで、65万2
千何人目かの客になった。

「我が妻との闘争 私と嫁さんとの激しいバトルを綴ったストレス発散ページ。
あなたはこのコーナーを読み笑うのか? それとも結婚生活のすべてを目の当
たりにし号泣するのか? 全ての独身者に捧ぐ」

トある。みなさんもいってみてください。呉エイジって名前はクレージーのも
じりらしい。でもこういうシタタカ嫁だからこそ、連載のネタがあるわけだ。
ま、フィクションだとしてもよくできている。笑える。仕事中の人はさっそく
いってみよう。(仕事中のネットサーフィン<古~>禁止、私的メールはクビ
という会社<コワ~>の人はおうちに帰ってからね)       (柴田)

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■編集後記(12/10)
・アルミ表紙(?)の「インターネットマガジン」2000年1月号を買う。
来年のテーマのひとつが「インターネットマガジン」1冊をちゃんと読む、こ
とである。かつて数年前、絶対必要なはずト毎月きちんと買って、ほとんどそ
れで安心して読まずにいたものだ。来年はもっとネット上(トいうか、内とい
うか)で仕事することになりそうだ。そのためには基本的なことをマスターし
ていかねばならんト思ったからだ。いままでは自己流な勝手な方法でネットに
接してきたが、この号の特集である電子メールマナーとか検索術なんてやっと
本気になって読もうというような気になっている。勉強勉強。しかし、「イン
ターネットマガジン」は重い。重すぎる。寝て読めないのは問題だ。ところで
小学館ウエブスター(483で掲載)が正式スタートしたはずなのに、アクセ
スを中止している。なんかあったのかねえ。           (柴田)
・雅子さまがご懐妊? ひょ~、いわゆるミレニアムベイビーってやつですか。
以前から、なかなかご懐妊されないと世間は騒いでいたが、もし本当なら明る
い話題でいいですね。/健全な精神は健全な肉体に宿る、とかいいますが、最
近の自分を見ていると、とにかく健康じゃなければやりたいこともやれないわ、
って感じです。体のせいで言い訳するの、もういやっ! (hammer.mule)

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■ 日刊デジクリは投げ銭システム推進準備委員会の趣旨に賛同します ■
http://www.shohyo.co.jp/nagesen/ <投げ銭システムをすべてのhomepageに>
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発行   デジタルクリエイターズ
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編集長     柴田忠男 
デスク     濱村和恵 
アソシエーツ  神田敏晶 
        森川眞行 

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