[0547] コマーシャリズムと志

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【日刊デジタルクリエイターズ】 No.0547   2000/03/04.Sat発行
http://www.dgcr.com/    1998/04/13創刊   前号の発行部数 15504部
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 <こういう映画を志がある、と言うのである>

■デジクリトーク
 コマーシャリズムと志
 十河 進

■デジクリトーク「眠ル繭」制作楽屋落ちシリーズ 
カメラマンとわたし-8
梅地浩太郎 
 
■デジクリトーク <投稿>
表参道の同潤会アパートを登録文化財に
Tashiro Hiroshi
 




■デジクリトーク
コマーシャリズムと志

十河 進
───────────────────────────────────
先日の「プロフェッショナル」についての文章に、多くの反応をいただいた。
反論覚悟の文章だったので、支持をいただくメールが多くて意外だった。転載
依頼までもらったのには驚いた。

ただ、僕の文章のつたなさから「仕事に対する情熱や愛情」を否定しているよ
うに受け取られた節があり反省している。「仕事に対する情熱や愛情」を僕は
まったく否定していない。プロフェッショナルの姿勢で「仕事に対する情熱と
愛情を持てる人」を僕は支持したい。

アマチュアの姿勢でありながら、「仕事に対する情熱や愛情」を免罪符や言い
訳にしたり、その価値観を仕事に取り組む姿勢の最上位に持ってくる人に、甘
えと欺瞞を感じるだけである。

さて、翌週に「オタク=プロへの道」というコラムが転載されたが、その激烈
な文章には圧倒されたものの、僕の趣旨とは似て非なるもの、まったく別の見
解であると思ったので、金を稼ぐことを至上とするプロフェッショナル像には
少し異論を唱えておきたい。

僕は「飯の種」と書いた。プロフェッショナルはどんな仕事であれ、それで飯
を食っていることを自覚して仕事をすべきだと考えるが、結果として金を稼げ
ないこともあると思っている。しかし、それが無駄なことかというと、別の何
かを得ることだってあるのだ。

現代は「売れる・売れない」(金が儲かる・儲からない)という価値観だけが、
すべてを支配する。売れたものは正義、売れればすべて良し、売れないものは
存在する価値さえない─そんな価値観があらゆる世界を支配している。

人間の価値さえ「金を稼ぐ奴か・稼がない奴か」だけで計り、リストラという
大義名分の元に存在を否定する。存在価値を否定された中高年者たちは自ら命
を絶ち、金儲けを至上とする者たちは彼らを「負け犬」と嘲笑う。

売れたから、金を稼いだからプロフェッショナルだ、とは僕は思わない。その
風貌もあるのかもしれないが、世界一金を稼いだ男ビル・ゲイツの戦略ややり
方に、僕は最もアマチュア性を感じてしまう。もちろん、マイクロソフト関連
の本を読んだり、司法省とのやりとりをニュースで知る限りの情報が元になっ
ているのではあるが…。

もっとも、僕はアメリカのベンチャー系ビジネスのやり方そのものにアマチュ
ア性を感じている。本当のプロはフェアであり、相手を出し抜いたり騙したり
はしない。もちろん、駆け引きはある。その駆け引きの能力が、プロフェッシ
ョナルの証明であるべきだ。

僕が考えるプロフェッショナルとは、仕事に誇りを持ち、自分の仕事の能力を
磨くために努力し、その結果として報酬がついてくる、と考えている人である。

「売れたか・売れなかったか」の価値観だけが支配する高度に進んだ資本主義
社会では、そんな昔ながらのプロたちはかえって息苦しくなっているような気
がする。

久しぶりの倉本聰ドラマを見た。2 月19日からNHK で始まった「玩具(おもち
ゃ)の神様」である。

イメクラで働きながらシナリオを書いている永作博美は、主人公のシナリオ作
家を神様と尊敬し、彼の旧作の登場人物から名を借りてオモチャと名乗ってい
る。しかし、彼女が神様と思って知り合うのは、実際の主人公ではない。主人
公のシナリオ作家を騙る詐欺師である。

倉本聰お得意の業界ドラマだ。かつて、玄人受けはするが、あまり視聴率の取
れない良心的なドラマを書いていた「私」は、突然、30パーセントを越える視
聴率を取るドラマを書いてしまい、売れっ子になる。

だが、視聴率がすべての世界に彼の作家性はなじまない。「それでいいのか、
おまえは」と自問する日々を送っている。売れるドラマのコツをテレビ局の友
人に指示され、気に染まぬまま彼は従い、その結果、爆発的に売れる。つまり、
自分の志を捨てコマーシャリズムと妥協した結果、儲かるわけである。

そんな時に、彼は自分の偽者の存在を知る。偽者に騙された人々の話を聞くと、
彼は旅館の一室で一所懸命に原稿を書き、まさに作家らしく苦しんでいるとい
う。主人公は次第にその偽者を、自分の本来の姿を具現している存在として感
じ始める。

ここで、テーマにされているのは「コマーシャリズム(商業主義)と作家性
(志)」である。倉本さんを想起させるシナリオ作家とは比較にもならないが、
専門誌を長年作ってきた人間にも、時たま同じような葛藤がある。「商業雑誌
と志」の問題だ。

青臭いことを言うが「出版は志である」と僕は思っている。アマチュアを読者
対象とした映画作りの専門誌やカメラ誌、ビデオ誌、プロをターゲットにした
広告専門誌などを作ってきて、常に僕はそう思ってきた。売れなければ商業雑
誌は成立しないが、売れれば何をやってもいい、というものではない。

しかし「志」とは何か。社会的なメッセージを込めれば「志が高い」ことにな
るのだろうか? 違う、そんなこととは関係ない。仕事をするうえでの志とは、
つまり「何のために仕事をするか」ということだ。

もちろん、食うため(自分のための金儲け)であるのは間違いない。そのこと
を優先するがために、時に志を曲げることがあるのだ。しかし、僕はどんな仕
事においても「世のため、人のため」をどこかで考えていることが「志」なの
だと考えている。

「世のため、人のため」というと、何だが高邁なことを考えているように受け
取られるかもしれないが、どんな仕事においても食うためだけではない思想が
必要じゃないか、そのことが本当のプロフェッショナルの精神を作るのではな
いか、と考えている。そのことが、仕事に誇りを持たせるのじゃないか。

僕がイメージするプロの仕事における志の例として、野坂昭如作「エロ事師た
ち」のズブやん(およびその仲間たち、つまりエロ事師たち)を挙げたい。

「エロ事師たち」はもう手に入らないかもしれない(僕の手元にもない)が、
今村昌平監督作品「『エロ事師たち』より 人類学入門」(1966)は、ビデオ
で見られるかもしれない。主人公を小沢昭一が演じた。近藤正臣のデビュー映
画だ。原作も映画も名作である。

ズブやんは、ブルーフィルム(今なら裏ビデオ)や性具や媚薬・回春剤などを
売るエロ事師である。しかし、彼は「性の煩悩に悩まされる人類を救うため」
に自分の仕事に真摯なのである。仲間たちも、皆、プロフェッショナルとして
の思想を持ち、その仕事で人々を「勃起させよう」としている。

たとえば「書き屋」と呼ばれる男は、自分が書くポルノ小説で、いかに男たち
を興奮させるか、に賭けている。自分が興奮せずに人を興奮させられるか、と
考える彼は剣の求道者のようにプロフェッショナルの意地を貫いて書き続け、
書きながら興奮し何度もマスタベーションをして、とうとう死んでしまう。

また、ダッチワイフ(ダッチカウントもそうだけど、オランダ人から抗議はこ
ないのか)を作っている人間は「南極探検隊に持っていってもらう性能のよい
もの」を作るために心血を注ぐのである。

こういう人たちを「世のため、人のため」を考えて仕事をする、志のあるプロ
フェッショナルなのだと僕は考えている。

表現の自由は規制すべきでないと、僕は認める人間ではあるが、日本を代表す
る大手出版社が発行する週刊誌にヘアヌード(嫌な言い方だ)が登場し始めた
ときには、その志のなさに呆れた。そこには「ヘアヌードでも載せておけば売
れるだろう」というコマーシャリズムしか存在しない。

恵まれない環境で仕事をする人間に肩入れする傾向は昔からあるのだが、永沢
光雄の「AV女優」を読んだときには、その志の高さ、あるいは精神の高潔さを
感じた。同時に、AV女優たちが語るアケスケな性の遍歴は時にディテールを想
像させ読む者を興奮させる、本来の役割も果たしていた。

そこには「セックスの話を書けば売れるだろう」というだけの物欲しげな姿勢
はなく、「セックスの話をAV女優にインタビューしまとめる」仕事を真摯にプ
ロフェッショナルに果たしている「卑しい街を往く高潔な騎士」の精神を持つ
風俗ライターの姿が浮かんでくる。

「AV女優」は朝日新聞の書評に取り上げられた結果、今は文春文庫で読める。
この本にまとめられた文章は、アダルトビデオ紹介などを主な内容にする風俗
雑誌に連載されたものだ。同じような雑誌の連載をまとめた「風俗の人たち」
もちくま文庫に収められた。

志の高い・低いは、その内容ではない。

前述のテレビドラマの世界を例にすれば、社会性のあるテーマをドラマにした
からといって、志が高いわけではない。いや、ひねくれ者でへそ曲がりの僕は、
社会性のあるテーマを掲げたドラマや映画にこそ、コマーシャリズムの匂いを
嗅いでしまう。作り手の欺瞞と偽善を感じるのだ。

たとえば、こんな企画会議を想像する。
「こんどのドラマ、○○○と○○○○のスケジュールがおさえられたんだ」
「それで、視聴率20パーセントは間違いないな」
「主人公は、流行のカリスマ美容師だ。問題はヒロインの設定だな」
「今、『五体不満足』がベストセラーですよ。身障者の役なんかどうですか」
「いいじゃない。社会性もあるし。うまくすれば30パーセントいくぜ」

こういうのを志が低い、と言うのである。

社会的なテーマや問題をトレンドとしかとらえず、「流行だからいれておけば
受けるだろう」という意識である。すべては、視聴率(出版で言えば部数)の
ためなのだ。

従姉妹に重度の身障者がいた僕は、特にそういう映画やドラマに厳しいのかも
しれない。僕が最も感動した身障者が描かれた映画は、森崎東監督の「喜劇・
特出しヒモ天国」(1975/まったく何というタイトル!)である。

ストリップ小屋に出前にくる聾唖者の夫婦がいる。ある日、妻はストリッパー
になりたいと意思表示をする。ストリッパーたちも夫婦の事情を聞いて同情し
応援する。ストリッパーたちは、音楽の聞こえない彼女がどうにか音楽に合わ
せて踊っているように見えるまで鍛え上げ、彼女は人気を博す。

ある日、彼女が踊っている時に音響設備が壊れるのだが、彼女は気づかない。
音楽が続いているつもりで踊り続けるストリッパーを観客があざ笑う。そのシ
ーンで僕は涙ぐんでしまった。

弱い者、虐げられた者、見捨てられた者、差別された者、恵まれない者、彼ら
を描く森崎の視線はやさしい。そこには自分だって彼らと変わらないという思
いが見える。彼らと同じ地平に立っている。あの世界的映画監督のように、弱
者を高所から見下ろすように描いてはいない。

こういう映画を志がある、と言うのである。

「売れなければ何の価値もない」と判断される困難な環境の中で、志を持ち続
けるプロフェッショナルに僕は共感する。

映画監督やシナリオ作家など、コマーシャリズムと作家性の折り合いをどうつ
けるか、常に葛藤を感じている人々だけではなく、様々なジャンルでプロフェ
ッショナルは「売るためにという理由の元、こと志と異なる指示や注文」に折
り合いをつけて仕事をしているのである。

専門誌の編集者もそうかもしれない。その編集者から仕事を依頼されるデジタ
ルクリエイターの皆さんも「わかっちゃいない編集者が言う、売れるための注
文」に折り合いを付けて仕事をしているのかもしれない。

しかし、志だけはなくさないでいたいものである。負け惜しみだと言われるだ
ろうが、「視聴率高きが故に尊からず、部数多きが故に尊からず、注文多きが
故に尊からず」なのだ。

しかし、「こうやったら売れる、これが売れるセオリーだ」などと視聴者や読
者やユーザーに迎合し媚びるだけで作られたものは、やはり駄目なのではある
まいか。どこかに誰かの志が入っているもの・志が感じられるものが、結局は
受け入れられるのではないだろうか。

こういうのを希望的観測、と言うのである。

【そごう・すすむ】DG@genkosha.co.jp http://www.genkosha.co.jp/dg/
玄光社勤務。現在は季刊DG/デジタルグラフィ編集長。何だか、力が入って疲
れてしまいました。今年になってから「仕事に誇りを持つ」ことばかり書いて
いる。自らに言い聞かせているように感じませんか?

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■デジクリトーク「眠ル繭」制作楽屋落ちシリーズ 
カメラマンとわたし-8

梅地浩太郎 http://www.yk.rim.or.jp/~umeji/
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いま「眠ル繭」のWeb サイトをみていて気がついたのだが、キャラクターデザ
インというクレジットは、このゲームには存在しない。ここにゲームに登場す
るキャラクターの魅力の秘密があるのだ。

通常、ゲームでモンスターなどのクリーチャーを新規に起こす場合、監督から
イメージを伝えられたキャラクターデザイナーが、かなり精密なデザイン画を
起こす。実際のゲーム作成段階では、モデラーは「いかにデザイン画に近いモ
ンスターを造ることができるか」ということが重要になるのだ。

ところが、今回の僕達のゲームでは、所さんの頭の中にあるイメージを簡単な
ラフや言葉で伝えられて、いきなり3Dでモデルをつくるのである。自分として
はかなりラフに近いものを造ったとしても、所さん曰く「イメージがちがうよ
お~」ということが多々あるのだ。

ここで重要となるのは「ラフに近付けること」ではなく、「イメージに近付け
る」ということなのである。このことが意味することは、僕達モデラーは所さ
んのイメージの範疇でデザインする余地がある、ということだ。ある程度のテ
クニックがあれば原画を渡されて、「この通りに造って」と言われるほうが楽
だし、時間も早くて済む。

しかし自分でデザインする要素が入ってくることにより、自分の得意分野に持
ち込むこともできるし、モデリングする上での「手癖」も最大限にいかすこと
ができるのだ。例えば「宝石の精霊」というイメージがあったとして、僕と平
野さんが同時に製作を始めたとしても、きっと同じものにはならない。しかし、
どちらとも所さんのイメージ通りのものができている、というわけだ。

「誰がキャラクターをデザインしたか?」

そう聞かれれば僕は文句なく「所幸則」というだろうし、すべてのキャラクタ
ーは所さんの頭の住人なのである。ただ、そのキャラクターが生まれる段階で
は言われた通りに造られたのではなく、僕達モデラーが文字どおり「生み出し
た」のである。

【特報!!「眠ル繭」3 月23日発売決定!!】
「眠ル繭」キャンペーン企画第一弾
「眠ル繭」をお店にて予約した伝票など、予約したことを証明できるものを個
展会場にもって来て提示した人先着100名様には、特製ポストカードセット5枚
(非売品)+所幸則ミニ写真集ポケットフォトグラフコレクションをプレゼン
トします(ちゃんと名前、電話番号など確認できるものにしてください)。今
週中には予約できる店も増えると思われる。たとえば恵比寿にあるグーチョキ
パー(3760-6642)とか、大手チェーン店とか、大手量販店とか。

【特報! 眠ル繭キャンペーン企画第二弾】
僕のゲーム「眠ル繭」購入者の中から先着300 名様に、素敵な特製ポストカー
ド10枚セットか、所幸則豪華ミニ写真集「天使に至る系譜」(非売品)を差し
上げます。発売日の5 日前にHP上にて詳細を告知! ゲーム中イベントシーン
でこういう人がなんといったか! といった問題をだします。アンケートハガ
キに解答を書いて送ってください。先着300 名ということになると思うので、
みんな頑張って予約できるお店、もしくは間違いなく入荷するお店を確認や問
い合わせをするなど用意しておいてください。大手のソフトではないから、予
約が間違いないぞ。さあ、電話だ!(笑)            --ところ

「眠ル繭」写真展 3/5~3/31 無休24時間 渋谷WcLockギャラリー
http://www2.gol.com/users/dnest/

「眠ル繭」サイト
http://www.porcu-pine.com/mayu/

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■デジクリトーク <投稿>
表参道の同潤会アパートを登録文化財に

Tashiro Hiroshi
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デジタルクリエーターの皆様こんにちは。ぼくは建築の設計を生業としている
のですが、この業界ももはやデジタルが主戦場となっています。ということで、
チョット畑は違いますが、同じような悩みが窺えるデジクリを面白く読んでい
るものです。

さて、今回は皆様にお願いがあって、寄稿させていただきました。それは渋谷
の原宿は、表参道にある同潤会アパートの保存要望書への署名です。

クリエーターの皆様なら、そのメッカといったらよいのでしょうか、青山や原
宿、神宮前といった地域をご存知でしょう。勤めたり、住まわれている方もい
らっしゃるでしょう。憧れの地と言う方もいらっしゃるのでは? かくいうぼ
くもそうです。

何か新しいものを作り上げてこうという、創造的熱気があり、他の街の賑わい
と異なるものがあります。

このような、クリエーターの街といっていいような姿になった大きな環境的要
素に同潤会アパートがあります。原宿駅から、表参道の方へ緩やかに上がる坂
の左手に、坂沿いに連なる低層の、きれいに古びたアパート群です。

この住宅は、実は日本で最古の鉄筋コンクリートのアパートで、当時新進の都
市サラリーマン層を対象とした、大正ロマン溢れる建物です。日本で唯一とい
ってもよい都市における住宅政策の成果です。戦災等により、この流れが途絶
えなければ、日本の都市は若きクリエーターにとっても充分住める街になって
いたことでしょう。大変残念です。

そういえば、このアパートから、水道や電灯、水洗便所といったものが始まっ
たのでした。さて、この都市史的にも建築史的にも、この価値ある同潤会アパ
ートが例によって経済原理により、文化的価値が蹂躙されようとしています。
このようなことは、皆さんの日々のお仕事でもよくあることと思います。全く
悔しいかぎりです。

同潤会の存在はこの地域の雰囲気の核と言えるものですので、これが無くなる
と街は単なる商業地区となり、賑わいはあるが、他と大差ないような月並みな
街に大きく変貌をする可能性は大きいといえます。

この開発の設計者は世界的に有名な建築家で安藤忠雄というのですが、ご存知
の方もいらっしゃるでしょう。確かに彼はクリエーターとして信頼も出来、同
潤会アパートの価値を認め、残したがっているのですが、事業的に成立しない
ということで、諦めてしまっているようなのです。

ところが、ここに最近できた制度に、登録文化財制度というものがあります。
これを上手く活用すれば、保存しても事業的に成立するようなボーナスを役所
からもらうことが出来るようになったのです。これはあまり知られていなし、
その活用の仕方も行政指導的な不透明さがまだあるので、発展途上の手法とい
えます。

しかし、これにより、とにかく残せないという選択肢しかない状況ではなく、
残すこともオプションとして考えられるようになったということです。手続き
も煩雑で狭き門ですが熱意があれば可能になったのです。

では、どうすればあの表参道の同潤会アパートを登録文化財に出来るのでしょ
うか。それが、実は今回皆様にお願いする保存要望書です。

登録の目安の一つに要望書の存在があるのです。
どうかふるってご参加下さい。

ぼくらはネットアクティビティーを通じて、日本で初めてのネット上での建築
保存活動を始めました。歴史的建築を残す、歴史的活動という訳です。最初の
ステップはこの要望書の提出。次は皆様の提案も含んで、なにやら楽しげな保
存のためのクリエイティブなイベントが出来ればいいなと考えています。

そこで、現在MMの発行計画が進行中です。そして、MLがこれです。
建築に少しでも興味があれば、参加はいかがでしょうか。
http://www2u.biglobe.ne.jp/~damika/ml.html

そして、保存要望書へ署名されたい方は
http://doujyunkai.i.am/

または、直接ダミカ嬢へ、メールを送っても結構です。その時は、出来れば本
名と、お持ちの方はURLをお伝え下さい。
damika@mrj.biglobe.ne.jp

他地域の方のために、きれいな同潤会の写真はこちら。
http://www.ns.kogakuin.ac.jp/~d196122/public_html/a_map/tokyo_01.html

尚、同潤会のお勉強サイトはこちらです。
http://www.md.xaxon.ne.jp/~memes/writings/frame01.htm

そして、上記サイトへ相互リンクさせていただければとも思いますので、その
節は各サイトの所有者へご連絡下さい。

この運動は決して渋谷の事だけではありません。このような手法が確立されれ
ば、貴方の街の懐かしい小学校や、繁華街の歴史ある建築などが駐車場などに
ならずに、都市としての風格と年輪を重ねていけるようになるからです。そし
て、それはその地域の立派な文化的資源であり、デザインソースと言えるでし
ょう。

Tashiro Hiroshi
memes@md.xaxon.ne.jp
http://www.md.xaxon.ne.jp/~memes/

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■編集後記(3/4)
・昨日は日本デジタルアートコンテストの審査だった。今年は応募点数が減っ
てしまった。それでも作品のクオリティは高く、楽しめる審査だった。最後の
グランプリを決める段になると、またもや審査委員長の松永真さんと対立して
しまった。だが、この審査はとても公正で、いつも気持ちよく終えることがで
きるので好きだ。早めに終了したので、所、海津、吉井という豪華メンバーと
お茶を飲んだ。彼らは「仕事頼むと高いだろうなあ」と見られている人たちだ
が、けしてそうじゃないようだ。気安く発注してみましょう<笑> (柴田)

・プレステ 2が来た。一分間に60万アクセスと言われた [プレステ・ドット・
コム] で注文していたのだ。といっても人に頼まれていたもので、自分のもの
ではないのだが。マスコミが報道したように、注文するのに一苦労。仕事の合
間合間にアクセスを試みて、4時間程度で注文完了した。2時間ほどダウンして
いたという話だったから早いほうだったかもしれない。「 httpよりもhttpsの
方がいいかも」とか「IPを直接打ってみよう」とか、「画面は変わらないけど、
ボタンは押したから大丈夫なはず」なんて感じでいろいろ試していた。 Flash
がとても綺麗だったのだが、アクセス集中するとわかっているコンテンツのト
ップに使うな、という意見もあって、今ははずされている。早く復活したらい
いのにね。作った人は残念だろうなぁ。         (hammer.mule)
http://www.jp.playstation.com/

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■ 日刊デジクリは投げ銭システム推進準備委員会の趣旨に賛同します ■
http://www.shohyo.co.jp/nagesen/ <投げ銭システムをすべてのhomepageに>
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発行   デジタルクリエイターズ
     <http://www.dgcr.com/>

編集長     柴田忠男 < mailto:tdo@green.ocn.ne.jp >
デスク     濱村和恵 < mailto:zacke@days-i.com >
アソシエーツ  神田敏晶 < mailto:kanda@knn.com >
        森川眞行 < mailto:morikawa@siliconcafe.com >

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