[0674] デジタルで、アナログに近づけようという努力

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【日刊デジタルクリエイターズ】 No.0674   2000/08/24.Thu発行
http://www.dgcr.com/    1998/04/13創刊   前号の発行部数 16637部
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 <「道具」にはなるけど「武器」にはならない>

■デジクリトーク
 パチンコサウンドクリエーターのつぶやき
 ~デジタルで、アナログに近づけようという努力~
 武橋道哉

■デジクリトーク
 純粋な趣味
 神谷一郎

■連載「ip2000」プロジェクト奮闘記 0130 8/23
 ほおずきランプとの出会い
 川井拓也@land



■デジクリトーク
パチンコサウンドクリエーターのつぶやき
~デジタルで、アナログに近づけようという努力~

武橋道哉
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私は、デザインに関しては全くの素人ですが、デザイン雑誌や、グラフィック
ソフトの解説本なんかが大好きです。デザイン雑誌は、素晴らしい作品を眺め
つつ、そのパワーを吸収するのが目的です。そして解説本の方は、作業過程を
一から追っていく、その手の特集が私の「知りたがり精神」を満足させてくれ
るからです。

素晴らしい! 全く白紙の状態から、その人のセンスとテクニックで、段々と
作品が出来上がっていく過程が見られるなんて! 作曲に関しても、無の状態
から曲が完成するまでの過程を追った舞台裏特集を見て(聴いて)みたいです
ね。CD-ROMによるデータ連動形式で、各過程を詳細に追って……最近、たまに
見かけるようになってきたようですが、まだまだ欲しい!

上手く言えませんが、根底ではグラフィックと音楽って繋がっているような気
がするんですよ。作品を作る上での姿勢など、特に。

「ソフトに振り回されるな、大切なのは感性だ」などといった基本理念、全く
同じですよね(何も、これはグラフィックや音楽だけでは無いのでしょうが)。

一番大きな共通点は、「パソコンで作りながら、いかにも、の作品は真っ先に
駆逐される運命にある」というところでしょうか。人間の手が加わっているの
を感じさせない作品は、温かみがない事を、もうみんな知っているのですね。

ピアノやギターなどの楽器に向かってメロディをつまびいて、いいフレーズが
浮かんだら楽譜にメモして……なんていうのは昔の話。今では、パソコンに接
続したキーボードを弾けば、そのまま「録音」されてしまいます。間違えたっ
て、大丈夫。テンポや音階の変更だって、お手の物。

おまけに、自分は鍵盤を弾いているのに、設定を変えるとすぐさま音色が変わ
ります。ギターにも、ベースにも、ドラムにだって、はたまた音色自体を自分
で作り込む事だって、できるんです。

こうして、演奏者は自分一人だけでも、複数パートの音楽が完成します。でも、
出来上がった音楽は、何か違うんですよね。一定の強さ、一定の早さで繰り返
されるメロディ、リズム。どうしてもそこに、機械的な冷たさを感じてしまう
んです。

微塵のズレもなく、常に同じパンチでドラムが叩ける人なんていないでしょう
し、人間がギターを弾けば、弦ごとに発音タイミングが違い、また弾く強さも
バラバラになるでしょう。トランペットを吹けば、当然息継ぎ場所だって必要
なはず。

シーケンスソフト上で、入力された無機質なデータにこれらの処理を施してい
くんですが、これがまた、なかなかに面倒臭いし、時間もかかります。でも、
出来上がったデータは、明らかに血が通い始めるんですよね。

(余談ですが、少し前、一定のテンポとリズムで入力しても、再生する時は何
故か人間らしい「ズレ」を伴って再生されるシーケンサーがある、なんていう
記事を見つけた事があります。何でも、制作した人がそのようにプログラムし
ていたそうで……)

この辺が、「手書きの味を加味しようとする」CGと、非常に共通した部分を持
っているのではないかと思います。

私は、3歳から23歳までピアノを習っていました。楽譜を間違えないように弾
く、というのは何年か学べば自然に身に付きます。本当の勝負はそれからで、
いかに自分の味を表現しながら演奏するか、を追い求める事になるのです。

不思議な事に、同じ楽譜、同じピアノでも、演奏する人によってそのメロディ
は全く違うものになるのです。それが、演奏者の「色」になる訳で。歌手一人
一人が、声室や歌い方が違うのと、全く同じ事なんです。

それをパソコン上で表現しようとしても、どうしても無理なんですね。だから、
音楽製作にパソコンを使う、という事は「道具」にはなるけど「武器」にはな
らない。それを忘れてはいけないな、といつも自戒しています。

こんなデジタル全盛の時代ですが、下敷きはやはりアナログなんだという事を
つくづく感じます。

さて、私の手がけるパチンコサウンドも、時代の流れでピコピコ音から徐々に
脱却しつつあります。お決まりの電子音だけではなく、作り込んだ音色での再
生も可能な環境になってきました。

この新しい音色をどうパチンコサウンドとして融合させて、より良いサウンド
を作っていくかを、頑張って挑戦していきたいと思っています。

【たけはしみちや】michiya@abox3.so-net.ne.jp
パチンコメーカーに在籍し、サウンドを手がけています。どうしてこう、サウ
ンド作成のソフトや機材はとてつもなく高価なんでしょう! でも、少し前は
マシン自体も恐ろしく高かったとか。という事は、しばらく後には今の高価な
機材も、ずっと廉価になってくるのでしょうか。その頃まで現役でいられたら、
いいんですが……

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■デジクリトーク
純粋な趣味

神谷一郎
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最近、映画を観るのが楽しくて楽しくて! 約2時間の短い時間で別世界別人
生を楽しませてくれる映画好きです。映画を観るといっても、ほとんどビデオ
でですが……。TV放送を録画したもの……レンタルビデオ……図書館のビデオ
などをかたっぱしから観てます。

映画は映画館で、という正当な映画ファンからはそんな見方で何十本観たって
本当に映画を観たことにはならないとお叱りを受けるでしょう。確かにそうか
もしれません……特にTVではCMが邪魔するし、短縮カットや画面フレームのト
リミングの仕方によっても作品イメージが変わる。時間的短縮カットはストー
リーにさほど関係してない箇所を切ってるのだろうが、そこが無いとダメなん
だ~ってコトも多いし、トイレタイムは自分でつくるは……酒飲みながら観ち
ゃうし……でもでも……それに眼を瞑ってでも観たい、観てしまうのです。

アクションやSFなど「絵的」にスゴイのはやっぱ映画館でないとダメなのかも
しれませんが、最近私モードは古い作品モードでウチのTVモニタ-でも満足し
てます。これがアクションばかり観たいモードに入ると、少し物足りなくなる
でしょう!

●映画一日一本がノルマ

今年になってから毎日約1本観よう~! しかも……なるべく記憶に残るよう
に観ようっと……昔から観た映画の感想とかチョコチョコとノートに残すこと
はしていたのですが、期間がとぎれとぎれノートもバラバラで結局忘れてしま
う。今回はちゃんと決めたスケッチブックに「メモ、切り抜き、イラスト」な
どをできる限り毎日、しかも継続することを目標に……折角観た映画なのに忘
れてしまうのがちょっと悔しくて(こうしててもスコッと忘れてしまうコトは
多いですが……)

しかし、こう決めごとをし始めるともう「純粋に作品を楽しんでいる!」とは
言えなくなる。俳優がどうのこうだとか、この作品の監督はあれだとか、いろ
いろこだわって映画を観るのもまた別の楽しみはあるのですが、やはりどこか
純粋に楽しんでいるとは言えないようで……。

4年前までは漫画を描いていたのですが……ストーリー作りや編集者との打ち
合わせでは必ずと言っていいほど映画話は関わってくるもので、特に私の担当
編集者は映画好き男だったもので、打ち合わせで映画ネタを振られて、その映
画を観ていないと話が続かず……そこで中断してしまう。こっちとしても打ち
合わせは話が弾んだ方がその中からネタは作りやすいもので、漫画編集者との
数年の付き合い期間もそうとう観ました。

この作品があの作品がっと、チラッと小耳に挟むとチェックしていました。留
守番電話に、次の打ち合わせまでにこれとこれは観ておくようにっと指示され
ることも……だからこの期間の映画鑑賞もまた純粋に楽しんでたとはいえなか
ったようです。

でもよく考えてみると私の場合……何か好きなコト(趣味)ができると、その
まわりをコチョコチョと調べたくなり、ある程度突っ込んでいって熱がさめる
……そういう楽しみ方しか出来ないのかもしれない。それが楽しいのかもしれ
ない。映画/GUN/ロック洋楽/ギター/オモチャ/落語/時代劇/ラーメン/格闘技、
だいたいこんな中で順繰……熱くなったりさめたりしています。

切り抜きスクラップしてメモしてラクガキして……まとめて憶えて……この果
てしなく無駄な時間の浪費が、私の趣味なのであろう~それがタマタマタマ…
…仕事に結び付いた時はモッケモノってカンジです^^!

映画ネタで仕事がしたい! これが当面の目標です

【かみや・いちろう】bh3i-kmy@asahi-net.or.jp
1961年生まれ。専修大学法学部法律学科卒。漫画家を経て現在フリーのイラス
トレターとして活動中! 著作「マニアック.サイバーGUN&ミリタリー」グラ
フィック社刊発売中!(GUNの知識-初心者に参考にして欲しいと絵&ウンチク
を描きました!)ディジタル・イメージ会員。

本館-イラスト&漫画のホームページ  
http://www.asahi-net.or.jp/~bh3i-kmy/

別館-趣味のホームページ 
http://member.nifty.ne.jp/16-kami/

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■連載「ip2000」プロジェクト奮闘記 0130 8/23
ほおずきランプとの出会い

川井拓也@land
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【ip2000最新情報】
●「ビデオα9月号」
試用レポートSONY PD150&DSR70!
●「ドリームキャッチャー~人生の宝物~」
7/30より連続10週毎日ノンスクランブル枠で放映予定!
http://www.vaionet.com/
●「はなこの地球1周日記」連載掲載週刊「ウルトラ1」

路上で2万円の衝動買い

晴海に戻ってきたオリビア号から、ハイエース一台分の機材を搬出した。活気
に溢れていた船内はガランとして、すべてが終わったことを感じさせる。船内
の至るところに貼られた張り紙などもすべて撤去され「こんなにすっきりして
いたんだっけ?」と周りを見渡した。

車はシートもつぶして機材を満載したために座るところがなく、最後尾に積ん
だ椅子に座りまるで「ドナドナドナ」という歌の売られていく牛のようなポジ
ションになった。車は走り出し、オリビア号は私の視界からじょじょに遠ざか
っていった。そして海は消え、築地、銀座の風景が続き見慣れた新橋の風景が
見えてくる。重い機材にうなるエンジン音を聞きながら、すべてが終わったこ
とを実感し少しさみしい気分になった。

それから汗だくで機材を会社に搬入したあと、家に戻り着替えてからewomen.
co.jpのパーティに潜入。次期フェーズに向けていろいろな人との出会いを求
めて身を投じた。

久しぶりのプレゼンの感覚。見知らぬ人と互いの立場や仕事内容を観察しなが
ら話しを進めていく日々。まだ調子がでなかったが、これからまた長い道のり
が始まるんだなということが感じられた。

そしてパーティが終わり、次のイベントであるピースボートの打ち上げに向お
うとしていた時にそれは私の目に飛び込んできた。路上で光る謎の物体。柔ら
かく暖かく不思議な色をしたその物体は、アーティストが作っている一品もの
の作品だった。よく見るとその美しい光をはなつ物体は「ほおずき」だった。
和紙と木でできたフレームは10個あまりのほおずきのランプと美しいコントラ
ストを醸し出していて、ひとつとして同じものがない。あまりに美しくしばし
見とれてしまった。

横を見ると、となりに大きな黒い犬と一緒に作者がいた。私は即座に聞いた。
「これはここで手に入るのですか?」「ええそうです」「ほおずきということ
は寿命があるのですか?」「4年くらいです。電球の方が寿命が早い場合もあ
りますが」「おいくらですか?」「2万円です」

私は路上で2万円を出し、その中からもっとも落ち着いている柄のランプをひ
とつ手にとった。作者と一緒にいる美しい女の人が丁寧にラッピングしてくれ
た。そのラッピングもまた見事で、いいものを買ったという気持ちを高めてく
れた。

不思議なのはお金の価値だ。2万円は大金だ。なにか、例えばデジタルデバイ
ス等を買う場合も100円でも安いものを買おうとするものだ。しかし、私はな
んの躊躇もなく路上で2万円の衝動買いをした。それはなにかが終わり自分の
気持ちをどこに落ち着ければいいのか、ぽっかり穴が空いている心にあたかも
新しい灯火をつけてくれた・・そんなきっかけへのせめてものお礼と感じたか
らかもしれない。そしてその灯火を自分の近くに置いておきたかった。

私は私にしか分らない価値観でいいものを買った。そしていまにも朽ちてしま
わないか心配になってしまうような、このほおずきのランプを美しいと感じる
自分に「日本人」を感じて少しホッとした。美しいものは人の心に響く。世界
にはさまざまな貧困や争いがあり、日本の「豊かさ」が異常だということを実
感したのが地球一周の率直な感想だった。

私たち日本は物に満ち溢れ物質的には「豊かさ」がある。
しかし「豊かな心」を持っているだろうか?

その「心」を引き出すことがクリエイティブに携わるものの使命だと、このラ
ンプは思い出させてくれた。

http://www.ip2000.net/

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■編集後記(8/24)
・今日で表参道で開催中のディジタル・イメージ東京展(後期)が終わる。お
客さんの入りはよくなかった。猛暑の中ではさすがの表参道も人出は多くない。
そのうえメインのお客となる学生は休み中だ。宣伝不足もある。会場内には常
にお客がいるという銀座ワシントンの展示に慣れた身には、この閑散としたネ
スパス会場はまことにさびしい。来年は時期や広報活動を考え直さないといけ
ないト反省。自分たちの展覧会だから、作家が交代で受付をやるきまりだが、
じっさいは人員の確保に毎日悩んだ。けっきょくは「いいヒト」が何度も担当
してくれたのだった。行きたいのだが仕事が詰まっていて…申し訳ない、ト消
えいらんばかりの作家もいる。そういう礼儀正しいヒトは少数で、大半は度重
なる参加要請に返事はない。ここまで甘やかしてしまったのは、じつは運営す
るわたしたちの責任でもある。過保護は子供のためにならない。(柴田)

・音楽やグラフィック、映像やお芝居、料理ですらつながっているように思っ
てます。結局モノを創るのって同じなのでは。ということで、「すべてのクリ
エイターのために」というわけですな、デジクリは。あるインテリアの先生は、
修行時代にレコ店でノルマ決めて、かたっぱしからレコードジャケットをみて
いったそうな。
・映画版ハリポタの配役決定。ハリー役のDaniel Radcliffeくんは、おとぼけ
た感じがいい。タイトルはやっぱりUSA版。それじゃ意味違うやん。ワーナー
のサイトにある「マグルに告ぐ」的ノリがいい。これは見にいきたいな。とこ
とんハリポタの世界にはまらせてもらおう。DASネタのしのさん、阿修羅城ネ
タの今野さん、エンズというかソフトバレエネタのこまちゃん&masumiさん、
メールありがとうございます。息抜きの私的マイナーネタばかりなので、楽し
んでいただけると嬉しいです。次はファントマの「666」だ!(hammer.mule)
http://harrypotter.warnerbros.com/
http://www2.plala.or.jp/FANTOMA/


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http://www.nagesen.gr.jp/  <投げ銭システムをすべてのhomepageに>
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        森川眞行 

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