[0861] ル・カレの迷宮世界

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【日刊デジタルクリエイターズ】 No.0861    2001/05/18.Fri発行
http://www.dgcr.com/    1998/04/13創刊   前号の発行部数 18084部
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 <健康が一番の財産>

■デジクリトーク
 ル・カレの迷宮世界
 十河 進

■デジクリトーク インターネットの紆余曲折(7)
 番外編:自転車の乗り方って知ってる?
 8月サンタ



■デジクリトーク
ル・カレの迷宮世界

十河 進
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●60年代はスパイの時代

金曜日の号で8月サンタさんとご一緒していた。メーリングリストでお名前は
拝見していたが、その由来は「八月のクリスマス/CHRISTMAS IN AUGUST」
(1998/97分)からきているのだろうか。まさか去年放映された竹之内豊と中
谷美紀のドラマではないだろうなあ。

テレビドラマ「真夏のメリークリスマス」は僕の会社の裏で一日ロケをやって
いて社内は少し騒ぎになった。営業部の女性は「キャー、竹之内豊よ」と騒ぎ、
編集部の若者は「中谷美紀っす」と窓からずっと眺めていた。僕のデスクの横
の窓から見下ろすとモニタが設置されていて、中谷美紀が自分の演技をチェッ
クしていた。

「真夏のメリークリスマス」には社のビルが写っていたらしいが、結局一度も
見なかった。しかし、「八月のクリスマス」の方は僕の好きな映画である。静
かで何も起こらない物語だ。主演女優のシム・ウナは日本でも人気が出て、昨
年は何本か主演作が公開された。

主人公を演じたハン・ソッキュは、後に「シュリ」(2000)で国家の保安のた
めに北朝鮮の工作員相手に銃を撃ちまくっていたが、メガネをかけて、いつも
笑顔をたやさなかった不治の病で死に行く写真屋のおじさんの方が僕は好きだ
った。(もちろん「シュリ」もよかったけれど)

さて、8月サンタさんは熱心なジョン・ル・カレの愛読者であるようだ。僕が
ル・カレを読んだのは主に60年代。その頃の話をしてみようかと思う。

60年代はスパイの時代だった。ベルリンに壁ができ、東西の冷戦は世界情勢を
極度に緊張させた。ケネディとフルシチョフが駆け引きをしたキューバ危機が、
その最大の出来事だっただろう。最近、「13デイズ」(2001)として映画化さ
れたが、あの時、小学生だった僕も核戦争を覚悟した。

そんなシリアスな状況をそのままエンタテインメントに反映したのでは読者に
受けないと判断したのか、スーパーマン的スパイが活躍するイアン・フレミン
グ原作のジェイムズ・ボンド・シリーズが映画化されることになった。ボンド
はスパイの仕事をやっているより、女たちと寝る方が忙しい男である。

007シリーズの第一作が「007は殺しの番号」というタイトルで公開されたのが
1962年。第二作目が「007危機一発」というタイトルで「髪」を「発」に間違
ったまま公開されたのが1963年だった。(水野晴郎は「敢えて”発”にした」
と強弁しているが……)

二作目で大ブレークした007シリーズの二匹目のドジョウを狙って、映画の世
界はスパイに席巻された。「磯野家の謎」が大当たりして「謎本」が山のよう
に出版された状況に似ているかもしれない。

ハヤカワミステリではマット・ヘルムの部隊シリーズに力を入れていたが、映
画化にあたっては「007はボンドガールでヒットした」と見極めたのか、軟派
なディーン・マーチンを主演にしてセクシーな女たちを配したおふざけスパイ
映画になった。

ジェイムズ・ボンドをさらにモテモテにしてスーパーマンにしたのが「電撃フ
リント」シリーズである。主演はジェームス・コバーン。彼はとにかく強かっ
た。屋敷は常にハーレム状態であった。

テレビシリーズ「秘密情報部員ジョン・ドレイク」でシリアスに頑張っていた
のは、後に「プリズナーN06」という不可解なシリーズドラマで伝説になるパ
トリック・マックグーハンである。もちろん、お気楽スパイシリーズ「0011/
ナポレオン・ソロ」も人気があった。

まあ、とにかく本屋にもブラウン管にもスクリーンにもスパイが溢れていた。
そんなスパイブームをパロディにして短編(タイトルを忘れた)を書いていた
のがデビュー間もない筒井康隆だった。家族がそれぞれ別の国に雇われたスパ
イで、近所の八百屋のおじさんやおばさんもスパイで……というような筒井康
隆的設定だったと思う。

●イギリスの伝統から生まれたスパイ小説

スパイ小説の伝統はイギリスにある。どれが最初だとは断定はしにくいかもし
れないが、ジョン・バカンの「三十九階段」はスパイ小説の古典として燦然と
輝いている。「外套と短剣」と言われたイギリス伝統の冒険小説の流れの中に
登場した名作で1915年に書かれた。

「三十九階段」はヒッチコック監督によって「三十九夜/THE 39 STEPS」(19
35/88分)として映画化された。ヒッチコック監督は戦前からスパイものも数
多く手がけている。

その後、イギリスのシリアスなスパイ小説としては、エリック・アンブラーの
「あるスパイへの墓碑銘」やサマセット・モームの「アシェンデン」などがあ
り、グレアム・グリーンも何作か手がけている。

僕はそれらの古典から体系的にスパイ小説を読もうとしたことがある。中学生
から高校生にかけてのことで、まさに60年代の後半だった。

そのきっかけは、常磐新平さんが編集長をやっていた「エラリー・クィーンズ
・ミステリマガジン」(早川書房)を読み始めたことだった。そこには、当時、
社会現象にまでなっていた007の「ジェイムズ・ボンド白書」が連載され、出
版広告のページには「スパイ小説の金字塔『寒い国から帰ってきたスパイ』」
というキャッチコピーが躍っていた。

最初に買った号の表紙裏には、レン・デイトンの処女作「イプクレス・ファイ
ル」を映画化した「国際諜報局」(1965/108分)の広告が載っていた。その
原作は「あの『寒い国から帰ってきたスパイ』を越えた!!」というキャッチコ
ピーが添えられていた。

そこまで書かれているのである。「寒い国から帰ってきたスパイ」(1963)を
読まないわけにはいかない。当時、ハヤカワポケットミステリでさえ手が出な
い貧乏な中学生だったが、ポケミスより高いソフトカバーの単行本を僕は買っ
た。「これで面白くなかったら、許さんぞ~」という気分だった。

……何だか、あまり面白くなかった。

いや、期待が大きすぎたのだと思う。中学生には理解しにくい部分も多かった。
でも、読後35年になるが未だにアレック・リーマス、ハンス・デューター・ム
ント、ジョージ・スマイリーという主要人物の名前を覚えているから、それな
りに印象に残ったのは間違いない。

その後、翻訳は後になったが処女作の「死者にかかってきた電話」を読んで、
ジョージ・スマイリーが真の主人公であることが判明した。やがてジョージ・
スマイリーはル・カレの主要作を担っていく。(周防正行監督の「シコふんじ
ゃった」(1991/108分)で、教立大学相撲部に入るイギリス人留学生の名は
ジョージ・スマイリーという)

しかし、ル・カレの作品はどんどん重厚長大になり、僕としては手を出すのを
控えていたのだが、新作が出るたびに気にはなっていた。「スクールボーイ閣
下」(1977)が出た同じ頃、グレアム・グリーンの「ヒューマン・ファクター」
も出て比較されることが多かったが、小林信彦さんの書評を読んで「ヒューマ
ン・ファクター」だけを読んですませた。

久しぶりに出てすぐに買ったのは「リトル・ドラマー・ガール」(1983)であ
る。ル・カレが初めて中東問題をテーマにしたことに興味があったのだ。ル・
カレの筆は確かに深まり、一種の神業になっていた。その記述はスパイ小説な
らではのもので、何のためにその記述があるのか時として読者にはわからず、
いつの間にか迷宮に誘い込まれている。

たとえば、何気ない通りの描写があるとする。郵便配達がやってくる。ル・カ
レはその配達夫を微細に描写する。その行動を描く。接触する相手も詳細に描
写する。スパイの世界では、もしかしたらその郵便配達夫は敵側のエージェン
トが化けているかもしれない。でも、本物の郵便配達夫かもしれない。

そんな風に物語っていけば、いつの間にか長大な本になるのは仕方がない。ル
・カレの描写の影響を受けているのは高村薫だと思う。「レディ・ジョーカー」
は間違いなくル・カレの手法で描かれた作品だ。

●複雑なプロットで伏線に溢れた完璧な物語

ル・カレのよい読者ではないかもしれないが、ル・カレの小説の映画化作品は
わりと見ている。特に、「寒い国から帰ってきたスパイ」は、監督が僕の好き
だったマーチン・リットだったこともあり、待ちかねて封切りで見に行った。

しかし、なぜかタイトルは「寒い国から帰ったスパイ/THE SPY WHO CAME IN
FROM THE COLD」(1966/111分)で、2文字、倹約していた。

配役はアレック・リーマスがリチャード・バートン、恋人がクレア・ブルーム、
ムントがピーター・ヴァン・アイク、フィドラーがオスカー・ウェルナーとい
う豪華版だったが、シリアスさを強調するためにモノクロームを採用し彫りの
深い映像に仕上げられていた。

東ドイツの切れ者フィドラーは得な役で、フランソワ・トリュフォー監督「突
然炎のごとく」(1961/108分)で人気が出たオスカー・ウェルナーが教養の
ある紳士的なエリート諜報官僚を演じていた。

「この映画は非情な情報戦の現実、組織の非情さ、味方にさえ真の目的を教え
ず、歯車として、消耗品として使ってしまう非人間性を描いた」と言ってしま
うとありきたりなのだが、組織や国家の非情さを描き出したのは間違いない。
いかにも、本当にありそうな裏切りと虚偽の世界である。

僕は、未だにラストシーンを甦らせることができる。醜く肥る前のリチャード
・バートンがベルリンの壁の上に昇り恋人に手を差し伸べる。いつ、サーチラ
イトに照らし出されるかというサスペンス。壁のこちら側からジョージ・スマ
イリーが「飛び下りろ、アレックス」と叫ぶ。

女、それもスパイの世界とは何の関係もなかった女、彼が非情な諜報戦の中に
引き込んでしまったオールドミス──クレア・ブルームが演じた女はまだ壁の
向こう側にいる。女は狙撃される。

再び、スマイリーは叫ぶ。「飛び下りろ、アレックス」

その時、スマイリーを見つめたアレックスの目が忘れられない。あんな目がで
きるのだから、バートンはやはり名優だと思う。その直前、アレックスはすべ
てを知ったのだ。自分の役割、本当の目的。彼は、その時、すべてに絶望して
いたに違いない。

僕は映画を見て、この物語のすべてを理解した。いや、バートンの最後の視線
ですべてを理解できたのかもしれない。小説では読み取れなかったが、アレッ
クスはフィドラーに友情に似たものを感じていたに違いない。それは、やはり
バートンとウェルナーの表情や口調で理解できた。

ストーリーは原作に忠実だ。二重、三重に張り巡らされた仕掛け、複雑なプロ
ット、伏線に溢れた完璧な物語だからどこかを変えれば破綻を生じてしまう。
したがって、物語に忠実な映画化だったが、原作を読んでいてもとても新鮮だ
った。小説の映画化の見事な成功例だと思う。

こう書いてくると、やはり「寒い国から帰ってきたスパイ」はいい小説だと思
う。ル・カレは、その後この出世作以上の代表作を生み出したと言われている
が、やはりスパイ小説の歴史に残る名作だろう。

ちなみに、続く小説も「鏡の国の戦争/THE LOOKING GLASS WAR」(1969/107
分)として映画化された。こちらも60年代のテイストのする不思議で不条理な
スパイ映画だった。

【そごう・すすむ】sogo@mbf.nifty.com
雑誌編集者。「ハンニバル」を見てきたが、レイ・リオッタが可哀想な役で気
の毒になった。「グッドフエローズ」の主演がよくて僕の好きな俳優なのだが、
爛れたような目が特徴で偏執的な役が多くなった。ジャンカルロ・ジャンニー
ニは渋かったけど……。

昔書いた文章が「投げ銭フリーマーケット」に出ています。デジクリに書いた
文章も数編入っています。
http://www.nagesen.gr.jp/hiroba/

ジョン・ル・カレ著作リスト
http://www.asahi-net.or.jp/~ue4k-ngt/bnavi/lecarre.html

八月のクリスマス
http://www.kmoviefc-jp.com/db/work/w1998/j1998001.htm

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■デジクリトーク インターネットの紆余曲折(7)
番外編:自転車の乗り方って知ってる?

8月サンタ
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●仕事も体も「再起動」

突然だが、新会社を始めることになった。前の会社が「消滅」してしまい、手
元に残された1.6mbのSDSL回線と5台のサーバとお客さんたちを何とかすべく、
この3ヶ月は地獄の日々だった。将来は1.6mbのSDSLなんて笑い話かも知れない
が、2001年5月現在、月額税込み6万ちょっとかかっている。勿論家賃もかかる
し電気代もかかる。しかし、止めてしまうとサービスが全て止まってしまい、
私のサーバ下にいるお客さんも、折角の信用も全部パーになってしまうのだ。

仕事はあるよ、と言ってくださる皆さんのご厚情が身にしみたが、実際の話、
個人のSOHOという形態では、自分一人の職人仕事は受けられても、大きな仕事
は不可能だ。かといって今更サラリーマンもまっぴらだったので、法人と資金
をなんとかする必要があった。

幸いにもカネはそれほど必要ないので、後は法人格。合資会社でも有限会社で
も、きちんと責任を請け負える形にしないと、普通の企業の経理の人に、嫌が
られてしまう。経理の人に嫌われたらおしまいだ(笑)。

SOHOでも私などより、そして下手な企業より余程信用があって素晴らしい仕事
をする人が一杯いることを知っているが、逆に中身が空っぽの私のような人間
には、法人格は武器なのだ。

というわけで、とある建材輸入会社が持っている株式会社を一つ、任せていた
だくことになった。健全に売り上げを伸ばすとの条件付きで、つい一週間前の
ことだ。決まるときは本当にあっさり決まるものだが、それまで続いたプレッ
シャーが凄く、先週の原稿を書く火曜日、突然高熱を出して救急車で運ばれて
しまった。

診断は「疲労による高熱」。解熱剤とビタミンを大量処方していただいた。し
かし契約の日の前後は一日ヨーグルト三個を食べるのが精一杯で、土日一杯は
背中が床から離れない仮死状態だった。食欲も徐々に回復してきたが、大体一
食がコンビニの蕎麦半分とヨーグルト一個だ。これじゃ病人だ(病人だけど)。

ともあれ、新しい事務所も会社も銀行口座もカネも出来て、次はばりばり働く
だけだ。流石に今回は健康が一番の財産、と言うことを痛いほど感じたので、
久々に自転車を新調して思い切り乗ることに決めた。

●自転車、最高の乗り物

自転車って、人間の筋力を、一番効率よく使って移動が出来る乗り物って知っ
てました? いい自転車に乗ってぐいぐいと進むときの快感はたまらない。都
内の移動だけなら、ストレス解消、運動不足解消を兼ねた最高の移動手段だ。

去年買った自転車は、いつもお世話になっている新宿ネットワークスクエアさ
んの、楽天のオークションで一万円ちょっとで買ったものだ。この値段にして
は凄く良かったけれど、(シマノがついてるし)私の体格に全く合っていなか
った。今でも買えるけど、身長167cm位の人にまでしかすすめられませんです。
http://www.rakuten.co.jp/nwsquare/

今は自転車屋の店頭をたまに覗くと、どこもかしこもMTBばかりで、それはそ
れで、でこぼこアスファルトの都内では便利なのだが、私は本来ドロップハン
ドルのロードレーサー乗りであった。高校時代は体の一部のように、細くて華
奢な700cのタイヤを履いた、小指一本で持ち上がる程軽量な愛車で、結構な通
学距離をこなしたものだ。

いつのまにかドロップハンドルのスポーツ自転車は流行らなくなって、一文字
ハンドルのATBか、ブロックパターンのぼこぼこタイヤを履いたMTBにとって代
わられたが、それで使いやすさが廃れたわけではない。

新宿のJOKER STREETという大きな自転車専門ショップを覗いて安心した。まだ
まだロードは健在だ。ホイチョイの「メッセンジャー」という映画のおかげで、
むしろ景気は良くなっているらしい。手頃な7万円くらいから、目移りする程
選べて幸せ状態だ。高校時代の愛機はパンク修理・ホイール修理・フォーク交
換は数知れず、ギアの歯が富士山型から殆どトゲトゲの山になってしまうほど
乗り込んで成仏したが、今度も大活躍させてやろう。

●自転車の乗り方の話

ところで、ママチャリはとにかく、普通のMTBやATBなどのスポーツタイプの、
自転車の乗り方をご存じだろうか?  笑わせるなと言う返事が返ってきそうだ
が、街で見かける人で、きちんと乗っている人があまりに少ないので、ここで
書いておこうと思う。

スポーツタイプの自転車に乗るとき、一番大事なのが「シートの高さ」なのだ。
どうするかというと、またがって、片足を一杯に伸ばす。その「つま先」の部
分で(正確には「足指の付け根の部分」で―ペダルを踏んで、一番下まで踏み
込んで、ピンと脚が伸びたその状態の股の高さに、シートをセットする。

こうやると脚の長さを限界まで使うことになる。当然シートは思いっきり高く
なる。またがった状態では足は地面に届かなくなるから、信号などではシート
から降りて、フレームをまたいで待つことになる。ハンドル位置は相対的に下
がるから、思いっきり前傾姿勢になる。「こんなの、怖くて、不自然で、乗れ
ないよ!」という人が多い。

しかし、これが「正しい」乗り方なのだ。脚を一杯に踏み込んでも「く」の字
に曲がった状態で乗っているのはアジア人で、街で見かける欧米系の人間は、
大人も子供も、ほぼ全てこの高さにシートをセットしている。彼らは自転車の
乗り方をきちんと教わっているからだ。

何故なら、この乗り方が、脚の筋肉の前面と後面を、一番効率よく使って走れ
るからで、試しに30分も走ってみれば一発で体が理解するはずだ。逆に「脚が
伸びきらない」乗り方をしていると、常に使うのは太股の前面の筋肉なので、
そこだけが疲れるし、そこだけが発達してしまう。

実は西洋人にあって東洋人にないと言われているものの一つが、「太股の裏側
の筋肉」で、これが例えばサッカー選手のポテンシャルや、西洋人モデルの立
ち姿の美しさに顕れているという。(アジアの選手の膝裏の筋肉不足は良く指
摘されることだ)そして、日本全国で普通の日本人が乗ってる自転車の乗り方
では、殆どの場合太股の前面しか使えない。きっちりシートを高くして、脚を
一杯に伸ばして乗ってやれば、バランス良く鍛えられる上に、何より楽だ、と
いうのに。

この乗り方だと、上半身もうまく使うことが出来る。踏み込むときに、ハンド
ルを思い切り引き上げてやれば、前身のバネの力がそのまま前に進む力になる。
背筋も二の腕も引き締まって、美しくなる。

逆に言えば、実は自転車はうまく乗れば、「脚や立ち姿がキレイになる」のだ。
私に限って言えば、ばりばりの文系でひ弱体質にも関わらず、「脱いだら結構
凄いキンニク」なのは自転車のおかげだ。村上春樹ではないが、筋肉はあって
悪いものではない。

街に、一人でも格好いい自転車の乗り手が増えることを祈って・・・。

●御礼申し上げます。

先週お休みしたら、数名の方から「終了したんですか?」というメールをいた
だいた。こんなに場違いなのに、気にとめていただいている方が居て、これ程
うれしいことはないです。

この書き物を、1998年の4月頃の話から始めたのにはわけがあって、実はこの
メールマガジン「日刊・デジタルクリエイターズ」が創刊されたのがちょうど
98年4月13日、偶然だが私、その創刊号から登録していたのだった。

三年間という時間で何が起こるのか。「あっという間」なんてとても言えない。
とても分厚い時間のように感じる。その間、デジクリは読んだり読まなかった
りで、とても熱心な読者とは言えないけれど、デジクリがなかったら、私のイ
ンターネットはとても寂しく、すかすかのものになっていただろう。

インターネットはビットの世界だから、記憶以外に何も残らない。移ろいやす
く、消えやすい。なのに、三年の間、ずっと週5日(昔は6日!)当たり前のよ
うに発行され続けている。

私はインターネットで発言するときに一番大事なことは、「感謝する」ことだ
と思っている。現実世界のサービスと違い、今、自分が受けられるサービスは
誰かの無償の犠牲なしには成り立っていないものだ。(だから、同じともいえ
るか)インターネットで「あらし」と呼ばれる(クラッカーですらない)一連
の人間に、完全に共通する態度は、その正反対、世界に感謝のかけらもない。
そのような態度はやっぱり社会に出たことのない者の甘えであって、時々本当
に情けなくなる。

というわけで、遅ればせながら、三年の長きに渡りデジクリを発行し続けてお
られる柴田編集長と濱村デスクとアソシエイツの方々に、本当に深い敬意と、
感謝の念を表明するものです。凄い快挙ですね。

【8月サンタ】ロンドンとル・カレを愛する32歳
santa@londontown.to

ロンドン好きのファンサイト
http://www.londontown.to/

▼デジクリサイトの「★デジクリ・スターバックス友の会★」
http://www.dgcr.com/

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■編集後記(05/18)
・大学のサイクリングクラブ40周年記念誌の原稿を書けと、かつての同輩から
電話が来た。彼は先輩から命じられたこの仕事を、お前のほうが向いているか
らと押しつけてきたわけだ。20周年の記念誌は編集者駆け出しのわたしが編集
レイアウトした。当時は和文タイプを版下にしていた。パターソンズ・ハウス
(まだあるのかな?)のイラストを表紙に使った、けっこう気に入りの冊子だ。
原稿はファクスでくれという、今回もろくなのが出来ない予感がする。(柴田)

・携帯用のメールアドレスは、携帯電話番号をそのまま利用していない。iモ
ード開通後すぐにアルファベットに変更した。ささやかなナントカというか、
やっぱこだわってしまうラブリーさというか(ラ……反省します)。だから、
「変なメールが来る」と人から聞くまで、その手の流れを知らなかった。携帯
でもスパムあるのね。受信料とられるのに、と言ったら「そうなのよ、だから
iモードやめようと思って」とのこと。夜中に携帯が鳴って見てみると、出会
い系勧誘メールだったりするそうだ。PCでもポピュラーな男性英語名のメール
アドレスを利用させてもらっていた時は、海外からアダルトサイトのスパムが
ばんばん来て閉口したけれど、iモードだと自衛もできないから、どうにかし
てもらいたいなぁ。アルファベットなら、というのじゃダメだよ。組み合わせ
作ればいくらでもスパム送れるんだから。課金方法と~。  (hammer.mule)

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発行   デジタルクリエイターズ
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編集長     柴田忠男 
デスク     濱村和恵 
アソシエーツ  神田敏晶 
        森川眞行 

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 担当:濱村和恵
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