[0898] やっぱり駄目ジャン、あゆライブ

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【日刊デジタルクリエイターズ】 No.0898    2001/07/10.Tue発行
http://www.dgcr.com/    1998/04/13創刊   前号の発行部数 19210部
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 <いつまでも無責任な垂れ流し企画を許しておくべきではない>

■デジクリトーク
 やっぱり駄目ジャン、あゆライブ
 モモヨ(リザード)

■デジクリトーク
 名状しがたい表現
 永吉克之

■公募案内
 平成13年度(第5回)文化庁メディア芸術祭 

■サイト案内+イベント案内
 ブロードバンドビジネス業界専門メディア「Stream NOW」プレオープン
 講演会「ブロードバンド時代のビジネス戦略」



■デジクリトーク
やっぱり駄目ジャン、あゆライブ

モモヨ(リザード)
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前回、内容は、7月7日の浜崎あゆみライブをインターネットで有償放送すると
いう企画について危惧を表明したが、結局、私が考えたとおりの結果となった。
なにしろ、今回の企画はチケットなるものも販売しており、そこには通信速度
も明記してあった。

S(384kbps)  \1600 (税別)
A(56kbps)   \800 (税別)

というやつ。
これが商取引の一般慣習から考えて如何なものか? という不安もあった。
当然ながら、ここでは、勝手に幹線を規定しているが、インターネットの仕組
みを知っているものなら、これは普通のインターネット上で考えられないこと
なのだ。

今回の企画はライブである。これが、さらに私の不安をあおっていた。ライブ
ということは、参加者全員が同時に一つのソースにアクセスするわけだ。とこ
ろで、こうしたシステムは、アクセス件数によって通信速度を変えて最大能力
を引き出そうとする、それがインターネットだ。こうした前提条件を考慮する
と、上記の値段設定には、ことの初めから問題があったのだろう。

単純計算でもその無謀性は証明できる。例えば、ここに100メガの専用幹線が
あるとしよう。この幹線を上記のS席のスピードで概算すると、300人以下の同
時アクセスでこの通信幹線は一杯になってしまうことがわかる。

もっとも、これは浜崎ライブに端末からサーバーまで専用線がひいてあること
を前提としている。とうぜんながら、それはありえないし、同時アクセス数も
さらに低下する。

すべてのユーザーが、こうしたライブソースと単独の専用回線で結ばれていれ
ば、値段設定どおりのものをユーザーに供与できるだろう。しかし、実際にこ
のライブでは、最初からそれが不可能だったことくらい、担当の管理者は知っ
ていたはずである。

とすれば、この管理者は、責任を問われなければならないし、この値段設定に
対して、ライブ企画者は、何らかのコメントをすべきだろう。

インターネット管理者の仕事の一つとして、こうした曖昧な商業表記を事前に
排することも、今後は要求されるところだと思う。専門家でなければ、ブロー
ドバンド時代のこのような企画の可否を決定できないはずであり、いつまでも
無責任な垂れ流し企画を許しておくべきではない、そう考える。

ライブへのアクセスではなく、ライブの後、一日おいたくらいからオンデマン
ドの配信なら同じ表記でも問題なく可能だった。そうすればこれは、ブロード
バンド時代の象徴的なイベントになったであろう。ブロードバンドだといって
も限界はあるわけであり、それは、適切な運用があって初めて社会に貢献でき
るのだと思う。


 ●以下に今回のトラブル事例を紹介しよう。

・ネットライブは最悪だった。いくらAチケットといえ画質が酷い。160x90ピ
クセルなんて、最初のテスト放送と異なっている。音質も聴けたものではない。
でも最後まで付き合った。

・全然まともに流れなかった。音声もブチブチ止まる。ケーブルモデムを使っ
ていて7月から幹線をふとくし、テストを見た結果S席を申し込んだ。映像が何
分も止まったままだった。音はブチブチ。代金を返金してもらいたい。

・何度トライしてもページが見つからない。トップページが見つかってもそこ
から先に行けない。(この、つがらないという苦情が一番多かった)

以上、トラブル事例は多肢に渡るがこうした内容に大別できよう。

最後に、試験的にSとAを申し込んだ人間の感想を書いておく。彼の報告では、
Aは予想以上に不安定、Sは300kはだいぶ安定していたという。彼は、都内在
住。一般回線とケーブルモデムをつかって、それぞれアクセスしたようだ。
今後の反省材料にしようではないか。


モモヨ(リザード) 管原保雄
momoyo@babylonic.com
責任編集 バビロニクス/音楽の未来を考える
http://www.babylonic.com

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■デジクリトーク
名状しがたい表現

永吉克之
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先日、大阪で、鈴木清順監督の作品がまとめて観られる機会があって、何本か
観た。なかでも、清順監督のファンなら、必ず代表作のひとつに挙げる『殺し
の烙印』は、なんとも形容しがたい作品で、「なんじゃ、こりゃ」と思って観
ているうちに終わってしまった。あと2~3回は観ないと、全体像が掴めそうに
ない。

主人公の花田(宍戸錠)は、プロの殺し屋。普通なら殺し屋は、ゴルゴ13のよ
うに、転々と居所を変えながら暮らしているものだと思っていたが、花田の場
合は、豪勢な家に定住していて妻までいる。そして、あちこちで、派手な銃撃
戦をやって殺しまくっているのに、絶対に捕まらない。そもそも警察が全然、
登場しない。

また、パロマの電気炊飯器を抱き締めて、飯の炊ける匂いに陶酔したり、わざ
わざ後楽園ホールを選んで、リング上で、殺し屋NO.1を競ったりなど、むちゃ
くちゃなことをする監督だと思った。

基本的にはハードボイルドなのだが、コメディーの要素もあり、とにかく荒唐
無稽で、どう説明すればいいのか言葉が見つからない。この作品を作ったため
に、清順監督が日活をクビになったというのも頷ける。

実は、私も「言葉でなんと表現すればいいのかわからない表現をするには、ど
ないすんねん」を作家としてのテーマにしているのだ。

言葉では表現できない感性、センス。感動して人に伝えたいのに言葉が見つか
らない。フランツ・カフカの小説は、そんな要素が強い。

オーソン・ウエルズが映画化した『審判』は原作のもつ名状しがたさを、うま
く表現していたと思う。そもそもカフカを映画化するなんて暴挙に出たウエル
ズは偉い。天才バカボンを実写で作るのと同じくらいの暴挙である。

それに対して、失望のあまりにタイトルすら忘れてしまったが、テレサ・ラッ
セルが出演している『カフカ、迷宮の(魔宮の?)』なんたらかんたら、とい
う作品は、『城』をベースにしてはいるものの、カフカの名状しがたい感性と
は何の縁もない、娯楽性の強い、単なる「非現実的な映画」になっている。

とはいえ、カフカなんかどうでもええねん。主人公が変な世界に迷い込んで、
どでかい目玉にびっくりしたりして、ダーッとか、ワーッとかやっとったら、
おもろいやん、という方々には面白いかもしれない。

擬態語というものがある。イライラ、ウキウキ、ムカムカなどといったものだ。
ちなみにピヨピヨは擬声語である。

もし、擬態語がなかったら、医者は困るだろう。痛みの感じが、ズキズキか、
チクチクか、キリキリかによって、症状を判断しなければならない。

逆にいえば、ズキズキといいさえすれば、多くの人が共有する、ある種の痛み
の記憶が喚起され、患者と医者は、名状しがたい感性を共有できるのだ。

それだけではない。擬態語がなかったら「東京ブギウギ、心ウキウキ、リズム
ズキズキワクワク~」は作られなかった。

擬態語のおかげで、医者は患者を病魔から解放し、笠置シズ子は『東京ブギウ
ギ』が歌えるのだ! なんという素晴らしいことだろう。

カフカの世界をうまく説明することができないのは、彼の作品を表現する、ぴ
ったりの擬態語が、まだ発明されていないからだ。

「カフカの『断食芸人』には、まさに彼のサロサロとした感受性が息づいてい
る」「『流刑地にて』での処刑のプロセスの、アモアモした奇妙さこそがカフ
カの真骨頂だ」「カフカは、ついに『変身』で、ピカボピカボな世界を完成し
た」などなど、彼の感性を共有できる擬態語が、いつかは発明されるかもしれ
ない。私個人は、カフカの文学を「ムヒーンヴムヒーンヴとした世界」と名付
けている。しかし、これは発音しにくいので一般化はするまい。

で結局、名状しがたい、言葉で何といったらいいのかわからない世界を表現す
る方法だが、そんなものはない。あってたまるか、ちくしょう。

ただ、表現とは、自分の裸を見せるようなものだ。恥ずかしがって、身体の一
部をタオルで隠しているうちは、個性的な表現はできない。

「おら、こんな世界が描きてえんだども、誰も分かっちゃくれねえに決まって
るだ! 嫁の房江だって、分かりゃしねえだ!」とひとりで決めて、結局、借
り物の表現スタイルで、ありきたりな作品を作ってしまうというのは、よくあ
ることではなかろうか。

以前、私自信は気に入っているが「誰も分かっちゃくれねえ」だろうと思って
いた作品を、あえて公募に出したら優秀賞をもらったことがある。審査員もユ
ニークさを評価してくれていた。展覧会のパンフからの抜粋だが・・・「新し
い感性を表現し得た」(デザイナー、早川良雄氏)「これまでに、あまり見た
ことのない魅力があり・・・」(評論家、三木多聞氏)などなど。(『夢2』
というタイトルで、私のサイトに出してます)

自慢してすいませ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ん!!!

それはともかく、「誰も分かっちゃくれねえ」と自分で思い込んでいるような
作品ほどユニークな感性を持っている可能性があり、ユニークということは、
いままでになかったということだから、それを表現する言葉もないわけだ。

幸か不幸か、私には、パトロンもクライアントも後援会もファンクラブもない
ので、自分の世界をゴリ押しできる。清順もカフカもタルコフスキーもゴダー
ルも自分の世界をゴリ押しした。ただ、私の場合、全然お金にならないという
点が彼らと違うだけだ。なんという素晴らしいことだろう。

永吉克之/CGアーティスト katz@mvc.biglobe.ne.jp

7月いっぱいまで、東レのサイトにあるART SPACEで、個展をやってます。
http://www.toray.co.jp/artspace/index.html

EPIGONE
http://www2u.biglobe.ne.jp/~work

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■公募案内
平成13年度(第5回)文化庁メディア芸術祭 
http://www.cgarts.or.jp/festival/
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<主催者情報>

今年で5回目を迎える「文化庁メディア芸術祭」。CGやゲーム、Web、インスタ
レーション等のデジタル技術を駆使した作品や、アニメーション、マンガの分
野において、新しい表現を開拓し、創造性あふれる作品を創作したアーティス
トを顕彰し、その創作活動を広く紹介していくことを目的として開催します。

募集期間  8月1日~10月31日
募集作品
・デジタルアート[インタラクティブ]部門 ゲーム、Web、インスタレーシ
ョン等、インタラクティブ性のあるデジタル作品
・デジタルアート[ノンインタラクティブ]部門 静止画、動画、立体等、CG
やDTVを駆使したデジタル作品
・アニメーション部門 アニメーション作品(長編、短編)
・マンガ部門 ストーリーマンガ作品(長編、短編)
※アニメーション部門とマンガ部門はデジタル作品である必要はありません。

各賞
[大 賞1作品] 賞状(文部科学大臣賞)、トロフィー、副賞60万円
[優秀賞4作品] 賞状(文部科学大臣賞)、トロフィー、副賞30万円

贈呈式 平成14年2月28日(木)
受賞作品展 平成14年3月1日(金)~3月10日(日)
      東京都写真美術館(東京・恵比寿ガーデンプレイス内)
      (協力:財団法人東京都歴史文化財団 東京都写真美術館)

審査委員長 原島 博(東京大学大学院教授)
《デジタルアート部門》
主査 原島 博(東京大学大学院教授)
副主査 原田大三郎(CG作家)
伊藤幸治(Webデザイナー)大口孝之(映像クリエーター)木村 卓(アートデ
ィレクター)草原真知子(神戸大学大学院助教授)松永 真(グラフィックデ
ザイナー)
《アニメーション・マンガ部門》
主査 石上三登志(映画評論家)
副主査 浜野保樹(東京大学大学院助教授)
小野耕世(映画・漫画評論家)清水 勲(帝京平成大学教授)鈴木伸一(アニ
メーション作家)西村繁男(元「少年ジャンプ」編集長)古川タク(アニメー
ション作家)

応募条件 平成12年11月1日から平成13年10月31日までに制作・発表された作品
が対象です。

主催 文化庁メディア芸術祭実行委員会

お問合せ先 CG-ARTS協会内「文化庁メディア芸術祭事務局」
〒104-0031東京都中央区京橋1-11-2 TEL.03-3535-3501

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■サイト案内+イベント案内
ブロードバンドビジネス業界専門メディア「Stream NOW」プレオープン
講演会「ブロードバンド時代のビジネス戦略」
http://www.streamnow.tv/
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<主催者情報>

大阪市内のデジタルメディア産業の振興をはかるソフト産業プラザ iMedio
(イメディオ)は、インターネット・ベンチャービジネスに特化したニュース
サイト「Venture NOW」を運営しているチアーズ合資会社との相互協力体制の
もとに、ブロードバンド業界に特化した最新情報を提供するニュースサイト
「Stream NOW」をプレオープンした。

イメディオ[iMedio] http://www.imedio.or.jp/
チアーズ [CHEERS] http://www.cheers.ne.jp/

サイトプレオープンにあたっては、無料メール(Daily)登録の先行予約受付
も開始(β版メールニュースをDailyにて配信中)。8月10日予定の正式なWEB
サイト及びメール配信サービス開始に当っては、業界のより一層の活性化に繋
げていく定期的なイベント、セミナーの開催や、サイト上での映像配信を交え
た新しいブロードバンドコンテンツの試み、業界の最先端を走る企業への取材
レポートなど、多種多様な企画も用意しております。

その第一弾と致しましては、来る8月10日、「Stream NOW」正式オープンを記
念して、「ブロードバンド時代のビジネス戦略」と題し、ブロードバンド業界
の「インフラ」、「コンテンツ」面で最も活躍されている方々にお越しいただ
いて、その近未来像とビジネス戦略を語って頂くスペシャルな講演会を開催致
します。

●講演会「ブロードバンド時代のビジネス戦略」
日時 8月10日(金)第一部10:30~12:00 第二部13:30~15:00
会場 大阪産業創造館4Fイベントホール
費用 各講演1000円
定員 250名(各講演)

第一部 「ブロードバンド戦略構想」
   株式会社 有線ブロードネットワークス 代表取締役社長 宇野康秀氏

第二部 「デジタルメディアが拓くブロードバンドマーケット」
   リアルネットワークス 株式会社 代表取締役 進藤公彦氏

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■編集後記(7/10)
・とうとうオジイチャンになってしまった。娘が娘を出産したのだ。スイカ泥
棒のような腹で、毎日重い重いと言っていたが、3キロ超だからむべなるかな。
赤ん坊って赤い猿顔だと思っていたが、快適な環境での滞在期間が長かったせ
いか、すっきりした顔でこりゃ美人だ(早くもジジイ感覚)。娘の亭主は早く
も「嫁にはやらん」と宣言。妻とご機嫌で帰ってきたら、ハニー号がなんとな
く機嫌が悪いように感じた。これが動物的カンというやつか。  (柴田老)

・おほほほほ。「ヨメにはやらん」は20才くらいまでですわよ。諦めるな、そ
のうちいくから>うちの父親。/お孫さん、おめでとうございます! ハニー
ちゃんが機嫌悪くなるのわかるなぁ。長女なもので。いまは産まないことを選
択する人は多いし、赤ちゃんを育てるのは大変だと頭ではわかっているけど、
やっぱり欲しいよなぁ。動物的本能ってやつかなぁ。  (hammer.mule.♀)

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編集長     柴田忠男 
デスク     濱村和恵 
アソシエーツ  神田敏晶 
        森川眞行 

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