[1125] Web Serviceは新ビジネスとなるか?

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【日刊デジタルクリエイターズ】 No.1125    2002/07/15.Mon発行
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     【デジクリは「メディア規制三法案」に反対します】

■デジクリトーク
 Web Serviceは新ビジネスとなるか?
 神田敏晶

■デジクリトーク
 植字工万歳。
 白石 昇

■青瓶 2436
 ブランド戦略、読売新聞 5.
 余所者の視点。
 北澤浩一



■デジクリトーク
Web Serviceは新ビジネスとなるか?

神田敏晶
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KNN神田です。

わからないことがあるとインターネットで調べるという行為は、普段の生活の
なかで定着してきました。皆さんも、調べるサイトや検索エンジンもほぼ固定
してきているのではないでしょうか?

それらが自動的に連動していくことができたら、理想的なIT社会となることで
しょう。そんな思いを実現できるテクノロジーが、「Web Service」として実
現化されようとしています。

たとえば、台風で予約していた飛行機が欠航になった場合、予約していた便の
次の便に振り替える、もしくは陸路で調整し、予定していたレンタカーやホテ
ルもそれに応じて調整していき、手元に届いた選択肢の中からベストなチョイ
スができることが「Web Service」の理論上では可能となってきました。

また、取引先などが数字を公開すれば、それに応じて自社の価格を設定するよ
うな事も、個々のアプリケーション」で自動化することによって実現できるよ
うになります。

それらの情報のやり取りは、単純なHTMLベースではなく、文書構造をもった
XMLが必要であります。しかし、そのXML文書を効率的に扱おうとすると、各々
が勝手に自由なやり方で処理をしているのが、現状ではないでしょうか?

それらに活用されているのが、HTMLではなく、文書構造をもったXMLの文書で
す。そのXML文書を活用し、アプリケーションレベルでプログラムされたサー
ビスを互いに利用しあい、業界の標準化によってさらに効率化を高めようとし
ているのが「Web Service」なのです。

これらのXML化されたデータを効率よく、しかもアプリケーションレベルでサ
ポートできるようにしていくためにW3Cが2002年1月に、「Web Services
Architecture WG」、「XML Protocol WG」、「Web Services Description WG」
という3つの「Web Services」に関するワークグループ(WG)を発足させてい
ましたが、7月9日にWeb Services Description WGが、「WSDL(Web Services
Description Language)1.2」としてのドラフトを公開しました。

先週、開催された「WEB SERVICES Conference」
http://www.idg.co.jp/expo/wsc/
にも多数の企業エンジニアたちが、「Web Service」の今後について、カンフ
ァレンスがほぼ全セッション満員もしくは立見という状態で集まりました。

Web Serciceでは、XML形式でデータを扱い、プロトコルとしては米Microsoft
や米Userland Software社らが開発した「SOAP(Simple Object Access
Protocol)」が使用されます。

SOAP
http://www.atmarkit.co.jp/icd/root/34/31754134.html

また、重要なのが、
UDDI(Universal Description, Discovery and Integration)
http://www.atmarkit.co.jp/icd/root/49/75372349.html
と呼ばれるディレクトリサービスです。

UDDIは、米IBMや米Microsoft、米Aribaなどが中心となって提唱されています。
UDDI登録はこちらから
http://www.uddi.org/register.html

UDDIで自社のサービスなどを登録しておくことによって「WEB SERVICES」が自
動的に他のサービスと連携していくということが今後考えられます。また、現
在の登録社は数100社程度ですが、大企業ばかりです。WEB制作のビジネスが
HTTPのプロトコル提唱とともに勃興したように、UDDI登録などのサービスも
SOAP提唱の今だからこそ大きなビジネスになるかもしれませんね。

技術に自信のあるベンチャーなら、少し「WEB SERVICES」まわりの新ビジネス
を考えてみるのはいかがでしょうか?

日本のほとんどの大企業がこのサービスをいずれは、導入するとすると莫大な
ビジネスチャンスがあるように感じます。

まだまだ、規格の選定段階でもありますが、すでに大手業界が動き出しデファ
クトスタンダード化の動きがみえてきたWEB SERVICESの情報でした。

Web Sercice
http://www.atmarkit.co.jp/icd/root/41/85038141.html

The smallest digital TV station in the world
KandaNewsNetwork http://www.knn.com
Toshi Kanda mailto:kanda@knn.com

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■デジクリトーク
植字工万歳。

白石 昇
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白石昇です。バナナは木ではない。巨大な草である、と言う事実に気づいたの
はつい最近のことだ。毎年暑季になるとこれでもかといわんばかりに太陽の光
を吸収したバナナの葉が巨大な緑色で景色を染め、雨季の雨を吸い込む準備を
始める。

僕は原文中の理解不能な箇所の意味を確認するために、五月になってから定期
的に著作者事務所に通い始めた。著作者事務所は都内郊外の住宅街にあり、僕
の仕事場は都外の工業地帯にある。バスを乗り換えて行っても、まず三時間は
覚悟しなければならない。

そして、出版するために作らなければならないデータの形式について、事務所
サイドであれこれアドバイスして貰う。余白はどのように開けるとか、使う画
像の精度だとか言った類の、本のページを作りあげるために必要な基本的なこ
とだ。

運良く彼の事務所では、版下入稿という形を取っており、最近では事務所費用
で出版をしているので、そのあたりのスキルはいくらでもあったし、初めて事
務所を訪れたときにラーメン食ってたチーフマネージャー的立場の人自身、何
冊も自分の著作を持っている人だったから、いろんなアドバイスをして貰えた。
http://hp.vector.co.jp/authors/VA028485/deg140313.html

当然のように、まだ、訳文は完全に満足の行く品質のにっぽん語には整備され
ていなかったのだが、僕は少し他の作業をやりながら訳文から離れる必要性を
感じていたのだ。要するに僕は、自分の書いた訳文によって耐えられないくら
いの中毒症状を起こしていた。しばらく訳文は見たくなかった。

版下はベクトル形式のデータで入稿しなければならない。出版社側の印刷機が
接続されているタイ語仕様のパソコンで出力できなければ印刷が出来ないとい
うことである。要するに僕は、フォントをアウトライン化して、ベクトルの画
像データを作らねばならないと言うことなのである。

だから僕は一頁分ずつ文章をはめ込んでいき、それを一頁ずつ絵のデータとし
て変換しなければいけない。

DTPに詳しい友人が親身になって一冊まるまる一つのファイルとして編集する
タイプの形式のソフトウェアを使ってPDFで保存し、そのファイルに日本語フ
ォントを埋め込むということを試みてくれたが、失敗に終わった。

他にも、PDFに日本語フォントを埋め込めるソフトがあるらしかったが、その
ようなものを購入している友人など僕にはなかった。仕方がない、一〇〇頁以
上のテキストをずれないようにはめ込んでゆくしかない。

僕はまず訳註を整理した。訳註は軽く一五〇以上あり、そのうち一〇〇近くに
画像をつける必要があった。しかもその訳註は文末にまとめてではなく、テキ
ストの下面に位置する。要するに番号がずれたら後から作業が大変になるのだ。

僕は友人のパソコンで作業をさせて貰いながら、本文がずれることに関しては
考えないようにした。まだ訳文の書き直しが完全ではないのだから、本文がず
れることは間違いない。二度手間になるのは明らかなのだが、いまの僕は訳文
から離れる必要があるのだ。

僕は作業を進めながら、こんなもの一文字ずつ拾ってったんだから、昔の植字
工さんってえらいよなあ、と思った。DTPが主流になる前ならば、こんな風に
一人で本を作るなんて事が出来るわけがない。

しかし同時に、こんな風に人為的コストが格段に低いのだから、買った人に納
得していただく価格で提供しなければならないとも思う。

ページ数は全部で一六〇頁ほどになりそうだった。

つづく。

【しらいしのぼる】noboru@geocities.co.jp
言語藝人。昭和44年5月1日長崎県西彼杵郡多良見町生まれ。『抜塞』で第12回
日大文芸賞を受賞。

公式サイト↓
http://www.geocities.co.jp/Hollywood/2444/

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■青瓶 2436
ブランド戦略、読売新聞 5.
余所者の視点。

北澤浩一
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ブランド戦略、読売新聞 5.
余所者の視点。


■関西(コンテンツ)の相対化

 この「関西発」は関西、大阪を中心として作成されているのですが、読者、
閲覧する方は関西圏だけではありません。広く日本中に広がっています。
 これがIT、インターネットの面白いところでして、ある種バリアフリーとい
いますか、時間と距離の概念がなくなっています。
 となると、地域に密着した情報もさることながら、全国的にこのコンテンツ
はどう眺められているだろうか、という、やや距離を置いた視点が必要になっ
てきます。
 これはコンテンツの相対化、つまり関西の相対化でもあります。
 まして、月に数100万単位のアクセスを数える勢いともなりますと、ある種
のグローバル化は避けられないことかも知れません。

 グラフィックデザインの領域で言いますと、戦後30年ほどの間は、伝統的な
日本調のイメージを「ジャポニカ調」と呼び、結果的にはやや遠ざけてきたと
いう歴史的過程があります。
 厳密にはそんなこともないのですが、近代的でモダンなデザインが尊ばれて
きました。いわゆるグローバル・スタンダードなものがよしとされてきます。
 しかし、高度成長を過ぎた辺りから、「JAPN」をテーマ・モチーフにした作
品が次第に増えてきました。化粧品の広告をみるまでもなく、登場するモデル
さんが70年代中ごろを境に、ハーフの方ではなくなります。

 半年ほど前でしょうか、私は、80年代に一世を風靡したモデル、山口小夜子
さんにお眼にかかる機会がありました。
 不肖北澤、手塚山学院大学の教授でもある松岡正剛さんが主催する、「編集
学校」というところで、編集の先生をやらせていただいていたものですから。
 そのつながりというか、お付き合いさせていただいたという次第。

 山口さん、あの髪型は以前と変わらず、上等な和風狐の如くにお綺麗であり
ました。
 山口さんは、「世の中から闇の部分がみえにくくなっている」と言います。
 闇は、実際の社会には確かに存在するのですが、表面上ないことになってい
る。なかったことにされている。皆さん健全で画一的。サワヤカ君。
 それでは面白くないじゃないか、というのが山口さんのおっしゃりたかった
ことであると私は記憶しています。

 つまり、東京なら東京を中心とした建前と権威の文化。
 ある意味で底の浅いものですけれども、これが全て今の日本だと言われても
困る。
 日本は広いんだよ、と。
 別の文化のかたちも確かにあって、それは足を地に付けてしたたかに息づい
ているんだよ、ということであります。
 それをどうにかして示したい。
 少なくとも日本はいくつもの顔をもっている。
 差異というよりも、違うことを前提とした相似である。
 そんな風にも思うんですね。



■物語の効用

 JR東日本の広告コピーに、「その先の日本へ。」というものがあります。
 東北へ伸びる新幹線。その切符を売らなければならない。
 コピーは秋山晶(あきら)さん。

「男は黙ってサッポロビール」、キューピーマヨネーズの一連の野菜シリーズ
など、数々の名作を手がけたコピーライティングの大家です。
 この方のアイディアスケッチにはこのようにあります。
 秋山先生、失礼を承知で引用させていただきます。
_____

東京:
変化・不安・興奮・緊張・過密・アスファルト・ビル・ネオン・ノイズ・サイ
レン・情報量大
東北:
不変・安定・沈静・弛緩・過疎・田んぼ・森・星・静寂・風の音・情報量小

「それは東京の人が想像する東北で、現実は違うだろう。しかし、そのイメー
ジ通りの表現をすれば『こことはちがう場所』になるはずだった」
 と、秋山さんは書いています。

 例えばその本文、ボディ・コピーは以下のとおり。

 雪が下から上へ降っているように見えた。
 岩礁に散る波が気泡になり、断崖に吹きつける風に舞っている。
 北緯40度。男鹿半島。
 海に向かう広大な斜面は野生の芝に覆われ、午後2時の影はすでに長い(略)。
 断崖は映画「ライアンの娘」を思い出させた。
 アイルランドもこの半島も、北の風景は、よく似ている。
 秋田駅長、遠藤鉄宏。
「私は男鹿市の北浦に生まれました。いま、私が立っているところは、子ども
の頃によく来た場所です。海も灯台も、あの頃のままです。
秋田-男鹿は列車で約1時間。訪れた方は、想像した以上の風景だ、と言われま
す」
(秋山晶の仕事と周辺:六耀社刊:2000年4月25日発行:94-95頁より引用)。
____

 JR東海ではなく、東北を走るJR東日本。
 京都や奈良のようなメガ・スポットはひとつもない場所です。
 そこをこのように表現する。
 結局は外部、余所者の視点。
 やや距離をおいた、醒めた眼によって対象を相対化している。

 それによって、その対象(この場合には土地、あるいはそこに棲むひとの暮
らしですが)そのものを浮かび上がらせている。
 それが、今ここではない場所への憧れとなって、読む者を魅了する。
 つまり、そこにはある種の物語性があるからです。
 自分でもいってみようかと思う。
 結果として、広告としての着地点が確かに確保されています。
 また、やや仔細な分析ですが、この場合、メインとなるキャッチコピー
「その先の日本へ。」に、読点、丸がついていることに注目してください。
 日本語の記述そのものにも、物語性が含まれているのです。


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2001年10月3日:読売新聞大阪本社での講演会より。
註:コンテンツ名などは当時のものです。引用箇所の著作権は、秋山晶氏なら
びに当該広告主に帰属しています。
Copyright 2002.kitazawa-office. All Rights Reserved.

北澤 浩一:kitazawa@kitazawa-office.com
○「Give A Whistle」http://www.kitazawa-office.com/
○メールマガジン「青い瓶の話」
http://kitazawa-office.com/aobin/ao_top.html

●読売新聞大阪本社|yomiuri on-line 関西
http://osaka.yomiuri.co.jp/home.htm

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■編集後記(7/15)
・困った週末だった。仕上げなくてはいけないプロジェクトが、なにひとつ手
つかずだった。町内のお祭りがあったからだ。わたしは最年少(笑)役員だか
ら、テントはったりなどの力仕事がある。それはいい。そのあとが問題で、設
営しただけで「反省会」があり、昼間からしこたまビール飲まされた。本番の
日も、昼からビールをふるまわれ、あとかたずけのあとはまたもや「反省会」
である。イベントのたびに役員たちの「反省会」があるわけで、その日はもう
仕事にならない。昼間のビールは疲れて、犬の散歩もいやになる。(柴田)

・「20世紀少年」最新刊を読んだ。あるページでぞくっとした。ほんま凄いわ。
/暑さとともに気持ちがだらけている。後記を書くネタもない。今日は新聞が
ないし、Yahoo!などのニュースを見ても、心に残らない。台風が来ているし、
昨日はK-1があった。でも書けない。これはやばい。うーん。(hammer.mule)

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デスク     濱村和恵 
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