[1128] INTERACTIVITY

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【日刊デジタルクリエイターズ】 No.1128    2002/07/18.Thu発行
http://www.dgcr.com/    1998/04/13創刊   前号の発行部数 21278部
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     【デジクリは「メディア規制三法案」に反対します】

■デジクリトーク
 INTERACTIVITY
 永吉克之

■クリエーター交友録
 Rey.Hori編 【終わり無き学習】
 海津宜則



■デジクリトーク
INTERACTIVITY

永吉克之
───────────────────────────────────
インタラクティヴという言葉があるのだから、名詞でインタラクティヴィティ
(interactivity )という言葉も当然あるものだと確信していたが、手持ちの
英和辞書にはもちろん、goo の英和辞書にも出ていなかった。ところが YAHOO
で検索すると、777件も出てきた。そこでgoo の「新語」で調べたら、あった。

・interactivity = 情報通信等で対話型のコミュニケーションが可能な機能。
          双方向機能。

そんな経緯はどうでもいいのだが、要するにインタラクティヴィティを用いた
表現は、SHOCKWAVE のおかげで、プログラミングに弱いユーザーでも、センス
があれば、面白い作品が作れるようになった。

しかし私がこれまでに見たインタラクティブな作品のほとんどが、私流のいい
方をさせてもらえば「インタラクティヴ遊び」で終わっている。「インタラク
ティヴ・アート」と呼ばせて下さい! と足元にひれ伏して賞賛したくなる作
品にお目にかかった記憶がないのだ。

テクノロジーという点で優れていても、アーティストリー(artistry 芸術的
出来映え)において充分鑑賞に耐えうる作品に出会ったことがほとんどない。
これは、パソコンに限らず、インスタレーションという形態において表現され
たインタラクティブ作品においても同じである。

                ●

「じゃ、一体その芸術ってなんなのさ!」

ああ、また根源的な命題に戻ってしまう。また出口のない迷路に踏み込んでし
まった。いまだに「芸術」の定義はできない。ただ「ヨイ作品」の定義なら、
多少できる程度には、おりこうさんになったような気はする。

それは、一度や二度、観たり聞いたり読んだり体験したりしただけでは満足で
きず、三度四度と繰り返して味わいたくなる作品。あるいは、所有したくなる
作品である。

映画に関しては私は長いこと劇場鑑賞主義で、崇拝する故タルコフスキー監督
の作品は、絶対にビデオでは観るまい、もし観たら罰として、毎日飲んでいた
酒を週六日に減らして、肝臓を休ませて健康になろうと固く決心していたので
あったが、あるときテレビの深夜映画で『ストーカー』を放映すると知って、
それを自分の所有物にすることの誘惑に負けて録画してしまった。

かくして私は『ストーカー』を所有したのであるが、健康にはならなかった。

人は、何かに感動すると、写真に撮ったり書きとめたりして記録しておこうと
する。それは、その感動を与えてくれたものを所有したいという衝動にもとづ
いた行動である。WEB サイトで気に入った画像が見つかると、ダウンロードし
てしまうのも然り。好きな女性と結婚して、そばに置いておきたくなるのも、
また然り。

また、美しい夕焼けを見ると、目に(心に)焼きつけておこうと、いつまでも
眺めていることがあるが、それも、所有欲の表れであろう。

                 ●

話をインタラクティブ作品に戻すが、今述べたように、10回も20回も見たくな
ったり、ダウンロードして、自分のコレクションにしたくなるようなインタラ
クティブ作品が、果たしてどれだけあるだろうか?「ああ、楽しいね」「ほお、
ずいぶん凝ってるなー」「ユニークだねえ」とかなんとかいいながら、1~2回
やってオシマイ、というのが私が見た範囲では、ほとんどのような気がする。
仕組みのスゴさに感心して何回もやってみることはあるが、それは芸術的出来
映えに対する感動とは異質のものである。

ネット上でのインタラクティブ作品は今のところ、カラクリの面白さを楽しん
でいる段階のように思える。自己表現を模索するまでには至っていないようだ。

画面上でマウスを動かすと、それにあわせて画像が変化する。その変化の様子
しだいでは面白いと感じる。しかし、その後に必ず続くのは「だから、どうな
の?」という独り言である。この独り言への答を秘めた作品が現れた時、単な
る「遊び」ではなくなる。

まあ、出てきたばかりで「インタラクティヴ・アート」という用語が、やっと
一般に認知されてきたような表現形態と、他の、歴史の長い表現形態を比較す
るのは少し可哀想である。いずれ「インタラクティヴ遊び」からドストエフス
キーのような奥の深い「芸術」が生まれてくるかもしれない。

芸術は人の心を惹きつけるが、神秘的で、言葉で説明されることを拒否する。
おいでおいでと誘いながら正体を見せない。正体が垣間見えたと思ったら、次
の瞬間にはもう進化している。それは確かに存在するのに、誰も説明できない。
不思議だ。なぜこんな正体不明のものに、多大な時間や費用を注ぎ込んだりす
るのだろう。芸術家は選民か病気かのどちらかだ。

                 ●

とりあえずは誰か、常軌を逸したとんでもない作品を作って、「対話型双方向
芸術」への先鞭をつけてもらいたい。例えば、モニタを殴ると、画面のなかの
キャラクタが「ひどいじゃないか」といいながら死んでゆく、なーんて作品は
どうだろう。

■インタラクティヴィティを表現手段にしているサイトをいくつか紹介する。
「遊び」か「アート」かは、自らご判断いただきたい。

 http://www.hoogerbrugge.com/ml.html
 http://www.lecielestbleu.com/
 http://surface.yugop.com/
 http://www.mtv2.co.uk/

<本日の芸術>
http://www2u.biglobe.ne.jp/~work/kunst/004.html

【永吉克之/アーティスト】katz@mvc.biglobe.ne.jp
前回の「なぜ両面をリャンメンというのか」という謎に対して、おふた方から
解答をいただいた。麻雀用語の「両面(リャンメン)待ち」に由来するとのこ
とである。麻雀について少しでも知っている人は「どこが謎やねん」と思われ
たことだろう。でもこれで、ひとつ賢くなっちゃったっと。
EPIGONE / http://www2u.biglobe.ne.jp/~work/

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■クリエーター交友録
Rey.Hori編 【終わり無き学習】

海津宜則
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●海津:
そう言えば、メイン画像としては最近3D画像を作っていない(半年ほど前に
Mac Fanの特集用のキャッチ画像で10点ほど作成していた事を後で思い出す)
気がする。隠れキャラのような使い方は頻繁にあるのだが、やっぱりメイン画
像となると時間もかかるし、気合いの入れ方も違う。そして3Dに填ると誰しも
キャラクターを動かして自分の世界を作ってみたくなっちゃうので始末が悪い。

私も実はFinal Cut ProにバンドルされていたCinema 4D GOをCinema 4D(3Dソ
フトは一度でも深みに填って使いだすと、やたらと浮気っぽくなるのは皆同じ
はず?)にアップして暫く悪戦苦闘していたが、元々3D作家としての活動はメ
インではないので、日々の仕事に追われて取りあえず中断したままとなってし
まった。

今はもっぱら隠れキャラではないが、通常のイラストの目立たないパーツを
Shadeで作成するぐらいである。ところで、Shadeと言えばRey.Horiさんである。
古くからの友人だけど、確か私が最初にRey.Horiさんの作品を知った頃は私と
一緒でStrataを使っていたような気がしますが、どうでしたっけ?

●Rey.Hori:
海津さんに“古い友人”と言われると思わずキョーツケしてしまいマス。えー
そうですね、その頃(94~95年頃)はStrata Vision3Dがメインアプリでした
が、回り道がありました。僕にとってOSを搭載した最初のコンピュータはキュ
ーハチでしたので、3DCGの事始めはHyperFrame+とC-traceでした。それからキ
ューハチ上のWindows3.0の重さにメゲてMacに乗り換えてから、当時(93年頃)
一番安かったRayDreamDesigner1.1を経由してStrataへ進み、96年頃にShadeを
触るようになって現在に至る、というわけです。

浮気は、え~と、RayDream以降はそれぞれ移行期間というか両刀使いの時期が
ありましたが、決して「とっかえひっかえ」ではなかったです。計画的に乗り
換えたわけではないので、思えば、例えばStrataがメインだった頃にShadeを
触ったのはホンの出来心だったのですが、結果的にそれがその後の作法や制作
環境に多大な影響を及ぼすことになったわけです。海津さんこそ、C4Dまでの
ヘンレキはどうなってるんですか?

●海津:
キューハチですか? 私はエフエムから入り、ニイハチとかサンハチという互
換機に手を染めました。その後、Macintoshで本格的にグラフィックに目覚め
てから使い始めた3Dソフトは、購入順では、AddDepth、Dimensions、Strata
Vision 3D(後にStrata Studio Proにアップデート)、Ray Dream、Specular
-3D(後のInfini-D)、Alias Sketch!、Shade-III(現在のShade Pro Rシリー
ズ)、Cinema-4Dだったと思います。節操ないですね。

結局一番使いにくかったShadeに落ち着いたのは妙な気分でした。慣れるのが
大変だけど、一旦慣れちゃうと快感というのがShadeのイメージですね。もっ
ともある方に『海津さんはIllustrator使いなんだからShadeは簡単でしょ』と
言われ、R3ぐらいの時にたまたま仕事が暇だったんで、半分冗談だったんです
がエクスツールズさんのチュートリアルCDを、知らない町の店頭でこっそり買
って1週間でマスターしてしまいました。

結局今は、仕事上メインで使っているのはShadeシリーズです。たまに
Dimensionsも使いますが、これはもう完全に意地の世界になりつつあります。
そんな意味(私の3D浮気性)ではRey.Horiさんは実直ですね。そう言えば、な
んでもMayaをゲットしたと言う噂を聞いていますが・・・?

●Rey.Hori:
実直かどうかはギモンですが……。AddDepthとかSpecularとか、ありましたね
ー(失礼!)。僕もAlias Sketch!は、自分の仕事では使いませんでしたが、
講師をしている学校で触りました。Shadeを一週間でマスターされるというの
はさすがです。

僕は最初に触った時は相当違和感ありましたから。確かに慣れてしまうと気持
ちイイですし、いまだに発見のあるアプリです。ただ、そうなると今度は
Shade的視点に囚われて、例えばポリゴンなんかはこっちの頭の切り替えが付
いて行かない感じですけどね。

でもって、Mayaですが……ど、どこでお聞きになりました?……いやもー、買
いましたですよ。そろそろ「Shadeの次」を見つけておきたいなというのと、
実力的にもお値段的にもMacOS Xのキラーアプリだというのとで、セミナーな
んかにも通って珍しく初物に飛びついたんですが、3ケ月後には6割掛け、5ケ
月後には3分の1以下に値下げがありまして。担当営業さんは応答ナシ(!)だ
し。もう恥ですね、恥。二度と初物には飛びつきません。起動する気にもなら
ん、というヤツです。アプリが安くなるのはもちろん大歓迎なのですけど、今
度のはあまりと言えばあまりですヨ……。

そんな状態なので、まだ中身については語れる状態ではないです。まあ、買っ
た直後から図ったように仕事が立て込んでいるので、勉強する暇もないという
のが正直なところなのですが、こうなると金銭的に大損した分、使いまくらな
いといつまで経ってもモトが取れないんですけどね~。……でも今のあの値段
だと「買い」ですよ。プロにとっては十分アキラメの付く値段になったわけで
すから。

●海津:
私は公式に作品らしきものを発表したのが、例のDimensionsの目玉オモチャな
ので、あの強引なモデリング(Dimensionsって押し出しと回転しかないから)
に慣れちゃってから、他の3Dソフトにチャレンジするとメチャクチャ簡単に見
えてしまいます。何をどう作りたいかが私の場合ははっきりしているので、あ
る意味ではどのソフトでも良かったのかもしれません。

実際、3Dをメインにした仕事の初期の作品は全てStrataで上げています。なに
より私の仕事は今のところ動かす必要がないので、凄く楽と言えば楽です。細
かいミスはPhotoshopでヴィヴィディバヴィディブ~ですから。時間のない時
はデフォルトテクスチャーでレンダリングして、Photoshop上でマッピングし
ちゃうこともあります。

少々過激な事を言うと、手で絵を描くという行為から逸脱しすぎちゃっている
のが3Dソフトですよね。もっと手書きに近い感じで作り込めるソフトが出現す
るといいんだけど、ZBrushとか、ClayScape3D、マジカルスケッチとかもあり
ますが、もう一声みたいなジレンマがあります。

そうそう、Mayaの凄さは今も認めてますが、当初の興奮はなんだったの? 状
態ですね。もう私の周りでも話題にならなくなりました。私自身も興味はあっ
たんですが、価格でいきなり謝っちゃいました。でも数年前に同じスタンスで
出ていたらちょっと違うものになっていたかもしれませんね。やっぱり『どこ
そこの3Dソフトで作りました』みたいな風潮はそろそろ払拭してほしいですね。
それって作品そのものにとって、ほとんど意味のない事ですから。ところで、
Rey.Horiさんは緻密な作品が多いですが、思いっきり勘違いしたまま納品しち
ゃったとか、人に言えないような失敗ってやっぱりありますか?

●Rey.Hori:
はじめに「作りたいもの・作らなければならないもの」ありき、というのは僕
もそう心掛けていますし賛成です。StrataからShadeに乗り換えた時に気にし
たのは、それによって作風が変わってはいけないということでした。変わって
しまうようだと、そのアプリに引きずられていることになりますからね。

ただ、いずれにしても3DCGは絵を「描く」というよりも絵を「作る」感覚に近
いです。海津さんと違って、僕にはこの道具しかないので、絵を「作る」とい
う操作感にあまり違和感はないです。

3DCGをメインの道具にしてはいますが、僕はキャラクタ制作やそれを動かすと
いうことにはあまり関心が(同じく、今のところ)ありません。動画への興味
はありますが、今のところは静止画で手一杯ですし、動画を作るとしても違う
方向を考えています。なので、僕もPhotoshopでの仕上げは必須です。

3DCGアプリでレンダ一発・即納品が理想と言えば理想ですが、実際には殆どの
作品で「Photoshopレンダリング」(←(C) DAVA KANさん)が欠かせません。
シワ取り(シワ隠し?)とか、ライティング調整とか、被写界深度表現とか、
ソフトシャドウとかですね。あと、メモリ不足で分割レンダ→継ぎ合わせも頻
繁にやります。そうやって後でイジるために必要なアルファチャンネルも、表
面材質を真っ白にして黒背景の部分レンダで生成したりしますし。

でもって、失敗ですか……うーん、どんなにマシンが高速になってもレンダリ
ング時間の見積もりというのは誤差が大きくて、スケジュールの余裕が全部吹
き飛んでマシンの前で足踏み、なんてのはいまだにあります(絵風カレの頃か
ら進歩ナシ)。あとは、テストレンダリングの曲面分割精度のまま最終サイズ
でレンダリングして、Photoshopで開いてみたらあちこち多角形だったとか。

この時はやり直す時間がなくて、多角形になっちゃった部品だけを再度レンダ
リングして、あとはPhotoshopレンダですね。それと、僕の失敗とは言えませ
んが、ラフ画に了承をもらい、いよいよ最終レンダという段階で「もう少しカ
メラを引いて周囲を入れて」とか「あと10度ほど右へ回して」という指示を出
されることがあります。3DCGだからできるわけで、もちろんニコニコ引き受け
ますが、心の中では「手で描いてたらどーするつもりやねん!」なんてつぶや
いてたりします。

●海津
ラフと完成画像とのギャップっていうのは確かにありますね。私の場合は平面
イラストがメインで、今まで大きな修正要求はありませんが、自分自身の中で、
ラフスケッチの勢いが最終画像には生きていないというジレンマがいつもあり
ます。

これについては大賀さんとの対談でも触れていますが、永遠のテーマかもしれ
ません。だから最近はラフの段階で勢いを温存させるようにしています。アイ
デア生殺しモードというやつです。要するにラフの段階ではあまり描き込まな
いという意味です。欠点は本画像作成までに時間を空けてしまうと、生殺し状
態の勢いが消えちゃうことです。

そもそも、ラフから本画像作成の段階に新しいアイデアやイメージが次々と沸
いてきてしまうのを上手に取り込みたいですからね。ただ、これだけデジタル
納品が当たり前(少なくとも私は完全デジタル入稿にしてから既に8年ほど経
過しています)になっているにも関わらず、相変わらず作家泣かせの注文って
多いですね。

Rey.Horiさんとは逆に、Photoshopで作成したフォトイメージングの画角を変
更させられそうになったことがありました。もう力業で自由変形ツールを酷使
しました。まっ、ある意味で何とかなっちゃうのがいけないんでしょうけど。
やっぱり依頼があったら一点だけ納品して修正など受け付けませんくらいに頂
点を極めないとダメなのかもしれないですね。私は小心者なので直ぐに修正し
ちゃうからダメですね。

●Rey.Hori:
海津さんが小心者(?)かどうかはともかくとしまして……修正しやすいと思
われていて、手間や費用を度外視すれば実際たいてい修正できてしまうところ
が、ある意味デジタルの弱味ですよね。でもこれはもちろん本来強味でもある
わけで、特に3Dの静止画仕事ではアピールしたい部分でもあり、かといってア
テにされ過ぎても困りますし、タダ働きはもっと困るし、言い方が難しいです
ネ。

ラフ画というのが3Dではまた困りものです。僕の場合、手で描いたりフェイク
を作ったりするよりも速いので、ある程度のモデリングをして低解像度レンダ
リング画像をラフとして出すことが多いですが、モノによっては殆ど完成品に
なってしまうこともありますし。

で、そこまで完成品に近いラフまで出したのに、最終版の納品が済んでから修
正の依頼が来たりしますしね。何のためのラフなんだよ~、ってあくまでも心
の中でグチってます。何せ小心者ですから……。

ともあれ、低解像度の3Dラフを作ると、海津さんのおっしゃる「勢い」とは少
し違うかもしれませんが、例えばテクスチャなんかが最終解像度では面白くな
くなることがありますね。ラフ段階で少しザラザラしていたのが意外に効いて
いて、高い解像度で作り直すとなんだかツルンとしてしまって、きれいなんだ
けど面白くないという……。

そんな風に、僕には3DCGという道具しかありませんが、海津さんの場合はフォ
トイメージングをはじめとして、豊富な選択肢がフトコロにあるわけで、クラ
イアントからの依頼に対してどの刀を使うか迷うことはありませんか?

●海津:
私の場合、『カタログとかやってくれますか?』『イラスト描けますか?』と
か、突っ込まれ方は色々あります。もともと多羅尾伴内(終戦直後にGHQによ
りチャンバラを禁じられた昭和22年に、片岡千恵蔵が生んだ七つの顔の不死身
の名探偵『藤村大造』こと多羅尾伴内って言っても、誰も知らないですよね、
柴田さん)みたいに色々な顔で仕事しているので『何やる方ですか?』という
のもあります。名刺に肩書きを一切入れていないからいけないんですけど。

まっ、それは置いておいても、『フォトイメージングでお願いします』あるい
は『Draw系のイラストで一発』という具合に、最初に方向性が決まっているこ
とが多いので、実は逃げ道はないんです。それに雑誌などで露出しているイメ
ージとは別にテクニカルイラストなんかも描きますし、なにより小さいメーカ
ーとの仕事では、イラスト(画像合成を含む)とデザインを全て一人行なう事
が多いので凄く楽しいです。大きいメーカーだとこれは不可能ですから。

で、デザイナーしたり、イラストレーターしたりっていうのは何だかジキルと
ハイドみたいで自分でも面白いです。俳優さんがよくやる一人芝居みたいな感
じに似ているかもしれません。なにせ大昔は写真(6×7で小物の商品撮影)も
撮っていましたから。でも、そういった見方をすると3Dも色々なテクニックが
要求されますよね。ライティング一つとっても下手な人は直ぐに分かるし、テ
クスチャーのセンスも大切だし、モデリングは当然という具合に。

●Rey.Hori:
(ある時は片目の運転手、なんてボク知りません)依頼する側の立場からすれ
ば当然なのかもしれませんが、そんなに「手法限定」での依頼が多いというの
はちょっと意外です。確かに、僕のところへのイラストの依頼というのは99%
が3DCG前提ですが、海津さんみたく手持ちの「道具」が豊富にあるなら、どの
道具を使うかぐらいはこちらで選ばせろと言いたくなりませんか?

……イラストとデザインを同時に、ということでは僕の場合はウェブ方面の仕
事でその感覚を味わっています。門外漢もいいところなのですが、デザインの
仕事というのも楽しいですね。ちゃんと理論とか勉強しないとそのうちにボロ
が出るなあ、なんて思いながらやってます。

3DCGのテクニックというのは色々な面がありますね。他の道具に比べると多機
能になりがちなソフトの基本機能を最低限マスターするのは当然のこととして、
そのソフトの機能に関する言わばTips的なテクニックも必要ですし、テクスチ
ャや材質設定のための物理学的な知識、効率的な制作のためのテク(Photo
shopレンダリングもその一つ)、作っているブツそのもののリアリティに関す
るテク、それぞれ全く違う知識体系を要求されるものです。この辺については
3DCGをやっている限り、もう一生勉強だろうなと思います。

例えば、実在しない仮想の製品画像の作成は最も好きなタイプの仕事の一つで
すが、いかにもありそうに見せるためにはどのエッジを丸めてハイライトを宿
らせるべきかとか、どこで筐体が分割されていれば自然に見えるか、更には製
造方法から考えてこんな形ではいけない、または、こんな形でないといけない
とか、やり始めるとキリがないですね。そうした「押さえるべきポイント」を
的確に作り込むために(必須ではないものの)Tips的なテクが沢山あると便利
かなという感じでしょうか。最初にTips的テクありき、ではないと思ってます。

●海津:
Tipsというのは良く言われます。『何か目新しいTipsありませんか』と。ただ、
あくまでも私見ではありますが、Tipsというのは本人にとってはごく普通の事
ではないでしょうか。それが別の人にとっては目から鱗だったりするからTips
なのではと思います。実際そんな体験を沢山持っています。

大昔のように、ソフトウェア開発途中でお蔵入りした機能の隠しコマンドが発
見されて『Tips発見!』なんてことは最近はほとんどありません。だからこそ、
普通に使い込んでいれば自然にTipsは身に付いているはずなんです。ちょっと
前にIllustrator V9の機能で『どうやったらこうなるのか?』というのがあっ
て、ある会場にいたアドビの方に質問したら『海津さん、ソレV8からあります
よ』って。赤面しちゃいました。知らなくてもまったく困らない機能なんだけ
ど、あれば便利というやつで、私は使っていなかったから分からなかったんで
す。そんなことは日常茶飯事です。

だからと言うわけじゃないんですが、やはり私も3Dに限らず何の世界で働いて
いても生涯勉強だと思っています。ですから最近私は仕事に直接関係ないこと
も、図書館にいって調べものをしたりするのが楽しくてしかたありません。意
味もなく多方面に手を伸ばしています。悲しいのはそれらを記憶するスピード
が追いつかないことです。そろそろ、記憶領域の断片化を整理しなくちゃダメ
かな?

Rey.Hori【れい・ほり】イラストレーター。本名、堀内営 (ほりうちまもる)。
'63年 大阪生まれ。'97年8月より、フリーランスとして三次元CGやHTMLコーデ
ィングを中心に制作活動中。'98年4月より横浜美術短期大学非常勤講師。
<http://www.yk.rim.or.jp/~reyhori/>

海津宜則【かいづ・よしのり】グラフィックデザイナー/イラストレーター。
<http://www.kaizu.com>

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■編集後記(7/18)
・バーチャルビューティサイトで、日記「読書犬ハニー号」を毎日書いている。
とうとう日曜日1回休んだ。毎日1冊書くのは容易ではなく、しかたなく以前に
この編集後記で書いたものをリメークして使用することもある。  (柴田)
http://allabout.co.jp/diary/virtualbeauty/

・新聞のITに関するインタビュー記事を読んで、「そうそう、そうなのよ!」
と思った。ふと見ると知り合いだった。そっちも大変なのね。(hammer.mule)

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編集長     柴田忠男 
デスク     濱村和恵 
アソシエーツ  神田敏晶 

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 担当:濱村和恵
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