[1519] 祝! FileMaker Pro 7/Developer 7発売

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【日刊デジタルクリエイターズ】 No.1519    2004/05/13.Thu.14:00発行
http://www.dgcr.com/    1998/04/13創刊   前号の発行部数 19012部
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          <あ、立ち読みはダメよ。>

■子育てSOHOオヤジ量産プロジェクト 21
 祝! FileMaker Pro 7/Developer 7発売
 茂田カツノリ
 
■笑わない魚 111
 続・「誤解も六階もあるか!」という言い回しは陳腐か
 永吉克之
 
■Powerbook Publishing Project 83
 電子出版社は可能か?(6)
 8月サンタ





■子育てSOHOオヤジ量産プロジェクト 21
祝! FileMaker Pro 7/Developer 7発売

茂田カツノリ
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このGWは、子供たちをカミさんの実家に預かってもらい集中リフォームを決行
した。ようやくトイレとか玄関とかができ、寝室で寝られるようになったのだ
が、まだまだ完成は遠い……。しかも腰が痛い……。

リフォーム中は台所が使えず不自由したが、そんなときに素晴らしく役立った
のが以下のサイト。

・出前館
http://www.demae-can.com/
お弁当やピザなど様々なデリバリ店を集めたサイトで、ネットで直接注文でき
るし、オマケやポイントも付く。メール生活になってから、電話というものが
実に億劫になった僕のような人間にぴったりだ。

●FileMaker Pro 7/Developer 7発売開始!

で、今回のお題も(かなりしつこいけれど)またもFileMaker 7だ。僕個人と
しては、この数年でもっともインパクトのあるソフトウェアなので、話は尽き
ないのだ。そしてGW明けの5月10日(月)、FileMaker Pro 7とFileMaker
Developer 7の日本語版が発売になった。これは実にめでたい。

実は雑誌のお仕事で、ファイルメーカー社日本法人の宮本社長、および米国開
発担当副社長のチュン副社長にインタビューを行なってきた。この模様は今月
発売の「MacPower」に掲載予定なので、皆さんぜひ購入してお読みください。

あ、立ち読みはダメよ。Macユーザなら、Mac関連雑誌を支える意味でも、ぜひ
ぜひ買ってほしいのだ(ついでに僕の本も買ってほしいのだ)。

・FileMaker 7情報
http://www.filemaker.co.jp/products/fm7_family.html

・FileMaker Pro 7 30日限定の評価版ダウンロード
http://www.filemaker.co.jp/downloads/

・MacPower/MacPeopleの定期購読申込
http://teiki.ascii-store.com/teiki/
もし会社で利益出してるなら、経費で定期購読してください! MacPeopleが
月刊化されたりで、ライターの仕事減っちゃってるんですよお。

●なくなった関数と代替案

今回は過去のどのバージョンアップよりも大きな変更がなされただけに、ユー
ザ側もいろいろと勉強せねばならない。その中でも特に、Leftbなど下記のバ
イト数関連のテキスト関数が消えてしまった点は、旧バージョンからの移行時
に困るポイントだ。

バージョン7で消えたバイト数関連のテキスト関数は、「Lengthb/Leftb/Right
b/Middleb/Positionb/Replaceb」だ。内部処理がユニコード化され、バイト数
でいえば半角も全角も2バイトになったわけで、バイト数関連の関数が本来の
意味を失なってしまったことは理解できる。また今バージョンから、英語版と
日本語版との仕様差をなくそうという動きもわかる。

しかし、他の関数での代替が難しいこれらの関数は、なんとか残してほしかっ
た。たとえばデジクリDBでは、35文字ごとに改行を入れて文を整形するのに、
これらの関数を多用している。全角文字を半角2文字ぶんとして計算してくれ
る関数は、こうした目的に於いては必須なのだ。

で、しょうがないからGW中に作りましたよ、カスタム関数で。ファイルメーカ
ー業界で有名なSIHOさんにご協力いただいて(SIHOさんthanks!)。やたらに
面倒な処理で時間もかかるのだけれど、一応動いている。もうちょっとブラッ
シュアップしたら、何らかの形で公開するつもりだ。

●飛躍的な速度向上

バージョン7は多くの新機能が目立っているが、忘れちゃいけないのが速度面
の向上だ。これについては、データベース開発のお仕事されてる小竹さんが検
証してくれたので、以下にご登場願った。

【注意!】処理速度は動作環境やデータベース構造により大幅に異なるので、
下記はあくまでも参考値としてとらえてほしい。

※※ 小竹さんの検証ここから ※※

こんにちは、小竹と申します。この場をおかりして、FileMaker Pro 7を使っ
てみた感想をお伝えさせていただきます。

私は現在、ファイルメーカーPro 6により約60万レコードの企業データベース
を運用しています。この規模でもFileMaker Proで十分対応可能なのですが、
管理者側はなかなか大変で、たとえばファイル修復をかけただけでも9時間を
要してしまいます。

そこで、この60万件のデータベースファイルをFileMaker Pro 7のデモ版によ
り処理を試したところ、下記の通り飛躍的な速度向上が得られました。

                   FM6 → FM7
a)フィールド定義の再計算............. 90分→ 2分
b)全レコードの削除...................4時間→ 15分
c)動的値一覧の表示................... 5分→ 2秒
d)非保存のフィールドの検索...........2時間→ 6分
e)「*」を使ったテキスト検索..........2時間→ 2秒
f)インポート(約60万件・FM形式).....5時間→ 20分
g)エクスポート(約60万件・FM形式)...5時間→ 25分
h)ソート(テキストフィールド)....... 30分→ 1分
i)ソート(計算フィールド)........... 45分→ 3分
j)ファイルの修復.....................9時間→1時間
k) ファイルサイズ....................440MB→680MB

・環境等
IBM ThinkPad X31(PentiumM/1.3GHz)メモリ512MB
フィールド数:80/索引設定済フィールド:50/レイアウト数:27/スクリプ
ト数:100/データ件数:約60万件

・6→7への変換
このファイルを6→7へ変換したところ、約35分かかりました。
索引設定されているフィールドが多いと変換や修復に時間がかかります。あら
かじめフィールド定義で索引設定を外しておくと処理が速くなります。
変換によりファイルサイズが大きくなりましたが、これはファイルフォーマッ
トの変更が影響しているものと思われます。バージョン7の新機能により構造
を簡略化できる余地が多いので、実際のサイズはもっと小さくできます。

・感想
従来、データが多いと速度面で使いものにならなかった“動的値一覧”や
“「*」の検索”といったテクニックがストレスなく使用できるのは、うれし
い限りです。

※※ 小竹さんの検証ここまで ※※

ほお、速くなったとは思ってましたが、ものによっては数10倍とは! これは
やっぱり、アップグレードせねばですね。

Mac版での検証は僕のほうで別途行なって、たぶん「MacPower」の6月発売号で
発表するので、皆さん買ってください(立ち読みはダメよ)。

●FM7

ここまで書いたら、全然関係ない話をしたくなった。

メールでFileMaker 7を略して「FM7」と書いたら、アスキーの新婚さんK氏い
わく「いや~タモリのパソコンみたいで、なつかしいですねぇ~」だって。そ
んなこと言うから、僕もついつい、いろんなことを思い出してしまったのだ。

僕はFM-7よりちょっと前の、シャープMZ-80K2Eという機種を親に買ってもらっ
たので、それより優れた機能を持ち、しかも安価な機種が続々と登場するのを、
指をくわえて見ていたという思い出が強い。でもMZのほうは、ハードウェア構
成がシンプルでマシン語による制御を覚えやすく、VRAMがないなどの制約も、
むしろ工夫をするきっかけになったから、勉強にはなった。

うちは風呂もないくらいで結構貧しかったが、そんな中で148,000円もの金を
捻出してくれた親には、いまさらながら強く感謝するのであった。その後約25
年間、ずっとパソコンやワープロを使い続けたおかげで、いまもなんとか生活
できているのだから。

【しげた・かつのり】shigeta@amonita.com
Webプロデューサー/テクニカルライター、あるいはファイルメーカーPro 7が
思いの外早く発売されて焦っているただの凡人。子育てSOHO生活を、心の底か
ら思いっきり楽しんでる。
先日、夕方に突然思い立って、ディズニーランドに行ってきた。子供たちを迎
えに行ったその足での、抜き打ちミッキーである。まだ2歳と3歳だから、乗り
物というよりパレードが見られれば十分なのだ。
ホントは僕だけトイレ行くフリして新アトラクション「バズ・ライトイヤーの
アストロブラスター」に向かったのだが、当然のごとく大混雑で近寄ることも
できなかった……。

[有限会社アモニータ]
http://www.amonita.com/

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■笑わない魚 111
続・「誤解も六階もあるか!」という言い回しは陳腐か

永吉克之
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私は血液型による性格判断には懐疑的だ。私はA型だが「あなたA型でしょ」と
一発で当てていただく率がとても低いからだ。それに芸術家を自認する私とし
ては、「A型は常識的だが、B型は発想が柔軟で芸術家向き」という血液型判断
でよく聞かれる妄言を認めるわけにはいかないのである。

かつて勤めていた設計事務所の社長が血液型性格判断の信奉者で、社員10人中
A型が3人しかいなかったのは、社長がA型嫌いだからといわれていた。たしか
に、彼が私に接するときは明らかに態度が変わるのである。しかし、こんな男
が社長をやっている会社じゃ長くないなと思っていたら、案の定、私が辞めて
から1年余りで倒産した。社員はかわいそうだが、社長はいい気味である。

数人で世間話していると、血液型が話題になることがよくある。また他愛もな
いことをと思いながらも、「あたし何型やと思う?」と聞かれると「そら北山
さんはAB型に決まってるやん」なんて周囲に迎合するようなことをいってから、
なんとまあ日和見な人間であることよ、と自らの主体性のなさを嘆くのだ。

しかし「血液型で人の性格が判ってたまるか、くだらん」などと不粋なことを
いって、その場の和やかな雰囲気を粉砕するよりはましだと思っている。

そんなわけで、和やかな雰囲気を維持できた代償に、私は血液型でヒトを判断
する形式主義者だと思われてしまったわけだが、その程度の誤解なら、いわば
人間の相互理解の過程で生じる、ちょっとした「誤差」である。

                 ■

人は自分自身のことすらロクに解っていない。同じ職場の原田さんは誠実な人
なのに、なぜか好きになれない、朝の通勤電車の中で、向い合せに立っていた
丹波哲郎似の女性の鼻の穴から、抜けた鼻毛が落ちようとしている光景が、ど
ういうわけか一日中頭から離れない、ところてんを見るとなぜか泣きたくなる、
などなど我ことながら理解できない経験は誰にでもあるはずだ。実は私自身も、
懐中電灯を見ると、なぜかマッタリした気分になる。

このように自分自身が神秘なのだから、他人はもっと神秘なのだ。誤解があっ
て当たり前である。しかも誤解はいともに簡単に生産される。

たとえば、前回の私のコラム『当たり障りのある話題』の中で、人を論難する
のは嫌いだと書いたら、読者でもある友人から「笠居トシヒロ氏執筆の『親の
責任』(デジクリNo.1508)を批判する意味で、あの記事を書いたな、アンタ」
といわれた。ということは、他の読者の方々も同様の感を抱かれたかもしれな
いが、全くの誤解だ。たまたま、氏の記事に反応するかのような内容になった
までのことである。

あまりに出来すぎていてウソのような話だが、今でも思い出す度に死にたくな
る経験がある。高校生のとき、通学に利用していた駅の向いに「キタネ」とい
う名前のパチンコ屋があった。漢字では「北根」とか「喜多根」とか書くのだ
ろうが、その前を通る度に店を指差して「汚ねえー」という、いかに高校生の
浅知恵とはいえ、無芸きわまるダジャレを叫ぶのが、友人たちと下校するとき
の楽しみのひとつになっていた。

あるとき、いつものようにパチンコ屋を指差して「汚ねえー」と叫ぶのと同時
に、建物の陰からひょっこり若い女性があらわれた。見たところ身体障害者で、
脚がかなり悪く、体全体を使ってやっと歩いているといった様子だったのだが、
タイミングの悪いことに、ちょうど彼女を差して「汚ねえー」と叫ぶ形になっ
てしまったのだ。

彼女は、こちらをチラッと見ただけで、あとは無視するようにして行ってしま
ったが、深く傷ついたことだろう。そして間違いなく私は「心ない差別者」に
されてしまったのである。あのときなぜ「いやいや誤解です。このパチンコ屋
のことをいったんです」といえなかったのだろう。

しかし最も悪いのは「キタネ」なんてふざけた名前のパチンコ屋である。あの
店があんなところになかったら、女性も傷つかず、私も苦しまずにすんだのだ。

                 ■

間違ったことはやっていないという確信があれば、誤解でもオホーツク海でも
勝手にさせておけばいいのだ…とはいっても誤解されないにこしたことはない。
そのためには普段から意志の疎通を欠かさないことである。概して無口で非行
動的な人は誤解されやすい。

一般的にわれわれはテレパシーができないので、言葉と動作でコミュニケーシ
ョンをするしかないわけだが、相手の意向が知りたいときに、言葉も動作も与
えられないと、想像力という力技で補おうとする。たとえば、人物像がよく判
っていない人にメールを送った場合、返事が待てど暮せど来なかったりすると、
アレコレ勝手な推測が発動される。

「きっと何か怒らせるようなこと書いちゃったんだろうな。貴サイトを‘拝見
しました’じゃなくて‘見ました’と、敬語を使わなかったのが癇にさわった
のか、それとも奥さんお元気ですか、なんて余計なこと書いたもんだから、俺
の女房に横恋慕しやがってと警戒しているのか、ま、いずれにしてもケツの穴
の小せえ野郎だ、江戸っ子の風上にもおけねえ」

かくして相手は狭量な江戸っ子にされてしまうのである。あまり気心の知れて
いない人からメールをもらったら、返事は遅れても、きちんと書いた方がいい。
どんな人物像をでっち上げられるか判ったものではない。私の知り合いのデザ
イナーは、忙しさのあまり同じ人からのメール二通の返事を書かなかったため、
北朝鮮のスパイにされてしまった。

しかし気心が知れていても、長い間会っていない人からのメールはないがしろ
にすべきではない。私は5月7日から二泊三日で東京に滞在する予定で、東京在
住の知人に「7日金曜の晩、久しぶりに一杯どうだい」というメールを4月30日
に彼の携帯電話に送ったのだが、5月6日現在にいたるも返事がなく、ハラワタ
が煮えくり返っているところである。もちろん、私は気が小さいので、返事を
催促するなんてド厚かましいことをする気は断じてない。

しかし、携帯を紛失したとか、大型連休で海外旅行中だとかいったような都合
のいい解釈をしてやるほど、私は脳天気なお人好しではない。

彼は新婚さんなので、ふたりっきりのウィークエンドを私にぶち壊されたくな
いのだが、私は彼にとっては大先輩になるので、あからさまに断ることもでき
ず、こちらが返事を催促してこなければ、このままウヤムヤにするつもりに違
いない。気配りの細やかな男だったのに、長いこと会わない間にずいぶん変わ
ってしまった。東京という砂漠が彼をこんなヤクザな人間にしてしまったのか。

「世の中変わっているんだよ 人の心も変わるのさ」(日吉ミミ)

【ながよしかつゆき/アーティスト】katz@mvc.biglobe.ne.jp
そういえば、2000年の日本デジタルアート・コンテストに出展して以来、コン
テストにはご無沙汰している。授賞通知を見たときの快感は何度味わってもい
いものだが、結局、快感と賞金賞品くらいしかもたらしてくれなかった。仕事
の依頼が来たことなど、ただの一度もない。コンテストは力試しくらいに考え
ておく方がいい。ビッグになるための登竜門などという幻想は持たぬがよい。

EPIGONE / http://www2u.biglobe.ne.jp/%7Ework

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■Powerbook Publishing Project 83
電子出版社は可能か?(6)

8月サンタ
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●事業として成立させるための二つの課題

前回から時間も空いてしまったことなので、一度整理してお伝えしたい。あま
りだらだらと長くも出来ない。今回は、先に本稿の結論からお話ししてしまい
たい。

電子出版社を、事業として成立させるためには、次の二つを成し遂げなくては
ならない。すなわち、

1)デジタルデータと折り合いをつける
2)「セールス権」を握る

1)は、デジタルデータを私有可能な「商品の形」にするということである。
なんども繰り返すが、人は共有可能なものには、感心しても楽しんでも、金は
一銭も払わない。なんらかの形で共有を制限しないと、売り物にはならない。

いろんなやり方があるが、イメージとしては複製可能なデジタルデータを「固
める」「締める」「嵌める」「縛る」という感じだろうか。CCCD、デジタル透
かし、コピーガード、10daysBook、etc… 全て、デジタルデータを固めるた
めの、技術的な試みである。

空間を縛る、時間を縛る、金額で縛る、ハードウェアで縛る、法律で縛る、共
有をさせないための、いろんなやり方があるが、消費者の反感を買わない程度
の縛りでなくては、客に私有の満足感を、抱かせることは出来ない(つまり売
れない)。

商品であるデータをガチガチに縛りすぎても客は逃げる。緩すぎればつけ込ま
れて共有される。そこに「絶対」はなく、まさに「折り合いをつける」という
表現がピタリとはまる。

ちなみに「折り合いの付け方」は、上記のような、技術に頼って消費者を一切
信用しないという、高圧的なものだけではない。要はそれは「消費者との約束」
であり、うまく回っていければそれでいい。

最近では一年を経過して、7,000万曲のデジタル音楽データをダウンロード販
売することに成功した「iTunes Music Store」が記憶に新しい。メディアはiT
MSの一人勝ちを余り認めたがらず「競争激化」とか「次々参入」と書き立てる
が、iTMSに使われている技術・しくみは特に目新しいものではなく、すべて非
常にオーソドックスな、つまり他の会社がやろうと思えば、何年か前に実現出
来ていたはずのものである。しかし実際は他の会社のシステムは「惨敗」とい
っていい状態だ。

http://www.apple.com/itunes/
http://www.itmedia.co.jp/lifestyle/articles/0405/06/news053.html

ハードウェア、ソフトウェア、販売チャンネル、版権、すべてを持っているソ
ニーはその折り合いを見定めて動くことが出来ず、アップルの社長のスティー
ブ・ジョブズには出来た。

ソニーが折り合わなくてはいけなかったのが、自らも含めて既得権にどっぷり
浸かった「業界」で、ジョブズは逆に既得権など持ち合わせておらず、しがらみ
もなかった。だから、消費者を思いきって信用するやり方を始めることが出来
たとは言える。

いずれにせよ、まだまだ地図は塗り替えていかれるだろうが、少なくともiTMS
はジョブズによれば、この数ヶ月「利益を出し始めている」という。本当は数
など、規模など、何曲売ったなど問題ではない。利益をきちんと出して、回っ
ていけるかどうかである。

iTMSに関する話で一番脅威となるのはそこだ。これからのデジタル楽曲販売に
関する、メディアの報道のポイントもそこである。数が売れることと黒字を出
すことは全く意味が違う。きっとメディアはそのへんをわざと混同させながら
報道することだろう。そして本稿の目的はもちろん「黒字」を出す電子出版社
を定義することである。「うまく回さなくては」ならない。

2)の「セールス権」は、既存の概念だが、きわめて重要なものだ。セールス
に関与できないクリエイターは、永遠の下請けと言っていい。これについて、
1)との絡みで、次週以降詳細に解説していく。

●Googleマジックが解けるとき

2004年もまもなく半ばを迎える今、最近IT関係者には二つのタイプがいること
に気がついた。まだまだインターネットとデジタルデータには何か可能性があ
る、と目を輝かせるタイプと、もう出るべき材料が出尽くしてしまい、既存の
世界のセオリーが再び世の中を覆い尽くしてしまって、すっかりつまらなく、
しかし現実感・地に足がついた感は強くなったと考える人。

私はもちろん後者で、Google上場も含め、ネット関連のニュースを見るたび、
本当に市場を盛り上げる材料は払底しているし、これだけの技術革新がありな
がらも、結局1930年代に発明された「モノポリー」(ボードゲーム)から、た
だの一歩も抜け出ていないという感慨を抱く。

・Google上場
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040430-00000008-inet-sci

その姿がよく見えない、価値が定まらない間はロマンがある。たとえばGoogle
の上場で言えば、まだベールを脱ぐ直前だから、手数料収入が期待できるウォ
ール街、派手に持ち上げて落とすのが売りの情報屋たちは、ここぞとばかりに
話を盛り上げ、値段を吊り上げる。

でもホラー映画、エロ映画と同じで、怪物、あるいは美女の姿かたちがはっき
りと見えてしまえば、なんてことはない。つまり見せるまでのハラハラが売り
ものである。

Googleの中身を開けてみて、まずわかったことは、金の出所である。つまり、
既存の商売と同じく、客からとるか、広告主からとるか、売り上げの源泉はそ
の二種類しかなくて、Googleは広告主からの金で食っているということだった。
結局、売り上げと呼べるものはこの二カ所しか出所はないということが改めて
確認出来たわけである。つまりGoogleは「私企業」である。これでまずマジッ
クが一つ剥げる。

金の出所はもうひとつあって、それは資本投入、すなわち借金である。資本は
いろんな人間がどんなにごまかそうと、トドのつまりは借金であって、起業家
がランボルギーニを買うために投入される金ではない。つまりは、投資を上回
る売り上げを上げて利益を出して、その上で「夢はかなう」とか言えというこ
とである。Googleは調達した金を上回る稼ぎを出していけるだろうか。これか
ら、いろんなことが明らかになる。

しかし、検索エンジンはどこまでいっても検索エンジンである。高度にソフィ
スティケートされたポン引きに囲まれたネット生活が幸せなのか、そろそろは
っきりさせてもいいころだと思うのだが。

【8月サンタ】santa8@mac.com
LondonとLyallとLeCarreを愛する35歳元書店員。某超大手取次社員の経験アリ。
今週は余裕も何もなし。最低状態です。うう~。もっとしっかり書かなくては。

<応募受付中のプレゼント>
 『イラストレーションファイル・デジタル04』『イラストレーションファイ
ル2004』2冊セット「デジクリ」1517号。5月18日(火)14時締切。

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■編集後記(5/13)
・OS X 10.3の参考書を買いに行った。ほんとうは書泉ドームに行きたかった
が、おっくうだったので近所の書店でまにあわせることにした。Windows系に
比べるとまったく少ない、というよりほとんどないMac系書籍。それでも雑誌
スタイルの数冊を見つけ出した。アスペクトムックの「Mac OSXビュンビュン
テクニック」だ。全ページがゴシックの3段組、文字を流し込んだだけみたい
なイージーなデザインだが、~をしたいときはこうすると、やり方がちゃんと
書かれている(ような)のでこれを買った。1380円+税ならいいか。本当は、
エクスメディアの「超図解」シリーズが欲しかったのだが、OSX 10.3について
はまだ出ていないようだ。このシリーズはフルカラーで、レイアウトがきれい
な本なのだ。それに比べるとインプレスの「できる」シリーズはレイアウトが
じつにぞんざいだ。文字や罫線の扱いがゾッとするほど無神経で。わたしはど
んなに内容がよくっても、よくないデザインの本は買わない。   (柴田)

・ワンデーアキュビューにカラーが出たって。いまワンデーアキュビューを使
っているので、次の購入時に買ってみようかな。使い捨てコンタクトは快適。
ソフトコンタクトは使わないほうがよいと医者に言われていて、ずっとハード
だったけれど、小さな埃が入っただけでも痛い。ソフトほどではないけれどお
手入れの手間もかかる。目の病気も心配。なので使い捨てコンタクトを検討し
ていたら、酸素透過率が高く、清潔だから病気にもなりにくいというワンデー
アキュビューになった。お泊まりする時にも便利よ。   (hammer.mule)
http://acuvue.jnj.co.jp/product/1day_colours/  カラー
http://acuvue.jnj.co.jp/product/allergy/  花粉症にもいいらしい
http://www.freshlook.jp/top/  二週間なら

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発行   デジタルクリエイターズ <http://www.dgcr.com/>

編集長     柴田忠男 
デスク     濱村和恵 
アソシエーツ  神田敏晶 
リニューアル  8月サンタ
アシスト    鴨田麻衣子

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