[1752] "機能"と"効用"を使いわけよう

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【日刊デジタルクリエイターズ】 No.1752    2005/05/23.Mon.14:00発行
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<トップページの平均滞留時間はたったの8秒しかない>

■KNNエンパワーメントコラム 
 "機能"と"効用"を使いわけよう
 神田敏晶

■クリエイター手抜きプロジェクト(46)
 Automator編 本当に自動化できるんですか?-1
 古籏一浩
 
■展覧会案内
 The Second Stage at GG ♯14 野口靖展「関係性の次元」
 企画展「戦後60年 写真が伝えた戦争」

■イベント案内
 デジハリ『業界訪問バスツアー』


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■KNNエンパワーメントコラム 
"機能"と"効用"を使いわけよう

神田敏晶
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KNN神田です。

売れている製品やサービスには、「機能」が優れている場合が多い。しかし、ヒットの要因はそれだけではない。その「機能」がどのような「効果」を表すのかという「効用」が計算されていなければ、顧客へメッセージが伝わらない。

「これができます、あれもできます、何度もできます」と製品の機能を訴求されても、自分の困っているところへの解決手法がなければ何も興味を示すことができない。

「あれもできません、それもできません。しかし、これに関しては、ここまでできます」の方がわかりやすい場合が多い。

企業が製品やサービスを売る場合、つい「機能」を中心として物語を作ってしまいがちである。しかし、顧客が欲しいのは「機能」ではなく、「機能」がもたらす「効用」なのである。

カゼ薬の場合、イブプロフェンが解熱を、塩酸ブロムヘキシンがセキをとめますという「機能」よりも、医者には点数が高く、発注が小ロットですの「効用」を訴求しなければならない。そして、医者は患者に、いい薬で副作用が少なく、効き目がおだやかという「効用」を伝えなければならない。

製品力やサービス力がある会社ほど、「機能」を訴求するが、それは顧客が「機能」を「効用」に自主的に置き換えてくれているにすぎない。むしろ、「効用」を意識したマーケティングを採用することによって、顧客が置き換えることなくストレートに伝わる表現が可能となるだろう。

たとえば、ゼロックス社の複写機の場合、
【機能】複写ができること
【効用】資料をたくさん配布できること
である。資料をたくさん配布したいことに対しての機能説明は有効であろう。
秒速何枚という「機能」は、顧客の待ち時間の解消という「効用」の一部なのである。

黎明期のワードプロセッサの「機能と効用」は、
【機能】清書マシンとしての普及
    テキストプロセッシング
    デジタルデータ化
【効用】文字コンプレックスからの解放
であった。家庭用ワープロの場合、PTAの案内状や誕生会の招待状を立派に作るためにいろんな雛形が用意されていた。

カツラの機能と効用は、
【機能】人毛と見分けがつかない
【効用】ハゲを気にする気持ちからの開放

時計では、
【機能】正確な時を刻んで、100年
【効用】高価なヴィンテージ時計を持つステイタス

ノート型コンピュータでは、
【機能】薄い、軽い、長時間、
【効用】持ち歩け、会社に戻らなくても仕事が終わる

特にコンプレックスから人を開放するという「効用」マーケティングには、「機能」をいくら訴求しても何も伝わることがない。

身の回りの製品やサービスを前にして、常に「機能」と「効用」の問いかけを日々考えてみるのはどうだろうか。「効用」から「機能」を再整理することによって発見できることも多いことだろう。

髪型がかわらない、邪魔にならない → 新型ヘッドフォン
ツメが折れない、飲み残せる(キャップがしまるので) → キリン"Fire"ホワイトコーヒー

そこで、ウェブサイトを見てみよう。ほとんどのウェブサイトが「機能」の羅列である。トップページのインデックスに機能ボタンがズラリと並ぶ。8つ以上の「機能」ボタンがあるサイトはすでに失格だ。トップページの平均滞留時間はたったの8秒しかないからだ。

自社サイトを訪れる顧客および見込み客に、平等にすべての機能をみせる必要がどれだけあるのだろうか? 誰もトップページの「機能」を見たいがためにサイトに来ているのではない。店舗のメイン売り場に、「弊社の環境対策」や「株主さまへ」が堂々と並べられている。

サイトの顧客がどんな「効用」を求めているかの物語を考えることによって、サイトの「機能」は本当に機能するはずだ。

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■クリエイター手抜きプロジェクト (46)
Automator編 本当に自動化できるんですか?(1)

古籏一浩
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今回は、予定を変更してMacOS X Tigerに搭載された新機能のAutomator(オートメータ)について書いてみます。

Automatorはソフトウェアの一連の作業を、自動的に行ってくれる機能です。一連の作業をする同種の機能としては、バッチ処理が有名です。AutomatorはUNIXのパイプ機能と似ていて、前段の処理からの出力を受け取って処理を行い、結果を次の処理に渡すスタイルになっています。UNIXの場合は、シェルで
cat abc.txt | wc -l >> result.txt

のようにコマンド等を"|"で区切って列記します。これをグラフィカルなインターフェイスで記述できるのが、Automatorの操作画面というわけです。

< http://www.apple.com/jp/macosx/features/automator/
>

上部で処理された結果を受け取って処理する場合には、アクションの上部に▼のように矢印記号が表示され、受け取らずに処理を続ける場合には▼は表示されません。また、UNIXの場合は、テキストでもバイナリでも、種類を問わずデータを受け取ったり流したりすることができますが、Automatorでは処理可能なデータの種類が上下で一致しているか、あるいは特定の処理可能なデータ以外は、受け取る事ができないようになっています(一致しない場合には赤字で表示されます)。

一連の処理(アクション)をドラッグ&ドロップで並べて、細かい部分を設定しRunボタンを押せば、設定した処理が実行されます。「たいへん、素晴らしいですね」(!?)

と、ここまではWebサイトや雑誌、本などで書かれています。サンプルでも画像をセピアトーンにしたりいろいろできるぞ、みたいに書かれていて「これで楽ができる」ような気になります。が、じゃあPhotoshopで作成した画像をEPS形式で保存してInDesignに自動的に貼付けてPDFで保存したいんだけど、とデザイナー、オペレーターに言われても、現時点では無理です。

「そんな事はできません」

なぜ無理かというと、Automatorには使える処理部品(アクションと呼びます)が、まだあまり用意されていません。あるにはありますが、使えるものが、ほとんどないというのが実情です。そしてAutomatorは、このアクションが大量に供給されないと、実用にならないのです。

また、条件分岐も基本的には存在しないので、分岐処理させるのであれば個別にAppleScriptで処理を書くか、Automatorのワークフローを別個に作る必要があります。

Automatorのアクションがなければ作ればいいのでは? と思う人も中にいるでしょう。ということで、作ってみたい方のためにガイドを用意してみました。作りたい人は頑張ってやってみてください。

< http://www.openspc2.org/reibun/Automator/index.html
>

また、Photoshop CSに関してはβ版としていくつかのアクションを用意してあります。ダウンロードして試しに使ってみると良いでしょう。β版なので速度が遅く、一部の機能しか使っていないなど問題点もあります。ないよりはマシだけど使えるかどうかは別です。スクリプトもパッケージの内容を表示すれば見られるようになっています。

このAutomatorのアクション、実際に作ってみる側としてはかなり大変です。まず、以下の事についてあらかじめ学習しておく必要があります。

・MacOS X(Tiger)の仕組み(plistやローカライズ部分も)
・Xcode2(開発環境)の使い方とプロジェクトの作成、データの編集方法
・Interface BuilderによるGUI部分の作成方法とAutomatorアクションの対応
・AppleScript
・操作するアプリケーションの知識と、そのアプリケーションで使える
 AppleScript

Automatorのアクションは、以前から継承されているAppleScript部分に大幅な変更を加えることなく利用するようにしてあるため、その他の部分に、いろいろ設定情報を記述しなければいけません。このため、上記のような多岐に渡るアプリケーション、開発環境が必要になってしまうのです。

また、難点としてアプリケーションがAppleScriptに対応していないと、その機能を利用することができません。UNIXコマンドやシェルの機能を利用するにしても、一度AppleScriptを経由して利用することになります。

これに対して同じくMacOS X Tigerの新機能のひとつ、Dashboardだと開発言語がHTML+CSS+JavaScriptのため、扱える開発者が多数います。書籍も資料もライブラリなどもAppleScriptに比べれば桁違いに揃っています。

このため、DashboardのWidget(ウィジェット)は、どんどん供給されても、Automatorのアクションは、あまり供給されない可能性があります。基本的に「アプリケーションのおまけ」としてメーカー側が用意してくれるのを期待するような状態になってしまうかもしれません。(ファイルメーカー社は早速アクションを供給するとアナウンスしています)

開発は面倒です。やりたい処理がAppleSciptまたはJavaScript、VBScript単体でできてしまうならば、それで作ってしまう方が楽です。Automatorの場合には次のアクションに渡すデータ形式についても考えておかなければなりません。

またエラーが発生すると停止してしまいます。UNIXのようにエラー出力が別になっているわけでもなくエラー発生時にエラーを無視して処理を続けるような機能もありません。毎日定時に実行させておくような場合には、やはり不安が残ります。

まだ未チェックの機能があるかもしれませんし、今後、どのような展開になるのかわかりませんので、今回はこのくらいにしておきます。もう少しアクションを作成してみて、良いところ悪いところなど、機会を見て再度Automatorについて書いてみたいと思います。

【古籏一浩】openspc@po.shiojiri.ne.jp < http://www.openspc2.org/
>
β版サンプルを作ってみて、基本的な開発効率が悪いだけでなく"。"を"."にしたりするというような場合でも、AppleScriptだと正規表現が使えないので、このような方法では駄目かなあ、と思い始めてます。別の方法を模索中ですが、作る人が少ないので資料も少なめ…

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■展覧会案内
The Second Stage at GG ♯14 野口靖展「関係性の次元」
< http://www.recruit.co.jp/GG/exhibition/2005/gg_0505.html
>
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会期:5月23日(月)~6月2日(木)12:00~19:00 日祝休
会場:ガーディアン・ガーデン(東京都中央区銀座7-3-5 リクルートGINZA7ビル B1F TEL.03-5568-8818)
内容:この作家のプロジェクトはインスタレーション、映像、写真などの様々な形態をとっているが、これらに共通する考えは、人間と環境、更には人間同士の相互関係を知覚化することなのである。
・野口靖サイト
http://www.relationaldimension.com/


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■展覧会案内
企画展「戦後60年 写真が伝えた戦争」
 ~N.Y.デーリー・ニューズ写真コレクションから
< http://www.pressnet.or.jp/newspark/
>
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会期:3月25日(金)~6月26日(日)10:00~17:00 月休
会場:日本新聞博物館(横浜市中区日本大通11 横浜情報文化センター TEL.045-661-2040)
入場料:一般・大学生500円、高校生300円、小中生100円
内容:共同通信社がデーリー・ニューズ社(ニューヨーク)より入手した約29,000点にのぼる戦争報道写真のコレクションのうち、日中戦争、太平洋戦争、朝鮮戦争を伝える写真の中から厳選した約200点を展示する。
 
●記念シンポジウム 戦争写真取材の内幕を語る
日時:6月5日(日)13:30~16:00
会場:横浜情報文化センター6F「情文ホール」
聴講無料・定員200名(先着順)「写真が伝えた戦争」の入場券進呈
申し込み:往復ハガキまたはメール

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■イベント案内
デジハリ東京校『業界訪問バスツアー』 
~国内最大手のWeb制作プロダクションをバスで訪問~
< http://www.dhw.co.jp/tokyo/bus0505
>
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日時:5月26日(木)19:00~22:00
集合:デジハリ東京本校 ※18:50までにお集まりください。
訪問先:株式会社アイ・エム・ジェイ
参加無料/要予約 サイト参照
定員:限定18名(先着順)

<応募受付中のプレゼント>
「ActionScript ポケットリファレンス Flash MX 2004/MX/5対応」
「Web Designing 2005年6月号」#1750号 5月26日(水)14時締切


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■編集後記(5/23)
・また風邪を引いて寝込んでしまった。土曜日の夕食時のビールが全然うまくなく、風呂に入ったときいやな寒さに襲われた。犬の散歩から戻ったら、もうなにもする意欲もなくそのまま寝てしまった。12時間眠って、起きあがったらフラフラした。若い頃なら、高熱、鼻水ぐしゃぐしゃでも一晩寝れば回復したものだが、もういけません。日曜日はずっとベッドの中で過ごした。ちょっとめんどうなストーリーなので、半分まで読んで放り出していた福井晴敏の「Twelve Y.O.」を読み終えた。こいつは前作「川の深さは」と同じじゃないかと思わせる登場人物がいる。もちろん、彼に感情移入しつつ読んでいく。中心人物たる男の、この壮大なプロジェクトの動機が甘いなあとは思いながらも逆転、裏切り、思わぬ展開の連続が楽しめたのであった。それ以外の時間はひたすら眠っていた。今日の朝、体調は75%まで回復、土曜日の19時以降まったく触れていなかったマックに対面、いやおうなくネットの世界に。昨日は幸せな一日だった、と思う。(柴田)

・営業さんと打ち合わせ。一通り仕事の話をした後、関西話で盛り上がる。何故、飴は他のお菓子より格上なのか。関西人は飴を「アメちゃん」と言う。決して呼び捨てにはしない。おばちゃんたちのバッグの中には飴が常備されているしと。いやいや、若い女性も飴やガムを持ち歩いているってば。喉に良かったり、気分転換できたり、虫歯予防になったりするし。配れば会話のきっかけになるし、嫌な沈黙も回避できる優れたコミュニケーションツールなのである。どこの地域でも同じようなものだと思っていたら、そうではないらしい。満員の新幹線で立ってぐったりしている見知らぬ人たちに、リフレッシュのため配ったことがあったが他地域では奇異な光景だったのかもしれない。でもその後、飴で繋がった人たちとで会話した。知らない人たちと10cmの距離で長く過ごすのは辛いと思っていたが、周りもそうだったみたいだ。/その営業さんが疲れて電車に座っていたら、通路を挟んだ前の座席の幼女がにこにこしながら飴をくれたのだそうだ。営業さんは断らず、素直に「ありがとう」と言って、口に入れたら疲れが緩和されたとか。よほど食べたそうにしてたんじゃない? と周りにはからかわれるそうなのだが、この幼女も正統派関西人の道を進んでいるのだと。電車の中には飴の香りが広がっていったそうだ。(hammer.mule)

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