[1906] 荒野をくだって

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【日刊デジタルクリエイターズ】 No.1906    2006/01/31.Tue.14:00発行
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             <世紀の怪人である>            

■電網悠語:Ridual展開編[101]
 荒野をくだって
 三井英樹

■買い物の王子さま[116] 
 ゴハンの友
 石原 強

■デジタルサウンズ研究室
 ワイドショーで神田さんを見た
 モモヨ(リザード)



■電網悠語:Ridual展開編[101]
荒野をくだって

三井英樹
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いままでのコラムの中で一番反響のあったのは、2005年の初めに書いた「Web
開発の今後(No.77)」。この業界の行く末を余りに絶望視しているようで、
実はタメライながら書いた。が、何人もの方から共感したという趣旨の話を聞
き、現状認識がずれてなかった事で、逆に反応に困ったことを覚えている。
<http://www.ridual.jp/column/77.html>

●一番嬉しいニュース「新卒採用」

あれから約一年。当時は、この業界の行く末に、あまり光を感じない状態に陥
りながら書いたのだが、その歩みはどうだったのか。結論から書くと、私はか
なり希望を持って、この2006年に突入している。

景気の上昇を肌で感じているわけでも、深夜作業が減っているわけでもない。
技術が固定化されてきて、持っているノウハウだけで事足りるわけでもない。
日々新しい技術は生まれ、知るべき事柄は増加するばかりだ。あまり目の前の
「状況」は変わっていない。

でも「流れ」が変わってきた。低賃金重労働が品質や安全性に響いてくるとい
うことが、言い易くなっている。それも二つの方向で。一つはシステム(クラ
イアント)の側。もう一つは作り手の側で。

前者は、皮肉にも巨大な損失からの教訓だった。巨大システムの信じられない
問題が多々起こった。誤発注の問題などは、システム開発に関係する人ならば、
誰もが他人事とは思わなかっただろう。日本中の、いや世界中の、システム関
係者が、いつ自分に降りかかる問題かと、悪寒を感じたはずだ。

そして、ようやくシステム投資の意味合いも、再考の場に乗せられつつある。
「ブラウザ」という文化の生んだ、「安ければ(無料に近いほど)何でも良い」
という、ある意味無節操な感覚が吟味されるようになって来た。

回り続ける歯車には、それなりの油をさし続けなければ駄目なんだ。そんな当
たり前の結論がまじめに話せるような雰囲気が生まれている。僅かな節約が、
莫大な損害につながることの体験と、陳腐なモノをお客様にお見せしていいの
かという自問が、その背景にある。

そして後者では、作り手側が継続的ビジネス展開の話を真剣に考え始めたとい
う点。私が知り得た中で一番嬉しいニュースは、「新卒採用」である。この業
界にはまだまだ新卒は少ない。卒業したてでこの業界に入っている者は多々い
るが、それは学生時代から半分それを生業にしていた人たちであり、いわゆる
「新卒」とは趣が異なると思っている。事実上の即戦力だ。

「新卒採用」とは、大学生に求人をかけ、ある程度の教育期間を考えながら、
即戦力ではなくジンワリと自社のコア人材を育てていく戦術である。同時に、
その人たちの人生に対する責任を少し負うことも意味する。真っ当な経営者な
ら、新卒を採って直ぐには解雇も会社を潰すこともできないと覚悟を決めてい
るだろう。浪花節流にいえば、「親御さんに合わせる顔」も気にするはずだ。

幾つかの企業が、しかし大きなところが、新卒採用を始めているのを知った。
中途採用は、少々のことなら自力で流れ暮らして行けるが、新卒はそうではな
い。多少甘いかとも思うが、私はそうして育てられたので、そうして育てるべ
きだと信じている。新卒採用をしていると語る会社の経営層は、どこかはにか
みながらも鼻が高そうでもある。そんな仕草にも乗り越えた壁の高さが見て取
れる。

少し状況が変化しつつある今、まだ全然楽にはなっていないが、苦しい時代の
意味を考えている。B2Cであろうが、B2Bであろうが、「コミュニケーション」
が生み出す価値は、企業にとって必要不可欠なものだろう。ならば、さっさと
もう少し楽なステージに上がっても良いのにと思うが、そうならない。

●荒野での40年

聖書の中で一番有名な話と思うが、紅海が二つに裂かれ、モーセ率いるイスラ
エル人がその間を進み、エジプト軍から逃げおおせるという話がある。実は、
この話には、全然ハッピーエンドに思えない続きがある(出エジプト記)。

はしょって書くと、信仰と神の業とによって救われたイスラエルの民は、すぐ
さま別の神を拝むようになる。「十戒」という神からの戒めを与えられるも、
モーセ自身がそれを叩き割ってしまうほどの怒りを買う。そして、約束の地に
向かっての長い旅が始まる。40年。気の遠くなるような時間をかけて、民は
様々なサインを見せられながら荒野(あらの)を進んでいく。

その荒野での40年の意味は何か。不信仰な者達がいなくなるまでの時間と解釈
されることがある。相応しくないものが消え、約束の地に入るに相応しい人選
がされた、というのである。

●「本物」が生き残りをかけて動き出した

Web屋の重労働低賃金の時代を、この荒野での40年と捉えるのは、余りにこじ
つけだが、似ている点もなくはない。今、Webデザインという業種に群がって
いた、金の匂いだけを好む人たちは明らかに減少している。作る対象に愛情を
持たぬ者たちが退場している。ある程度の環境整備費がかかるこの業界で、人
の技能管理もしながらモチベーションを高めなければならないこのビジネスに、
あまり旨みはない。

Webが好きでしょうがない、いいものを作り続けたい、という原点がしっかり
していないと、どうしても経営が揺れていく。叩かれれば、ページ単価500円
などという専門性の解釈のしようのない価格帯にさえなりかねない状況である。
確たるビジョンや戦略がない限り、ビジネスとして成立しようがない。

かくして、「本物」が生き残りをかけて動き出している。大手が軒並み雇用拡
大を謳いだした。雑誌に載せられた大きな求人広告に、人材を求める意思と緊
急性が垣間見える。

バネが大きく飛び出す前に、圧され軋む音が聞こえるような状態。この時期を
どう過ごしたかが試される時代に突入しようとしている。2006年。決して楽は
できそうにないけれど、本当に求められているモノを作らせてもらえる状況と
体制が、整える努力をしてきたところには整いつつある。

本当に喜ばれるWeb、本当に使われるWeb、本当に努力しがいのあるWeb、本当
に自分達の「資財」や「志財」が問われる場。そこを目指して、少し薄明かり
の射して来た中、この荒野を抜けて行きたい。

【みつい・ひでき】 mit_dgcr@yahoo.co.jp / ridual@nri.co.jp
お久しぶりです。今回はまず25回ということで再開です。また生意気なことを
書き綴ります。Webへの熱は全然冷めてません。よろしくお願いします。
・Ridual(XMLベースのWebサイト構築ツール)公式サイト
<http://www.ridual.jp/>
[ご連絡]RidualはJava5でも、1.4.2_10でも動きません。Javaのせいっす。
・超個人的育児サイト(書籍は絶版中)
<http://homepage3.nifty.com/mitmix/MilkAge/>
・PAGE2006/UIの復権:よろしければお越し下さい。
<http://www.jagat.or.jp/PAGE/2006/conf/c.htm#c5>

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■買い物の王子さま[116] 
ゴハンの友?

石原 強
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我が息子も一歳をすぎました。そろそろミルクを卒業して欲しいものですが、
しっかりゴハンを食べてくれません。おまけにベビーチェアが嫌いで、食事中
おとなしく座っていられません。仕方なく膝の上で食べさせていたけれど、さ
すがに大きくなって抱えるのが大変になってきました。

近所のインテリアショップをぶらぶらしていたら、カラフルな色がかわいらし
い子供用のイスを見つけました。試しに座らせてみると、めずらしくおとなし
く座っています。検討するためにチラシをもらってきました。

「CAROTA」という名前で、高さの違うふたつのタイプがあります。見かけたの
は低い「CAROTA-mini」です。それにあわせたテーブル「CAROTA-table」もあ
ります。帰ってサイズを調べると、家で普段使っているテーブルと同じ高さで
す。これなら食事の時にぴったりです。

「これは買い! すぐにでも欲しい」という家人の一言で購入を決めました。
おとなしく座ってくれるなら定価の13,000円は高くありません。とはいえ、少
しでも安く手に入らないかとネットで探してみました。限られたお店だけで販
売しているらしく、値引きはありませんでした。

---
◆ベビーガード、滑り止め背もたれがついていて安心!!
お子さまのお座りの練習に、食事を作っている間このイスにすわらせておくな
ど、ママは大助かり!!
---

検索サイトの上位で、商品の詳しく説明があったお店で買うことにしました。
座面の高さを調節したり、部品をはずしたりすれば6歳くらいまで使えるとい
うことです。実際に取り外してみた写真が掲載されていたのはここだけ。子供
向けの家具やオモチャ、食器などを扱っているお店です。

男の子っぽいブルーや、商品名である「ニンジン」を思わせるオレンジなど、
カラフルな色もいいなと迷いましたが、家にあるほかのインテリアとマッチす
る白を選びました。送料は無料になりました。

イスは注文から一週間ほどで到着。大きめの箱から取り出すと、組み立て済み
ですぐに使えます。体のまわりを囲むような背もたれと股のところに滑り止め
があるから良い姿勢で長時間座っていてくれます。ベビーガードがあるので、
立ち上がることもありません。

息子は喜んで座っているので大成功です。使わないときにも部屋の隅に置いて
あるイスを引き出して、押したり登ったりオモチャのようになっています。だ
けど、相変わらずゴハンはなかなか食べてくれないのです。

子供用のイスを買ったお店「budspot」
<http://www.rakuten.co.jp/budspot/>

【いしはら・つよし】info@webanalyst.jp
ウェブプロデューサー、ウェブアナリスト
泣いたりわめいたり蹴飛ばしたりしながら、ゴハンを食べる息子。しかし自分
のは食べないのに、人の食べている時には手をだすんだよね。人のコップを倒
してこぼしたり…、食事時は毎日大騒ぎです。
・ウェブアナ
<http://www.webanalyst.jp/mt/>

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■デジタルサウンズ研究室
ワイドショーで神田さんを見た

モモヨ(リザード)
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堀江容疑者逮捕を伝える朝のワイドショーを見ていたら、あろうことか、神田
敏晶さんの姿を見てしまった。東京拘置所の中を伝える、という主旨での出演
だった。

この番組に始まり、この一週間、ライブドアに関する話題で持ちきりだが、前
にも書いたように、堀江流手法は、明治・大正、戦前の金色夜叉ぶりでしかな
い、と私は思っている。戦前や終戦直後を描いた映画などに、他人を金で支配
しようとする金満家がよく登場する。あの類にしか思えない。

水戸黄門や仕事人に登場する悪人など、基本的に堀江型である。日本だけのこ
とではあるまい。ウェスタンや騎士道物語にもそういう悪玉は登場する。「お
まえも悪よのう」という奴だ。基本的には嘘つき、詐欺師の類の果てであろ
う。それを思えば、人類に共通の古典的悪であろう。

そんな私には、報道の過熱ぶりより、かの堀江流を新時代の申し子的扱いをす
る報道姿勢の方が気にかかっている。

大人たちが何か社会悪を新人類のせいにする、そういう現象は珍しくもないが、
今回の論調には、従来のものと異なる臭いがする。今が戦後か戦前か、そんな
特集番組を昨夜見た。そのせいもあるだろう。去年の選挙結果を大政翼賛会的
世相、そういう言い方をしている人がいた。

堀江君をかつては時代の寵児として持ち上げ、そして今時代の悪の象徴にして
しまう力は、あるいは、時代を戦前に変えようとしている力とイコールなのか
もしれない。そんな思いが、ふと頭を持ち上げる。杞憂であれば問題ないが、
このあたりは要観察であろう。

いや、いや、ここは、軽く笑い飛ばしてよかろう。

私自身は、従前のままだ。金の奴隷などは、まぬけな家畜としか見えぬ。以前
にもここで書いたが、金はただの方便だ。問題は、その金で何をするかなのだ。
そう言えば、会社を堀江君に売却して、宇宙に行くと言っていたE君は、どう
しているだろうか? 宇宙旅行計画に今回のことが影響していなければよいが
……、それが心配である。

しかし、神田さんの姿はショックだった。25年の眠りを経て今だ生きているロ
ッカーの私が言うのだから間違いない。テレビのブラウン管越しに見ても充分
に妖しかった。凡庸な容姿の堀江某に較べて、その妖しさは雲泥の差である。
あそこまで妖しげなオーラを振りまいている人は稀だ。

世紀の怪人である。

モモヨ(リザード)管原保 雄
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■編集後記(1/31)
・昨日、大阪市が大阪城公園などのホームレステントを強制撤去した。夕方の
ニュースの特集でたまたま見たが、こういう場面っていやなものだ。番組で、
段ボール集めで生計を立てているという男性を追っていた。この人はわたしと
年齢は同じなのに、すでにわたしの父ぐらいの相貌だった。どんな過酷な人生
を送ってきたのだろうか。そして、公園から追われリヤカーを引いて去ってい
った姿が痛ましい。ホームレスといえば、みょうなマンガ「ホムンクルス」
(山本英夫)を読んだ。6巻までを近所の古本市場で求めた。一流ホテルと通
りをはさんだ公園、ここはホームレスたちのすみかだが、主人公・名越は路上
の駐車スペースに小型車(マツダ・キャロル?)を止めて、その中で生活して
いる。どうやら高層ビル内の外資系銀行に勤めていたらしいが謎の男だ。これ
また謎の医大生による人体実験材料として買われ、「第六感が芽生える」とさ
れるトレパネーション(頭蓋開口手術)を受ける。それから、名越は異形の者
たちを見るようになる。それは、人々の心の深層に沈んだ歪みが、いろいろな
化け物「ホムンクルス」として見えるのだ、という説明がなされるがよくわか
らない。指ツメ組長はロボットで装甲された少年に見える。本当の自分がない
自傷癖のある女子高生は砂娘の迷宮(って書いても、自分でもわからない)で
ある。医大生に至っては実体がなく、液体のように透けて見える。とにかく、
名越の左目から見た人間は化け物だらけである。ホムンクルスの造形はみごと
で、まことに気色悪い。よく考えつくものだ。作者は大麻でつかまったことが
あるとかで、その産物かもしれない。6巻まででは謎はなにひとつ解明されな
い。この後が気になって仕方ない。未完だったら怒るよ。     (柴田)

・PSPを持って外出。PSPを買ってからiPod(モノクロ最終機種)は持ち歩かな
くなった。ゲーム、テキスト小説による読書、無線LANスポットがあればネッ
トサーフィン(死語?)、音楽に動画鑑賞とできることが多いから。スピーカ
ーがついているので、そのままお風呂に持ち込んでラジカセ(これも死語か?)
お風呂スピーカー代わりにしたり。遠出や出張の時には特に重宝する。しかし、
録画したテレビ番組や映画を電車の中で見るのには勇気が必要。音楽はイヤホ
ンで、本はブックカバーでプライバシーが守られるが、映像だとそうはいかな
い。ラブシーンは早送りしたくなる。塊魂で遊んでいる人を見かけると、声を
かけたくなるが危ない人になってしまうので我慢する。そういや、いまだに私
と同じ白PSPを持っている人を見た事がないな。あとはこれがボイスレコーダ
ー代わりになったり、録画したものでも画質が良かったり(市販UMDより再生
可能解像度が低い)、メモリースティックの価格が安くなったりするといいの
になぁ。OSXとの連携も考えてくれたらなぁ。       (hammer.mule)

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デスク     濱村和恵 
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