[2036] 最低レンズとの出会い

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<あ〜あ、書いてるだけで腰が痛くなってきた>

■デジアナ逆十字固め…[17]
 最低レンズとの出会い
 上原ゼンジ

■子育てSOHOオヤジ量産プロジェクト[117]
 子育てリフォームオヤジの苦悩
 茂田カツノリ

■ショート・ストーリーのKUNI[22]
 西瓜
 やましたくにこ


■デジアナ逆十字固め…[17]
最低レンズとの出会い

上原ゼンジ
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ついに最低なレンズと出会った。100円ショップで買った「子ども実験シリーズ 望遠鏡を作ってみよう!」という手作りのキットに付いていたレンズだ。このキットではガリレオ式とケプラー式の二つの望遠鏡を作ることができる。凸レンズが3枚と凹レンズが2枚。そして筒用台紙と解説書が付いて100円だ。

つまりレンズ1枚あたり、せいぜい20円といったところだろうか。このレンズを使って撮影してみたら、今までで一番安っぽい描写となった。つまり、これぞ真のトイレンズということだ。ピントが合っていても、芯のない、でろーんとした脱力感を醸し出している。

市販のレンズベビーの場合はトイレンズとは言っても、その実ちゃんとした光学レンズを使っているので、品の良さのようなものが感じられる。しかし、この中国製の安っぽいプラスティックレンズは、明らかにカメラに付けるような代物ではない。

今回は蛇腹レンズの復讐戦でもあった。前回蛇腹を作った時はちょっと大きすぎてカメラにきちんとはめることが出来なかった。緻密な計算が微妙に狂ってしまったわけだが、今回は一回り小さめに作り直し、うまく収めることが出来た。まあ、直径24mmのレンズを使ってるのに、大口径レンズのような鏡筒はいらんわな。

蛇腹も何度も作っているうちに、だんだん折るのがうまくなってきた。ポイントとしては黒い紙に折り線をプリントする際に黒ではなくイエローインキを使うこと。黒に黒で刷るよりも線が目立つようになる。それから頑丈にしようと思ってあんまり厚い紙を使わないこと。厚ければ、当然折りづらくなってしまう。

レンズベビーのチューブもなかなか使い心地がいいのだが、紙製蛇腹レンズのほうが柔らかくて使いやすい。特に握力がない人がレンズベビーでピントをキープしておくのは辛い場合があるが、紙製蛇腹の場合は握力もいらない。

レンズの前面にはニスを塗ったバルサ材にレンズ用の穴を開けて貼り付けた。蛇腹と木の組み合わせでレトロな感じのレンズになった。しかしニコンのデジタル一眼レフに付けてみたら、あんまり格好いいとは言えないような微妙な感じのものになってしまった。ゴム製のフニャフニャシフトレンズに比べれば大分ましなのだが……

◇新設計レンズと撮影した写真はこちら
< http://kitschlens.cocolog-nifty.com/photos/pla/jabara.html
>
< http://kitschlens.cocolog-nifty.com/blog/
>

何がいけないかなあ。どこを直せば格好良くなるかなあ……。またモックアップを作り直して、風洞実験からやり直しだ。

●あとは光学レンズとの対決だ

日本一のオモチャレンズを求めて旅を続けてきた私だが、この100円ショップで見つけたレンズが、日本一のオモチャレンズなのかは、まだ判断がつかない。その描写は相当にどうしようもないのだけれど、ただどうしようもないというだけでは日本一とは言えない。ダメ男だけれど、どこか憎めない所がある、みたいな部分もぜひ欲しい。まあ、もう少しいろんなものを撮ってみたほうが良さそうだ。

ただ、ビビッとくるような素晴らしさはないけれど、安く簡単に手に入れることが出来て、分解したりする必要がないというのがいいところ。また、あまり焦点距離が短いレンズだと使えないが、マウントの辺りに置いて無限遠にピントが合うこのレンズは、ちょうど使いやすい。

あとは、もう少し光学レンズとの比較もしてみたい。もしかしたら自分が求めているもの(頭の中にボヤッとあるイメージ)は、オモチャレンズではなく、光学レンズかもしれないという可能性も捨てきれないからだ。

すでに光学レンズはネットで探して購入済みだ。次はこのレンズを使って比較検討をしてみたい。本物の交換レンズをバラして、その中から使えるものを探そうとしたこともあったが、それも遠い過去のこと。レンズは半端に分解したまま放置されている。しかし、時代は常に動いているのだ。多少の犠牲は仕方ないだろう。

【うえはらぜんじ】zenstudio@maminka.com
「すぐにわかる! 使える!! カラーマネージメントの本〜仕事で役立つ色あわせの理論と実践マニュアル」(毎日コミュニケーションズ)が発売中。
< http://book.mycom.co.jp/book/4-8399-1937-2/4-8399-1937-2.shtml
>

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■子育てSOHOオヤジ量産プロジェクト[117]
子育てリフォームオヤジの苦悩

茂田カツノリ
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いや〜朝夕はそろそろ涼しくなってまいりましたね〜。

本題に入る前に告知なんだけど、デジクリでも有名な画伯の面々が揃ってご登場されるイベントが、この週末にある。

・ディジタル・イメージ2006
< http://www.digitalimage.org/DI_15th/06_15th.html
>

土曜に始まるが週明け水曜には終わっちゃうので、この週末に行くしかないっすよ。永吉克之さんの絵が見られるんだから、行かなきゃです絶対。

●本題に戻る

僕のデジクリネタは、最近はFileMakerのことが多いし、子育てとかクルマとか、たまに映画の話もあるけど、ホントはもういっこ、「リフォーム」っつう話があったはず。なのでときどき「リフォームはどうなったんだ、書いてないのはどうしてなんだ」という声をいただく。

ということで、それについて白状するのが今回のネタ。

●セルフリフォームは贅沢の極みかも

いまの中古マンションを買ったのが2003年の夏、そして引き渡しがその年末で、そこから必死にリフォーム手配したんだけど、提案されるプランにしても金額にしてもどうしても納得いかなくて、なんとか仮住まいできるようにできたのが2004年の3月。

床や壁の仕上げは自分たちでやることにしたんだけど、そもそもがかなり長時間働き続けねば生きていけない労働集約的自営業にとっては、時間確保が大変だった。

2004年の3月というのが、娘が幼稚園入園するタイムリミットだったんで、もうここで引っ越すしかなかったのだ。息子も公立保育園に入るの決まってたし(公立のくせに月5万以上するのはどういうこっちゃだけど)。

というわけで前置きが長くなったが、要するに仕上げ部分は終わってないのだ。引っ越し後に子供部屋にペンキ塗ったり、台所の天井を仕上げたり、風呂場の脱衣所をウッディなパネルで仕上げたり、仕事場に本棚作ったりはした。

しかし、引っ越してから2年5カ月の間、実はこのくらいしか進んでない。だからウチは、いまだに工事中みたいな状態のママなのだ。

でも僕自身は開き直ってて、まあ家は生き物だからとかサグラダ・ファミリアよか先に完成させてやるとかゆってる。現実逃避だけどね。

つうことで、セルフリフォーム自体はとっても楽しいし勉強になるのだが、そのための時間を確保するっていう部分でいうと、ある種贅沢な話ではある。自営業だと、常に目先の仕事が大量にある状態になっちゃうからね。

●これからの課題整理

ということで、これからやらねばならないことを整理してみる。

▽台所
- 床のコルク張り(抜けてるとこ多し)
- ガス台をもちょっといいのにする(いまは仮設なので)
- 収納をもっと作る(燃えない素材で)

▽風呂
- 脱衣所の壁にウッドパネル貼る(買ったのが反っちゃう前に)
- 脱衣所の扉が動くようにする(コシ入れなくてもいいように)
- 抜けてる天井を作る(素の躯体が見えないように)
- 照明と換気扇のスイッチを固定(いつまでもブラブラさせとかない)
- 棚を作る

▽リビング
- ゴミを片付ける
- TVの置き場を変える
- 天井紙がやぶけてるのを直す
- その他パテ修復多数

▽仕事部屋
- 僕のゴミを片付ける(特に動かないPCとか)
- 床を貼り終える

▽寝室
- 人が入れる隙間を作る(笑)

あ〜あ、書いてるだけで腰が痛くなってきた。楽しいんだけどね。

●これからリフォームしようというひとに

僕がマンション購入した2003年は、渋谷周辺でも多数の中古物件があった。多数あるから売りに出してもすぐには売れず、じっくり値引き交渉をする余地があった。古い物件を買って自分で手を入れて住む、という人はあんまりいないという話を何度も聞いた。

実際、世界の大都市を比較しても、東京都心部の中古マンション価格は異様に安いと感じた。賃貸に出して生み出せるお金を考えれば、ずいぶんお得だと僕は思う。

それが最近聞いたところによると、以前よりも都心部中古マンションがほしいという人が増えてしまい、物件がなかなかない状態になってしまったらしい。そうなると自然と値段も上がり傾向になってしまうのだが、いまならまだ間に合うかもしれない。

でね、中古買ってリフォームするというときだけど、金を積んで業者に丸ごと頼んでっていうのは、いくらラクチンでもやっぱり簡単にはお勧めできない。その結果として安っぽくて固いフローリングや、紙じゃなくてビニール製の壁紙とかを使われちゃうようじゃ、わざわざ中古買う意味がないから。

だからやっぱり、住設や上水道の配管、床や壁などを業者に依頼し、内装については業者頼むにしても、材料はこちらで手配してという形を認めてくれるところを探すべきだと思う。

さらに、自分で棚や壁を作るなら、ひとつ大事なコツがある。それは、木材購入時にサイズにあわせて切断してもらっておくことだ。木を切るのは音もホコリも出るから大変だし、ちゃんと設計しないとあとで足りなくなったりもする。

だから、最初にしっかり採寸・設計し、木を購入するホームセンターで切断までやってもらって、自分は組み立てるだけ、としておくのがいい。

幸いなことに、都内在住であっても豊洲にできたビバホームのおかげで、気楽にホームセンター行けるようになった。この店の存在は大きいのだ。店自体も大きいけど。。

・スーパービバホーム豊洲店
< http://www.vivahome.co.jp/svh/toyosu/
>

ということで、リフォーム頑張ります.....。

▼書籍紹介「FileMaker Pro 大全〜FileMaker Pro 8: THE MISSING MANUAL」
ラトルズより9月2日発売予定・定価3,990円(税込)
あのオライリー社初のFileMaker本「FileMaker 8:The Missing Manual」の翻訳権を、ラトルズ & sevensdoorが獲得し、「FileMaker大全」としてついに発行! FileMaker8.5の新機能についても、本邦初の詳細な解説を追補にてご紹介します。

下記ページにてデジクリ特別先行発売中!
< http://www.rutles.net/books/156dgcr.html
>

▼イベント
「FileMaker Fun Night! AppleStore銀座」
9月16日(土)17:00〜19:00(←5時スタートっすよ、間違えないでね〜)
< http://www.sevensdoor.com/event.html
>
< http://www.apple.com/jp/retail/ginza/week/20060910.html
>
FileMakerユーザのためのマンスリーイベント「FileMaker Fun Night!」。このイベントが始まって早くも一周年を迎えます。今回は最新バージョンの可能性を探るとともに、一周年ならではの様々な企画をご用意しています。2時間たっぷりお楽しみください。

【しげた・かつのり】shigeta@amonita.com
Webコンサルタント/プランナー & FileMakerデータベースデザイナー。
サンフランシスコの寒さを味わってから、どうも東京の暑さが現実のものに思えない41歳3児の父。最近は結構時間を作れるようになったので、みなさん新規案件OK状態っすよ〜、よろしくお願いします。

[有限会社アモニータ(Web制作/プランニング/出版プロデュース)]
< http://www.amonita.com/
>
[有限会社レクレアル(FileMakerソリューション開発)]
< http://www.recrear.jp/
>
[Max_blog —“インターネット拾いモノ”でも執筆中]
< http://www.maxwald.co.jp/
>
[mixi —“永吉克之Fan☆Club”コミュニティ]
< http://mixi.jp/view_community.pl?id=94983
>

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■ショート・ストーリーのKUNI[22]
西瓜

やましたくにこ
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ある男が夜中に西瓜を盗みに行って、ついうっかり首を拾って帰ってきた。
「西瓜がごろごろしている中に、ふと見るとこれがあったもんで」

彼は自分の口調がすでに言い訳がましくなっているのを感じるが、妻は容赦しない。

「どういうことなのよ。うちにはおなかをすかせた子供が4人もいるのよ!
せめて西瓜でもと思って頼んだのに。この甲斐性なし!」

そこで彼は首を窓際に置き、再び西瓜を盗みに畑に行く。だが、あんなにたくさんあった西瓜はひとつも残っていない。西瓜はあっという間に盗まれるものなのだ。

むなしく彼は手ぶらで帰り、妻と子供達がわめくのをしりめに、ふとんをかぶって寝てしまった。

首は中年の男のもので特にハンサムでもないし、うっすらひげなど生えてどちらかというとむさ苦しい。全然ぱっとしない。なぜ自分がこんなものを拾ってきたのかわからない。そう思っていると首が突然目を開け「ジョナサン」と呼んだ。

「え? おれのこと?! おれの名前はジョナサンじゃないけど…」
「いいんだ。ジョナサン」
「はあ…何か用で?」
「酒が飲みたい」
「酒???」

とまどいながらも台所に行き、あちこちの戸棚をばたんばたんと開けたり閉めたりしながら探すと、びんの中にほんの少し酒が残っているのを見つける。それをコップに入れて首の口元にあてがってやると、首はぐびぐびとうまそうに飲む。

「うまい」
「あ、そうかい。そそ、それは、どうも」
「また頼むぞ、ジョナサン」

それ以来、ジョナサン(と呼ばれた男)はせっせと首に酒を飲ませるようになった。酒を飲ませると、首はにっこりと笑い、気持ちよさそうな顔色になる。それは見ていてなんとなくうれしいものだ。だが、当然ながら妻はいい顔をしない。

「いつまであんなもの、窓際に置いとくのよ。鉢植えじゃなし、飾り物というほど見栄えもよくないのに」
「あれは不思議な縁でこの家にやってきたんだ。いまにいいことがあるさ」
「ふうん。じゃあさっさといいことを見せてくれたら。お金でもなんでも、出して見せてくれたら」
「いや、そんな、すぐには」
「なんだ、うそなんだろ! なんにもできないんだよ、その首は。西瓜のほうがよっぽどよかった。私は西瓜が食べたかった。まったく、西瓜を拾わずに首を拾うばかがどこにいるもんか」

妻はこれみよがしに西瓜をどこかから盗んできて、首の横に置いた。確かに西瓜のほうがつやつやしてきれいだし、うまそうだ。一方の首は薄汚く、老けていて、どう見ても歩が悪い。それから妻はすいかをどんとまな板の上に乗せ、包丁でさくっとまっぷたつに切った。それからさらに半分、さらにそれを半分に切り、扇形になったすいかをいくつもの三角に切り分け、子供達を呼んだ。

「さあ、すいかだよ、どんどんお食べ!」

首はこころなしか不快そうに眉根をゆがめ、目を閉じていた。ジョナサンは首と妻の板挟みになってなんだかつらく、ふて寝してしまった。

「ねえ、何か、その、いいことをしてみせてくれないかな」
ジョナサンは目をそらしたりうつむいたりしながら、言いにくそうに、首に言った。
「た、たいしたことでなくてもいいんだけど、その、わかるだろ」
首はうなずき、目を閉じたまま言った。
「角の、薬屋の向かいの空き地に、落ちてる」
「え、何が」
「行けばわかる。栴檀の木の下」
ジョナサンはすぐさま、首の言った場所に行ってみた。はたしてそこには革の財布が落ちていた。ジョナサンは飛び上がって喜んだ。財布をひっつかむと家に走って帰った。

「ふん。せいぜいそんなところだろ」
うつむいたジョナサンに妻は冷たく言い放った。財布はとても立派だったが、中身は350円しか入ってなかった。
「これじゃその首が毎晩飲む酒代にもなりゃしないよ」
ジョナサンはその晩もふて寝した。

暑くて暑くてたまらない日中、ジョナサンはたったひとりで家にいた。西瓜を盗まず首を持って帰った自分はやはりばかだったのだろうか。そうだろう、そうに違いない。首は食べられないが西瓜は食べられる。おいしい。子供達も大好きだ。身体にもいいと聞く。そうだ、西瓜がいいに決まってるじゃないか!

そこでいつも首が乗っかってる窓際の棚に目をやると、なんということか、首ではなく西瓜がそこにある。それは感嘆に値する見事な西瓜だ。大きくて、しかも形がよい。緑に黒い縞模様も鮮やかなつやつやしたその皮の下にはみずみずしい果肉がずっしりと詰まっているに違いない。ジョナサンは思わず手を伸ばした。ぱあんと張りきった西瓜の皮に手が触れるかとみえたそのとき、西瓜は首に戻っていた。ジョナサンはへなへなと尻餅をついた。首は目を開けて言った。

「君はそんなに西瓜がほしかったのかね」
ジョナサンはぽろぽろと涙を流した。
「私はいま、わざと西瓜になってみせたのだ。君にはまったく失望した。君はあえて私を選んでくれたとばかり思っていたのに」
「す、すみません」
「まあ謝ることはない。ジョナサン、思い出そうじゃないか」
「はい」
「君が私を見つけてくれたときのこと。なんでこんなところに首があるのだといった表情を君はしたっけ」
「はい、それはもちろん」
「そして、私を西瓜につないでいた、細い茎を君はそっとちぎった」
「ぷちっという音がしました。思ったより簡単にちぎれました」
「そうとも。そして君と私の今日に至る関係が始まったのだ。これは感動的でないだろうか? こんな出会いは滅多にあるものじゃない。このような貴重な体験は一国の主でさえ味わえるとは限らない」
「そうかもしれません」

ジョナサンはなんとなく納得できなかったが、反論できる材料がなかった。こういう関係は意外と永く続くもので、一般的には腐れ縁と呼ばれる。

【やましたくにこ】kue@pop02.odn.ne.jp
みっどないと MIDNIGHT短編小説倶楽部
< http://www1.odn.ne.jp/%7Ecay94120/
>

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■編集後記(8/31)
・「魂萌え !」(桐野夏生、毎日新聞社、2005)を読む。夫に先立たれた59歳の女性の、それから始まった第二の人生で遭遇する痛快な冒険を描いた小説、だと思っていた。夫に先立たれた59歳の女性が主人公、なんて普通の設定だもの。ありがちなあれやこれやのトラブルを乗り越えて、という話ではなく、それまでの平凡な主婦から変身した女性の明るく元気な話に違いないと思いこんでいたのだ。ところが、舞台はありがちな世界のど真ん中ではないか。リアルな現実だ。身勝手な長男に振り回される相続問題。よい母親だったはずの自分が、成長した子どもたちに顧みられなくなっていく。そして夫には十年来の愛人が存在したことを知る。貞淑な妻の自分を裏切っていたという衝撃。これからは、妻でも母でもない時間を一人でたっぷり生きなければならない主人公はどうすればいいのか。おとなしくて素直で可愛い普通の主婦だった彼女は、高校からの女友達グループや、あたらしくできた男友達らとの交流を通して徐々にたくましくなっていく。彼女をとりまく人々のキャラクターが非常によく書き分けられていて、映像を見ているような気分だ。自分は他人に対して受け身過ぎると常々思っている主人公の成長ぶりが好ましい。男女を問わず50代の人にオススメの小説だ。わたし自身の理想の年寄り像はまだ考えつかない。 (柴田)

・星座占い。表の星座と、裏の星座があるらしい。調べてみたら、私は表が水瓶座で、裏が獅子座であった。そしてこの占い結果をひとことで表すワードが出る。「個性的なわがまま君」と。ち、違うって、と思いつつ、知り合いのを入れてみる。「自由奔放な八方美人」「優等生な秘密主義者」「個性的な潔癖性」「リーダーシップのある八方美人」……。な、なんだか他の人の方がマシなんですが。「個性的なリーダー」とかでもいいのではないか? 「リーダーシップのある変人」の方がまだマシな気がする。「個性的」「変人」は自己完結型で褒め言葉にもなるけど、わがままって他人に迷惑かけちゃうじゃないよ。やーね。興味のある方はどうぞ調べてみてくださいまし。  (hammer.mule)
< http://ura-seiza.cplaza.ne.jp/12stars/
>  まんがもほのぼの

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魂萌え !
桐野 夏生
毎日新聞社 2005-04-21
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star自分のことをまず一番に考えよう
star人生は思いがけないから魂が萌える?
star活き活きと老い萌えたい。
star「萌え」ていたい、わたしも
star「OUT」「柔らかな頬」の次に読んでしまうと違和感あり

アンボス・ムンドス I’m sorry,mama. 白蛇教異端審問 The COOL! 小説新潮別冊 桐野夏生スペシャル 残虐記

by G-Tools , 2006/08/30