DTPユーザーのためのWeb再入門[6][Web標準の日]の資料公開で考えること
── 鷹野雅弘 ──

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「セミナーの価値って、なんだろう?」

単純に知識を得るだけなら、本を読んだり、e-ラーニングでいいハズだ。最近ではe-ラーニングでも講師の顔が出てきて、教材の隅で喋るコンテンツが増えつつあるが、少なくても私には、どうにも退屈だ。規定時間、じっくり座って集中することができない。

そういう意味では、セミナーは、日常の流れを分断して集中せざるを得ないというところにも意味があるのかも、と思ったりする。

「セミナーおたく」というわけではないが、結構多くのセミナーに参加していて思うのは、たとえば、その著者の書いてある書籍を買って読んでいたとしても、やはり書籍に書けなかったことを知ることができたり、また「ここはこう読むのか」と、違う視点に気づくことが多い。また、何より、その著者の顔つきや“人となり”を感じることが、何にも得難いおもしろさであったりする。


話の中身は7%に過ぎず、口調、ゼスチャー、表情などの“ノンバーバル”な情報が93%を占めるとは、心理学者「メラニアン」の法則。これは第一印象に関するもので、かつ欧米での統計だが、あながち無視できるものではないでしょう。

平たく言うと、喋り手に好意を持っているか、尊敬できるかによって、その内容が自分に響くかは大きく変わる。学生時代、先生を好きになると、その科目もおもしろくなるという体験を誰もがしているはずだ。

最近、こんなことをよく考えてるのは、7月15日開催した「CSS Nite」のスペシャルイベント[Web標準の日]というイベントの資料と音声をすべて公開したことに発する。

海外のセミナーなどでは資料や音声の公開が増えつつあるが、まだまだ日本では珍しい例だ。事前の案内が徹底していなかったこともあり、「高い参加費(21,000円)を払ったのに、払っていない人でもダウンロードできるなんてケシカラン」といった声が何件か寄せられた。

検討を重ねた結果、公開のタイミングをセミナーの一か月後に後ろ送りし、なかば強引に公開に踏み切った。
< http://web-standards.jp/?p=109
>

[Web標準の日]のスピーカーのひとりでもある長谷川恭久氏(20代)は、「今日はたまたまこちら側にいますが、場所が変われば、私がそちら側で教わる側になることもあります。関係はフラットなんです」と、ことあるごとに話し、ほかのセミナーでもスライドや音声などを自主公開している。

先日も、9月に開催する「CSS Nite in Nagoya」に関する公開に関し、「するしないでなく、当然のようにやりましょうよ」と彼らしい発言をされていた。

HTML、CSS、JavaScriptといったWebがらみの技術は、ほぼすべてのソースを参照できるので、ある程度のレベルに達すればソースコードを読めば済んでしまうとも言える。

「101匹目の猿」というエピソードがあるが、“ひらめき”やトライ&エラーによって起こる“ドゥ・ハウ”は同時発生する。もちろん、発生するタイミングの差はあるので、本を買ったり、セミナーを受講するのは、まさに時間を買うことだ。

さらに、セミナーの内容をより多くの方がシェアすることで、「101匹目の猿」が早く出現し、結果、「こうして日本は平和になった (c)太田総理」となる。

こうしてことばにするとクサいが、Web 2.0的というか、新しい世代の感覚(フラットでハッピー)は、Webの世界では今まさに浸透しつつある。

[Web標準の日]
< http://www.web-standards.jp/
>

CSS Nite in Nagoya
< http://nagoya.cssnite.jp/
>

長谷川恭久
< http://www.yasuhisa.com/could/
>
< http://www.yasuhisa.com/inflame/
>

【たかのまさひろ】takano@swwwitch.com
トレーナー・テクニカルライター・デザイナー
株式会社スイッチ代表 < http://swwwitch.jp/
>
モスバーガー店員から英会話塾講師、職業作詞家等、100以上の職種を経験後DTPやWebの制作、トレーニング、ライティングは飽きずに10年。


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by G-Tools , 2006/09/08