[2046] 涙の縄文杉

投稿:  著者:


<いま実現できないことは一生実現できないんだから>

■笑わない魚[201]
 涙の縄文杉
 永吉克之

■デジアナ逆十字固め…[19]
 ミズクラゲはマクロに限る
 上原ゼンジ

■子育てSOHOオヤジ量産プロジェクト[119]
 もう「いつかは○○したい」は禁止だっ!
 茂田カツノリ


■笑わない魚[201]
涙の縄文杉

永吉克之
───────────────────────────────────
16階建て、520戸が入っている自宅マンションでこの夏、外壁の塗り替え工事が行われた。暑いときに、建物全体が足場に組んだパイプと網状のシートで覆われてうっとうしい。しかも、塗料の臭いと工事の音で窓を開けることもできないうえに、室内が作業員から丸見えになるので、朝からカーテンを閉めなければならない羽目になった。

マンションの自治会で決まったことなので、住人はみな粛々と従っていたようだが、520もの世帯が箱詰めになっている所で大勢の作業員が動き回るのだから、どこかでトラブルが起きるのではないかと思っていたら、うちで起きた。

夜遅く帰宅して、補修の状態を見ようとバルコニーに出ると、植木鉢が倒れて中の土がこぼれ、植わっていた縄文杉が鉄柵に当たって半分に折れていた。誰かが足場を伝ってわざわざこの15階まで植木を倒しにきたとは考えにくい。ここにいた作業員がうっかり蹴り倒して知らん顔しているのだろう。

この縄文杉は、亡くなった母親が育てていた植木のひとつで、死後、私の怠慢から、他はみな枯らしてしまったのに、そのひと鉢だけが生き残った。なんだか母親の魂が宿っているような気がして、大切に水をやっていたのだが、どこかの無神経な人間に荒らされたのかと思うとやるせなかった。

                 ●

翌朝、この工事をしているF塗建に電話をした。これは先方の平謝りに終るだろうとばかり思っていたから、弁償を申し出たらいくらもらおうかなんて気楽に考えながら、電話に出た年輩らしい男性に用件を言うと意外な展開になった。

「ほお…その植木を倒したんは間違いなくウチのもんですかね?」
「ここ15階ですから、外の人間が入ってきてそんなことするというのは……」
「そんなんわかってるがな。そやなくて、お宅の子供が倒したとか、そういうことはないかっちゅうことなんやけど」
初めて話をする相手にいきなり、ぞんざいな口をきかれてうろたえてしまった。
「一人暮らしだから、それはありませんね。それにぼくは……」
「ほな風で倒れるとか」
「あんな重いもの風では……」
「ウチにゃそんなことするもんはおらんけどねえ」
こちらが話している最中にいちいち言葉をかぶせてくるのが癇に障る。
「でも他には誰も……」
私が話そうとすると、電話の向こうで誰かに声をかけるのが聞こえた。
「ちょっと代って。なんかごちゃごちゃ言うとるわ」

担当らしい若そうな男性が出た。
「お電話代りましたけど、どうされました?」
私はもういちど同じ説明をした。
「それは確かにウチの作業員が折ったんでしょうか?」
「それも今の人に言いましたけど…ええ、作業員の方としか思えませんね」
「そうですか。もしそうなら、これから気ぃつけさせますけど、工事してるんでね、大事なもんはどっかにしまっといてもらわんとねえ」
「はい、ぼくも気をつけますから、そちらもお願いします」

結局、相手に圧倒されて、ほとんど何も言えず、謝らせるどころか一部自分の非を認めることになってしまった。私はこうるさいクレーマーとしか思われていなかったようだ。しかし母親の形見を踏みつけにされたというのに、謝れと迫ることができない自分が不甲斐なく、故人に申し訳なかった。

                 ●

中学生の時、母親が繕ってくれた体操服の破れ目に、マジックインクで関西の卑猥なスラングを書かれたことがある。それは母親が侮辱されたも同じだったが、書いたのが、学校内でたびたび暴力沙汰を起こしていたワル連中のひとりだったので、私は恐くて、へらへら笑いながら「すんなよー」と小声で抗議するのが精一杯だった。

朝の電話の一件で、相手の横柄な対応が頭から離れないばかりか、せっかく忘れかけていた昔の屈辱まで思い出して、昼過ぎても仕事がまったく手につかなかった。特に最初に電話に出た粗野な男が吐きすてるように言った「そんなん分ってるがな」という、人間の自尊心を無視したようなセリフが何度も浮かんできて私を苦しめた。

そして、私の性格だから、こんな精神状態がこれから何日も持続するのかと思うと、もうたまらなくなり、結果はどうなってもいいから、とにかく言いたいことを言って楽になろうと、ふたたびF塗建に電話をした。

また例の粗野な男が出るのではないかと構えていたら、若い女性の丁寧な声が聞こえたので急に肩の力が抜けて、紳士的に事の次第を話すことができた。
「そうだったんですか、ほんとうに申し訳ありません」

話をまともに聴いてくれる人がいたので、私は感激して、縄文時代から生きているといわれるくらい樹齢が長いから縄文杉と呼ばれていることや、倒された縄文杉は、亡き母が苗木のときから根気よく育てていたものであることなどを延々と話し続けた。

すると突然、電話の声が変わった。
「おい」
朝、電話で話した粗野な男の声だった。かなり怒っている様子だ。女性が長電話しているのを聴いていて、その内容から私が植木の件を蒸し返してまた因縁をつけにきたとでも思ったのだろう。こんな奴、俺が一蹴してやるといわんばかりの口調で、私はまた朝のように萎縮してしまった。

「今度はなんや、また、いちゃもんか」
「いやいや、ちがいます。ちょっと話し込んでしまっただけですよ」
「話てなんやねん。もう話すことないやろ」
「植木が倒れたことですよ。でもそういう言い方ないでしょ」
「ウチは忙しいんや、おまえのしょうもない話につき合ってられへんねや」
「おまえ、っていう言い方ないでしょ。僕はお宅の被害者ですよ」
「おまえ自分で倒しといて、なにが被害者や、アホ」

ア・ホ

テレビドラマなどで、激昂した人間が下唇を震わせて、吃りながら喚く演技をよく見るが、追いつめられた人間の怒りが頂点に達すると実際にそうなることがある。このときもそうだった。涙まで出てきた。

「くく口のきき方気ぃつけろ!」
「んんんなんで俺がおまえにそんなこと言われなきゃ、んんならないんだよ!」
「全部おまえんとこが悪いんじゃないか!」
「人のうちのもん壊しといて知らん顔しやがって!」
「俺は客だぞ、おまえらにカネ払ってんだよ!」
「謝れよ、こら、謝れ!」

よく憶えていないが、こんなミもフタもないことを、しばらく喚き続けたような気がする。ひとしきり言い終ると、いつのまにか電話の相手が変わっていた。
「あのすいません、少々お待ちいただけますか」

誰だかしらないが、丁寧な男性の口調だった。そして、この雰囲気に不似合いな「ジムノペディ」の保留メロディをしばらく聴いているうちに気分も治まってきた。しかし、せっかく言いたいことが言えたというのに、今度は、我を忘れて感情的にものを言ったことに対する自己嫌悪に苛まれ始めるのだった。

「わかりました、すいませんでした。で、折れた植木ですけど、代りのものを送らせていただきますんで、えっと、何号室にお住まいですか?」
「あ、そうですか、すいません。うちは1517です」

                 ●

翌日、植木屋が縄文杉を届けにきた。高さはどう見ても30メートルはある。樹齢は3000年以上という話だ。言ってみれば戦利品だが何か空しい。バルコニーに置くと母親が遺した縄文杉より大きかったが、大きやさ形ではない、心だ。

【ながよしかつゆき/アーティスト】katz@mvc.biglobe.ne.jp
連載再開の一本目ということで、これまでとは違った趣にしたつもりだが、成功なのか失敗なのか自分ではさっぱり分らない。よろしかったら、ご感想などお聞かせ願いたい。不躾ながらスパム対策で、フリーメールっぽいアドレスはフィルタリングされます。すいませんすいません。

・無名芸人< http://blog.goo.ne.jp/nagayoshi_katz
>
・EPIGONE < http://www2u.biglobe.ne.jp/%7Ework
>
・Metabolism< http://www.maxwald.co.jp
>第二、四水曜に掲載中。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■デジアナ逆十字固め…[19]
ミズクラゲはマクロに限る

上原ゼンジ
───────────────────────────────────
唐突に遠足に行こうと思った。遠足と言えば江の島か箱根、修学旅行と言えば日光と決まっている。というのは小学生の頃、藤沢で過ごしたからだ。箱根は現在暮らしているふじみ野(市営プールでの事故で有名になってしまった)からは、ちょっと遠いので、江の島に行くことにした。

本数は少ないが湘南新宿ラインというのがあって、池袋から東海道線に乗り入れているはずだ。では池袋の手前はどこからやってくるのだろう? 「ウィキペディア」の「湘南新宿ライン」の項を見てみたら、「湘南新宿ライン(しょうなんしんじゅくライン)は、東海道線と高崎線及び宇都宮線と横須賀線を新宿駅を経由して相互に運行する東日本旅客鉄道(JR東日本)の列車愛称・系統路線名である」とあり、詳細な説明でビチーっと埋め尽くされていた。

そのままリンクされている駅名や路線名をクリックしてみると、どの項もメチャクチャ充実している。世の中にはなんと鉄道を愛する人たちが多いのだろうか。

そう言えば最近、中学の時のクラスメートが「テツ」(鉄道を深く深く愛する人。車両好き、駅舎好き、切符好き、スイッチバック好き等、様々なタイプがある)として活躍しているということを知った。

「日本全国全駅下車」という偉業を成し遂げ、テレビでも取り上げられたらしい。この全駅下車というのは、ちょこっとホームに降りてドアがしまる前に飛び乗るというような方法ではなく、一駅一駅きちんと下車するのだそうだ。方法としては、ある駅で下車したら逆向きの電車に乗り換え、行ったり来たりを繰り返して、すべての駅を降りつぶしていくというわけだ。それが9843駅だっていうんだから、まあ偉業ですね。

◇横見浩彦WEB鉄道
< http://yokotetu.net/
>

中学の時は変わり者で、クラスの中でも特異な存在だったヨコミ君が、トラベルライターとして活躍しているのを知り、本当に良かったねと思う。ただ、ホームページでのプロフィール紹介で、「少年期〜青年期にかけて、ごく普通の鉄道好き人間として過ごす」と書いてあるのを見て、「いや全然普通じゃねえよ」と思わずツッコミを入れてしまった。私は今まで相当イカレた人を見てきたが、その中でもヨコミ君は相当特殊なキャラクターの持ち主の一人だ。

ヨコミ君は「中三時代」とか「中三コース」といった学年誌に付いている、英単語や年代記憶のための冊子が大好きだった。それを学生鞄とは別のマジックバックにパンパンに詰めて毎日学校に持ってきていた。そして、授業中は教科書も出さずに一心不乱に冊子を読み耽る姿が異様だった。

友達がふざけてその冊子を取り上げようものなら、不良も引きまくるようなエキセントリックな反応をするというアンタッチャブルな人物だった。それだけ勉強したらどこでも合格できるんじゃないのというぐらい、いつも冊子に没頭していたが、成績に反映されなかったのは、何かメチャクチャ効率の悪い方法を取っていたに違いない。

しかし、効率とは無縁の方法というのは、まさしく全線全駅下車そのものであり一筆書きで、じみーに行ったり来たりというのはヨコミ君の人生そのものなんだろうな。その地味なやり口で一つのことを成し得たのだから、うーんと褒めて上げたいところだ。偉かったねヨコミ君。

ヨコミ君は「JR全線全駅下車の旅」(KKベストセラーズ)といった本を著す一方、「鉄子の旅」という漫画の主人公にもなっている。これはヨコミ君が企画した鉄道の旅に、漫画家の菊池直恵さんが同行して漫画化するというルポだ。

毎回毎回ディープな企画に関心させられ、マニアでもない私もたまには紹介されている駅を訪れてみたくなる。ベースはちょっと濃いめの旅ルポなのだが、この漫画の魅力はヨコミ君の特殊な性格に同行者が振り回される部分にある。通常であれば、旅の師匠に尊敬の念を持って描かれるところだろうが、漫画担当の菊池さんは、「なんなの、この人!」という感じで、ヨコミ君に対し、不信感丸出しで描いているのだ。

旅ルポとは言っても観光もせず、美味い物を食すわけでもなく、ただただ駅を巡り続けるヨコミ君に、テツでもない一般女性が付き合わされ、文句たらたらのルポをしているところが、笑いを誘う。

なーんだヨコミ君、なんにも変わってないじゃん。というのが漫画を読んで感じたこと。中学の時にはちょっとというか、かなり特殊な人だったが、その後趣味の分野で頭角を現し、トラベルライターとして活躍しているという成功者としてのイメージが、この漫画で崩れてしまった。

いや、好きなことでメシを食っているわけだし、成功には違いないと思うけど、ヨコミ君はヨコミ君のままで、そのキャラクターはより強力なものになったというわけだ。まあ、ヨコミ君という特殊人間にスポットを当てたおかげで、漫画としては成功を収めたというわけだが……。

●新江ノ島水族館へ

江の島遠足の話を書くはずだったのに、大分横道にそれてしまった。さて江の島に到着すると、私はまず「新江ノ島水族館」に足を向けた。「新」が付くようになったのは平成16年からだが、新しくなってからは初めての来館だ。エノスイ自体は三十年以上前から知っているわけだけど、かなりきれいになっていた。「お泊まりナイトツアー」だとか、ダイビング機材を身にまとってイルカを観察するといった面白い企画があるが、これも旭山動物園効果なのだろうか。

エノスイの売りの一つとして、元々クラゲがあるのだが、私は何度かここでクラゲの撮影をしている。ゆっくりではあるけど、次々にその姿を変化させていく様子が撮影していて面白いのだ。暗かったり、照明が水槽に反射してしまったりで、それなりに技が必要なところも楽しい。

特に私の贔屓はミズクラゲだ。どこにでもいるごく一般的なクラゲだが、泳いでる姿が優雅だし、シンプルで美しい。ただ、今回は100円ショップで買ったトイレンズで撮影してきたのだが、ミズクラゲにトイレンズはちょっと合わないようだ。その軟体な感じが軟焦点レンズに合うかと思ったのだが、「軟」と「軟」で訳のわからない写真になってしまった。

触手の繊細さや生殖腺の模様などはマクロレンズできちっと撮影したほうがよろしい。ただ、ミズクラゲには向いていなかったが、アカクラゲはまあまあいい感じに撮影できた。軟焦点のおかげで、多少アカクラゲの毒が薄まったのだろうか。(ミズクラゲはほとんど無毒)

◇クラゲの写真
< http://kitschlens.cocolog-nifty.com/blog/
>

その他、江ノ島に行ったんだから海の写真も撮ってきたが、この中国製の安物
プラスティックレンズは、けっこういいかもしれない。最低なレンズであるこ
とは間違いなく、その最低レンズで撮った写真は、それなりの味を出してくれ
ている。色収差が多少気になるが、そこらのトイカメにはこれほどの味はない。
もう少し、いろんな物を撮ってみることにしよう。

◇新江ノ島水族館
< http://www.enosui.com/
>

【うえはらぜんじ】zenstudio@maminka.com
◇キッチュレンズ工房
< http://kitschlens.cocolog-nifty.com/blog/
>
◇カラーマネージメント情報室
< http://d.hatena.ne.jp/cmi/
>

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■子育てSOHOオヤジ量産プロジェクト[119]
もう「いつかは○○したい」は禁止だっ!

茂田カツノリ
───────────────────────────────────
「いつかはクラウン」っていうキャッチコピーは、日本社会のいろんな面や、あるいはトヨタ自身のクルマ感をよく表現してたんだと思う。

クルマっていうのは人によって小さいのや背の高いの、速いのや大勢乗れるのと好みがわかれて当然だと思うんだが、そんなん関係なく値段=ランク、っていう一義的な価値観を押しつけるのがこの言葉の裏にある概念なのだろう。

で、今日はクルマの話じゃなくて、「いつかは」のこと。事前に謝っておくけど、かなり観念的です、今回は。

●「いつかは」とかいってる場合じゃない

僕はもちろん夢をいっぱい持っている。会社を強くしたい、僕自身も成長したいというのが夢の中核だけど、もうちょっと細かい夢もある。

たとえば「外国で暮らしてみたい」というのもある。僕は旅行好きだけど、外国に根を下ろして生活したことはなくて、でも人生の中で一度はやってみたいなあ、と漠然と思ってはいる。

で、こないだふと気づいたのだが、僕ももう41歳、「いつかは○○したい」なんていってる場合ではない。夢があるなら、いま具体的に行動を起こし、計画を練って進めない限りは、その夢はもう一生実現されないのだ。

そんな当たり前のことにいま気づいたのも遅すぎではあるが、まあ気づいただけ良かったと考えておこう。

この年齢になると、ある日重たい病気にかかったりするかもしれない。そのときに「ああ、あのときコレをやっとけばよかった」なんて考えるのはイヤだ。

だからこそ、やるべきこと、やりたいことを整理せねばって考え始めた。これは裏を返せば、「何をやらないか」を決めることでもある。

そしてその「何をやらないか」というのは、実はやりたいこと候補の中での取捨選択の問題ではない。いま「やってしまっていること」の中で、人生において本当に必要でないものを、脱ぎ去ってしまおうということなのだ。

僕の仕事で考えると、Web制作がこれにあたるものだった。これ自体は楽しいし、ある程度食ってはいける。でも僕はどうしてもこれだけじゃ満足できなかった。

そして旧態依然たる制作仕事は全部断ることにして、企業Blog構築とそのコンサルティング、そしてオンラインショップの売り上げ増進を歩合制で引き受ける方向に切り替えたのだ(ということでそんな商売やってますのでよろしくです)。

Webには大きな魅力があるが、それが旧態依然たる下請け孫請け制作作業に組み入れられてしまうなら、それに巻き込まれてはダメだ。あくまでWebにより実現する新しい表現や、世の中の変革という部分のほうが大事なんだ。

はっ、ということは、デジクリで好き勝手書かせてもらえている現状というのは、実はかなりゴールに近い質の行動なのかもしれない。いやあそうだなぁ。

●知らず知らずに卑屈になっていないか

ちょっとした幸運から、いまシリコンバレーの会社から仕事をいただいている。彼らはエンジニアを実に大切にしてくれて、電話で1時間話したらそのぶんはしっかり請求してください、といってくれるのだ。そのほかにも、金額面も含め、とても高く評価してくれている。

逆にいうと、日本では我々のようなIT労働者は大事にされてないのか、とも思える。日本では、プログラマー、デザイナー、イラストレーター、アーティスト、あるいはお医者さんといった、スペシャルな技能で勝負する人への評価が相対的に低いんじゃ? と思える。実際、そういう場面に出くわすことが多い。

その代わりに、なにかしらの「権利」を持ってしまった人の力は、日本社会では強い。そして特定郵便局の局長のように、そういう権利は世襲されてしまったりする。生まれながらに権利を持った人が優遇されて、努力で技能を身につけた人が冷遇されるなら、それは封建社会というものじゃないか。

ここで大事なのが、こうして社会の中で低く見られることに、自分で慣れてしまってはいけないということ。

たとえば僕の同年代で、会社に勤めてしっかり稼いでいる人をみると、中には年収が数千万円という単位の人がいる。自分の仕事や、その結果生み出す価値に自信があるなら、たとえ泡沫零細自営業であっても、彼らと同程度の収入が得られるはずなんだ、と考えるべきなんだろう。

もちろんお金はすべてじゃないけど、お金に縛られる人生はいやだ。だからこそ、自分の持つ価値をしっかり自己評価し、自分をしっかり高めて、その結果収入も高めねばなるまい。「どうせこんなもんか」と卑屈になっちゃイカンのだ。とにかく、いま実現できないことは一生実現できないんだから、ね。

●書籍紹介
『FileMaker Pro 大全〜FileMaker Pro 8: THE MISSING MANUAL』
ラトルズより好評発売中 定価3,990円(税込)
あのオライリー社初のFileMaker本「FileMaker Pro 8:The Missing Manual」の翻訳権を、ラトルズ&sevensdoorが獲得し、「FileMaker大全」としてついに発行! FileMaker 8.5の新機能についても、本邦初の詳細な解説を追補にてご紹介。下記ページにて発売中!
< http://www.rutles.net/books/156.html
>

●イベント
『FileMaker Fun Night! AppleStore銀座』
9月16日(土)17:00〜19:00 ←5時スタートっすよ間違えないでね〜
< http://www.sevensdoor.com/event.html
>
< http://www.apple.com/jp/retail/ginza/week/20060910.html
>
FileMaker ユーザのためのマンスリーイベント「FileMaker Fun Night!」。このイベントが始まって早くも1周年を迎えます。今回は最新バージョンの可能性を探るとともに、1周年ならではの様々な企画をご用意しています。2時間たっぷりお楽しみください。

【しげた・かつのり】shigeta@amonita.com
Webコンサルタント/プランナー & FileMakerデータベースデザイナー。
インターネット関連の仕事を10年もやってるせいか、すごい量のspamがくる。特にドメイン名登録に使ったメールアドレスはひどい。Entourageのフィルタを必死に鍛えてるのだが、なかなか追いつけない。そこで先日、まずGoogleのGMailに転送して、それを直接POPする方法に切り替えてみたら、かなり正確にspamはじいてくれて感動。多くの人が使ってる方法だと思うけど、やっぱりいいねコレ。

[有限会社アモニータ(Web制作/プランニング/出版プロデュース)]
< http://www.amonita.com/
>
[有限会社レクレアル(FileMakerソリューション開発)]
< http://www.recrear.jp/
>
[Max_blog —“インターネット拾いモノ”でも執筆中]
< http://www.maxwald.co.jp/
>
[mixi —“永吉克之Fan☆Club”コミュニティ]
< http://mixi.jp/view_community.pl?id=94983
>
[mixi —“IT戦隊ネラレンジャー”コミュニティ]
< http://mixi.jp/list_bbs.pl?id=265398
>

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■編集後記(9/14)
・秋篠宮家のご長男が「悠仁」さまと命名されて、妻は予感があたったと興奮していた。わが二番目の孫の名前に「悠」があり、命名したのは妻である。これしかないと選びぬいた文字である。得意満面である。娘は、名前はどういう字を書くの? と聞かれたとき答えやすいと喜んでいる(安易な反応だ)。「はる」と読むんだけどさ。さて、待望の男子誕生でお世継ぎの危機的状況はとりあえず回避されたように見えるが、皇位の安定的な継承が解決されたわけではない。わたしは、男系継承によってしか万世一系の皇統は護れない、という考えを強く支持するのだが、さいきんはわずかに揺れ動いている。「愛国者は信用できるか」(鈴木邦男、講談社現代新書)を読んだ。鈴木邦男は新右翼の代表的人物である。プロの愛国者である。そんな人の語る「愛国心」だが、これはそうとう難物のテーマで四苦八苦しているのが好ましい。全体にやさしく書かれていて、中高校生向きかもしれない。彼は意外にも、女帝でなんら問題はないという立場だ。ずいぶん俗な理由を述べていて、これがプロの右翼かとちょっとあきれたけど。この本で、三島由紀夫の改憲・女帝論が紹介されていた。これ、かなりショッキング。もう30年以上前に、「楯の会」の「憲法研究会」で「天皇は世襲であって、その継承は男系子孫に限ることはない」と書いている。これには驚いた。まだ皇統の危機など考えられなかった時代に、唐突になんと"不敬"なことを。会員たちはみんなが「一体、先生は何を考えているんだ」と思ったそうだ。三島は今日を見通していたに違いない。さすがだ。わたしも消極的に、女帝やむをえず論に回ろうかな。(柴田)

・永吉さん再開が嬉しい。なんだかわかる気がする。世の中、おとなしくしていたら、なめられちゃうもんなぁ。私の性格は我慢強く温和で平和主義だ(と思う。普段はぼーっとしている)。事を荒立てるのはイヤだし、どんな時でも落ち度というものはあるものなので(何か事前に対処できたはずなので)、100%がーっと行く人を見ると、頭の中に?マークが浮かぶ。こんな人間だが、理不尽な思いをしたり、友人が侮辱されたりしたらうるさい。「おかしい」に気づくと急に態度が変わるので驚かれる。小学生の頃、友人(私も対象だったかな?)がいじめられているのを見て、学年で一番強い体の大きな男の子のところに行って、泣きながら「いじめるな」と訴えたことがある。おとなしそうな女の子が喧嘩覚悟で、一歩もひかないぞと訴えにきたので相手はひるんでいた。それから面倒になったんだろう、ぴたりといじめはなくなり、言ってみるもんだなぁと思ったんだよな。ゼンジさんの言う「エキセントリックな反応」だったのかも。喧嘩の仕方なんて知らないし。学生時代にも、やくざ絡みと言われる子らのところに友人のことで訴えに行ったら、なんだか気に入られて会話がはずんで身の上話を聞かされたり、部下らに後で「俺らはこうこうで、マジヤバいから避けてくれ」とアドバイスもらったりしたな。でも最近のニュースを見ると、会話が成り立たないみたいな事件が多いから、いつか刺されて死ぬかもしれん。それでも「大事な時」の泣き寝入りだけはあかんと思うわ。だけど最初にF塗建が普通に謝ってくれていたら……。心には心じゃないと。(hammer.mule)