[2060] 因果な空席

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<そこいらのPhotoshop本とはちょっと違う>

■笑わない魚[204]
 因果な空席
 永吉克之

■デジアナ逆十字固め…[22]
 「RGB&CMYK レタッチ大全」刊行
 上原ゼンジ

■デジクリトーク
 みんなが大切に思っている形のない事をわかりやすく表現したい
 高橋里季

■展覧会案内
 Good Design Award 1957-2006


■笑わない魚[204]
因果な空席

永吉克之
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昔から「風が吹くと桶屋がもうかる」というたとえ話がある。これは、

1)風が吹くと、砂ぼこりが舞い上がって目に入る。
2)ほこりが目に入ると、目を患って失明する人が増える。
3)目が見えない人が増えると、三味線を弾くことを生業にする人が増える。
4)三味線の皮にするために、ネコがたくさん捕まってその数が減る。
5)ネコが減ると、ネズミが増える。
6)ネズミが増えると、かじられて使えなくなる桶が増える。
7)桶屋がもうかる。

というような理屈であるが、現代とは明らかに状況がちがって因果関係が分りにくいかもしれない。そこで「風」と「桶」の関係を現代人にも理解しやすくするために言い換えると、以下のようになる。

1)風が吹くと女性のスカートがまくれあがる。
2)それに目を奪われたタイガー・ウッズがショットを外し、翌朝のスポーツ紙で笑いものにされる。
3)それを自分のことだと勘違いした中日ドラゴンズのタイロン・ウッズが汚名返上とばかりに、満塁サヨナラ場外ホームランを打つ。
4)ボールがラーメン屋にいた客のドンブリの中に飛び込む。
5)その客がチンピラで、おい、この店じゃ客にホームランボールを喰わせるのかいと因縁をつけて、カネを巻き上げようとする。
6)それを見ていた遊び人姿の遠山の金さんが、ちょいと待った、一部始終は見せてもらったぜ、あこぎな真似すんじゃねえよ、とその客の腕をねじ上げて店の外に放り出し、あんな手合いにゃ気をつけなよと言って立ち去る。
7)桶屋がもうかる。

これは決してこじつけではない。因果とはすべてそうしたものなのだ。例えば私が経験した風と桶は「空席があると笑わない魚がなくなる」である。

                 ●

15年前の寒い日の夜、鍋をつつきながら熱燗で一杯やりたくなったので、数年来の行きつけの「神酒松」(みきまつ)に行ったら、いつもなら店が空いているはずの時間に、見たこともないサラリーマンの団体が、ネクタイ巻きつけた雁首ならべてカウンターを占領していやがるのが店の外から見えた。

常連さまをさしおいて太え連中だ。なかでもまだ二十歳そこそこの若造が、厚かましくも私の指定席で、お客様面してのうのうとアン肝を食べているのを見てカッとなった。それにこのままよそ者に門前払いを喰わされるのも癪なので、満席を承知でとにかく店に押し入った。

そして雁首たちに聞こえよがしに、亭主に「空いてるー?」と尋ねたら亭主が「ごめんなー、ちょっと今いっぱいやねん。すまんな」と返してきた。常連客が入ってきたら、新規の客を外に引きずり出してでも席を作るのが客商売というものだろう、と憤懣やるかたなかったが、諦めて店を出た。

しかたがないので、同じ商店街にある「とり世」という初めての店に入ったのだが、たまたまカウンターの私の席の隣にいた、殿山泰司似の薄汚い中年の男性客が私と同じ美術系の人間ということが分り、それが縁でその人とあちこちで飲むようになった。

その後、専門学校の講師をリストラされたとき、その人の紹介で設計事務所に勤めるようになり、さらにその関連会社で建築CADを行なっている事務所に移り、3Dソフトの操作を憶えたところで、それを使ってグラフィック作品を制作し、CGクリエイター団体の「ディジタル・イメージ」に送ったら入会を承認されて、そこの世話人の一人であるデジクリ編集長の柴田氏と知り合い、それがデジクリで連載をもつきっかけとなったのであった。

つまりあの夜、神酒松に空席がなかったからこそ、パソコンの操作も身につけることができて、コンピュータスクールの講師の職も得ることができ、今こうしてデジクリの原稿を書くことができ、デジタル業界の人たちと知り合いになることができ、本まで出版してもらうことができたわけなのだ。風と桶の関係そのままである。すべては因果のなかに存在している。

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しかし、もし神酒松に空席があって殿山泰司に出会うことがなかったとしたら、いまごろ私はどんな人間になっていたのだろう。講師をリストラされて、ビジネスを起こす才覚もなく、肉体労働をする体力もなく、強盗をする度胸もなく、それでいてホームレスになるにはプライドが邪魔をする、そんな人間が生きて行くには、飢え死にをするか、怪人になるしか道がないのである。

実際、リストラされた当時、私はまだ35歳と若く、2〜3か月は飲まず食わずで生きていられたので飢え死にはあきらめて怪人になることばかり考えていた。怪人ならば、法を遵守しているかぎり他人から干渉されることもないし、世間のしがらみからも自由で、他人の冠婚葬祭に顔を出す面倒もない。

だから、将来に希望を失なっていた私は、大阪府摂津市のアパートで寿命が尽きるまで怪人として暮らそう、近所付き合いは極力控えて、人知れず暮らそうと決め、表札の名前も怪人にふさわしく「恵美須ヤコブ」に変えたばかりのときに殿山泰司から、知り合いが経営している設計事務所で企画の仕事をしないかという誘いをもらったのであった。それからのことは上に述べた通りだ。

人生、いったい何が幸いするか分らないが、人との出会いを大切にしておくと、少なくとも悪いことよりはいいことの方が多いような気がする。

【ながよしかつゆき/アーティスト】katz@mvc.biglobe.ne.jp
「役不足」という言葉が本来とは正反対の「役が重すぎる」という意味で使われることの方が多くなってしまった。正しく使ってはいけない日本語か。

・無名芸人< http://blog.goo.ne.jp/nagayoshi_katz
>
・EPIGONE < http://www2u.biglobe.ne.jp/%7Ework
>
・Metabolism< http://www.maxwald.co.jp
>第二、四水曜に掲載中。

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■デジアナ逆十字固め…[22]
「RGB&CMYK レタッチ大全」刊行

上原ゼンジ
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MD研究会で「RGB&CMYK レタッチ大全」(郡司秀明+MD研究会/ワークスコーポレーション刊)という本を作った。今までMD研究会では「図解カラーマネージメント実践ルールブック」という本を毎年作ってきたが、それと対になるもので、腰巻きには「注意! この本は普通のPhotoshop本ではありません。」と謳われている。

< http://www.wgn.co.jp/store/dat/3097/
>

カラーマネージメントというのは、ディスプレイやプリントアウトや印刷物での色をマッチングさせるためにひじょうに役立つ技術だ。色を合わせるために測定器を使い、測色した結果が近似することを目標とする。つまり重要なのは色がマッチングすることであり、色を良くするための技術ではない。色を良くするための環境を整えておくための技術と言ってもいいだろう。

よくPhotoshopでCMYKにプロファイル変換をしても色は良くならない、という意見があるがこれは当たり前のことだ。色を良くしようとしているわけではなくマッチングさせようとしているのだから……。いや、色が悪くなってしまったという印象を持つ場合もあるかもしれない。これも元画像上の色が印刷での色再現域を越えていれば、違う色で置き換えられても仕方のないことだ。

RGBデータというのは印刷の色再現域を越えているのだから、デジタルカメラで撮影した画像の色は再現できず、フィルムで撮影したものには勝てない、という意見もあるが、これも間違い。ハイエンドスキャナというのも入力時点ではRGB。それを出力するまでにCMYKにしているだけの話だ。

ではハイエンドスキャナとの違いはなんなのか? それはハイエンドスキャナには色を良くするための回路があり、スキャナオペレータが、絵柄によって設定を切り替えていたのだ。つまり、印刷に適したデータにするためには、ただ撮りっぱなしではなく、絵柄ごとの色演出が必要になってくるというわけだ。

カラーマッチングと色演出の部分はごっちゃにしたくないということで、「図解カラーマネージメント実践ルールブック」では色演出について触れてこなかったが、今回の「RGB&CMYK レタッチ大全」では「色を良くする」という部分にスポットを当てている。

レタッチのための本自体は、Photoshopのオペレーションマニュアルとしていっぱい出版されている。ただそれらに不足しているのは印刷に対する知識だ。やはり多少印刷知識がある程度のカメラマンやライターが書いたものには、はっきり言って限界がある……。

私自身がそういった製版現場に隠された秘密の知識を知りたくて、たどり着いたのがMD研究会だったというわけだが、今回の本ではそういった知識が惜しげもなく披露されている。スキャナを開発していた人、スキャナを回していた人、レタッチをしていた人が書いているんだから、そこいらのPhotoshop本とはちょっと違う。

たとえば、トーンカーブの場合だとハイエンドスキャナで使用されてきた網ポジカーブと比較しながら、ハイライトセットアップ、中間調、シャドウセットアップについて解説されている。「このスライダーをこっちへ動かすと明るくなります。こっちへ動かすと暗くなります」というレベルとは大分違う。

それから、USMのかけ方なんかもプロとアマチュアでは差が出るところだ。プロの場合は画面で見ていてウギャっと言うほどのUSMをかける。しかし、実際に印刷が上がってみるとちょうどよくなる。この辺のことが「USMはギリギリの強さを狙え」という感じで書かれている。

●レタッチ技術をオープンに

MD研究会のメンバーと出会って感じたことは、画像を見る目が確かだなということだ。たとえば画質の劣化ということに関しては、ひじょうに敏感だ。印刷物を評価する際に飽和したり、段つき、反転、縮退などが起こっていれば、すぐに分かる。

鮮やかなセーターの写真を指さし「サチってる」というのは飽和が起きているということ。彩度が上がりすぎて、限界を越えてしまいセーターの素材感が出せなくなってしまうケースだ。レタッチの初心者の場合だとどんどん彩度を上げてしまい、飽和に気づかない場合が多いのだ。

それから、人物写真のアゴの下の影の部分を指して「カタまってる」というのは、やはり中間部からシャドー部にかけての調子がなくなってしまい汚く見える場合だ。これも画像補正をしようと思って、いじっているうちに引き起こされるケースが良くある。

カメラマンは露出や色温度に関しては敏感だが、画質の劣化ということに関しては敏感とは言えない。それはいっつも色校正に赤字を書き込まれて文句を言われている人達と、ほとんど色校正を見せて貰う機会のない人との差だ。

しかし、自分で画像処理をしだせば、そういった画質の劣化にも敏感になってくる。すると今度は何が起こってくるのかと言えば、画質の劣化を恐れるあまり大胆さが失われてしまうのだ。たとえばハイライトセットアップで網点をギリギリまで飛ばしてやれば、写真は生き生きしてくるが、これを恐れればネムくて物足りない写真になってしまう。USMにしても然りだ。

DTPの時代になり、ブラックボックスであった印刷の知識が制作サイドにも伝わるようになってきた。しかし、系統立ててレタッチのテクニックを解説した本というのはなかったので、製版現場に伝わってきた技術がオープンになり、継承されていくということは意義のあることだと思う。

「注意! この本は普通のPhotoshop本ではありません。」と腰巻きに謳われているのは、「格が違うぜ」という意味ではない。オペレーションのためのテクニックは確かに書かれているが、製版現場に伝わってきた技術を文化として継承したいという思いが込められているのだ。

肌色のレタッチに関しては、「レトロなピンク肌」「ガングロ系日焼け肌」「日本の伝統の黄色肌」、お米のレタッチに関しては「おいしそうなご飯」「古いご飯」「冷たいご飯」という感じでパラメーター付きで紹介されている。ただし、この数値ばかりにとらわれるのではなく、紹介された技術をヒントに自分なりの色演出技術を磨くためのヒントにして欲しいというのが、腰巻きの文言の真意だ。

私自身、今まで製版・印刷関係のセミナーに出たり、本を買ったりして情報収集をしてきたが、こんな本がもっと前に出ていたら本当に便利だった。DTPオペレーターにもカメラマンにもデザイナーにもお薦めできる一冊です。

※フニャフニャシフトレンズで撮った写真もP220に勝手に載せてしまいました。

※「Imaging-Park」の画像フォーラムをMD研究会で担当することになりました。カラーマネージメントやレタッチに関して話し合う場にしたいと思っています。まだ開店したばかりで全然書き込みはないのですが、ぜひご参加下さい。
< http://www.imaging-park.jp/
>

【うえはらぜんじ】zenstudio@maminka.com
◇キッチュレンズ工房
< http://kitschlens.cocolog-nifty.com/blog/
>
◇カラーマネージメント情報室
< http://d.hatena.ne.jp/cmi/
>
◇ZEN STUDIO
< http://www.k5.dion.ne.jp/%7Ecolor/
>

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■デジクリトーク
みんなが大切に思っている形のない事をわかりやすく表現したい

高橋里季
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こんにちは、すっかり涼しくなってきましたね。イラストレーターの高橋里季(りき)です。

個展をやります! 原宿のラップネットシップというギャラリーです。ここは移転したばかりで、路面ガラス張りの新しくてきれいなギャラリーです。個展は10月20日(金)から25日(水)まで。詳細は下記をご覧下さい。
< http://www007.upp.so-net.ne.jp/RIKI/
>

さて、私は、絵を描くのにいっぱい悩むタイプです。今回の個展は、半年の準備期間で、今までの仕事の感触をふり返ってみたり、これからの方向を考えたり、気になっていた本も40冊くらい読んでみたり、で、少しづつ絵の感じも変わります。コンセプトノートは3冊になり、日刊デジクリに文章を書くのを楽しみに、何回もコンセプトをまとめてみたけど、やっぱり、文章が長くなっちゃうのね(試行錯誤って、とってもツライわ)。

今回のコンセプト案が行き着いたキーワードは、「時間軸」でした。私の絵は、女の人を描いているようでいて、実は、人間ではない、「女性性」でしかない。たぶん、マナイズム以前くらいの感性を表現するつもりらしいの、私は〜。だから人形でもないし、天女でもないじゃないか、この事は、何年も前から、イラストの先生にも何回か言われていたのです。

イラストの仕事では、「〜している女の人を描いてください」という発注が実際に多いと思います。

もちろん、ちゃんと「〜している女の人」を描くのですが、私は形のない事もなんとかヴィジュアル表現したい訳なんです。どうして、こんなに考えるのかと言うと、自分の事じゃないから。私が描くのは、時代、流行の気分、しかも、できるだけ広いターゲットの心に入って行ける絵が目標です。

みんなが大切に思っている形のない事をわかりやすく表現する。だから、イラストの先生には、何度も、「これじゃ、伝わらないよね〜」というあたりでアドバイスをいただいているのです。

簡単にはできないかもしれないけど、目標は、大きい広告! 広告主も制作側も私もお客さまも大満足! な贅沢で、大きい展開で、「あ、やって良かったな〜」って、みんなが思えるような仕事を、いつか実現するのだ! 「また、がんばろう!」って思えるような響きのある広告がやってみたいのね。

だから、コンセプトがどんなに観念的でも、思索的でも、だれにでもわかる形にまで具体化させたいと思っています。なぜか芸術よりも、私は商業デザインの中にいたいタイプみたいです。すごい芸術よりも、もっとすごい商業デザイン! が目標。

国際的な問題、テロとか、日本の社会の事、世代間の意識のギャップ、いろんな問題に自分なりの視点を持とうとして、日本の今の感性の核になっているのは、「水平軸(地平)」ではなく、「垂直軸(天と地、善悪の意識)」でもなく、「時間軸」に対するに信頼みたいなものだと答えを出しました。そして今、その感覚が、通用しなくなっている事についての不安みたいな事が、日常的な一番身近な問題なんじゃないかな〜。と思うの。

日本人は、なんとなく「時間が経てばどうにかなる」という感性に、今まで支えられて、がんばって来たのではないかな〜? それなのに、想定外の事が、いっぱい起こるんだもの、、、ね。

私の絵は、できれば国も宗教も歴史も、超えたいと思っています。欲張りなので。先生ごめんね。いっつもアドバイスをちゃんと、実現しなくって。今年は、まだ、「女性」で。いつか、これでよし! っていう「女の人」を描けるようになるかもしれないから。

みんなには、「きれいな絵、お人形みたいな女の人だね」って思ってもらえたら大成功! 楽しい気分になったり、安心できる色使いだったりするので、皆様、ぜひ、見に来てください。そして、創る事の面白さを一緒に体感していただけるとうれしいです(^^)/

【高橋里季/イラストレーター】riki@tc4.so-net.ne.jp

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■展覧会案内
Good Design Award 1957-2006
Gマーク50年、時代を創ったデザイナーと100のデザインの物語展
< http://www.g-mark.org/
>
< http://www.geidai.ac.jp/museum/exhibit/current_exhibitions_ja.htm
>
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会期:10月3日(火)〜10月13日(金)10:00〜19:00 無休 最終日15時
会場:東京藝術大学大学美術館 陳列館(東京都台東区上野公園12-8)
内容:各時代のデザインの空気を伝える100のデザインの展示に併せ、約20名の日本の産業デザインの揺籃期、発展期を企業内デザイナーとして担ったベテランのデザイナーやGマーク審査委員経験者を招いてトークセッション「グッドデザイン物語」を開催する。入場無料。トークセッション申込不要(当日、14:00より整理券を配布)

●トークセッション「グッドデザイン物語」
日時:10月5日(木)15:00〜18:00
会場:東京藝術大学大学美術館 陳列館
出講デザイナー:豊口協(長岡造形大学理事長)植松豊行(松下電器産業パナソニックデザイン社社長)
オープニングパーティ 18:00〜

日時:10月6日(金)15:00〜18:00
出講デザイナー:米谷美久(元・オリンパス株式会社取締役)榊原晏(元・株式会社NECデザイン社長)

日時:10月10日(火)15:00〜18:00
出講デザイナー:喜多俊之(IDKデザイン研究所代表 2006年度グッドデザイン賞審査委員長)黒木靖夫(富山県総合デザインセンター所長、元・ソニー株式会社取締役)

日時:10月11日(水)15:00〜18:00
出講デザイナー:松本哲夫(株式会社剣持デザイン研究所代表取締役)栄久庵憲司(株式会社GKデザイン機構会長)

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■編集後記(10/5)
・永吉さんの原稿を整理しながら、用字用語のむずかしさを思う。「タイロン・ウッズが汚名返上とばかりに」とある。汚名返上でいいのか? いきなり自信がなくなった。汚名挽回、汚名回復なんてのもあったと思った。でも、「おめいかいふく」を変換するとATOKで「汚名返上/名誉回復の誤用」と注意が出るから間違いであることが分かる。そうそう、混同しやすいよね。「役不足」はたしかに恥ずかしい誤用が多い。「荷が重い」「大役過ぎる」などの「力不足」の意味に使ってはいけない。謙遜しているつもりで「役不足でございますが」なんて言うと、「そんな役目じゃ俺の実力不相応に軽くて不満だよ」と言っていることになる。ああ、人ごとながら赤面の思い。わたしは性格が悪い会社員だったので、わざとこの表現を使ったことがある(やなヤツだねえ)。前にも書いたが、「さわり」の誤用もすごく多い。イントロの意味で使うことがあるが、正しくは話の聞かせ所、クライマックスである。わたしも「流れに棹さす」を逆らう意味と長いこと思いこんでいたが、本来は「舟を進める、流れに乗る」なのであった。先日の「修学旅行」で、食事の後カラオケやって(わたしは歌わない)、その後一部屋に集まってゲームをやった。ペーパーテストね。気象記号の意味、気象用語の漢字の読み、外国の国名の漢字表記の読み、間違いやすい漢字熟語の読みなど。当然ながら、現役のわたしが大差でトップに立つが、続く唱歌の穴埋めと歌唱で最下位に転落。賞品の宝くじをとり損ねた。しかし、普通、やるか? 酔っぱらいがこんなゲーム。お調子者の公文の先生がやらせるんだけど。わが「修学旅行」の名物イベントなのであった。(柴田)

・Folding@home。スタンフォード大学化学科のプロジェクト(教授は富士通のコンサルらしい)。世界中に散らばるパソコンで、難解な問題を解こうというもの。CPUは低くとも数多くのパソコンで計算したら早く解決するのである。SETI@home(地球外知的生命体の探査)にトライしたことのある人も多いのでは? Folding@homeでは、アルツハイマー病やガン、パーキンソン病などの問題に2000年から取り組んでいる。仕事用パソコンに負荷をかけるのは怖いのでやっていなかったが、ふとしたきっかけでトライ。今は「チームOSX」(現在11位)に参加して、せっせと計算しているのだが、何日かかっても一問目が解けない。重いグラフィック系ソフトを使っているから、空きCPUが少ないのかもしれない。「チームOSX」のフォーラムにも参加してみたが、IntelMacについての話題があったりして、もうちょっと語学力があれば面白い会話ができるんだろうな〜などと考えている。(hammer.mule)
< http://folding.stanford.edu/japanese/
>  F@H公式
< http://www.stanford.edu/group/pandegroup/people.html
>  研究メンバー
< http://teammacosx.homeunix.com/
>  TEAM OSX
< http://setiathome.ssl.berkeley.edu/
>  SETI
< http://ud-team2ch.net/index.php?%A4%CF%A4%B8%A4%E1%A4%CB
> 2ちゃんでは