クリエイターとLLPと……[13]LLPの現状
── 深川正英 ──

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LLPの法律が施行されてちょうど一年後に、産創館が講演&LLP同士の交流会という、法律施行一周年記念ともいえるイベントを行ないました。

そのセミナーでは、もちろんLLPの設立や運営に関しての基本的な話を中心とした講演もありましたが、それだけでなく、この一年の間に立ち上がったいくつかのLLPの代表者が壇上に上がり、コンセプトや活動内容や今までの実績などを発表したり客席からの質問に答える、という時間がありました。


私もその壇上に上がっていたのですが、相変わらずのゆるさが前面に出て、それはそれで他のLLPとは違った印象を与えられたのではないかと思うのですが、客席側の方がしっかりと事業を考えている人も少なくないようで、私たちの活動内容に「?」な人もいたと思います。

他のLLPはというと、医療系の専門的な知識をネットワークで共有しようというアカデミックなLLP、マイナースポーツをビデオキャスティングで配信していこうというメディアとしてのLLP、ドロップアウトしそうな子ども達をサポートしようというNPO的発想のLLP……などなど、目的が非常に明確で独自性が高い印象を受けました。

ビジネスという観点から見れば、お金になりにくい事業ばかりかもしれませんが、面白い事を考えている人が世の中にはたくさんいて、リスクが低く設立が簡単なLLPという制度が出来たことで事業化への見通しが立ったと考えると、現時点では経済産業省の思惑通りなのではないでしょうか。

講演の後のLLP同士の交流会では、それぞれの立場からの話を聞く貴重な機会となりましたが、共通の悩みとして出てきたことは、融資を始めとするお金の問題と「LLPに専念出来ない」ということでした。

融資に関しては法整備が追いついていないだけで、今後は充実していくだろうということでしたが、「LLPに専念出来ない」ことは内部の問題であるため、みなさん頭を悩ませていました。

LLPはあくまでもパートナーシップであり、パートナーがそれぞれ今まで行なってきた事業を続けながらLLPを運営するケースが大半だと思います。

かくいう私たちもまさにその通りで、組合である以上は常につきまとう問題です。ゆくゆくはLLPに比重が移っていくことを前提に動いているのですが、日々の仕事で手一杯になると、LLPとしての活動が止まってしまうこともしばしばです。

かといって、今まで行なってきた仕事を投げ出してLLPに専念することもできず、板挟みにあっているような状況です。

うまく機能しているLLPの多くは、活動に専念出来るようなLLPのための事務局もしくはそれに相当する人物を立てているそうです。フラットな組織という特長と反するような形にはなると思うのですが、外部に対する見え方も含め、当然といえば当然で、やはり重要なポイントのようです。

ちなみにLLPの設立数ですが、平成17年12月末で362件、平成18年3月末で約700件で、現在は1,000件を超えており、順調に増えているように見えます。

しかし、2006年の5月に施行されたLLC(Limited Liability Company=合同会社)がすでに現在1,000件を越えていることを考えると、LLPは伸び悩んでいるようにも見えます。

これにはいろいろ原因があると思うのですが、事業形態を「器」として考えた場合、LLCには法人格があるという点が魅力的なのではないかと思います。

LLPも「法人のような振る舞いができる」のですが、それがどこまで有効なのかが分かりにくいため、がっちり事業を行ないたい組織としてはあやふやな印象を受けても仕方がないのかなと思います。

私たちはそれらを利点と考えて動いているのですが、LLP自体の認知度がまだまだ低く信頼性において未知数なために、任意団体に毛が生えた程度の認識だったり、あやしい集団に見られたりと、広報的な活動はまだまだ必要だと実感しています。

そのためにもやはり、一般層にも分かるような成功例がそろそろ出てきて欲しいところです。このことを踏まえて、次回はLLPのこれからについて書きたいと思います。

【ふかがわまさひで】
バビル6 LLP(有限責任事業組合)組合員
※バビル6 LLPは日本第一号のLLP(有限責任事業組合)です
< http://www.b6p.jp/
>

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LLP・LLCの会計税務ガイドブックQ&A

by G-Tools , 2006/12/05