■映画と夜と音楽と…[331]地の底からよみがえる夢/十河 進
子供の頃によく聴いた民謡に「炭坑節」がある。田舎の本家で行われた法事などの後の宴席で「月が出た出た月が出た〜ヨイヨイ 三池炭坑の上に出た あんまり煙突が高いので〜 さぞやお月さん煙たかろサノヨイヨイ」と歌い踊る人々がいた。僕には「ミイケタンコ」と聞こえ、その意味がわからなかった。
就職したばかりの頃、先輩に連れていかれた組合集会の後の宴席で「地の底から〜地の底から〜怒りが燃え上がる」と歌う人がいた。それは「三井三池闘争を始めとする炭鉱労働者たちの怒りの歌だ…」と誰かが教えてくれた。しかし、「地の底から」を歌う人はインテリだったし、親が炭坑夫だったこともないと聞いた。
友人に筑豊の炭坑住宅(いわゆる炭住)で育った男がいる。昭和三十四年(1959年)に撮影され翌年に刊行された土門拳の写真集「筑豊のこどもたち」に写っているんじゃないか、と僕はからかったことがある。三井三池闘争が真っ盛りだった頃だ。

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