グラフィック薄氷大魔王[131]本を大量に処分
── 吉井 宏 ──

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先日、大量の本を処分した。ギュウギュウに詰まった本棚が壁二面、段ボールに詰め込んでスチール棚に入れっぱなしの本、廊下に積みっぱなしの雑誌の山、整理がつかず物置部屋の床に積んであった本、などなど。おまけに仕事で表紙をやった本や雑誌の山。そんなだから、なるべく新しく本を買うのを控えちゃうのも困る。

だいたい、今まで(雑誌を除いて)買った本の大部分はそのまま溜め込んできたのだから、こうなるのもしかたない。18年前に上京したときに実家の本棚から丸ごと持ってきた本、11年前の引っ越しの際に処分するつもりが時間がなくてそのまま運び込んだ本など、普通なら機会ごとに整理するものだろうから。


今までは、不要になったマニュアル本やデザイン書籍、余分にもらった執筆誌などは専門学校に寄付(っていうか押しつけに近い?)してきた。今年初めにまた引き取ってもらおうと連絡したら、図書室にスペースがなくなったとのことでダメ。う〜ん当然ですね。同じように引き取ってもらってる人が多いらしく、場所を取る年鑑や定番書籍が何冊もダブってたりするようだ。

年鑑といえば、高価な各種デザイン年鑑本や二冊組で20cm弱ほどもある海外のイラストレーターカタログ本。数年前、これらに本棚を一列占領されているのが我慢ならず、全部切り刻んで必要なページをスキャンし、捨てたことがある。丈夫な厚紙製のケースは、今でも書類仕分け用として役に立ってるけど。そりゃ、処分しなくていいのなら何万冊でも溜め込んでおきたいのだが、スペースには限りがある。本が占める空間の容積にも家賃を払ってるわけだし。

実際のところ、買っておいた本が必要になる機会はかなり減っている。というのは、イラストの参考資料はインターネットでたいてい見つかるし、最近は詳しい資料が必要な種類のイラストはほとんどやらなくなった。インターネット以前は、こんなに便利になるなんて想像もしてなかった。昔は資料本がなければ一切の仕事ができなかったのだ。本には検索できない弱点もあるし、そもそも目的の本が見つからず、そこらじゅうひっくり返したりする。

買っただけの本、読み返そうと思っていた本、ちゃんと読んでなくてそのうち読もうと思っていた本。ページを開いて拾い読みすれば、そのまま読み耽ってしまうくらいには興味があるんだけど、もういいや。過去の興味で買った本を読み返すくらいなら、これから新しく買う本を精読するほうがいい。

20年前にパリ旅行からスーツケースいっぱいに買って帰ったり、洋書店で買い集めた、入手困難だったフランスコミックも、その後ほとんど役に立ってないわけだし。最近はほとんど買わない展覧会カタログも、以前は何も考えずに自動的に買っていたので大量にある。こういうのもいらない。

処分する基準を作った。従来の「必要 or 不必要」では限界がある。たいてい必要だと思って買ったわけで、ほとんどの本は処分できないことになってしまう。今回の新基準は「今、書店で目の前にあったら、買うかどうか?」だ。これなら残す本はわずかになりそう。

一か月くらいかかって、処分する本を選出。残す本を選出というほうが正しいな。それでも未練のあるページをデジカメで撮影などしたのだが、結局面倒になり、何を処分したかの控えの意味で表紙だけ撮影した。リビングにそびえ立つ400冊の山が出現。

さすがに資源ゴミとして出すほどの勇気はないので、ネットで大量引き取りの古書店を見つけて連絡し、来てもらった。値段がつかない本も多少あったものの、ブックオフよりはるかにマシな買い取り額で大満足。しゃぶしゃぶ食べに行きました。

しかし、あれだけ処分したのに、ちっとも減って見えない〜。あと二回くらいやらないと減った気がしないかも。

【吉井 宏/イラストレーター】 hiroshi@yoshii.com

障害物競走のような聖火リレー。中には悪ノリの輩もいるだろうけど、激烈なアピールになってるのは確実。長野でもやるそうだけど、良くも悪くも日本人のおとなしさが際だっちゃうだろうな〜。

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