[2430] 「DTPデザイナー」って何?

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<ただ単にデザイナーでいいのではないか>

■装飾山イバラ道[14]
 パリ旅行記(4)グルメ編 牡蠣とムール貝と
 武田瑛夢

■気になるデザイン[12]
 「DTPデザイナー」って何?
 津田淳子

■イベント案内
 ZAIMデジタルワークショップ


■装飾山イバラ道[14]
パリ旅行記(4)グルメ編 牡蠣とムール貝と

武田瑛夢
< https://bn.dgcr.com/archives/20080527140300.html
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旅行はおいしいものも楽しみのひとつ。行ったのが3月で、チケットが安い以外に良いところがなさそうなことを書いたけれど、まだ寒いうちに行きたかった理由のひとつに、牡蠣の季節ってのがある。Rがつく月のうちに生牡蠣を食べたい。パリで牡蠣というのはあまりピンと来ないかもしれないけれど、パリの街角には海の幸をずらりと並べたレストランがいくつもあって、生の貝類が豊富なのだ。

しかし、何もあてもなく良いお店を選ぶなんて自信がないので、事前に調べておいた。パリの食事ガイドとして良さそうなものを探しているときに、「パリでひとりごはん」というカジュアルな感じの本があったので買った。そんなに気取らずに入れそうなお店がたくさん載っていて、おしゃれな雰囲気の本だ。

・「パリでひとりごはん とっておきのおいしいお店72軒」(単行本)
カイエ・ド・パリ編集部(著)
< http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4797341890/dgcrcom-22/
>

本の中で紹介されている牡蠣のお店の「Huitrerie Regis ユイトルリーレジ」というのが目に入って、フセンを立てた。私たちは夫婦で二人とも牡蠣好きなので、よくオイスターバーにも行く。食べ方は、やっぱりレモンをしぼった生牡蠣が最高。

旅行中は雑誌のレストランにいろいろ目移りしてしまって、結局このお店に行ったのは旅行の最後のディナーになった。そこは小さいけれど、生牡蠣を必死で開けるおじさんたちの活気があって気持ちの良い店だった。白を基調にした店内は清潔感があってモダン。店に入ったとたんに、海〜って感じの磯の香りがする。新鮮ですがすがしい方の磯の香りね。決して生臭くないのです。

生牡蠣を一人1ダースのコースに、白ワインとデザートをつけるのが一般的みたい。デザートは、その日はリンゴのタルトしかないとのことで、店に来ている人のほとんどは同じようなものを食べていた。メニューも牡蠣の産地とサイズと個数、値段といったシンプルなもの。私たちも王道の食べ方で一人12コづつにした。

牡蠣がテーブルに来た。大きなお皿に海藻と氷がたっぷり敷き詰められ、丁寧に開けられた生牡蠣がずらりと並んでいて壮観。ここではレモン、赤いソースの他にパンが添えられている。

・Regisの生牡蠣
< http://www.eimu.com/dgcol/kak >

フランス西海岸マレンヌ・オレロン地方の牡蠣だけを使ったお店で、二種類の牡蠣はどちらも新鮮。ひとつめにレモンをしぼってつるりと頂く。さわやかで甘い牡蠣の味がおいしい! ほどよい塩っけも海の味そのもの。うちのだんなさんは、旅行中はあまり食欲がないんだけれど、生牡蠣だけはするする入るようで白ワインと共にがんがん食べ進んでいた。

人は蟹を食べるときは静かになるというけれど、牡蠣もそんな感じで、どのテーブルの人も牡蠣を食べることに集中している。地元の牡蠣好きも納得のお店なんだと思う。私はまだ通ではないので、パンを食べるタイミングがいまいちわからなかったけれど、牡蠣の味には感銘を受けた。もう少し早めにこのお店に行っていれば、旅行中何回か行っていたかもしれない。

そして、Regisはそれを目指して行かないとたどり着かないようなお店だけれど、パリの街を歩いていると頻繁に目にする貝のお店がある。

「Leon レオン」というムール貝専門のレストランだ。シチューポットに入れられたムール貝のハーブ蒸しのような料理で、ベルギーから来たお店とのこと。チェーン店なのでいくつかの地下鉄の駅の表通りでみかけた。生牡蠣と違ってムール貝は一年中食べられるのもいい。

日本でムール貝というと、海の幸の漁師風スパゲッティなんかに2コくらいついてくるようなイメージ。ついてればカッコイイけれど、入ってなくても怒る人はいないという。

でも、レオンではムール貝が完全に主役だ。ここではムール貝でおなかをいっぱいにすると思っていい。ほとんどのお客が一人一鍋食べている。一皿でなく一鍋。黒い金属製のココット鍋いっぱいに、蒸されたムール貝は熱々でおいしそう。私のは海老入り。下の方にはスープが入っている。
・Leonのムール貝
< http://www.eimu.com/dgcol/mur >

ひとつめはフォークで食べて、二つ目からは最初のムール貝の殻をハサミがわりに使ってつまんで食べるんだそう。まわりのお客も両手にムール貝を持っている。やってみると殻は適度なバネが効いていて、やわらかい身をつまみ出すのにほんとにちょうどいい。まさかムール貝も、そんな用途に殻を使われるとは思っていなかったろうな。これも黙々と食べてしまうおいしさだった。旨みたっぷりのスープに、フランスパンをひたして食べてもいい。

なんだか貝ばっかり食べていたようなコラムになってしまったけれど、実際あまりフランス料理風のコースで出てくるものは食べずに過ごしていたかも。食事ももっと下調べが必要だったかと反省している。

けっこう行き当たりばったりで、食欲のないだんなさんがパリでの最後のディナーを「サッポロラーメン」にしようとしたのを、何とか阻止して生牡蠣に切り替えて良かった。胃が疲れてくると日本食が欲しくなるのもわかるけれど、あとちょっと我慢すれば日本のおいしいラーメンが食べられるじゃないの。

ただ途中で胃を休めるのも必要とつくづく思った事件もあった。今回一日だけイギリスへ列車の旅(ユーロスター)をしたのだけれど、昼に食べたフィッシュ&チップスのせいか、屋根なしの二階建てバスの寒さのせいかで、帰りの電車のディナーを食べられないほどダウンしてしまった。一日だけだったので、急いで周りすぎたのも悪かったかも。

だんなさんは、私にも何も食べられない状態があるというのが発見だったようでなぜか嬉しそうに見えた(謎)。食欲があるって幸せなことだったんだな。次回もパリ旅行記がつづきます。

【武田瑛夢/たけだえいむ】 eimu@eimu.com
GWに行った浅草では日本の昔ながらの町を堪能した。おやつ関係では満願堂の芋きんがヒット。お芋でできたきんつばです。

装飾アートの総本山WEBサイト“デコラティブマウンテン”
< http://www.eimu.com/
>

「やさしいデザイン」誰でもかんたん、レイアウト・配色・文字組
エムディエヌコーポレーション発行 インプレスコミュニケーションズ発売
< http://www.mdn.co.jp/content/view/3983/
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■気になるデザイン[12]
「DTPデザイナー」って何?

津田淳子
< https://bn.dgcr.com/archives/20080527140200.html
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以前から気になっている言葉がある。それは、

DTPデザイナー

という言葉。ここ何年かは、もう市民権を得ているのでしょうか。

今、googleで検索してみても、なんと501,000件もひっかかる。ひょえー。DTPオペレーターは指定紙からデータを作り上げる仕事、対してDTPデザイナーはDTPソフトでデザインするのが仕事、という区分のようですな。

お仕事カタログ[DTPデザイナー・DTPオペレーター]
< http://www.keikotomanabu.net/job/s/c20-015_00030001.html
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では、DTPデザイナーとグラフィックデザイナー、エディトリアルデザイナー、デザイナーとの違いはなんぞや。今、後者のデザイナーだって、多くはDTPソフトを使ってデザインしているではないか。

WebデザイナーはWebサイトをデザインする人。エディトリアルデザイナーは出版物をデザインする人。ブックデザイナーは本をデザインする人。パッケージデザイナーはパッケージをデザインする人。ということからすると、DTPデザイナーという名前の付け方はなんだかおかしい。

DTPデザイナーは、フライヤーやリーフレット、パンフレット、DM、ポスター、また雑誌や書籍などをデザインするのが仕事のようだが(ググってみたらそういうことらしい)、それならグラフィックデザイナーだったり、エディトリアルデザイナーだったり、両者ともなんか違うな、ということならただ単にデザイナーでいいのではないか、と思うのだが、そうはなっていない。私はそこになんだかちょっと嫌な感じを受ける。

私は4年くらい前まで、DTP専門誌の編集を6年ほどしていたが、そのときDTPデザイナーという言葉を誌面で使わない、と決めていた。私がそのDTP専門誌に携わり始めた頃にはDTPデザイナーという言葉自体、耳にしたことがなかったような気がする。それがいつの頃からか、Webや求人誌、お稽古雑誌などでそういう言葉を目にするようになってきた。

DTPデザイナーという言葉がこれほど多く登場する前は、各種デザイナーか、もしくはDTPオペレーターという言葉だけだった。たしかに、DTPオペレーターとして会社に入っても、オペレーション業務だけでなく、自分でデザインしなければならなくなる仕事も往々にして出てくる。そうなると、DTPオペレーターという仕事の範囲からは確かに出ていることになる。そうなると、DTPデザイナーと呼ぶようになるのだろうか。

でもDTPデザイナーという言葉には何か、グラフィックデザイナーとかエディトリアルデザイナーとか、ただ単にデザイナー、とかいうのは、ちょっと敷居が高い、そこでもう少し手軽な感じのするDTPデザイナーという言葉を使ってみよう、DTPソフトを学べばなれるんですよ、そんな感じが入っているんではないか。そんな邪推をしてしまう。

しかし、デザインをする人ならば胸を張って「デザイナーです」と言えばいいと思うし、オペレーションをする人ならば胸を張って「オペレーターです」と言えばいいのだと思う。DTPデザイナーはそのどちらでもなく、デザイナーですと言うほどデザインができるわけではないし、オペレーターです、というのでは物足りない、といった感じがしてならないのだ。ケッ。(妄想し過ぎでしょうか……)

そうそう、今回検索していて新たに気になったのが「DTPオペレーターからグラフィックデザイナーへステップアップ」というような記載。けっこうたくさん目にしたのだが、これもなんだかなぁ、という気がした。オペレーターからデザイナーへって、ステップアップなんでしょうか。違うと思うんですが。

そういえば、私は、いままでお目にかかった方の中で、自分の職業を「DTPデザイナーです」と言った人はひとりもいない。名刺の肩書きにそう書いてある人もひとりもいないなぁ。これはいったいどういうことだ。うーむ。

【つだ・じゅんこ】tsuda@graphicsha.co.jp
目に飛び込んでくる、銅色箔押ししたでっこぼこな表紙が目印の『デザインのひきだし vol.5』は、来月初旬に書店にならびます。凸凹な印刷や加工っておもしろいですな!
最近作った本は『デザイン・配色のセオリー』『デザイン事務所の封筒・名刺・ビジネス文具コレクション』『しかけのあるブックデザイン』など。
< http://www.graphicsha.co.jp/
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■イベント案内
ZAIMデジタルワークショップ
< http://za-im.jp/dws/
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< https://bn.dgcr.com/archives/20080527140100.html
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●Max/MSP/Jitterコース

Max/MSP/Jitterを使って、映像と音楽のライブパフォーマンス(DJ、VJなど)をします。音と映像をリアルタイムに加工したり、生成したり、ダンスや照明と組み合わせたり、インタラクティブな作品を作る方法を学びます。また、初心者でも簡単にインタラクティブなプログラムが可能なソフト「ISADORA」も紹介します。なお、スペシャルゲスト講師も予定しています。最終日には、横浜赤レンガ倉庫にて行われる『ヨコハマEIZONE2008』内で、参加者と講師のライブパフォーマンスを開催。
講師:飯名尚人(Dance and Media Japan)、安野・ブリゴ・ヨハネス・太郎(方法マシン代表)
受講料:20,000円 全6回
開催日時:火曜日 6/10、17、24、7/1、8、15 各19:00〜21:30

●Flashコース

基本的なFlashの使い方は理解しているものの、アニメーション制作においてさらなるレベルアップをはかりたい方を主な対象とし、様々なFlash上でのイラストやアニメーションテクニックを学びながらひとつのストーリーを持ったアニメーション作品を制作。『ヨコハマEIZONE2008』内で展示・発表することを目標とします。
講師:まつばらあつし(イラストレーター)
受講料:8,000円 全6回
開催日時:水曜日 6/11、18、25、7/2、9、16 各19:00〜21:30

●Painterコース

コンピュータを使って、本格的なペインティングを楽しめるPainter。油絵や水彩のたしなみはあるが、デジタルにも挑戦してみたかった、Panterを本格的にマスターしてみたかったといったユーザーにはおすすめの「デジタル絵画」教室です。基本的なソフトの使い方から、作品作りまで学び、最後は作品を完成・額装して『ヨコハマEIZONE2008』で展示・発表することを目標とします。
講師:Artist HAL_(ミクストメディアアーティスト)
受講料:7,000円 全6回(キャンバス布出力費含む)
開催日時:月曜日 6/9、16、23、30、7/7、14 各19:00〜21:30

場所:ZAIM 本館1F 交流サロン(横浜市中区日本大通34 TEL.045-222-7030)
主催:財団法人横浜芸術文化振興財団(横浜市中区北仲通4-40 商工中金横浜ビル5F TEL.045-221-0212)
共催:横浜市開港150周年・創造都市事業本部

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■編集後記(5/27)

・嵐山光三郎「妻との修復」(講談社現代新書、2008)を読む。いや、あの、ウチが、修復が必要な状態にあって、というわけではないです(汗)。嵐山サンによると「どんなかわいらしい娘でも、結婚して7年たつとおばさんになる。14年たつと妖怪になる。21年たつと鬼婆になり、28年で超獣となって、それ以上たつと手のつけられない神様となり、これを俗にカミさんという」。いまや日本では、離婚は特殊なことではなく当たり前、世間の男はたえず妻からいつ離婚を言い渡されるかびくびくするご時世になった。嵐山サンの友人も2/3が離婚組だが、まだ離婚していない友人7人に聞いて回り「妻とうまくやるための50ヶ条」を第1章にまとめた。○○をプレゼントするとか、便所掃除するとか、たわいないテクニックばかりで、半ば冗談でまとめたものだと思う。ただ、「いっさい口ごたえしない」というのは金科玉条であろう。第2章以降は、まず知り合いの難儀な夫婦の例をもちだし(本当か虚構かはともかく)、続いてかつての文士たちの「妻との修復」の様々な実例を引き、教訓を並べて行くという、だいたい同一のスタイルだ。文士たちの夫婦関係の研究では本邦随一の筆者のこと、ちょっと強引ではあるが、うまく流れをつくっている。それにしても、文士も関係する女性も、普通の感覚とはかけ離れた怪物揃いで、あきれながらもおもしろく読める。結局、75の教訓を得るが、男にとってはけっこうリアルでコワイのもある。結論は「歳をとって妻が威張り出すのは世の常であるから、ぼけてぼけてぼけまくり、妻の圏外へ逃走する。そうすると地平の果てに道楽人生が見えてくる。逃走しつつも離婚をしないところに夫の居場所がある」というもので、真剣に「妻との修復」を模索する人の参考になるのかどうかは分からない。一気に読んだ。さて、この本をウチの神様の目が届かないところに隠匿せねばならぬ。(柴田)
< http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4062879344/dgcrcom-22/
>
アマゾンで見る

・「おもちゃのまち駅」ってあるのね。gooにアクセスしたら、注目スポットとして地図が表示されていた。どこにあるんだろうと、当初目的から脱線して調べてしまった。こういうのでつい時間を使ってしまうんだよなぁ。栃木県にある駅。駅の近くに玩具製造関連会社が集まった工業団地「おもちゃのまち」ができたことからついた名前で、住居表示も「おもちゃのまち一丁目」などと表示するそう。「おもちゃのまちバンダイミュージアム」は、地名を冠にしていたとは知らなかった。「品川バンダイミュージアム」みたいなものだったのね。現在「ヨーロッパびっくりおもちゃ展 100年前の匠の技」開催中。6月29日まで。(hammer.mule)
< http://ja.wikipedia.org/w/index.php?oldid=18347465
>  駅
< http://www.bandai-museum.jp/
>  バンダイミュージアム
< http://www.bandai-museum.jp/oshirase/index.html#bikkuri
> おもちゃ展