気になるデザイン[13]極太丸ゴシック赤文字の沖縄の選挙ポスター
── 津田淳子 ──

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先週末、沖縄県議選があり、県政与党の自公が過半数割れした。というニュースが流れましたが、与党が破れたということより(だって当然の結果でしょ)私が気になっていたのが、そこで使われていたであろう、選挙ポスターだ。

私は、沖縄・離島好きで、年間、十指に余るほど沖縄へ行く。それほど行っていると、当然、選挙期間中に当たることもあり、そうなるとどうしても選挙ポスターに目が行ってしまう。

だって、沖縄の選挙ポスターは、変わっているのだ。



いや、変わっていないからこそおもしろいのかもしれない。どの候補者のポスターも概ね同じデザインなのだ。写真がドーンと全面に敷かれ、そこに極太の丸ゴシック体で名前が載る。そしてその名前は、ほとんどがひらがなかカタカナに開かれ、おまけに下の名前を大きく目立たせている人が多いのだ。

< http://image.blog.livedoor.jp/tandega/imgs/1/9/192b2efe >
< http://image.blog.livedoor.jp/tandega/imgs/2/c/2c5ecca4 >
< http://image.blog.livedoor.jp/tandega/imgs/d/c/dc9e7a9b >

名前をひらがなやカタカナに開いているのは、戦後アメリカの占領下だったため、漢字が読めなかった人がいたから、ということらしいが、それにしてもこの極太丸ゴシック体の赤い名前表記は、そろいも揃ってどうしてこうなっているのだろうか。

他にも沖縄ではのぼりのようなものもよく見かけるが、すべてこの選挙ポスターのデザインが踏襲されている。うーむ。まあ、文字は目立つかもしれないし、大事なのはその人の政策の方なので、ポスターはどうでもいいっちゃいいんだけど、でもここまで同じビジュアルなのは気になるなぁ。

沖縄もだけど、私はもちろん、地元の選挙ポスターも非常に気になって、選挙のたびにじっくり見ている。これはきちんと統計をとっているわけではないけれど、ベーシックで奇を衒わず、写真がきれいに印刷されているポスターをつくっている人が当選しているような気がする。

私は二年程前に東京の杉並区に引っ越してきたのだが、いわゆる「泡沫候補」が多く(?)、それらの候補者のポスターは、一様に文字だけが一色刷りされていたり、自分で撮ったようなスナップ写真であったり、妙なビジュアルのポスターで、一見して当選しそうにない。そして実際に当選しない。やはり、当選する人のポスターは、それなりに安定感があって、好感を持てるビジュアルになっていると思う。

一時期、「選挙に勝てる、必勝ポスターデザイン」なんていう本を作ると売れるかな、と考えて、Webサイトを検索したりしたことがあったのだが、やはりそういうことを考えている人たちはいるんですね。
< http://k-gengo.com/senkyoposter.html
>

ちなみにこのサイトに都心の選挙ポスターが集められていたので、先ほどの沖縄のものと比べてみると、一目瞭然です。
< http://k-gengo.com/senkyodb_tochiji.html
>

東大のゼミでも、選挙ポスターのビジュアルは研究対象になっていたんですね。うーむ。読んでみたいけど高い。
< http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4833223295/dgcrcom-22/
>
選挙ポスターの研究 東大法・蒲島郁夫ゼミ

あとこれは全国どこのポスターでもそうですが、候補者の写真をレタッチしている人、白目を修正液で塗ったように真っ白に修正するのはやめた方がいいと思うのです。人の目って血管があったり、少し青みがかっていたりしているわけで、それを真っ白にするのは変だと思うんですが。細かいこと気にし過ぎ?

【つだ・じゅんこ】tsuda@graphicsha.co.jp
目に飛び込んでくる、銅色箔押ししたでっこぼこな表紙が目印の『デザインのひきだし vol.5』は現在、好評発売中!  特集は「凸凹な印刷・紙・加工テクニック」と「いい文字組みのために目を鍛えよ!」です。
最近作った本は『デザイン・配色のセオリー』『デザイン事務所の封筒・名刺・ビジネス文具コレクション』『しかけのあるブックデザイン』など。
< http://www.graphicsha.co.jp/
>



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選挙ポスターの研究
東大法・蒲島郁夫ゼミ
木鐸社 2002-11

by G-Tools , 2008/06/10