買物王子のモノ語り[4]たまには上野へ。ジャパニーズアートに出かけてみる。
── 石原 強 ──

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琳派の愉しみ (ランダムハウス講談社MOOK)東京国立博物館で開催中の「大琳派展」に行ってきました。国立博物館で行われる琳派展は1972年(私の生まれ年だ!)以来36年ぶりということ。高校生の時に、美術の先生から琳派展カタログを見ながら解説をしてもらって以来、まとめて観てみたいとずっと思っていました。まさに念願かなった展覧会なので、早速観に行ってきました。

休日は混雑しているようなので、平日の午前中に行きました。それでも思ったよりも混んでいました。でも、なんとか観られたのは、観客の平均身長が低いので肩越しに眺められたからです。中はおじいちゃんおばあちゃんばかりで、養老院の団体ツアーに巻き込まれたような状態だったのでした。

中身は、さすがに「大」と冠するだけあって、力の入った展覧会でした。琳派の始祖とも言える俵屋宗達の作品は、充実していてどれも素晴らしい。中でも印象に残ったのは「白象図・唐獅子図杉戸」です。大きな画面一杯に描かれた空想上の動物は迫力ありました。こんな戸が、暗い部屋にあったら本当に怖いけど。「風神雷神図屏風」は期待していましたが、まだ展示開始されていなくて残念でした。



尾形光琳の名作「燕子花図屏風」は、教科書にも載っていて覚えていたけど、大きさや質感からまったく別ものに思えます。軽やかなテンポの良い音楽を聞いているような感じでとてもいい。絵の前にあったソファーは、まったく空くことがありませんでした。小さな作品ですが「竹に虎図」は、墨一色でシンプルなものの、虎の顔がイラストチックで愛嬌があります。

あと気に入ったのは「蕨図団扇」です。掛軸として表装されていますが、楕円の画面がおもしろい。実際には貼られていなかったみたいですが、縁側でこんな団扇をあおいで涼みたい。

他にも見所は沢山ありますが、詳細な内容はブログや雑誌で書かれていますし、実際に行って観るのがいいと思いますのでこれくらいにしておきます。風神雷神にみられる漫画のような表現や、花や風景など単純にキレイな絵も多いので、日本画なんてちょっとよくわからない…、という人でも十分楽しめると思います。急いでまわっても、小一時間はかかるボリューム。私は2周目含めて3時間近くかかりました。

さて、展覧会を見終わって楽しみなのは、やっぱりお土産屋さん。展覧会場よりも混雑していました。図録や絵ハガキ、複製画といった定番に加えて、この展覧会用に企画されたオリジナル商品も充実しています。お菓子では「とらや」が販売日限定で、当時のレシピを再現した和菓子なんてのもあります。目を引いたのは、尾形光琳の風神雷神を象った「BE@RBRICK(ベアブリック)」が売られていたことです。

ベアブリックはご存知、クマのかたちをしたフィギュアです。クマの形に、風神雷神のいかつい顔の組み合わせはかなり不気味です。風神の持っている布や雷神の太鼓がないので、どちらも同じに見えてしまうのは、ちょっと残念。でも、おなかの出具合なんかは意外とうまくハマっている感じもします。とはいえ、価格は2体セットで3000円。さすがに観客の年齢層が高いと売れないらしく、在庫もたっぷりありそうです。もちろん、私は即購入ですけど。

お会計という段になって、財布の中に現金がないことに気がつきました。朝一番にお金を引き出すつもりで、すっかり忘れて博物館に入ってしまったのです。クレジットカードが使えるか聞いてみけど、案の定「ダメ」という返事。入口の係員に尋ねると、ATMは駅前まで行かなければないということです。それでは正門を出てしまうので、再入場ができなくなります。この会場限定販売ですから、外に出てしまっては買えません。

半分あきらめながら会場の平成館を出て、とぼとぼと隣の本館前を通りがかると「ミュージアムショップ」の立て札がありました。とりあえず中に入ってみると、さっきのお店に並んでいた商品がほとんど揃っています。しかも、レジにはカード会社のシールが貼られています。急いで確認すると、こちらではカードOKとのこと。しかも、客がいなくて閑散としています。のんびり商品を見て、お目当ての図録とベアブリックを手に入れることができました。

大琳派展〜継承と変奏〜
< http://www.rinpa2008.jp/
>

尾形光琳の風神雷神図屏風「BE@RBRICK(ベアブリック)」
< http://www.tnm.go.jp/jp/guide/museumShop/20080813bearbrick.html
>

【いしはら・つよし】tsuyoshi@muddler.jp
来場者は10万人を突破したそうです。今週から展覧会の象徴ともなっている、4人の絵師による風神雷神図が一堂に会すということです。壮観だろうから是非観たい。やっぱり、11月16日までにもう一度行こうかな。
・ウェブアナ < http://www.muddler.jp/
>

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by G-Tools , 2008/10/30