DTPデータ解体新書──DTPな人たちのソフトウェア環境は今
── 笹川純一 ──

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データ入稿の印刷という業務に携わって、もう8年くらいでしょうか。今まで印刷通販という業務形態を通じて、全国のお客様の様々なデータを拝見させていただきました。

そうした業務を行う中で、最近のDTPに携わる方々の制作環境はどんな感じになっているのだろう? という興味がわいて「DTPのソフトウェアのバージョンは何を使っていますか?」というアンケートをWebで行いました(2008年9月30日で投票は締め切りました)

◎Illustrator・Photoshop・QuarkXPress・InDesignでの結果は、以下の通りになりました。


■Illustrator

 [1位]…28.5%…Illustrator 8
 [2位]…22.3%…Illustrator CS2
 [3位]…21.6%…Illustrator CS3
 [4位]…12.2%…Illustrator 10
 [5位]… 7.9%…Illustrator CS
 [6位]… 3.4%…Illustrator 9

Illustrator8が予想通り1位という結果に…。

実際、Illustrator8の操作感や軽快さ、安定感が良いという方がまだまだ多いようですね。Illustrator8.0.0(8.0.1への無償アップデートをしていないインストール時のバージョン)だとファイルの保存に問題があったり、動作が不安定だったりしましたが、Illustrator8.0.1だとかなり安定して動作しましたからね。(※1)

次点のIllustrator CS2はバージョンアップの関係でしょうかね。Illustratorは、例えばIllustrator5.5を持っていて、Illustrator10に一気にバージョンアップするといったことができましたが、Illustrator CS3からそういったことができなくなったので、Illustrator CS2のバージョンアップの駆け込み需要があったのかもしれませんね。実際、Illustrator CS2だとテキスト編集などで行間が詰まる問題があったりして私も結構困っているのですが…。(※2)(私はIllustrator CS2をメインで使っていますので……)

データ入稿では最近Illustrator CS2以降がかなり増えていますね。

Illustrator 10はMacOS9でも動作しますが、MacOS Xでも動作するので結構使われているのかもしれません。ただ、Illustrator CS4が発売されると、Illustrator 10からのバージョンアップができなくなるので、4位のIllustrator 10がどのように動くのかが今後気になりますね。

※1:Illustrator8.0.1へのアップデートは以下のページ。
< http://www.adobe.com/jp/support/downloads/801.html
>

※2:Illustrator CS2/CS3で発生する問題。
Illustrator CS3では一応解決します。
保存を繰り返しながらテキストを編集すると行間が突然詰まる
< http://support.adobe.co.jp/faq/faq/qadoc.sv?226891+002
>

■Photoshop

 [1位]…22.7%…Photoshop CS2
 [2位]…22.1%…Photoshop CS3
 [3位]…18.5%…Photoshop 7
 [4位]…13.3%…Photoshop 5.5
 [5位]…12.3%…Photoshop CS
 [6位]… 7.5%…Photoshop 6

PhotoshopもCS2が多いですね。

Photoshop CS以降が63%程度なので、新しい環境でPhotoshopを使われている方がかなり多いことが読み取れますね。やはり画像データを扱うにあたっては、CPUが速くてメモリ搭載量が多い、新しめのマシンの方が有利だからでしょうか。最近のマシンでは、メモリが4Gバイト搭載というものも珍しくはないですからね。

Photoshop CS2/CS3ではメモリが1Gバイト以上の方には描画を高速化するTipsもあるので(※3)、新しめのマシンがやはり快適なんでしょうね。

※3:たった1文字ファイル名を変更するだけでPhotoshopを高速化させる方法
< http://blog.ddc.co.jp/mt/mail/archives/20080730/100400.html
>

■QuarkXPress

 [1位]…35.8%…QuarkXPress 3.3
 [2位]…34.9%…QuarkXPress 4.1
 [3位]…14.4%…QuarkXPress 6.5
 [4位]… 6.2%…QuarkXPress 3.1
 [5位]… 5.0%…QuarkXPress 6.0

QuarkXPress 3.3という、予想通りといえば予想通りの結果になってしまいましたね。それでも、QuarkXPress 4.1への移行も半分程度は進んでいて意外な感もありますね。QuarkXPress 6系は、実際に使っていてもあまり安定感がなかったような気がしますが、QuarkXPress 8はどうなんでしょうかね。データの入稿もQuarkXPress 6系よりはまだ、QuarkXPress3.3やQuarkXPress 4.1の方があるように感じです。

QuarkXPress 8では、OpenTypeフォントの異体字などの対応や透明効果の対応などもされていて機能アップはされているみたいなのですが、どこまで日本のシェアを巻き返せるかが気になりますね。

■InDesign

 [1位]…37.3%…InDesign CS2
 [2位]…32.2%…InDesign CS3
 [3位]…11.6%…InDesign CS
 [4位]… 9.4%…InDesign 2

InDesignは新しめのソフトウェアなので、InDesign CS移行に大きく偏っています。データ入稿では、ページ物の印刷の多くはInDesignから書き出したPDF/X-1aでの入稿が非常に多いですね。ひとつのファイルで渡せて、リンクファイルの渡し忘れなどがないので、比較的気軽にPDFが利用されているみたいです。

今回のアンケートを採ってみて分かったのは、DTPを使っている人は古い環境に固執しているといったイメージが浮かび上がったわけではなく、新しい環境を使用している人たちが意外と多いということです。

新しい環境では、インターフェイスが違ったり操作感が違ったりして、色々戸惑うことも多々あるかと思いますが、それを乗り越えれば今までできなかった作業の効率化などが図られるのではないでしょうか(それを乗り越えるのが、なかなか勇気や根気が必要なのですけどね)。

セミナーなどでソフトウェアの新機能を知ることも大切ですが、自分に本当に関係あるのかなぁという気持ちになることも多いので、身近な人で新しい環境での作業をしている人がいたら、まずはそういった人たちに実際はどうなのかを色々聞いてみることが、新しい環境への移行の第一歩なのかもしれません。

【笹川純一】sasagawa@ddc.co.jp
DTPデータ入稿を手がけてまだまだ8年目の、個人的には若手だと思っている印刷会社の人。昔は出力できなさそうなデータでも最近のパワフルなRIPだと、あっさり出力できてしまうので、一抹の寂しさも感じる今日この頃(笑)。
今まで出会ったDTPデータのエラーや、PDF変換手順などを掲載した冊子の販売も行っています。
< http://www.ddc.co.jp/
>

現在「DTPでよく使っているフォントの種類は何?」というアンケート実施中
< http://blog.ddc.co.jp/mt/dtp/archives/20081022/120900.html
>