[2606] 大リーグボールの悲哀

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<げに恐ろしきは貧乏性とCG入門書のスリコミ>

■音喰らう脳髄[65]
 大リーグボールの悲哀
 モモヨ

■アナログステージ[11]
 散らかっていることの美学
 べちおサマンサ

■つはモノどもがユメのあと[03]
 mono02:かつての“CGの必需品”
 ──「HAL LABORATORY HWS-10G / NISCA Niscan Spectra」
 Rey.Hori


■音喰らう脳髄[65]
大リーグボールの悲哀

モモヨ
< https://bn.dgcr.com/archives/20090317140300.html
>
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なんだか、政治状況が日々厳しく、というか、わびしくなっており、いまや悲惨というべき姿を通り越している。誰だってすっきりしない気分で毎日を過ごしているに違いなく、私もその一人だ。朝、起きて現実に対面するのがつい億劫になるが、今朝に限っては気合で早起きした。

WBCのキューバ戦を観るためだ。

立ち上がりに少しハラハラさせられたものの、立ち直ってからの松坂の快投は、早起きして観る価値があるものだった。ほんの少し気分も上向いた。また、今朝のピッチングを見ていて、アメリカに渡ってからの彼のピッチングスタイルの変容にあらためて驚きもした。

よく知られていることだが、彼は渡米した当初、ほぼ一年間、相当苦しんだ。漫画『巨人の星』において、主人公が巨人軍に入団してから味わう苦悩を、彼もまた苦しんだのだろう。ちなみに、平成になってからはメジャーリーグという呼称が一般化したが、昭和において、大リーグという呼び名が通例だった。そんな時代の野球漫画の傑作が『巨人の星』だ。

そこでは、主人公は、直球勝負にこだわる従来のスタイルを捨て、《超》変化球ともいうべき《大リーグボール》なるものを編み出し、それを中心にしたピッチングで再生をはたすのである。作中の《大リーグボール》は驚愕的なシロモノだったが、松坂の投球は、地上に顕現した《大リーグボール》と言っていい。

そんなことを考えていたはてに、ふと悲しくなった。《大リーグボール》という名前にである。あの時代、私たちは何と自己を卑下していたことだろう、そんなことを思い出したからだ。

本場=アメリカの野球には、私たち日本人では歯が立たない怪物的な選手が山ほど存在している。私たちは、そう信じ込まされていたし、そう信じているからこそ、魔球にその名前を冠した漫画を抵抗なく読みふけっていたし、何の不自然さも感じなかったのだ。

ことは野球だけではない。音楽、例えばロックの世界にしても、私たちはどこか自己卑下した価値観を共有していたようである。それが敗戦国の戦後というものなのだろう。

なんてことを思っているうちに無難な継投が続き、無失点で日本が勝っていた。いくら6点とってキューバに勝ったとて、こんなことを考えていれば心も晴れるわけがない。わざわざ早起きして見た試合なのに、そう思うと、なんか悔しい。損した気分。(3月16日)

Momoyo The LIZARD 管原保雄
< http://www.babylonic.com/
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■アナログステージ[11]
散らかっていることの美学

べちおサマンサ
< https://bn.dgcr.com/archives/20090317140200.html
>
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●片付けられると厳しい

ワタクシは「汚さの潔癖症」と自負しております。対義語のように思われるかもしれませんが、汚さの潔癖症なんです。汚れているのはダメなんですが、散らかっている空間は大好きなんです。物が周囲にバラ撒かれている状態など、その散らばり具合に、つい、うっとりとしてしまいます。一か月ほど前まで奇麗に整頓されていた作業場が、ついに足の踏み場もない状態まで成長を遂げたのである。

作業場といっても、ワタクシのスペースは半個室に近い部屋なので、掃除をするのも散らかすのも、ワタクシの勝手自由。できれば物が散乱している空間に安堵感を覚えるのですが、ワタクシのアシスタントが奇麗好きというか、きっちりしている性格のため、散らかしても、すぐに片付けられてしまう。しかし、今まで散々たる状況は幾度もあったのですが、本当に足の踏み場がない状態というのは、初めてのことかもしれない。

というのも、いま現在、開発しているモノの終了期限が迫っていることもあるのですが、一日単位で変更要請が出てきており、この状態で開発を終了してしまうと、「製品化したら、限りなく怪しい灰色な状態」でリリースしなくてはいけない。これだけは何が何でも避けたい。それと同時に、ほかの問題(懸案)も相当抱え込んでおり、プライベートな時間はおろか、睡眠と食事の時間もギリギリまで削った、ワーカホリッ君に陥っている。できれば、これも避けたいところだ。

先日も、特殊素材で出来ているネジを床に落としてしまい、床から探しだすまでに約30分。ごく一般的な鋼ネジなら探すまでもなく、新しいネジを使うのですが……。見つけたと思った矢先に、今度はピンセットで挟んだ薄膜フィルムが落ちていった。今度は特殊素材なうえに、クリーンルームで洗浄してあるものなので、見つけたとしても洗浄し直さないと使い物にならない。といっても、あの汚い部屋で開封した時点で、洗浄もクソもない気もするが……。

いったん落ち着きを取り戻し、我に返って作業場を眺めると、災害後のような姿に自分でもビックリ。ここから探すのか…キツいな…。砂浜に落としたコンタクトレンズを探すように、床に這いつくばって必死に探すもまったく見つからない。そりゃそうだ、透明なうえに20mm角の大きさだ。さっき落としたネジとはわけが違う。とりあえず、30分探しても探せなかったら、新しいものを用意してもらおうと探し始めたが、結局見つからなかった。

そしてつい先日、あまりの汚さに、見るに見かねたアシスタントが、ワタクシの外出中に部屋を片付けてしまった。片付けてくれるのは嬉しいのですが、物や書類がどこにいったのか、一瞬で分からなくなってしまった。さっきまで「床に置いといた部品」が見つからない。まさか、床に落ちている図面や部品が、これからまだ使うものだとは、本人以外は分かるはずもないので、躊躇なく捨てられてしまった。

開発中は、作業が終わるまでは立ち入らせないようにしているのだが、ほかのことも同時進行していたこともあり、「ここは絶対にモノを動かしたりしないでね。」と注意を促すことを忘れてしまっていたとこもあるが、あまりの汚さに、「これは片付けなくては!」と思ってしまったのだろうか。

できれば画像でその散々たる作業場をお見せしたいところですが、作っているものが、NDA(秘密保持契約)に抵触してしまう恐れがあるので、お見せできないのが実に惜しい。自慢できる汚さなんだけどなぁ。余談ですが、ネジを落としたときの状態を撮り、“なにかを勘違いしているハイダイナミックレンジ風画像”を、mixiの日記に掲載したら、G/Hさん(仮名)から、「生の姿をさらした写真に見せかけて、実は、これだけはマズいってもんを隠してから撮ったでしょ。点線でナニカが見えてしかたがないんですけど。」と突っ込まれてしまった。うーん、さすが。

そんなことをしているうちに、制御コントロールのハード(配線や基板の製作)が、ほぼ組み上がり、やっとソフトの打ち込みに取り掛かる。いま開発中のものは、簡単な制御プログラムのほかに、タッチパネルからパソコン、サブサーバをリンクしたものを作りこんでいます。

最近のタッチパネルは、セルフガソリンスタンドなどで見かける方もいらっしゃると思いますが、解像度がXGAまで表示することができるうえに、アニメーションや動画も動作できる環境が出来上がっているので、以前に比べて、作りこむ楽しさが増しております。

作画するにも個人スキルに限界というか、センスの問題も絡んでくるので、頭の中に構想は練れても、それを正確に表現できる腕がない。せっかくの動作環境とグラフィック環境なので、今後はイラストレーターさんやグラフィックデザイナーさんと協力して、他社とはひと味違うものが作れればと、ひとりでニヤニヤ考えております。

●自分だけの空間制御

本当に奇麗好きというか、きちんと整理整頓されていないと気が済まない方には嫌な話かもしれませんが、散らかっていることの気持ち良い部分に、自分にしか分からない配置という、空間制御な意味合いもあります。他から見たら「混沌とした空間」に映るかもしれないが、自分には安らぎの空間になったりもするのです。まぁ、縄張りみたいなもんです。さすがにイヌのように、あちこちにマーキングするわけにもいかないので、『物を散りばめる』という方法で、自分の領域を保っているのだ。食事に出かけても、この空間制御はよく目にします。

他の人は気になるが、ワタクシはまったく気にならない部分もある。さすがに壁紙からテーブルまで、油でベットリというのは勘弁して欲しいが、3年前の女性週刊誌が新刊のように置いてあったり、座布団から綿が飛び出していようが、醤油の染みが付いていていようが、気にはならない。店主が無頓着なだけかもしれないが、そこは店主の制御空間でもある。座布団から綿が飛び出しているのは、布地が擦り切れてしまったわけではなく、店主の演出の一部なのかもしれない。

間接照明がとても演出的で、BGMも耳心地良いJAZZが流れているお店の壁に、「○△工務店」と年末の挨拶で持ってきた業者カレンダーが、絵画の代わりに飾ってあっても、それはそのお店の心憎いインテリアとして認識している。また、そのようなお洒落なお店のエントランスに、東スポや少年マガジンが置かれていても、なんら気にすることはない。

造形物や装飾品の代わりに、観光地をモチーフした温度計や、熊が魚をくわえている木彫りなどが、店の至るところに無造作に置かれていても、それはオーナーが考えに考えた店内オブジェであり、少しだけ趣味やセンスが違うだけなのだ。木彫りの熊も、オーナーの深い思い出のひとつかもしれないし、やはり、そこはオーナーの空間制御区域。オーナーの空間演出を愉しむのが得策。

散らかっていることとは、またニュアンスが異なりますが、自分だけの空間を愉しむことは、その場の雰囲気をも愉しませてくれます。常識に縛られることなく、その人ならではの、オリジナルな空間を提供していただきたいです。

●そこにそれが必要かどうか

散らかっていることの便利さに、「手を伸ばせば必要なものがそこにある」という、ものぐさの極みがあります。逆を云うと、「必要なものを身の周りに置いていたら、物で溢れかえっていた」という現象を目にしますが、必要性が高いものを身近に置いておくことは、誰しもされていることでしょう。ただ、きちんと棚などに収納しているか、無造作に置いておくかの違いだけで、やっていることは同じなはずです。

以前、テレビで「片付けられない症候群」などやっておりましたが、片付けられないのではなく、片付ける必要性がないので、そのままの状態をキープしている要素も大きい。例えば、トイレに卓上ガスコンロが必要かといったら、まったく必要がない。用を済ませながら、煮物の続きを作ることはしないはずだ。しかし、何らかの事情でトイレの中でしか料理ができないとすると、卓上コンロは必要なアイテムになる。そうなると、鍋もフライパンも近くに置くようになるし、油や調味料も、芳香剤の横に置き始めるだろう。

本当に「片付けられない症候群」だったら、自分だけの空間制御どころではなく、無制御状態に陥り、物の所在を把握するどころか、気が付いたら、役所も困るゴミ屋敷の住人になっているだろう。そのへんのバランスは、自分以外には理解が苦しいところだ。あ、そうか、ある意味でゴミ屋敷は究極の空間制御なのかな。制御というよりも、防御に近いけど……。

しかし、これだけ無頓着にも拘わらず、パソコンの中身はきっちりと整理されていないとダメ。デスクトップにショートカットやフォルダのアイコンが一面に散らばっているのを見ると、首筋が攣りそうになります。呼吸も苦しくなります。なんて矛盾しているんだろう。

【べちおサマンサ】 pipelinehot@yokohama.email.ne.jp
FAプログラマーであり、ナノテク業界の開発設計屋。
< WEB SITE:http://www.ne.jp/asahi/calamel/jaco/
>

・遊びに出歩く時間がないので、アメリカのテレビドラマ、ミレニアムをまた観ています。13年も前の作品なのに内容が色褪せてなく、ミレニアム(2000年)が過ぎていても面白い。ある意味で「予言」が的中している脚本に感服。・といいながらも、時間があると近所の立ち飲み屋で一杯。年齢を問わず、カウンターで肩を並べながら飲む酒は旨い。BGMはない。会話がBGMだ。話題も豊富で、人生の先輩諸氏から、いろいろと勉強させていただいてます。/音楽の話で盛り上がったとき、ここでアンプラグドライブを演ろう! と酒が口を滑らせてしまった。後日、常連さんの間で日程まで決まってしまい、言いだしっぺのワタクシは都合をつけるのに必死中。幸い出張からは逃れてはいるが、自分で蒔いた種が蕾み膨らむ。どうなる。

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■つはモノどもがユメのあと[03]
mono02:かつての“CGの必需品”
──「HAL LABORATORY HWS-10G / NISCA Niscan Spectra」

Rey.Hori
< https://bn.dgcr.com/archives/20090317140100.html
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筆者の2009年現在の制作環境は完全にMacベースだ。動作確認などのためのWindows機もあるにはあるが、メイン機MacProはもちろん、サブ機G5&サブサブ機G4(=今も現役の歴代メイン機)もMac。1992年に一念発起して、Macintosh IIciを導入して以来、パリンパリンのMac派となって現在に至っている。もっと以前から本格的なCGをやりたいと思ってはいても、当時それはまだ全く趣味の領域だったわけで、軽自動車が優に買えるほどの投資は安月給&貧乏性の身の上には覚悟が必要だったのだ。

では、朝マックならぬ初Mac以前の「先Mac期」はというと、当時のオキマリでもあったキューハチことNEC PC9801上でゴソゴソやっていた。この時代には色々「モノ」があるので、順次ご紹介したいと考えてもいる。そのキューハチから、Windows3.0のあまりの重さもあってMacへの転向を決意したのだが、その決心をするまでは、CGの入門書などに載っていたMacintoshと高級グラフィックソフトなどにひたすら「きっといつかは」的目線を送っていたのだった。

若い人にはナニソレ的、古い人にはイマサラ的事実だと思うが、当時はPhotoshopやIllustratorをはじめとするプロ用グラフィックソフトは、ほぼ全てMac版しか存在しなかったし、加えてハードもソフトも今よりずっと割高だったから、プロならともかく、ただのホビイストにとってのMacは大変な羨望の的だった。上位機種とソフト数本を買えば、お値段は軽く7桁の領域。パソコン界のベンツだとか「借金トッシュ」だとか呼ばれてたぐらいなのだから。

そんな時代のCGの入門書に、必須の周辺機器として三種の神器のごとく並び紹介されていたのが、ペンタブレット、プリンタ、イメージスキャナ、であったと思う。マシンとソフト以外にも色々カネのかかるものが必要なものだなあ、と思いつつもこれらをズラリと揃えた状態を夢に描いては、アコガレと貧乏性の間で揺れていた。が、このうちのイメージスキャナについては、意外に早く購入に踏み切ることになる。

先Mac期、まだキューハチを使っていた頃に、筆者は最初のイメージスキャナを購入した。それが今回のモノ、HAL LABORATORYのHWS-10Gだ。品名に「WIDE SCANNER 98」とキューハチ用であることを示すであろう番号まで入っている。購入時期ははっきりしないが、多分1990年頃。価格はヒト桁マン円前半だったように思う。
< http://www.dgcr.com/kiji/RH/mono02.html
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これはいわゆるハンディスキャナと呼ぶべき製品だ。家庭用のファクスに一時期よく見られたものと同じで、スキャン、つまり原稿をなめる動作は人間が手で行うのだ。スキャナの下面には、読み取りセンサの細長い窓に並んでゴムのローラが付いており、これがスキャン方向の読み取り周期を制御しているのだろう。ローラが滑らなければ多少の速度ムラがあっても大丈夫だが、ローラが滑ってしまえば画像はゆがんでしまう。コピーの途中で原稿を動かしてしまった場合と同じと考えれば良い。

また、ハンディスキャナを使ったことがある人なら分ると思うが、原稿がスキャナ自体に隠れて見えない状態で、正しい範囲をしかも傾かずにスキャンする、のは口で言うほど簡単ではない。ローラを滑らさないようにするよりも、この範囲と傾きの問題が痛かった。

スキャンできる幅はハガキほど。スキャンできるのは、モノクロかグレースケール画像のみ。今の目で見るとこの仕様が問題のようにも思えるが、仮に大サイズのフルカラー画像を高解像度でスキャンできたとしても、それを扱ったり加工したりできるメモリもアプリも、当時の筆者及び同時期の多くのキューハチユーザの手元にはなかったのである。ともあれ、何回かは手描きの小さなペン画をスキャン&加工して遊んではみたものの、やはりこれではイカンなあと思ったものである。

脱線するが、この頃に筆者が影響を受けていたのが戸田ツトム氏著の「森の書物」だった。Freehand1.0、QuarkXPress2.0J、LaserwriterII NTX-J、Linotronic300を使って作られ、1989年に出版されたDTPの元祖的な本である。筆者は、キューハチ上のワープロの貧弱な描画機能を使ってこの本の意匠を真似てみたり、スキャンした画像を非力なりに並べてみたり、同時期のDTP本の流行を追って文字に長体をかけてみたりしたものだ(この本について、本邦DTP始祖のお一人と言うべき某S編集長は、あまり好意的ではなかった気がしますが)。

時代は下って1992年。とうとうMacを購入し、本格的なCG制作へ向けての長い道を歩み始めた筆者なのだが、ここでも貧乏性のために、当時まだまだ高かったフラットベッド型スキャナの購入に二の足を踏んでしまう。あまり多くはない選択肢から、割安な小型スキャナとして買ったのが今回のもう一つのモノ、ニスカ株式会社のNiscan Spectraだった。多分1992年か1993年、ヒト桁マン円中盤以下ぐらいじゃなかったかと思う。今度はカラー対応だし、同じ頃のフラットベッド型は5桁後半から6桁のお値段じゃないと買えなかったので、相当な割安感である。
< http://www.dgcr.com/kiji/RH/mono02.html
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そのNiscan Spectra、別掲の写真画像を見てもらうしかないのだが、ナニ型スキャナと呼べばいいのか分らない。上向きに置いた原稿の上にスキャナを乗せ、コンピュータ上でスキャン開始の操作をすると、下向きのセンサヘッドが移動してスキャンを行う仕組みなのだ。要するに、通常のフラットベッドスキャナを、えいやっと上下裏返しにしたような機構なのである。

このスキャナでは、ハンディスキャナで味わった欠点はキチンと克服できていた。原稿を見ながらスキャン位置を修正できるので、範囲や傾きは正しく調整できたのだ。スキャン可能範囲が相変わらずハガキより少し大きい程度なことを除けば、ひとまずスキャナとはどういうものか、ということは学習できた気がする。直感的に使えるこのタイプのスキャナがなぜ今生き残っていないのか、少し不思議に思えるぐらいだ。

ここまでを読むと、では現在筆者の制作環境にはどんなに立派なスキャナがあるのかと思われるかもしれないが、メイン、サブ、サブサブ機まで遡ってもスキャナは接続されていない。その更にもう一世代前、1995年に購入し2000年までメイン機として働いてくれたPower Macintosh 8500/120に、Apple Color OneScanner 1200/30が接続されている。これが筆者の現役スキャナ。もちろん古くはあるがまだ「モノ」ではない。

このColor OneScannerはようやく「正しい」フラットベッドスキャナで、8500と同じく7色リンゴマーク輝くApple純正品だ(中身は多分OEMな気がするが)。インタフェースがSCSIな点はさすがに今見ると古色ゆかしいのだが、それゆえ8500共々年に数回程度起動しては、なにがしかの原稿をスキャンさせている。(そのエスシーエスアイって何? と言っている若人諸君は今すぐWikipediaへゴー、読み方もチェックだ)

つまり、そうなのだ。今にして思えば、筆者の制作分野や方法や作風において、イメージスキャナはそもそも大して登場機会のない、優先順位のかなり低い周辺機器だったのである。ああそれなのにそれなのに、何だかんだで3機種も渡り歩くことになるとは。げに恐ろしきは、貧乏性とCG入門書のスリコミなのである。

【Rey.Hori/イラストレータ】reyhori@yk.rim.or.jp
サイト:< http://www.yk.rim.or.jp/%7Ereyhori
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文中で触れたCG入門書、正確にはムックだったと記憶していますが、現在行方不明。誰かに貸してそのままになった可能性が大きいのですが、古本屋で見かけたら多分買う、というぐらい今もう一度見たい。たしか裏表紙が「世界最速のパソコン」を謳ったMacintosh IIfxの全面広告。……単なる懐古趣味ですけど(この原稿の最後の推敲中にAppleから新ラインナップ発表。小さいキーボードがGOOD。クロックの数値だけなら、まだウチのメイン機が最速だいっ。←負け惜しみ。ベンチマークでは3.2GHz/8コアより5割ほど速いらしい、当然)。3DCGイラストとFlashオーサリング/スクリプティングを中心にお仕事をお請けしてます。

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■編集後記(3/17)

文藝春秋 2009年 04月号 [雑誌]・「文藝春秋」4月号の特集「これが日本最強内閣だ」を読んだ。堺屋太一、御厨貴、後藤謙次の3人が座談会でまとめた閣僚名簿と、識者33名・政治記者84名のアンケートで構成されたもの。この座談会、憂国の心情から真剣に行われたものとは思えない内容だ。ご隠居さんが楽しそうにコマを動かしているみたいな。そんなお遊び企画を、興味深く読んだ。彼らによる日本最強内閣とは、総理・奥田碩(トヨタ相談役)、総務・橋下徹、法務・枝野幸男、外務・櫻井よしこ、財務・小泉純一郎、文科・寺島実郎(三井物産戦略研究所所長)、厚生・長妻昭/労働・丹羽宇一郎(伊藤忠会長)、農林・片山善博、経産・林芳正、国交・葛西敬之(JR東海会長)、環境・阿川佐和子、防衛・前原誠司、金融・茂木敏充、経済財務・中川秀直、行革・渡辺喜美、無任所・後藤田正純、福山哲郎、官房・野中広務……妄想に近いとでも言うべきか。政治記者のアンケートでは、総理は小沢、岡田がともに19票、小泉7票、3票に石原慎、片山、菅直人、それに90歳の中曽根が入っているんだから(そのうち誰にもなってほしくない)、よほど総理の人材が品切れなんだな。座談会では、総理に必要なものは、構想力、決断力、実行力。明るくて、うそでもいいから国民に元気をくれるリーダーシップだという。それには賛成だ。だから「破壊力と明るさと国家への気概をしっかりもった奥田」がいいんだとか。よくわからないが、現実にありえないというのは確かだ。小粒ではいい人、いい政治家もたくさんいるのだが、総理の条件を備えた人はというと、まったく思い浮かばない。嗚呼、日本は大丈夫なのか。(柴田)

・鉄道忘れ物市。テレビで紹介されていたのだが、レポーターが「こんなものも売られています」のコメントとともに映し出された映像には、多数のiPod。Wii fitは箱ごと。デジタル一眼レフカメラまである。取りに行かないの? 乗った鉄道に電話すれば、調べてもらえるのにね。忘れ物市ができるぐらい、届けてくれる人はいるってことだしさ。カメラだと写真が残ったままだと思うんだよね……。売る時には消してもらえるだろうけど、大事な写真は手元に置いておかなくて良かったのかなぁ。/また当選。ラッキー。今回はプリザーブドフラワー。ピンクを貴重としたお花が20cm角の箱の中にぎっしり。嬉しい。とはいえ、お花は生花が一番好き。香りがするから。/WBC。また韓国のような。/G/Hさん(仮名)に爆笑した。/借金トッシュ。そういや最初に買ったマックは高かった。それだけ出しても欲しかったんだよなぁ。今はちゃんと自己投資していない気がしてきた……。(hammer.mule)