装飾山イバラ道[35]人任せは結局お気楽じゃなかった──通販の組み立て家具設置始末
── 武田瑛夢 ──

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仕事部屋に書棚が欲しくて、通販のカタログで探していた。私の部屋は天井高が2m50cm以上あるので、「転倒防止の突っ張り式の板」のついている家具でもなかなかあてはまるものがない。それ以下か、それ以上ならあるのに、ちょうど対象外ゾーンになってしまうようで、探してもなかなか見つからなかった。

既製のものでは、書棚に上置き棚をプラスして高さを出すものがほとんどらしい。寝室の衣類用たんすは、上置き棚をオーダーしたのでジャストサイズに作ってもらえたが、やはりオーダーは高くついてしまう。書棚くらいはありもので十分だと思ったのだ。

書棚と上置きの棚の組み合わせでちょうど良いものを探すと、唯一と言っていい商品があったのでさっそくオーダーした。ただひとつだけ心配だったのは、うちの天井高が「高さ2m〜2m50cm」などで表示される高さの、「上限ぴったり」だったこと。棚の上にねじでもう一枚の板を突っ張って、天井で押さえる仕組み。下はカーペットだし、上限ぎりぎりではたして突っ張り機能が生かせるのだろうか。でも、設置してみなければわからない。


●組み立ても依頼

通販の組み立て家具の場合、組み立て加工も有料で頼めるものがある。以前、私は机やテレビ台を自分で組み立ててみたけれど、良い結果になったことがあまりない。好きなものを作るのには熱中するのに、既成の完成品に近づけるのは苦手なのだ。

どこか納得のいかない箇所が必ず出てしまうし、ズレにズレが重なって最後の板は削らないと入らない! なんてこともあった。その削った傷が、使う時に見えるといちいち悲しい。それ以来、組み立て加工も依頼するようにしたら、そのお気楽さやありがたさを覚えてしまった。

冷蔵庫の上置き棚は、だんなさんに組み立ててもらった(だんなさんなら無料だし)。全部任せてもいいかなとも思うが、手伝う相棒が私では支えた時のバランスも悪い。上下で分かれると言っても高さと重さを考えると、業者に組み立ててもらった方が安心だと思った。

当日は業者の男性が二人掛かりだったので、すぐに済むかと思ったら案外時間がかかった。通販カタログに書いてある、組み立て時間の目安をはるかに越えていたと思う。自分たちならもっとかかっただろう。

棚が出来ていよいよ設置。書棚の上に上置き棚を重ねる。上置き棚の上部には突っ張りねじの板をつけていて、そのねじを全部下げた状態で重ねてしまった。棚の高さが最大で天井高と合うはずなので、ねじを上げた状態の方が良いのでは? と一瞬思ったけれど、余裕を考えてそうしている可能性もある。でも、やっぱりあとで板を上げるのが大変になっていた。手の届きにくい高さで、ねじを回し続ける作業が延々と続く。

うちには大きな脚立があるので出しておけば良かったけれど、片付けの時に奥にしまっていたので、セノ・ビーぐらいの簡易なものしかなかった。セノ・ビーは一瞬で折り畳めて便利な踏み台。

・セノ・ビー
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業者も大きな脚立を車へ取りに行くほどでもないと思ったらしく、時間はかかるけれどそのまま手をのばして作業してもらった。後で考えると、大きな脚立を出して来た方がずっとスムーズだったし、その後の問題も少なかったかも。結局、なんとか突っ張り板もついて設置が完了。書類と予備部品を受け取って、お疲れさまでしたと言うやいなや、彼らは慌てて帰っていった。

●こんなはずでは……な結果に

しかし、後になって夫婦で確認すると、突っ張り板は前後逆についていて裏面の塗装のない部分が丸見えだし、上置き棚の前面の化粧扉部分は、ねじ留めを強く締めすぎているのか、表がでこぼこしてしまっている。ショックだ。

おまけに、予備部品じゃない部品がなぜか余っている。この部品なんだろうねと確認しようと思ったら、組み立て設計図がないことに気づいた。たぶん、業者が梱包材と一緒に持って帰ったのであろう。せっかく新しい家具を置き終えたのに、なんだかいろいろとがっかりだった。

いつもはチェックポイントに厳しいはずの自分が、後になってこれだけ気づいてしまうとは情けなかった。相手がいるうちに確認しておけば済むことなので、こちらのミスでもある。でも予想外に時間がかかっていたし(早く終えたいようだったし)、強く言えないムードもあった。

背の高い家具で突っ張り式なのに、残っていた部品はどうやら背面の連結金具らしい。通販会社にメールして設計図を送ってもらったのだけれど、メール担当から電話担当へ回されて手元に届くまではかなりの時間を要した。

結局、部品はやはり背面で上下の棚を連結するための金具で、自分たちで取り付けることに。業者も再度来てくれるとのことだったれど、またスケジュールを合わせたりで時間がかかりそうだったので。背面の作業なので、書棚本体を回転させて取り付けて、突っ張り板の向きも直した。人に頼みっぱなしでは終えられないものだなぁ。

完成度に関しては、通販の組み立て家具ってどんなにうまい人が組んでも、どこか合わない箇所が出るのはしょうがないことなんだと思う。板の断裁の誤差もあるし、穴の誤差もある。家具を組み立てる職人ならば、叩きながら全体を引き締めて問題が見えなくなるように組み上げられそう。家具における「組み立て」と「仕上げ」工程の重要さを改めて感じた。

自分が作った傷は悲しいけれど納得できるのに、料金を払って依頼したものにミスがあるとモヤモヤする。言うべきことと許すべきこと。組み立てを依頼すれば、自分で組むよりお気楽だと思っていたけれど、良いか悪いかの「判断」は必ず自分でしなきゃならないことだ。現場の物や人で判断する内容は変わるので、決してお気楽ではないことがわかった。

しかしながら肝心の棚の使い心地はなかなか良く、幅や奥行きはこの場所にはこれしかないだろうと思うほど見事にジャストサイズだった。壁のコンセントも照明のスイッチも隠れない。天井までの大容量で物が整理できる。このお値段なら上出来だ。

家具は出来上がり完成品の状態を自分で見て買うというのが一番だけれど、モノの買い方が変わってきた今では自分も変化しないといけない。お値段で得したぶん、おおらか心を持たないと気持ちよくお買い物できないのかも。

【武田瑛夢/たけだえいむ】 eimu@eimu.com
装飾アートの総本山WEBサイト“デコラティブマウンテン”
< http://www.eimu.com/
>

書棚の中にヘアアクセサリーばかりを並べたコーナーを作ってみたら、ボックスショップのマイブースのようになって楽しい。値段の札がついてたら小さなお店のよう。だんなさんとしては、仕事部屋の書棚にそんな遊び要素が出来ていて不満みたい。