装飾山イバラ道[39]伊勢旅行記(1)伊勢神宮とおかげ横丁
── 武田瑛夢 ──

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そろそろ夏休みだけれど、一足お先に伊勢志摩へ2泊3日の旅行をしてきた。今回から3回に分けて伊勢旅行記を書きます。

今回の旅は、週末旅行程度の短さが気軽で良かった。梅雨の間だったので天気が良くないのも半分覚悟でいたけれど、3日間の昼間はなんとか雨は降らずに済んだ。宿泊は賢島(かしこじま)という三重県の英虞湾(あごわん)にある島。島と言っても橋で電車が通っていて近鉄の終点の駅なので便利だ。

地図で見ても橋は短くて、きっと電車で通るのは一瞬なはず。いつ橋を通過するのか車内から緊張して待っていたけれど、本当に海が見えたのは「あっ」と言う間のことだった。この辺はどこも木々が鬱蒼と茂っていて、広々とした海が見えるのは橋の上だけだ。海に来たというより山に来たような印象。

今回の旅の目的は、伊勢神宮のお参りと二つの水族館。日数が短いのであまり予定を詰め込まずにいくつもり。旅のガイドブックを買ってみたら、おいしそうな伊勢エビやあわびのグルメや特産品の真珠の写真が満載で、伊勢志摩というのはとても豊かな地方というイメージだ。



いろいろ調べていたら、「まわりゃんせ」という周遊チケットを買うと9,500円で伊勢志摩の有名なところのほとんどを周ることができるので購入した。これは知らないと本当に損するくらいのお得さで、近鉄の特急券や志摩スペイン村の4,800円のパスポートまでついている。時間の関係で志摩スペイン村へは行けなかったけれど、次来る時はぜひ3泊4日にしようと思った。

・まわりゃんせ
< http://www.kintetsu.co.jp/ise_toba_shima/mawa/f_mawa.html
>

●伊勢神宮の参拝

初日は伊勢神宮のお参りをすることにした。伊勢神宮には内宮(ないくう)と外宮(げくう)の二つの正宮がある。その他の別宮を含めた一連の社宮の正式名称を「神宮」と言うのだそう。内宮には天照大御神(あまてらすおおみかみ)、外宮には豊受大御神(とようけのおおみかみ)が祭られていて、まずは外宮から参拝するのが正式とのことで、そのようにスケジュールを組む。

・伊勢神宮
< http://www.isejingu.or.jp/
>
・外宮
< http://www.eimu.com/dgcol/ise01 >

外宮には近鉄の伊勢市駅から5分ほど歩けば着く。巨大な木々や鳥居が凛とした空間を作り、背筋がのびる雰囲気だ。なにしろ暑い日だったので、木陰の涼しさがありがたい。じゃりじゃりと砂利を踏みしめながら歩くと、前方の年配の女性が鳥居の前でスッと一礼してからくぐるのを見た。なんとも上品なしぐさで、それを私たちも真似した。鳥居はいくつもあるので、動きのぎこちなさもなくなっていくのが気持ちよかった。

ガイドブックで事前に読んでいたお参りの作法には、神域内では外宮は左側通行、内宮は右側通行であること、参道の入り口にある手水舎で手と口を漱いで身を清めてから参拝するなどがあった。神前でのお参りは「二拝二拍手一拝」とのことで、見ると他の人もその通りにしていた。

順路にそっていくつかの宮(土宮、風宮等)をお参りした。自然の中にある鳥居や茅葺きの屋根の美しさは素晴らしい。木に生えた緑色の苔は発光して蛍光色のようにも見えた。生きている細胞の美しさは神秘的だ。写真に写すだけの技量がないのが悔しいけれど画像をつけておく。

・木に生えた苔
< http://www.eimu.com/dgcol/ise02 >

内宮へはバスで移動した。バスでは停留所をひとつ早く降りてしまって、暑い中歩くハメになった。神社にお参りに来ているのだから、少々のミスにはお互い寛容にならねば。ただ、サンダルで来ちゃったのは失敗だったかもしれない。砂利やアスファルトで脚が疲れてしまった。内宮でも外宮でも、写真撮影の場所は看板で明確に指示されており、鳥居は階段下のみからの撮影が許可されていた。写真では、茅葺き屋根は中央にかすかに見えるのみだけれどわかるだろうか。

・階段下からの鳥居
< http://www.eimu.com/dgcol/ise03 >

●「おかげ横町」で休憩

内宮の側には、「おかげ横町」というお土産物や食べ物屋さんがひしめく一角がある。ここは、伊勢が最も栄えた江戸末期から明治初期の町並みを再現したところで、時代劇に出てきそうなお茶屋さんなどがある。食いしん坊の私はこの「おかげ横町」をかなり楽しみにしていた。本当は一番来たかったと言ってもいい。ただし、外宮から内宮の参拝の途中で、横町に寄っての立ち食いなんて許されるのかな? と自分に問うてみたりした。

ところが、伊勢神宮の公式WEBに載っている「お伊勢さんの歩き方」の参拝パターンに「お昼の休憩」をはさんでいるのを発見した。これで安心して外宮を見終わった後に「おかげ横町」で食べ歩きができる。腹が減ってはなんとやらだ。

・おかげ横町
< http://www.eimu.com/dgcol/ise040 >

おいしいものが盛りだくさん。伊勢かまぼこの「若松屋」のチーズ棒、「豚捨」のコロッケ、「赤福」の赤福氷。伊勢神宮と言えば赤福だけれど、夏の名物として抹茶味のかき氷の中にあんことお餅が入った特製のかき氷が発売される。それが「赤福氷」だ(500円)。口溶けの良い氷の中の白いお餅は、冷たくても堅くなりにくい工夫がされているそう。暑い中歩いてきた体には、甘さと冷たさがよく効いた。「おかげ横町」は、毎日縁日をやっているような楽しさがある。

・赤福氷
< http://www.eimu.com/dgcol/ise04 >

●「おかげ座」でお蔭参りの歴史を知る

お伊勢参りの歴史を知りたければ「おかげ座」に立ち寄るのがおすすめ。ここは「まわりゃんせ」の中にチケット代が含まれているので入ってみた。江戸時代に起こった「お蔭参り(おかげまいり)」という集団参詣運動について、短い時間で知ることができる。丁寧なガイドさんが15分程で説明してくれる。

2分の1の縮尺サイズで町並みが模型と人形で再現されていて、その当時の人々にとってお蔭参りがどんなに大きなものだったのかがわかる。お参りに出るには莫大な費用が必要だったけれど、貧しい人々もお蔭参りができた。積み立て方式のようなしくみの「お伊勢講」で、講の所属者からくじ引きでお参りに行く人を決めていたのだ。道中に必要なわらじや傘は、「施行」と書かれた看板の店で無料で手に入れることができたという。

・おかげ座
< http://www.okageyokocho.co.jp/shop/okageza.html
>

・お蔭参り(おかげまいり)
< http://www.eimu.com/dgcol/ise05 >

周辺地域がお参りする人を支え、全体のおかげで自分たちがあるという思想で成り立っていたお蔭参り。一生に一回は、このお参りに出発できるというのが貧しい人々の夢でもあった。現代では私たちのように新幹線やバスに乗り短時間で気楽に来ることができるのに、当時の人々はわらじを履いて自分の脚で歩いて来たのだ。バス一駅分多く歩いたくらいでへこたれそうだったのが恥ずかしい。

●夜はのんびり

宿泊はだんなさんの会社の保養所を利用するので格安だ。せっかくの伊勢地方なので、夕飯にあわびを追加してもらう。伊勢志摩というと伊勢海老が有名だけれど4月で終わり、夏はあわびの旬なんだそう。新鮮なあわびのお造りは、身がしっかり厚くて食べごたえがあった。あわびの切身を口に含むと、一瞬堅い感じなのに、噛むを歯がすっと入るような独特の食感。

初日は伊勢を真面目に歩いた日だったけれど、2日目以降は鳥羽水族館や真珠の養殖などを見学する予定だ。

【武田瑛夢/たけだえいむ】eimu@eimu.com
今回の梅雨は短かったような気がする。雨は嫌いだけれど、梅雨が開けたと聞くとあのジリジリした夏がやってくるので気が重い。

装飾アートの総本山WEBサイト“デコラティブマウンテン”
< http://www.eimu.com/
>

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やさしいデザイン―誰でもかんたん、レイアウト・配色・文字組
武田 瑛夢
エムディエヌコーポレーション 2007-09

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by G-Tools , 2009/07/21