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■電網悠語:日々の想い[134]バリュー・プロポジション(value proposition)の3つの円/三井英樹

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「バリュー・プロポジション」という言葉がある。日本語訳はどうも定訳はなく、ニュアンスを伝えしようと色々と悩み中というところ。「価値命題」「顧客提案価値」「お客様にとって価値のある提案」などなど。

正式に学んだ訳ではなく、読みかじりで脳内自由解釈をしている最中なのだが、本の中(何故だかWebではない)で目に留まり、脳内で絵を描いて、それが気に入った。3つの円が少しずつ重なっているもの。それぞれ、「顧客が求めている価値」「自分達が提供できる価値」「競合が提供できない価値」を表している。つまり、3つの円が重なっている部分は、「顧客が求めているもので、競合が提供できない、自分達だけが提供できる『価値』」ということになる。

3つの円を描き、概念をつかむのは簡単な作業だ。けれど、その意味することろはなかなか深い。最近、提案案件を抱えるたびに考える。
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1○顧客が求めている価値

クライアント(発注者)とエンドユーザ(利用者)を混在して「顧客」と呼んだ方が面白い。例えば、クライアントが求めている価値。コンペ形式で呼ばれる場合には、「提案依頼書(Request For Proposal:RFP)」が基本的には存在する。文字通り、提案して欲しいことが書かれてある訳だが、それが文字通りになっていないことが、Web界の面白いところだ。

自分の価値を高めるためにどこを伸ばせば良いかという問いに、明確に答えられる人がどれほどいるのだろうか。どこを伸ばせば良いかが分かっていれば、おのずとその答えの近くまでは自力で辿り着いている場合が多いように思う。

どの筋肉を鍛えたいかが分かっていれば、そのトレーニング方法は幾つかに絞れていて、あとは体力や生活リズムや嗜好性で決定していける。でも体力をつけたいとか、元気になりたいという総合課題になると、食事療法なのか生活改善なのか筋トレなのか、選択肢は複合的に増大する。

売上を伸ばしたいという課題に対しても然りで、もう少し命題を絞っていかないと、短期間コンペで選ぶ側も困るだろう。困ってしまっているのは、色々と改善&新規提案を語っても、結局トップページの見栄えで決まってしまったりするものが根絶しないところからも読み取れる。

C(コンシューマ)向けばかりではない、B(ビジネス)に目を向けても、状況は変わらない。生産性を上げたい、作業効率を高めたい。そもそも、「生産性」を計る指標が定まってない状況で、それを求められても、多くの異なる立脚点に立つ提案が乱立するのは自明である。

C には「売上」という絶対的な尺度があり、広告代理店的な指標も各種あるので、ある意味まだましなのかもしれない。B はもっと指標が少ないというのが現実だろう。ある特化した作業の効率を上げたところで、その作業がいつまであるのか分からない。個別最適はできたとしても、全体最適を考えたら、もっとよりよい手があるだろうと思ってしまう。更に、社内教育やサポートが行く手を阻む。作業効率は高めたいが、マニュアルを更新するのは嫌だという意味不明のリクエストが根強い。全体最適を考えると、何かを変えたら全部に影響は出る。その覚悟がなければ、総合強化にはつながらないと分かっていながら、実施や社内調整を考えれば腰は重くなるのだろう。

利用者にしても状況は似ている。何が自分達にとって価値あるものかを、その製品やサービスを手にする前に考えさせるのは難しい。基本的には、「それ」なしで生活できているところに、「それ」を押し付けていく作業で、押し付けられて良かったと感じてもらうことが求められる。そして「それ」が定着したら、ない生活を想像できないくらいに深く必要としてもらいたい。例えば、パソコンもそうかもしれない、ほんの20年前、あったらいいなぁと夢想していたものが、今やなくてはならないと思っている人はかなり多い。

育児中、「アメ」が欲しいという子に対して、「実はヨーグルトが欲しいんじゃないの?」とピンとくることがあった。発せられた言葉が的確だとは限らない。要求してくる言葉だけではなく、その子がどれくらい疲れているのか、これから何をしようとしているのか、その時に何が必要なのか、今までの嗜好性から考えるとどうなのか。幾重もの思索をめぐらせて、いくらかギャップのある提案を返す。もちろんハズレの場合もあるけれど、嬉しそうに「ボクのことをよく分かってくれるね」と受け取ってくれるのは幸せな瞬間だった。これは、他の家の子たちの母親もやっていて、「どうしてそれが欲しいと分かったんだろう」と驚かされる場面だ。

分析のスキルとも言えるが、「顧客が求めている価値」の本質を見抜く作業は、単なる洞察力だけではなく、例えば業務知識も要求されるし、日常の普通の感覚も求められる。どこまで彼らの立場に立てるか。やり甲斐のある部分だ。

2○自分達が提供できる価値

こっちも難しい。顧客が自分の立ち位置を正確に把握できないように、自分達も自分たちのことを正確には理解できない。特にこれだけ技術革新速度のある領域では。今自分達が持っているモノが、どこまで根源的なものなのかが分かっていないといけないことになる。

Photoshopが使えます、Illustratorが使えます、Expressionが使えます、ではない。それ自体が「提供できる価値」ではないからだ。いや、それを価値としてしまっては、価格競争に立ち向かっていくしかないと言った方が正確かもしれない。「ツールが使いこなせます」では、誰かが指示するので安く作ってくださいね、という依頼がいずれ来てしまう。この人(集団)に頼んだら良いものが出てくるという信頼感も構築していく必要がある。売り物はオペレータ技術ではない。

「ツールをどう活用するか」を強みにしていかなければ、先がない。だから、プロはツールの最新版にあまりこだわっていないのだろう。古いものでも充分に戦える。最新エフェクトにCPUをゴリゴリと喰われるよりも、エンジンむき出しのシンプルなものを使いこなす方が、実は効率よくいいものができたりする。

余談だが、ツールベンダーは「使い手達」をあまりに無視している。この辺りに、今後も使い続けてもらえるかの分かれ道があるのだろう。ツールが使い手よりも目だってどうするのだろう。

昔DECという会社は、様々なアドオンを開発してくれる会社達とうまくやっていた。しかし、良い機能が開発されると、次々と自社製品に組み込むという戦略に舵を切った。今思えば、いいものを何でも欲しがる若気の至りである。その結果、DEC製品はますます強力になっていき、DEC社内は開発者にとって使い勝手の良いツールに溢れ、あたかも技術者天国となった。

しかし、しかし、仲間であったはずの協力会社にお金が回ることは減り、彼らが去り、DECは孤立して行った。協力会社は一番の利用者でもあったのだ。開発能力がそのまま価値にならない場合もある。「自分達が提供できる価値」を見誤った哀しい例かもしれない(DECはその後、Compaqに買われ、そのCompaqもHPに買われた)。

3○競合が提供できない価値

これもまた難しい。常に競合を見ていないとできない。「これはあそこには提案できないだろう」と瞬時に判断できるためには、日頃の鍛錬は欠かせない。そして方法はふたつだろう。アンテナを強くするか、アンテナ数を増やすか。

アンテナを強くする方法は増えている。最近ではtwitterなのかもしれない。わざわざその人に会いに行かなくても、未編集のアイデアレベルのツブヤキが手に入る。すごい時代になったなと思いつつ。日々他人を監視していて、人生が終わってしまう危惧もなくはない。自分で考える時間が次々と侵食されていく。でも、誰かが危惧や不安を感じたら、それほど経たないうちに新しい何かが生み出されて使われる時代である。期待しつつ耐えよう。

そしてアンテナの数。会社という枠は徐々に希薄になってきている。ツブヤキを共有できることとも相まって、それなりに意識を共有できる人たちが増えている。輪が広がっている感じ。でも、ビジネスにおいては一緒に歩める仲間が必要。経済的な部分でも信頼できる仲間。ギブアンドテイクが文字通り定着できる仲間。そこからの情報が何より支えあえる。


「これはあそこには提案できないよ」と自分達が戦う焦点を絞っていける話し合いをするときに感じる鼓舞感(?)。「ここでは俺達は負けないぜ」と言える、自分達の強みを活かせる領域に持ち込める提案の構築を進める高揚感。「これ絶対気に入ってもらえるぜ」と顧客の笑顔を狙う純粋さ。「この提案すげー」と言ってしまう単純さ(笑)。「お客様にとって価値のある提案」を求める道は、険しくも愉しく遠い。

【みつい・ひでき】感想などはmit_dgcr(a)yahoo.co.jpまで
mitmix< *http://www.mitmix.net/ >

「意味不明」と編集長から返される。こたえるなぁ。蛇口のお話を未だに覚えていてくださることに感謝しながら、負けじとタイプする。あぁ電車の中でももっと気軽に書けるツールが欲しい。ちょっとアプリの起動がとろいけど、サイズ的にはNetWalker < *http://www.sharp.co.jp/netwalker/ > ?

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