[2795] 今までの技術、これからの技術

投稿:  著者:


《ユーザには耐久性はあるんだよ》

■電網悠語:日々の想い[148]
 今までの技術、これからの技術
 三井英樹

■ショート・ストーリーのKUNI[74]
 しまうま
 ヤマシタクニコ

■?×?× CrossOver Talk[6]
 メモ、書類、情報、思考...あなた流の整理法ってありますか?
 ──多彩なメモ管理ができる「Evernote」に行き着くまで
 杏珠



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■電網悠語:日々の想い[148]
今までの技術、これからの技術

三井英樹
< https://bn.dgcr.com/archives/20100218140300.html
>
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AppleとAdobeのFlashを巡る抗争を斜め見しながら考える。浮かぶ言葉は、未来への視点と、お節介あるいは介入。

伏線は、そもそもiPhoneでFlashが動かないこと。それが、その大型版とも言えるiPadでも、Flashが現状動きそうにないことで議論が加速した。世界的にヒットしているデバイスと、ヒットするだろうデバイスでの未サポートという事実、そもそも根強い反Flash派の流れと、HTML5への楽観的な期待とが織り交じっているように見える。

整理すると:
1)iPhoneにはFlash Playerが搭載されていない
2)iPadにFlash Playerが搭載されない模様である
3)Flash Playerが却下された理由は、メモリ消費量も含めたデバイスへの負荷と、バギーであることへの嫌悪感があるようだ
4)Flash Playerは、ヴァージョン毎に普及率は異なるが、基本的には殆どのブラウザに搭載されていると考えてよく、それを前提にしたサイトも多い
5)Adobeは、Flash Player 10.1にて、メモリ消費量を押さえた、軽量改良版を投入予定
6) HTML5のcanvas機能は、表現能力としてFlashに近く、W3C標準の流れであり、非常に近い将来にはプラグインなしで多くのブラウザで利用が可能

結論から言ってしまうと、私はAppleに正義はないように思っている。私が望む未来に、Apple製のデバイスが含めなくなってきていると言うべきか。

●未来への視点/過去への視線

インターネットが普及しだした頃、いや今でさえ、見ているものは最新ニュースだけのように感じてしまうけれど、実は使っているのは、過去からの蓄積情報の方が多いと思っている。最新ニュースは日々、慣習的にも見て回る。それによって一喜一憂しているのも事実。でも、検索窓に何か文字列を打ち込み、探し回るという極めて能動的な情報収集は、最新情報というよりは過去のものの方が多い。すなわち過去の情報が見られないほうが、能動的な検索活動にとっては面倒が多い。

検索するノウハウなり情報に、Flashが使われているか、と問われればほぼNOだと答える。でも、その情報の周りに配置されているものに、Flashが含まれていることは極めて普通の状況だろう。Flashが見られないということは、代替のイメージなりを置くという処理をしていれば、まぁ見られなくはないだろうが、多少の窮屈さや不自由さは感じるだろう。

ただ懸念しているのは、現実的にどこまでFlashがないと困るかではない。デファクトスタンダードを無視する、という決定をする姿勢である。エンジニアであれば、過去からの決別がそれほど容易でないことは、普通は知っている。ましてや、Appleは、OS9からOS10へのユーザ移行を奇跡的に進めた企業である。過去(の情報やアプリケーション)を切り捨てられれば、更に未来に進むことがどれだけ楽なのかを何度も考えた経験もあるだろう。それが、Webという情報蓄積の仕組みの中の、過去に対して責任を感じていないように見える。

HTML5がFlashの代替になる。それが事実だとしても、今あるサイトにおいて、わざわざリライト(書き直し/作り直し)をするかと言われれば、これまたNOだろう。予算の関係もある。現時点の景気を考えれば、投資に値するプロジェクトだとは考えにくい。しばらくは、Flashコンテンツは多々存在するのである。そんな状況を考えると、Flashの非サポートという指針を軽々しく示すのは、ユーザ軽視としか映らない。それは、Flashが使われることが皆無、あるいは稀になってから口にすべきことではないだろうか。

●お節介あるいは介入

既に開発姿勢というか、ユーザへの対峙姿勢の領域に入っているが、過去(データ)との決別が、バギーさなど技術的に見てiPadを安定稼動するためには必要不可欠だという経営判断だとしても、それこそに嫌悪感を感じてしまう。

それは、ある悪夢を思い出すからだ。Microsoft(MS)を嫌う理由につながる事柄だ。MSが少し前まで極端に嫌われてきたのは、お節介を強制するためだったと思っている。データの使い方、見方、さまざまなことに彼らの流儀を押し付けてくる姿勢。HTMLという標準がありながら、できの悪いIEの解釈を正しいと押し付けてきたことがその最たるものだろう。

コンテンツの見方は、ある規定に則りさえすれば、ツールベンダーがとやかく言うべきものではない。ブラウザごときが、ユーザ様の見方に物申すこと自体に怒りを感じる。ブラウザは正しいHTMLを正しく解釈すればよいのであって、それ以上のことは余計なお節介だろう。

しかし、それほど嫌われたMSも、最近は叩かれない。私の中でも、諦めの境地の部分もあるけれど、今までになく平和関係が保たれている。何故か。標準を意識してきたように見えるからだ。世界中からのIE6駄目っ子宣言にも言い訳をしない。積極的に過ちを認めているようには感じていないけれど、それでも彼らもこの駄目な子に手を焼いている。彼ら自身のマイグレーションの妨げになっているからだ。

皆が絡み合って進んでいく世界観を、だいぶ周回遅れの感はあれど、学んでいる。叩かれるたびに、これでもいけないのかと溜息をついているようにさえ感じる。自分達とユーザとの差異を意識し、学んでいるように見える。そして、それは方針転換というトップダウンではなく、MSに入ってくる社員達が、非MSワールドからも多くなってきているためではないかと予想している。

仮に報道されていることがらだけが真であるなら、Appleが今やっていることは、昔の嫌われ者のMSっぽい。昔から排他的で我が道を行くという姿勢はあったけれど、普及率98%のデータ形式を全くサポートしないという姿勢が本当だとしたら、それは随分な話だろう。

さらに、iPadの利用シーンを考えると、そのお節介さと違和感が尚さら鼻につく。ソファーに座ってネットも利用する、そんな時間を演出し効率化するための道具なのだと予想している。大型化するTVを利用したコンピューティングよりも遥かに現実的だし、皆で凝視するというよりも極めて個人的に文庫本を読むかのようにネットするという未来に、きれいにはまる。DSなどのゲーム機でもなく、Kindleのようなほぼ読書に特化したものでもない道具。そこへのニーズは高い。いや、他人事ではなく私が欲しい。

自分自身のパーソナルな時間を共にする道具。そこにベンダーの趣味やお節介が入り込むのは、辛い。かなり辛い。私が何を見たいかは、私が決めたい。見られるようにだけしてくれ。技術的に無理ならしかたがないが、極力束縛は勘弁して欲しい。そのためにOSが落ちても、私は我慢する。30秒でリブートするなら、昔に比べれば天国だ。それくらい、ユーザには耐久性はあるんだよ。だから、Macのシェアがある一定線から下がらなかったんだよね、皆我慢しながら支えていた。

ただ、常に用意周到にデモをするApple(というかJobsというか)が、わざわざFlash未サポートと分かることを行ったことに、何かしらのあざとさを感じるのも事実だ。普通に考えて、もっとビジネス的な視点での仕掛けを考えていると考えるべきなのだろう。

iPadの発売まで1か月ちょっと。様々な未来を夢想するチャンスでもある。もっと色々と感じ考えて行きたい。

【みつい・ひでき】感想などはmit_dgcr(a)yahoo.co.jpまで
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・事例紹介を中心にしたセミナーです、司会をする予定です。
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■ショート・ストーリーのKUNI[74]
しまうま

ヤマシタクニコ
< https://bn.dgcr.com/archives/20100218140200.html
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それはまだ夏が終わってないのに近所のコンビニでは早くもおでんを売り出すころ。ぼくはほとほと困って社長に言った。

「社長、たいへんです。人手不足でどうにもこうにもなりません」
「君はこの前もそう言って求人広告を出したのではなかったか」
「はい、出しましたが、ひとりも応募がなかったのです」
「それはどうしてだ」

「どうしてだかぼくにもわかりません。年中求人広告を出しているので『あの会社には何か問題があるのではないか』と思われているのかもしれません。それとも、条件がきびしいのかも」
「わが社に問題はない。あまりいろいろ条件をつけずに募集広告を出したまえ」
ぼくは過去の求人広告を見直した。

〈社員急募。男女年齢不問。給料は少なく、残業も毎日のようにあるが気にしない人。誠実な人。パソコン堪能、文章力のある人。ただし職種はほとんど何でも屋です。事務所は私鉄の各駅停車しか止まらない駅から徒歩20分。他の交通手段はありません〉

確かにこれでは人が集まらないかもしれない。よけいなことを書きすぎだ。ぼくはできるだけ簡素に、条件をつけない広告を出した。

〈社員急募。委細面談〉

「社長、たいへんです。しまうまが面接にきました」
「しまうまって、動物のしまうまか」
「はい、動物のしまうまです」
「なんでそんなものが来るのだ」
「『人間に限る』と書かなかったからだと思われます。条件をつけなさすぎました」
「しかたないな。では、とりあえず面接したまえ」

ぼくは椅子から体をはみ出させ、どことなくえらそうにしているしまうまと向き合った。
「しまうまさんですね。今回の応募動機は」
「御社の求人広告を見て、自分にあいそうだと思ったからです」
「どういうところがあうと思ったのですか」
「直感です。あとは私を採用すればおわかりになるでしょう」

ぼくはちょっとむっとした。
「わが社の出版物についてどう思われますか」
「失礼ながら私は御社の出版物について何も存じません。しかし、採用されれば御社の発展に大きく寄与させていただくことは保証いたします」
「ご趣味は」

「読書ということにしておきましょう。愛読書はマルクスアウレリウスの『自省録』です」
「休みの日は何を...」
「時には釣りを楽しみます。糸を垂れながら過去に遊び未来に問いかけ、胸に去来するあれやこれやを解き放つのです」
「好きな食べ物は...」
「私はしまうまですから、基本的には草食です」
「目玉焼きにはソースか醤油のどちらをかけますか、それともケチャップ、塩コショーだけ...」
「目玉焼きは食しません」
「すべり台を逆向きにのぼることについてどう思いますか」

ぼくの質問がだんだん妙なものになっていったのは、いちばん聞きたいこと「その自信はどこからくるのですか」を避けていたからにちがいない。なんなのだ、こいつは。でも、面接はまだ終わっていない。

「ところで、これまで面接に来られた方にはここにあるパソコンでプレゼン資料の見本を作っていただいていたのですが、そのひづめでは無理ですよね」
「いいえ、専用のグローブを用意しておりますので全然だいじょうぶです」

しまうまはぼくがわたした資料にざっと目を通した。それからバッグから5本指のグローブを取り出し、両前足にぴちっとはめたと思うと、すばらしい速度でキーボードをたたき、マウスを操り、パワーポイントを駆使してまたたく間に資料を作り上げた。そのできばえはほとんど感動ものだったが、心のどこかではこのしまうまを採用したくないと思っていた。なんとなく。
いや、というより、しまうまなんだし。

「では、今日はお疲れさまでした。採否はまた改めてご連絡いたします」
「採否? 御社は私を採用すべきだと思いますが」
ぼくの「むっ」は頂点に達したが、顔には出さず、それどころかにっこり笑って大人の余裕を演出しようとしたとき
「私には特技があるのです」
「特技?」
「はい。私には特殊な能力がありましてね。パソコンをじっと見つめれば履歴がわかるのです。ブラウザを立ち上げなくてもね」
「えっ」

「そのデスクにあるのはあなたが日頃お使いのパソコンですね。私にはすべての閲覧履歴が手に取るようにわかります。そうですね。過去一か月くらいは余裕で。ちょっと集中力をアップすれば過去半年くらいは...あ、もちろん履歴を消去してもしなくても同じことです」

ぼくの脳裏を、勤務時間中に手元の仕事をさぼってはさんざんアクセスしていたおばかなサイト、やばいサイト、とんでもないサイト、人格を疑われるようなサイト、仕事の能率が上がらなかったのはそのせいかと思われても仕方ないサイトの数々がはげしく点滅しながら高速で通り過ぎていった。
「わ、わかりました」

しまうまはそのように姑息な手段でわが社に入社してしまった。しかも、しまうまが最初にしたことは面接であった。

「面接?」
「はい、みなさんがどのような仕事に向いているか私が決めてあげます。です
から、面接しましょう」

しまうまは有無を言わさぬ態度で面接をした。ぼくと社長と、あとほんの数人しかいない社員全員。そしててきぱきとそれぞれにふさわしい仕事を与えていった。その結果、ぼくは営業、社長がデザイナー、デザイナーをしていたヨシダくんは総務、校正係のハマダくんがそのまま校正係、そしてしまうまは「私は企画全般ということにさせていただきます」自分でそう決めてしまった。

ぼくは毎日「行ってきます」としまうまに言い、「ただいま帰りました」としまうまに報告するようになった。社長は嬉々として紙面のレイアウトに没頭し、ヨシダくんも意外に総務担当に満足していた。

強引にそういうことにされてしまってどうだったかというと、なんとぼくらは毎日が以前よりずっとうまくまわっていってると感じた。腹立たしいことに。なぜだ。なぜうまくいってしまうのだ。しまうまなのに。企画全般だなんて、なんだか調子良くないか、それ。

ひょっとしたら、ぼく以外の人間もみな、しまうまに弱みを握られていたのかもしれない。いや、あるいは、いくら草食動物といえどもしまうまはそこそこ大きいし、脚でぽーんと蹴られたら大けがをしそうなのでびびっていたのか。真相はわからない。

「一般的に、しまうまの弱点ってなんだと思います?」
あるときヨシダくんが言った。
「さあねえ、なんだろう」
「ぼくは、おなかだと思うんです。なぜなら、しまうまのおなかにはしまがないんです」
確かに、しまうまのおなかは白くて、いかにも弱々しい。でも、おなかをどうしようと言うのだろうか、ヨシダくんは。

しまうまは時々歌を歌っていた。それは「月の砂漠」の替え歌だった。
「月のサバンナを〜はるばると〜旅のしまうまが〜ゆきました〜」
上の「〜」の部分で、しまうまは必ず口をもごもごさせ、何か言ってるようでとても気になったが、苦心して聞き取ったヨシダくんによると、ごく小さな声で「こらまった」とか「はー、どうしたどうした」とか言ってただけだそうだ。
で、歌い終わるといつも「なつかしいなあ、サバンナ」と言うのを忘れなかった。

それは近所のコンビニでチョコレートの新製品が日替わりのように並び、ボジョレーヌーボーの予約受付も始まったころ。
朝、事務所に行くと警官が何人もいて、しまうまがどこかへ連れて行かれるところだった。
「逃げ出してたんだって。動物園から。指名手配されていたそうだ」
「え、そうなんだ」
「サバンナがなつかしいとか言ってなかったかね?」
「言ってました。でも、実際は動物園で生まれて育ったそうですよ」
「でたらめ、だったんですか?!」
「でたらめだったんだよ」

ぼくは窓を開けて下を見た。道路脇に止められた小型トラックの荷台にしまうまが乗せられているのが見えた。ぼくが手を振ると、しまうまは振り向いた。でも、しまうまが怒ってるのか悲しんでいるのか、あるいは何とも思っていないのか、顔のしま模様がじゃましてよくわからなかった。

【ヤマシタクニコ】koo@midtan.net
みっどないと MIDNIGHT短編小説倶楽部
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■?×?× CrossOver Talk[6]
メモ、書類、情報、思考...あなた流の整理法ってありますか?
──多彩なメモ管理ができる「Evernote」に行き着くまで

杏珠
< https://bn.dgcr.com/archives/20100218140100.html
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デジクリ読者の皆さん、こんにちは。studio H.M代表のディレクター/デザイナーの杏珠(あんじゅ)です。

仕事柄、思いついた事をメモに書いたり、ラフスケッチしたりする事が多いのですが、そのメモやラフスケッチをどう整理するか、いつも考えていました。メモに限らず、ネタになりそうな立体物、雑誌のキリヌキなど、検索が簡単にできる仕組みができないものか? 試行錯誤した結果、「Evernote」というサービスを使って整理しています。数あるアプリケーションやサービスがある中で、デザイナーの視点から「Evernote」を選んだ理由をお話します。

まずはじめに、皆さんに質問です。手書きメモや資料などをどんな方法で整理されていますか? 中には様々な形なものもあり、切り取ることもできない借りた本などもあるかと思います。デジタルデータでは、PCなどで打ち込んだテキストデータや複数台のマシン(自宅や会社など)で作成したもの、Webサイトで調べたデータなど、いくつものフォルダに分けていて、どこに何が入っているのかが分からなくなったという事はありませんか? 私もそんな整理できない悩める人間でした(笑)。でも、今回紹介する「Evernote」をはじめとして、色々な整理法を試してみてからグッと整理や検索が簡単になり、さらに自分の志向まで変わって来ました。

●まずは「整理」する方法を色々調べてみる

整理する事って、実はものすごく奥が深いんですね。体感する「整理」も、思考する「整理」も、実は繋がっているんだなって改めて思いました。たとえば「使いやすい場所に、よく使うものを置いておく」というライフハックがあります。あたり前のようですが、実はコレ、人によって「使いやすい場所」も、「よく使うもの」も全く違うんですよね。絶対ここにある方がいいと思っていたものが、実は他の場所にあった方が結果的によかったりするんです。

これらは「今までの固定概念を外してみる、他の方法を試してみる、実はもっと便利になるんじゃないか?」と考える事に繋がっていきます。そのとっかかりが「身の回りの物の整理」なのです。整理整頓に関する本を読むと、いままで考えつかなかった整理方法がワンサカ出てきます。中には「?」と思う整理法もあるのですが、試してみるとこれまたスゴく便利だったりして、それがまた面白くて、次の整理法を試してみたくなる。そうすると、普段の思考方法までも変わって来ると実感できます。とても参考になった本を幾つか紹介します。

・佐藤可士和の超整理術(佐藤可士和)
< http://www.nikkeibook.com/book_detail/16594/
>
・超「超」整理法(野口悠紀雄)
< http://shop.kodansha.jp/bc2_bc/search_view.jsp?b=2149486
>
・すごい! 整理術(坂戸健司)
< http://www.php.co.jp/bookstore/detail.php?isbn=978-4-569-69649-2
>
・持たない暮らし(金子由紀子)
< http://www.aspect.co.jp/np/details.do?goods_id=837
>
・整理HACKS!(小山龍介)
< http://www.toyokeizai.net/shop/books/detail/BI/3da316c8fd49f778e6b863bb56c3bced/
>
・情報は1冊のノートにまとめなさい 100円でつくる万能「情報整理ノート」(奥野宣之)
< http://www.nana-cc.com/syoseki/book_b40.html
>
・はじめてのGTD ストレスフリーの整理術(デビッド・アレン 田口元・監修)
< http://www.futami.co.jp/book.php?isbn=9784576082110
>

情報整理も、机の上の整理も、自分なりのしっくりくる整理法が確立されれば、どんどん楽しくなって、ワクワクしてきますので、ぜひ上記の整理法の本や色々なサイトを見ることをオススメします。

●色々試した結果、行き着いたのが「Evernote」

整理法を色々考えたり試したりする中で分かったのが、デジタルな世界でもアナログな世界でも「整理」すること自体の考え方は同じという事でした。手書きメモなどアナログのものと、Webサイトなどで収集したデータ、執筆した文章などのデジタルのものを一緒に整理できないか? と試した結果、今回紹介する「Evernote」というサービスが、自分の中では一番しっくり来ました。

いつも拝見しているブログ「lifehacking.jp」(iPhone情報整理術の著者・堀正岳さん)にて、昨年、Evernoteに関する記事を見つけました。記事を読んでみると、ブラウザやOSに関係なく、どこでもデータの同期ができるすばらしいサービスという事がエントリされていまして、早速導入しました。導入直後は正直、なくてはならない存在になるほどのサービスに化けるとは思ってもみませんでした。

Evernoteの概要は、
・どのWebブラウザからでもアクセス可能(IE、Firefox、Safari、Chromeなど)
・色々なプラットフォームでのクライアントがある(Mac、Windows、iPhone/iPod Touch、Windows Mobile、BlackBerryなど)
・クライアントアプリを使用してのオフラインでの操作、ネット経由でのデータの同期処理が可能
・取り込めるデータは、Webページ、テキスト、スクリーンショット、カメラ、音声、画像、PDF(有料版は全てのデータに対応)
・テキストはもちろん、画像からの文字も全文検索可能(日本語は近々対応する予定だそう)

無料版と有料版に機能の違いがあるので、興味を持たれた方はEvernoteのサイトでご確認下さい。
lifehacking.jp < http://lifehacking.jp/
>
Evernote    < http://www.Evernote.com/about/intl/jp/
>

●安心して仕事やプライベートのプロジェクトに打ち込める

Evernoteを使いはじめて、徐々に便利な部分が分かってきました。そしていままで感じたことのない感覚が生まれてきました。キャッチコピーである「すべてを記憶する」が物語っていますが、自分が考えたこと、行動した記録の全てをEvernoteに集約する事によって、ここを調べれば必ず資料が見つかるというだけでなく、やりたいと思っていたこと、プロジェクトの進行状況が分かるという仕組みができて、安心して仕事やプライベートのプロジェクトに打ち込めるということでした。これは使用し続け、そのサービスやシステムを心底溺愛して、信用できたからこそ生まれてくる感覚だと思います。

そんな便利に使っているEvernoteですが、使用しているうちに問題が2点ほど浮上してきました。
1)メモ用紙などに書き込んだ文字は、PCからテキスト入力すればいいのですが、ラフスケッチや紙焼き原稿、雑誌のキリヌキも管理したい。
2)立体物や借りてきた本など、手元に置いておける期限があるものも管理したい。

その問題も、2つの機器の導入と有料版にアップグレードすることで解決しました。ひとつ目は「ScanSnap」というカラーイメージスキャナです。ScanSnapはFujitsuから販売されているスキャナで、フィルムなどもスキャンできるフラットベットスキャナではなく、紙のみをスキャンするドキュメントスキャナです。このスキャナを使ってスキャンした紙のデータをPDFやjpeg画像にしてしまい、容量の重いデータ以外は全てEvernoteに集約しました。これでひとつ目の問題は解決しました(最近では、スキャンしたデータをそのままEvernoteに送ることも可能になりました)。

ふたつ目は「iPhone」です。iPhoneにももちろん、Evernote専用アプリがあって、閲覧、記録が可能になっています。記録方式としては通常のテキスト入力、カメラで撮影したものや、iPhone上でキャプチャした画像、ボイスメモ機能をつかった音声データが、PCがなくてもその場でEvernoteに集約できます。

●デザイナーという職業柄から見る、Evernoteの使い方

私は「こんな感じで使っているよ」という事例を3つほどご紹介します。さすがに全部は紹介できないので、紹介しきれないもの、図解にてさらに詳しい解説も含めて、私のブログの方でも随時紹介していきたいと思います。

1)仕事のプロジェクト管理として使用する

私はデザイン業務を受注したときに「受注日時_媒体名_プロジェクト名_ページ数@担当者名」というページのファイル名を入力して、進行しているデザイン業務のページをEvernoteにて作成します。仕事で打ち合わせがあれば、そのときに記入していた紙、資料、FAX、メールの内容、ラフ画像、関連Webサイトのデータ、サイトのキャプチャ画像など、関連するものはスキャンなりコピー&ペーストなり、全てそのページに継ぎ足していきます。Evernote上で別ページで作成したものもあとから結合できるので、かまわずどんどんEvernoteに集約します。

仕事を始める時に、進行日時とデザインを進めて行く中でのルールや、後で確認しておきたいことをどんどん記入していきます。業務が終わった後には「資料」というノートブックに移動して「仕事」というタグをつけて終了です。そのときの仕事を振り返りたいときは、関連キーワードとタグから検索ができます。ここまでやっておけば、他のPCからでも、いつでも進行が再開できますし、出先で問い合わせがあったときにiPhoneからでも閲覧できるので、十分対処が可能です。

2)アプリケーションの操作方法、PCのソフトのインストールや、ブログを書く時のネタ帳として使う

アプリケーションのアップデートやインストール、Webサービスを新規に使う時のことなどを、手順や問題があったときのために記録します。まずはアプリケーションの配布元や、Webサービスのサイトの関連WebページをEvernoteにてクリップします。そのデータにはURLも記録されているので、後で調べる必要がありません。インストール中のダイアログのキャプチャやWebページを、クリップしたページにどんどんドラッグ&ドロップ。そうすれば、いつ何をインストールしたか、どういった手順でやったかが時系列で記録されていきます。ブログでネタを公開する時のための材料として取っておく事もできます。

3)デリバリーなどのメニューや説明書、買い物で必要な情報をiPhoneで撮影したり、スキャナでスキャンしておく。

なんでもEvernoteに入れておくことで、たとえばこんな使い方もできます。
・出前の注文をするときに、メニューなどをスキャンしておけば、iPhoneで注文を決めてその場で電話注文できます。
・家電製品などの説明書をPDFで保存しておけば、何かトラブルがあったときにすぐ確認できます。
・買い物をするときに、型番や形状をiPhoneで撮影したり、前もってWebページをクリップしておけば、iPhoneから確認、編集もできます。

使い方は様々で、活用されている方も多数いらっしゃいますので、ネットで色々情報収集をしてみてはいかがでしょうか? たとえばToDoリストを作ったり、日記にしたり、レシピ集を作ったり。最近ではEvernoteと連携できるサービスも増えてきていますので、ますます便利な素晴らしいサービスになっていくかと思います。

iPhoneユーザーであれば、iPhoneのカメラ機能を使ってEvernoteとの連携できる便利なスキャナアプリがあります。「JotNot」というアプリで、ノートやレシートなど、その場ですぐにスキャンしたいものがあったときに活躍します。2階調にすることも可能で、認識範囲を自分で決める事もできます。
JotNot
< http://itunes.apple.com/jp/app/id307868751
>
< http://itunes.apple.com/jp/app/id310789464
> Free版

●Evernoteを使うにあたっての注意点と有効利用するためのTips

この記事を見て「Evernote使ってみようかな?」と思う方に3つの注意点をお伝えしておきます。

1)ScanSnapを使う場合も考慮して、自分の整理法とも関係あるのですが、使用する用紙などはA4で統一して使う事をオススメします。クリアファイルなどを使って整理するときに、紙の規格を統一しておくことで、スキャンする設定やファイルBOXに整理する事が簡単になります。

2)Evernoteには無料版と有料版の2種類があります。無料版だと1ヶ月/40MBまでと保存容量が少ないのと、対応するデータが少ない、iPhone版アプリとの連携でiPhone上にオフラインでのデータの保存ができないという制約があります。しばらく使ってみて、コレは便利! と思いましたら、ぜひプレミアム版にアップグレードしていただければと思います。

3)これはEvernoteに限ったことではないのですが、インターネットを介してのサービスは、どんなサービスでも「自己責任」を持って使用して下さい。いくら便利だからといって、銀行のキャッシュカードの暗証番号一覧のデータや、会社で使っている極秘の顧客リストをアップしておくなどはNGです。便利なことの裏にはそれなりのリスクが伴います。だからといって全く使わないのではなく、もし万が一何かがあっても、ここまでなら大丈夫という自分なりのラインを作って、それを守って使用して下さい。ノートブックを同期/非同期にできる設定があるので、そこで設定するという手もあります。

そして最後に、Evernoteはとても便利なサービスなのですが、複数のサービスを合わせて使う事で、より便利になります。Evernoteはプレミアム版にアップグレードしても、1ヶ月で保存出来る容量が500MBと決まっているので、デジカメなどの大きな容量の画像を管理するのには不向きです。そういったデータはたとえばFlickr(写真共有コミュニティサイト)やDropBox(オンラインストレージサービス)などのサービスと連携する方が良いかと思います。

もしEvernoteを「使ってみたい!」「再チャレンジしてみたい!」と思った方は、まずは3日、もしくは1週間の間、Evernoteに全ての情報を入れてみる事をオススメします。Evernoteの良さが分からないという方の大半は、自分もそうだったんですけど、調べてみたら見つかった、ここ(Evernote)に集約しておいてよかったー! という体験がないからだと思います。でもそれは情報が集約されていない限り得ることはありません。ですので、どんな些細なことでもいいんです。情報収集する場所をできる限り少なくし、できれば1カ所に集約する。このことを念頭に置いて使ってみて下さい。

今回はEvernoteを取りあげましたが、自分なりの整理法が見つかり、それにあった方法やツールがあれば、まずは結果が出るまで少し続けてみませんか? 新しいクツや服は、慣れるまではちょっと時間がかかります。それに慣れれば、大きなリターンが必ずありますので......。なにか分からない事があれば、分かる範囲で喜んでお答えしますので、いつでもお問い合わせくださいませ。

最後に、Evernoteの開発者、ならびに関係者の方々、そしてEvernoteを使い込んで、ブログや書籍などに使い方を惜しげもなく公開されているブロガーや著者の方々にお礼をいいたいと思います。ありがとうございます!

誠 Biz.ID:Webサービス図鑑/オンラインノート:Evernote
< http://bizmakoto.jp/bizid/articles/0909/01/news069.html
>
Flickr:フリッカー
< http://www.flickr.com/groups/japanese/
>
Dropbox
< https://www.dropbox.com/
>
来月、Evernoteの関連書籍が発売されるそうです。興味のあるかたはチェックしてみてはいかがでしょうか?「できるポケット+ Evernote」
< http://www.impressjapan.jp/books/2827
>

【あんじゅ】ask@happy-montblanc.com

東京都出身。デザイン事務所「studio H.M」代表。エディトリアルを中心にデザイン業を営んでます。愛車のSKYWAVE250にPSPのマップラスナビをつけて、いろんな所に出没してます。大手コンビニエンスストアと某家電量販店でAV機器(カーナビ、衛星放送機器、テレコ)の販売経験を持つ、妙な経歴の持ち主のディレクター/デザイナー。MacBook ProとiPhoneを持って、どこでも仕事します。ノマド族まっしぐら!
『みんなが幸せになることはないか?』をモットーに、日々自分が気になることを追求し、業種、仕事にとどまらず多方面で物事を追求し、答えを求めている天国思考な人物です。最近はモチベーションを上げるためにはどうしたらいいか? という事もよく考えるようになったので自分で勝手に『モチベーションクリエイター』という肩書きを作りました(笑)
趣味は機械モノ(PCとかガジェットとか)やゲーム、料理(食べ物)が大好物です。業種、仕事の内容、もちろん仕事でなくとも『ピンっ!』と何かを感じてくれましたら、いつでもコンタクトいただければ嬉しい限りです。

Design × Lifehack × CrossOver Lab:< http://happy-montblanc.com/blog/
>
studio H.M作品集:< http://gallery.me.com/powerangix
>
twitter:< http://twitter.com/powerangix
>

●デジクリ連載内から(機能が追加されている可能性あり)
< https://bn.dgcr.com/archives/20081015140200.html
>
MKチャット対談 コピペ万歳!「Evernote」/笠居トシヒロ&まつむらまきお
< https://bn.dgcr.com/archives/20090708140300.html
>
グラフィック薄氷大魔王[185]iPhone OS 3.0のメモ同期とEvernote/吉井宏
< https://bn.dgcr.com/archives/20090128140200.html
>
グラフィック薄氷大魔王[166]「Evernote」を使ってみた/吉井宏

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■編集後記(2/18)

・朝日新聞が2月15日の社説で、「給食でコメを主食にすれば、おかずも和食が増え、地元でとれる野菜や魚介類をより多く利用することにつながる」「コメ離れに苦しむ農家や食料自給率のことを考えるのも、食育である」と書いている。食の教育のためにも米飯給食をもっと推進せよ、と言っているようだ。ハッキリ書けばいいのに、何に遠慮しているのか。隷属国家 日本の岐路―今度は中国の天領になるのか?北野幸伯「隷属国家日本の岐路」(ダイヤモンド社、2008)の中に「完全米飯給食が食糧自給率をアップさせる」という、とても説得力ある提案があった。食糧自給率アップのカギは、米の需要を増やすことだ。一番手っとり早い方法は、全小中学校で完全米飯給食を実施することである。米その他の食材も国産で、できるだけ地元で調達する。これは、地元農業保護、食糧自給率アップにつながる、というものだ。子どもの頃からパン食に慣れた成人にいまさら「もっと米を食べろ」といっても無理だ。しかし、米飯給食で育った子どもたちは、卒業してからも一生米を食べ続ける(子供の頃に食べた味は生涯忘れないから)、生まれて来る子どもにも米を食べさせるようになる。つまり、「完全米飯給食は米の需要を永遠に増やし続ける秘訣」なのだ。「設備負担が増える」という自治体や「打撃を受ける」というパン業界からの反対を恐れず完全米飯給食を推進すべきだと思う。今日の小2生の給食の献立は「ごはん、さけのやきづけ、はりはりあえ、のっぺじる、ささだんご、ぎゅうにゅう」だ。わが家は昨夜の鍋の残りにうどんを入れて食べた。小学生がうらやましくもある。(柴田)
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勝てば官軍―成功の法則・マクドナルド元社長、亡き藤田田さんの「勝てば官軍」を図書館で借りた。Twitter IDから、本にたとえてくれる「擬本化ったー」で、あなたは「勝てば官軍」だと言われたため。初版1996年で、話題になった本だったが、興味がなくてスルーしていた。何かの縁かもと思い軽い気持ちで読み始めたが、予言書みたいな内容になっていて驚き。1995年、ハンバーガーを210円から130円にする。デフレは長く続くと予測する理由に少子化と大幅減反、日本が「貧国貧民」国家に転落するだろうと考えられる理由に空港規模、消費税を地方税にして(県によって消費税率を変える)人を地方に誘致させる、「金の卵」をさがすより教育して戦力とせよ、など。ぱらっとめくるだけでこれだけの話がある。確かにデフレは長く続き、ハブ空港は韓国に持っていかれた。地方分権化を地方知事は望んでいる。派遣メインでは人は育っていかない。これを政治家は15年前に読んでいるんだなぁ。ビジネスの話も書かれてあるよ。(hammer.mule)
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擬本化ったー
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Twitter占いの基本パックっぽいもの
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米Adobe、モバイル向けAIRランタイムの提供を開始へ。iPhone......