?×?× CrossOver Talk[6]メモ、書類、情報、思考...あなた流の整理法ってありますか?──多彩なメモ管理ができる「Evernote」に行き着くまで
── 杏珠 ──

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デジクリ読者の皆さん、こんにちは。studio H.M代表のディレクター/デザイナーの杏珠(あんじゅ)です。

仕事柄、思いついた事をメモに書いたり、ラフスケッチしたりする事が多いのですが、そのメモやラフスケッチをどう整理するか、いつも考えていました。メモに限らず、ネタになりそうな立体物、雑誌のキリヌキなど、検索が簡単にできる仕組みができないものか? 試行錯誤した結果、「Evernote」というサービスを使って整理しています。数あるアプリケーションやサービスがある中で、デザイナーの視点から「Evernote」を選んだ理由をお話します。

まずはじめに、皆さんに質問です。手書きメモや資料などをどんな方法で整理されていますか? 中には様々な形なものもあり、切り取ることもできない借りた本などもあるかと思います。デジタルデータでは、PCなどで打ち込んだテキストデータや複数台のマシン(自宅や会社など)で作成したもの、Webサイトで調べたデータなど、いくつものフォルダに分けていて、どこに何が入っているのかが分からなくなったという事はありませんか? 私もそんな整理できない悩める人間でした(笑)。でも、今回紹介する「Evernote」をはじめとして、色々な整理法を試してみてからグッと整理や検索が簡単になり、さらに自分の志向まで変わって来ました。



●まずは「整理」する方法を色々調べてみる

整理する事って、実はものすごく奥が深いんですね。体感する「整理」も、思考する「整理」も、実は繋がっているんだなって改めて思いました。たとえば「使いやすい場所に、よく使うものを置いておく」というライフハックがあります。あたり前のようですが、実はコレ、人によって「使いやすい場所」も、「よく使うもの」も全く違うんですよね。絶対ここにある方がいいと思っていたものが、実は他の場所にあった方が結果的によかったりするんです。

これらは「今までの固定概念を外してみる、他の方法を試してみる、実はもっと便利になるんじゃないか?」と考える事に繋がっていきます。そのとっかかりが「身の回りの物の整理」なのです。整理整頓に関する本を読むと、いままで考えつかなかった整理方法がワンサカ出てきます。中には「?」と思う整理法もあるのですが、試してみるとこれまたスゴく便利だったりして、それがまた面白くて、次の整理法を試してみたくなる。そうすると、普段の思考方法までも変わって来ると実感できます。とても参考になった本を幾つか紹介します。

佐藤可士和の超整理術・佐藤可士和の超整理術(佐藤可士和)
< http://www.nikkeibook.com/book_detail/16594/
>
超「超」整理法 知的能力を飛躍的に拡大させるセオリー (MouRaピース)・超「超」整理法(野口悠紀雄)
< http://shop.kodansha.jp/bc2_bc/search_view.jsp?b=2149486
>
すごい! 整理術 (PHPビジネス新書)・すごい! 整理術(坂戸健司)
< http://www.php.co.jp/bookstore/detail.php?isbn=978-4-569-69649-2
>
お部屋も心もすっきりする 持たない暮らし・持たない暮らし(金子由紀子)
< http://www.aspect.co.jp/np/details.do?goods_id=837
>
整理HACKS!―1分でスッキリする整理のコツと習慣・整理HACKS!(小山龍介)
< http://www.toyokeizai.net/shop/books/detail/BI/3da316c8fd49f778e6b863bb56c3bced/
>
情報は1冊のノートにまとめなさい 100円でつくる万能「情報整理ノート」 (Nanaブックス)・情報は1冊のノートにまとめなさい 100円でつくる万能「情報整理ノート」(奥野宣之)
< http://www.nana-cc.com/syoseki/book_b40.html
>
はじめてのGTD ストレスフリーの整理術・はじめてのGTD ストレスフリーの整理術(デビッド・アレン 田口元・監修)
< http://www.futami.co.jp/book.php?isbn=9784576082110
>

情報整理も、机の上の整理も、自分なりのしっくりくる整理法が確立されれば、どんどん楽しくなって、ワクワクしてきますので、ぜひ上記の整理法の本や色々なサイトを見ることをオススメします。

●色々試した結果、行き着いたのが「Evernote」

整理法を色々考えたり試したりする中で分かったのが、デジタルな世界でもアナログな世界でも「整理」すること自体の考え方は同じという事でした。手書きメモなどアナログのものと、Webサイトなどで収集したデータ、執筆した文章などのデジタルのものを一緒に整理できないか? と試した結果、今回紹介する「Evernote」というサービスが、自分の中では一番しっくり来ました。

iPhone情報整理術 ~あなたを情報''強者''に変える57の活用法!(デジタル仕事術シリーズ)いつも拝見しているブログ「lifehacking.jp」(iPhone情報整理術の著者・堀正岳さん)にて、昨年、Evernoteに関する記事を見つけました。記事を読んでみると、ブラウザやOSに関係なく、どこでもデータの同期ができるすばらしいサービスという事がエントリされていまして、早速導入しました。導入直後は正直、なくてはならない存在になるほどのサービスに化けるとは思ってもみませんでした。

Evernoteの概要は、
・どのWebブラウザからでもアクセス可能(IE、Firefox、Safari、Chromeなど)
・色々なプラットフォームでのクライアントがある(Mac、Windows、iPhone/iPod Touch、Windows Mobile、BlackBerryなど)
・クライアントアプリを使用してのオフラインでの操作、ネット経由でのデータの同期処理が可能
・取り込めるデータは、Webページ、テキスト、スクリーンショット、カメラ、音声、画像、PDF(有料版は全てのデータに対応)
・テキストはもちろん、画像からの文字も全文検索可能(日本語は近々対応する予定だそう)

無料版と有料版に機能の違いがあるので、興味を持たれた方はEvernoteのサイトでご確認下さい。
lifehacking.jp < http://lifehacking.jp/
>
Evernote    < http://www.Evernote.com/about/intl/jp/
>

●安心して仕事やプライベートのプロジェクトに打ち込める

Evernoteを使いはじめて、徐々に便利な部分が分かってきました。そしていままで感じたことのない感覚が生まれてきました。キャッチコピーである「すべてを記憶する」が物語っていますが、自分が考えたこと、行動した記録の全てをEvernoteに集約する事によって、ここを調べれば必ず資料が見つかるというだけでなく、やりたいと思っていたこと、プロジェクトの進行状況が分かるという仕組みができて、安心して仕事やプライベートのプロジェクトに打ち込めるということでした。これは使用し続け、そのサービスやシステムを心底溺愛して、信用できたからこそ生まれてくる感覚だと思います。

そんな便利に使っているEvernoteですが、使用しているうちに問題が2点ほど浮上してきました。
1)メモ用紙などに書き込んだ文字は、PCからテキスト入力すればいいのですが、ラフスケッチや紙焼き原稿、雑誌のキリヌキも管理したい。
2)立体物や借りてきた本など、手元に置いておける期限があるものも管理したい。

FUJITSU ScanSnap S1500 FI-S1500その問題も、2つの機器の導入と有料版にアップグレードすることで解決しました。ひとつ目は「ScanSnap」というカラーイメージスキャナです。ScanSnapはFujitsuから販売されているスキャナで、フィルムなどもスキャンできるフラットベットスキャナではなく、紙のみをスキャンするドキュメントスキャナです。このスキャナを使ってスキャンした紙のデータをPDFやjpeg画像にしてしまい、容量の重いデータ以外は全てEvernoteに集約しました。これでひとつ目の問題は解決しました(最近では、スキャンしたデータをそのままEvernoteに送ることも可能になりました)。

ふたつ目は「iPhone」です。iPhoneにももちろん、Evernote専用アプリがあって、閲覧、記録が可能になっています。記録方式としては通常のテキスト入力、カメラで撮影したものや、iPhone上でキャプチャした画像、ボイスメモ機能をつかった音声データが、PCがなくてもその場でEvernoteに集約できます。

●デザイナーという職業柄から見る、Evernoteの使い方

私は「こんな感じで使っているよ」という事例を3つほどご紹介します。さすがに全部は紹介できないので、紹介しきれないもの、図解にてさらに詳しい解説も含めて、私のブログの方でも随時紹介していきたいと思います。

1)仕事のプロジェクト管理として使用する

私はデザイン業務を受注したときに「受注日時_媒体名_プロジェクト名_ページ数@担当者名」というページのファイル名を入力して、進行しているデザイン業務のページをEvernoteにて作成します。仕事で打ち合わせがあれば、そのときに記入していた紙、資料、FAX、メールの内容、ラフ画像、関連Webサイトのデータ、サイトのキャプチャ画像など、関連するものはスキャンなりコピー&ペーストなり、全てそのページに継ぎ足していきます。Evernote上で別ページで作成したものもあとから結合できるので、かまわずどんどんEvernoteに集約します。

仕事を始める時に、進行日時とデザインを進めて行く中でのルールや、後で確認しておきたいことをどんどん記入していきます。業務が終わった後には「資料」というノートブックに移動して「仕事」というタグをつけて終了です。そのときの仕事を振り返りたいときは、関連キーワードとタグから検索ができます。ここまでやっておけば、他のPCからでも、いつでも進行が再開できますし、出先で問い合わせがあったときにiPhoneからでも閲覧できるので、十分対処が可能です。

2)アプリケーションの操作方法、PCのソフトのインストールや、ブログを書く時のネタ帳として使う

アプリケーションのアップデートやインストール、Webサービスを新規に使う時のことなどを、手順や問題があったときのために記録します。まずはアプリケーションの配布元や、Webサービスのサイトの関連WebページをEvernoteにてクリップします。そのデータにはURLも記録されているので、後で調べる必要がありません。インストール中のダイアログのキャプチャやWebページを、クリップしたページにどんどんドラッグ&ドロップ。そうすれば、いつ何をインストールしたか、どういった手順でやったかが時系列で記録されていきます。ブログでネタを公開する時のための材料として取っておく事もできます。

3)デリバリーなどのメニューや説明書、買い物で必要な情報をiPhoneで撮影したり、スキャナでスキャンしておく。

なんでもEvernoteに入れておくことで、たとえばこんな使い方もできます。
・出前の注文をするときに、メニューなどをスキャンしておけば、iPhoneで注文を決めてその場で電話注文できます。
・家電製品などの説明書をPDFで保存しておけば、何かトラブルがあったときにすぐ確認できます。
・買い物をするときに、型番や形状をiPhoneで撮影したり、前もってWebページをクリップしておけば、iPhoneから確認、編集もできます。

使い方は様々で、活用されている方も多数いらっしゃいますので、ネットで色々情報収集をしてみてはいかがでしょうか? たとえばToDoリストを作ったり、日記にしたり、レシピ集を作ったり。最近ではEvernoteと連携できるサービスも増えてきていますので、ますます便利な素晴らしいサービスになっていくかと思います。

iPhoneユーザーであれば、iPhoneのカメラ機能を使ってEvernoteとの連携できる便利なスキャナアプリがあります。「JotNot」というアプリで、ノートやレシートなど、その場ですぐにスキャンしたいものがあったときに活躍します。2階調にすることも可能で、認識範囲を自分で決める事もできます。
JotNot
< http://itunes.apple.com/jp/app/id307868751
>
< http://itunes.apple.com/jp/app/id310789464
> Free版

●Evernoteを使うにあたっての注意点と有効利用するためのTips

この記事を見て「Evernote使ってみようかな?」と思う方に3つの注意点をお伝えしておきます。

1)ScanSnapを使う場合も考慮して、自分の整理法とも関係あるのですが、使用する用紙などはA4で統一して使う事をオススメします。クリアファイルなどを使って整理するときに、紙の規格を統一しておくことで、スキャンする設定やファイルBOXに整理する事が簡単になります。

2)Evernoteには無料版と有料版の2種類があります。無料版だと1ヶ月/40MBまでと保存容量が少ないのと、対応するデータが少ない、iPhone版アプリとの連携でiPhone上にオフラインでのデータの保存ができないという制約があります。しばらく使ってみて、コレは便利! と思いましたら、ぜひプレミアム版にアップグレードしていただければと思います。

3)これはEvernoteに限ったことではないのですが、インターネットを介してのサービスは、どんなサービスでも「自己責任」を持って使用して下さい。いくら便利だからといって、銀行のキャッシュカードの暗証番号一覧のデータや、会社で使っている極秘の顧客リストをアップしておくなどはNGです。便利なことの裏にはそれなりのリスクが伴います。だからといって全く使わないのではなく、もし万が一何かがあっても、ここまでなら大丈夫という自分なりのラインを作って、それを守って使用して下さい。ノートブックを同期/非同期にできる設定があるので、そこで設定するという手もあります。

そして最後に、Evernoteはとても便利なサービスなのですが、複数のサービスを合わせて使う事で、より便利になります。Evernoteはプレミアム版にアップグレードしても、1ヶ月で保存出来る容量が500MBと決まっているので、デジカメなどの大きな容量の画像を管理するのには不向きです。そういったデータはたとえばFlickr(写真共有コミュニティサイト)やDropBox(オンラインストレージサービス)などのサービスと連携する方が良いかと思います。

もしEvernoteを「使ってみたい!」「再チャレンジしてみたい!」と思った方は、まずは3日、もしくは1週間の間、Evernoteに全ての情報を入れてみる事をオススメします。Evernoteの良さが分からないという方の大半は、自分もそうだったんですけど、調べてみたら見つかった、ここ(Evernote)に集約しておいてよかったー! という体験がないからだと思います。でもそれは情報が集約されていない限り得ることはありません。ですので、どんな些細なことでもいいんです。情報収集する場所をできる限り少なくし、できれば1カ所に集約する。このことを念頭に置いて使ってみて下さい。

今回はEvernoteを取りあげましたが、自分なりの整理法が見つかり、それにあった方法やツールがあれば、まずは結果が出るまで少し続けてみませんか? 新しいクツや服は、慣れるまではちょっと時間がかかります。それに慣れれば、大きなリターンが必ずありますので......。なにか分からない事があれば、分かる範囲で喜んでお答えしますので、いつでもお問い合わせくださいませ。

最後に、Evernoteの開発者、ならびに関係者の方々、そしてEvernoteを使い込んで、ブログや書籍などに使い方を惜しげもなく公開されているブロガーや著者の方々にお礼をいいたいと思います。ありがとうございます!

誠 Biz.ID:Webサービス図鑑/オンラインノート:Evernote
< http://bizmakoto.jp/bizid/articles/0909/01/news069.html
>
Flickr:フリッカー
< http://www.flickr.com/groups/japanese/
>
Dropbox
< https://www.dropbox.com/
>
できるポケット+ Evernote来月、Evernoteの関連書籍が発売されるそうです。興味のあるかたはチェックしてみてはいかがでしょうか?「できるポケット+ Evernote」
< http://www.impressjapan.jp/books/2827
>

【あんじゅ】ask@happy-montblanc.com

東京都出身。デザイン事務所「studio H.M」代表。エディトリアルを中心にデザイン業を営んでます。愛車のSKYWAVE250にPSPのマップラスナビをつけて、いろんな所に出没してます。大手コンビニエンスストアと某家電量販店でAV機器(カーナビ、衛星放送機器、テレコ)の販売経験を持つ、妙な経歴の持ち主のディレクター/デザイナー。MacBook ProとiPhoneを持って、どこでも仕事します。ノマド族まっしぐら!
『みんなが幸せになることはないか?』をモットーに、日々自分が気になることを追求し、業種、仕事にとどまらず多方面で物事を追求し、答えを求めている天国思考な人物です。最近はモチベーションを上げるためにはどうしたらいいか? という事もよく考えるようになったので自分で勝手に『モチベーションクリエイター』という肩書きを作りました(笑)
趣味は機械モノ(PCとかガジェットとか)やゲーム、料理(食べ物)が大好物です。業種、仕事の内容、もちろん仕事でなくとも『ピンっ!』と何かを感じてくれましたら、いつでもコンタクトいただければ嬉しい限りです。

Design × Lifehack × CrossOver Lab:< http://happy-montblanc.com/blog/
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studio H.M作品集:< http://gallery.me.com/powerangix
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●デジクリ連載内から(機能が追加されている可能性あり)
< https://bn.dgcr.com/archives/20081015140200.html
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MKチャット対談 コピペ万歳!「Evernote」/笠居トシヒロ&まつむらまきお
< https://bn.dgcr.com/archives/20090708140300.html
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グラフィック薄氷大魔王[185]iPhone OS 3.0のメモ同期とEvernote/吉井宏
< https://bn.dgcr.com/archives/20090128140200.html
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グラフィック薄氷大魔王[166]「Evernote」を使ってみた/吉井宏