グラフィック薄氷大魔王[217]「スーパータスカー」じゃない人へ
── 吉井 宏 ──

投稿:  著者:


街で、動きのおかしい人やクルマを見ると、やはりケータイしながらだったりする。「運転と携帯を同時にこなす人は稀に存在」って記事がありました。同時に複数の作業ができる「スーパータスカー」が40人に一人の割でいるらしい。逆に言えば、「スーパータスカー」じゃないほとんどの人は、一度に一つのことしかできないってことなんですが。
< http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20100405-00000001-natiogeo-int
>

200人を対象に実験したところ、複数の作業を同時に行うと、ほとんどの被験者はどちらの作業もうまくできなかったそうだ。ところが、200人中5人は同時に行っても問題なくこなし、さらに2人は同時に行うほうがうまく作業できた、とのこと。少なくとも僕はちがうなあ。うらやましい。

仕事しながら音楽聴くことさえ、基本的に僕はできない。日本語の歌詞が入った音楽やトークのポッドキャストは完全にダメ。耳が言葉を理解しようとし、今考えるべきことがすっ飛んでしまう。絵の塗りとかフィギュアのサンドペーパーがけみたいな単純作業のときは大丈夫だしトランス状態になったりしてキモチイイんだけど、考えたり判断したりを含む作業のときにはまったくダメ。くだらないミスを頻発したりする。



音楽をかけながら仕事してると、リラックスしたり明るい気持ちになったり、空気が良くなる。でも、音楽聴きながら仕事ってことで同時に二つのことをしてるんだから、気分的には忙しく充実して感じても、明らかに効率も質も落ちるようです。充実した時間と思うのは錯覚でしょう。

アニメーターズ・サバイバルキット「アニメーターズ・サバイバルキット」って本に書いてあったこと。

......「多くのアーティスト同様、仕事中に音楽を聴く習慣があった私は、ミルト・カール(ディズニーの黄金期を支えた伝説的アニメーターの一人)の仕事場で無邪気に彼にこう聞いた。『仕事中に音楽は聴かないの?』

ミルト『なんというくだらない質問だ! こんなバカげた質問は初めて聞いた!!』『ぼくはそんなに器用じゃない! 一度にいくつものことなんか考えられない!』

天才の発した言葉は強烈だった。それから私は静寂と向き合い、むやみに鉛筆を動かす前に考えることを覚えた。私のアニメーションはすぐ向上した。私がこの知恵を伝授すると、多くのアーティストは同じ過程をたどる。自分たちの作品の出来があまりにも良くなったことに驚いていた。」

......だそうです。この本、実践のところはあんまり見ないけど、序章や余談のところが役に立つし刺激になる。

昔、ラジオを聴きながら受験勉強みたいなスタイルがありましたが、不思議でした。当時やってみたところ、まったくダメで、何も頭に入らなかったので。ラジオ聴きながら勉強してるよって言いふらして油断させ、ライバルを蹴落とす作戦だったのかもね。

また、スタバなどでイヤホンしながら勉強したり仕事したりしてる人をよく見かける。周囲から自分を遮断して勉強に集中するため、ってのはよく聞く理由だけど、ほとんどの人は効率落ちてると思う。音楽かけながら3時間の勉強が、音楽なしで1時間勉強するのと同じ効果だったら、どちらを選ぶ? ってことかな。まあ、気分がいいほうを選ぶ人も多いんでしょうけど。

○先週の補足

「abrAsus 保存するメモ帳」で、A4の紙の折り方のムービーがありました。これもイイけど、A4を横に切って蛇腹状もいいんじゃないかと。また、うちにはA3スキャナがあるので、A3コピー用紙を横に3つに切って蛇腹状に折ってみた。A4三つ折りより少し小さくなるけど、畳み直したりしないでページを順番にめくっていけるので便利かも。
< http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/column/20100208/1030977/?P=1
>

【吉井 宏/イラストレーター】
HP < http://www.yoshii.com
>
Blog < http://yoshii-blog.blogspot.com/
>

日曜、アートフェア東京に行ってきた。以前はNICAFなどこういった大規模な展示会にはよく行ってましたが、久しぶりに。ちゃちゃっと見て帰ろうと思ったら、すごい人。30分くらい並んで入った。中も人でいっぱい。通路が行きたい方向に行きにくいくらい。各ギャラリー、若いアーチストをフィーチャーしてるようでした。気になったアーティストの名前だけメモってきました。平面の絵より、立体作品に惹かれる。立体やりたい!

●アニメ『ヤンス!ガンス!』Wiiシアターの間で配信中。アヌシー国際アニメーション映画祭2010 TVシリーズ部門にノミネートされました!
< http://www.annecy.org/annecy-2010/festival:en/official-selection:c8
>