日々これ徒然なり[04]ネット環境再構築 〜その1
── えむ ──

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10年ほど前、30才のちょっと手前だった僕は今の勤め先(印刷会社)に転職し、システム管理者として働き始めました。初めての印刷業界でしたから、印刷のことなど何も知りませんでしたし、DTP関連の知識も皆無です。それまではまったく別の業界で営業をやっていて、コンピュータについて専門的なことを習う機会もほとんどありませんでした(今に至るまでほぼ独学のみです)。

そんな僕でも採用されたのは、以前の勤務先でBIND for NTを使ってDNSサーバーを立てたりしていたことや、ただのパソコン好きでなく、営業経験などのあったことが買われたからのようです。

めでたく転職でき、勤務し始めたのは良かったのですが、前任者からの引き継ぎはほとんどない上に(たった一日しか顔を合わせてない!)、システム管理を担う者は僕ひとりだけ。いや、正確に言えばパソコンマニアの社長と僕の2人。トラブっても尋ねる相手はおらず、文字通りの暗中模索、五里霧中。千里の道も一歩からという状況。今思えばかなり無謀とも言えるスタートだったかもしれません。

当時の社内にはWindows NT 4.0 Serverのサーバーが1台、クライアントのWin-dowsパソコンが10台そこそこ、DTP部門のMacが5、6台程度のこじんまりしたイントラネット環境。ネットワークプリンターなどを合せても、IPアドレスを持ったノードは全部で20台程度でした。普通のワークグループだけで、Windowsドメイン環境もありませんでした。ちなみにDTP用のRIP(リップ:Rastar Image Processor)には、PowerPC 604e/350MHzを積んだPower Macintosh 9600上でアグファのViperが使われていました。



その後、社内のパソコンたちは急速に増えていきました。今やサーバーは10台を越え、クライアントパソコンは90台ほどになり、全体のノード数が200に近づいてます(サーバー台数は、100人規模の会社には多すぎるという話もあります)。クラスCのネット環境でノード数は254までですから、まだ50個以上のノードを増やせますが、将来はネットワークをルーターで分割することも念頭に置いておかないといけません。

さて、将来の話もさることながら、ノード数が150を超えたあたりから、ネットワーク全体が不安定になってきました。最大の問題が2工場間の通信です。64kbpsの専用回線でつないでいた2つの工場間の通信を、7〜8年前に屋外無線に置き換えました(当初802.11b、現在802.11g)。ずっとトラブルなく運用できていたのに、これが時々切れるようになりました。

両側のアクセスポイントを再起動すれば復活するものの、基幹サーバーとの通信が切れるため、通常業務への悪影響が大きくて目立ちます。トラブル対応の最中にも「つながらない」「切れた」と社内のあちこちから電話がかかってきますから、そのたびに作業の手を止めざるをえず、僕をイライラさせます。

他にも、あるエリアだけネットワークにつながらなくなるトラブルが不定期に発生。たちの悪いことに、このトラブルは原因を突き止める間もなく、10〜15分程度で勝手に復旧してくれます。

かつては、安さに魅かれてバッファローやエレコム等のハブ(スイッチングハブ)を普通に使っていました。しかし、どことなく挙動不審なことが続いたことから、5年以上前からハブはすべてアライドテレシス製品に統一。以来、ハブが原因のトラブルはほぼなくなっていましたが、どうやらこの程度の対処では追いつかない状況のようです。

しかもトラブルが起きた時、どこで何が起きているのか、どこの何が悪さをしているのか、まったくつかめません。現場に行って適当に見当を付け、対症療法的にその場しのぎの対応を施す、といった繰り返しです。

こんな不安定さをなんとか解消したいと思いながらも、なかなか原因は見つかりません。サーバーなどの購入先であるR社の担当者に相談を持ちかけ、無線の電波状況を調査したりしても、これといったものは出てきません。結局、不安定でありながら致命的な事態に至ってはいなかったこともあり、日々の雑事に追われる中、のど元過ぎれば熱さ忘れるといった具合に、トラブルを解決できないままの状態が数年続いていました。(次回に続く)

■今週の1枚〜V.A.「これがSHM-CDだ!」(2008年:UICY-90818/9ほか)

ユニバーサルミュージックから発売されている高音質CD「SHM-CD」の体験サンプラー。同じ内容の通常CDとSHM-CDの2枚組で1,000円。ロック編、ジャズ編、クラシック編など7タイトルが初回生産限定で発売。

「普通のCDプレーヤーで再生できる高音質CD」という触れ込みで、SHM-CD、HQCD、Blu-specCDの3種類のCDが2007年から2008年にかけて登場しました。SHM-CDはこれら高音質CDの先頭バッターです。たまたま立ち読みした「レコード・コレクターズ」で、このサンプラーの広告を見るまで、不覚にも僕はSHM-CDのことをまったく知らずにおり、「1,000円なら買って聴き比べなきゃ」と急いで注文したのがサンプラー第1弾のロック編。ロッド・スチュワート、キンクス、Free、KISS等の17曲入りです。

実はロック方面に滅法弱い僕にとって、このCDは大変良いロック入門盤となりました。恥ずかしながら、全17曲のうち、ちゃんと聴いたことがあったのはシェリル・クロウの「Soak Up The Sun」だけという体たらく。これまで、なんと偏った音楽人生だったことでしょう。

佐野元春の「ヤング・ブラッズ」が酷似していると言われたスタイル・カウンシルの「Shout To The Top」を初めて聴き、「おぉ! 似とる、似とる。同じやん!」と感動したのはここだけの話です。4半世紀前に通過しておくべき道を、極めて遅まきながら今になってようやく歩き始めたわけです。いくつになっても勉強です。生きていればいいことがあるものです。

さて、通常CDとの違いは、実際のところどうなのか。ヘッドホン(ソニー MDR-Z900HD)で何度も繰り返し、納得できるまで聴き比べた結果、あくまで個人的意見に過ぎませんが「高音質と謳うだけのことはある」という結論に至りました。

SHM-CDでは、ひとつひとつの楽器の音の分離が良くなって明確になり、音楽全体の迫力が増しています。ボーカルの固さ(機械っぽいとげとげしさ)が取れて、生き生きとした躍動感が伝わってきます。「人がそこで口を開けて歌っている」様が目に浮かぶようです。大音量で聴き続けていても「聴き疲れ」しません。

SHM-CDを誉めてばかりですが、ロック編やジャズ編については、通常CDとの差はかなり小さいと言えるレベルです。クラシック編は、反響音の聴こえ方がまったく異なるなど、なぜかかなりの差があります。ダイナミックレンジの広い生音の音楽と、スタジオ録音ものとの違いから来るものなのかもしれません。

また、元の録音状態(エンジニアの腕?録音機材の質?)が良くないと思われる音源は、そのアラが見えてしまいます。良いものはより良く、それなりのものはますますそれなりに、となるわけです。また、90年代前半ごろまでのマスターが使われた音源なら、それをそのままSHM-CDとして再発するよりも、ぜひ改めて丁寧にリマスタリングした上での再発を望みます。

世の中には「高音質CD」に否定的な意見も散見されます。「SACDのほうが断然良い。"高音質CD"なんて子供だましはやめろ」といった意見も目にします。それでも僕は、これらの「高音質CD」に価値を感じます。同じCDを出すなら、数百円高くてもSHM-CDやHQCDなどで出してほしいです。そこそこオーディオにこだわりのある僕でも、SACDを再生できるプレーヤーは持ってませんし......いや、これはまったくの個人的事情ですけど。

と、こんなふうに「宗教論争」していられるのも今のうち、なんでしょうね。CDというパッケージメディアが、早晩消えていく運命にあるのを否定できる人は少ないでしょう。10年後、30代までの大半の人にとっては、MP3やAACなどの圧縮音源を「1曲買い」するのが普通で、CDを買うのは稀になっているはずです。予想以上に早く、売れるCDはジャニーズばかりなり、という状況になるかもしれません。そんな時代の来るのが少しでも遅れることを願いつつ、もうしばらくの間、より良い音で、好きな音楽を楽しませてほしいものです。

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