電子書籍に前向きになろうと考える出版社[05]書協の自炊代行は違法という注意喚起文に違和感
── 沢辺 均 ──

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「イッキに数10万の既刊本をPDFにして販売したらいいのに」というのを、前回のデジクリ(先々週)に書いた。その続きにしようと思っていたところ、業界紙にちょうどいいネタになる記事が掲載されていた。

|書協 自炊代行は違法 注意喚起の文言策定

|書協はこのほど、出版物のスキャニング代行業者への対策の一環として、同
|行為が違法であることを喚起する文言例を策定した。書籍などの奥付に掲示
|し、利用者への注意を呼びかけてほしいと出版社に訴えている。表示例は次
|の通り。
|表示例一=本書のコピー、スキャン、デジタル化等の無断複製は著作権法上
|の例外を除き禁じられています。本書を代行業者等の第三者に依頼してスキ
|ャンやデジタル化することは、たとえ個人や家庭内での利用でも著作権法違
|反です。(以下表示例ニ、三は省略)  (新文化/2876号/2011.03.03)

書協のウェブサイトには、このガイドラインのことを見つけることができなかった。
< http://www.jbpa.or.jp/
>



著作権法の理解については、福井健策弁護士が「書籍の電子化、『自炊』『スキャン代行』は法的にOK?」と「INTERNET Watch」サイトで明快に書いていて、ボクも賛成。異論もあるようだが、自炊の著作権法理解に賛成だ。
< http://internet.watch.impress.co.jp/docs/special/20100917_393769.html
>

福井さんの書いていることは、個人の自炊(自分でスキャン)は適法。家族で共有することも適法。自炊の代行サービスは「私的複製の範囲を規定する著作権法第30条1項を見ると、「『使用する者が』複製することができる」と書かれています。こうしたことから、自炊に限らず複製の代行サービスは、私的複製として許容されないというのが通説として定着しています(表【2】参照)」と、適法だと言っている。

ボクとしては「そのとおりだね」と言う以外にない。
で、書協の「注意喚起文」だ。

「代行業者等の第三者に依頼してスキャンやデジタル化することは、たとえ個人や家庭内での利用でも著作権法違反です」と書いていることに、大きな違和感がある。

正しくは「代行業者等の第三者に依頼してスキャンやデジタル化することは著作権法違反」であり、「自分でスキャンやデジタル化することは適法です」である。適法である「自分でスキャン、デジタル化」のことをわざわざ隠すことで、全体としてスキャンやデジタル化全体が違反であるように描いてしまっている。

また、「著作権法上の例外を除き禁じられています」と私的複製のことをあいまいにしている。普通の人に、私的複製が例外になっているという理解まであるとは到底思えない。無理解につけこんで脅しているとしか読めないのだ。

出版という行為が多くの人に親しまれるため、利用されるために、こうした脅しのようなやり方が有効なのだろうか? ボクには、そうは思えない。

現状は、既得権を守って作家などを食い物にしようという出版社たちが、電子書籍の広がりに抵抗していると見られる場面が多いのではないだろうか? あるいは、電子書籍とやらになれば印刷代がかからないんだから、コストゼロでできるのに、作家の印税を増やさないでその利益を独り占めしようとしていると思われていないか?

もちろん、論証まではしないけど、制作費はゼロじゃないし、こうした印象はあまり妥当性がないと思っている。

アメリカで電子書籍が普及してるっていわれるけど(まあ、数字的にはそれほどスゴいって思わないけど)、アメリカじゃ著作権そのものの譲渡があるから、出版社の意志で電子書籍化できるのだが、日本は紙の本にして売る権利だけを契約してるだけなので、なかなか電子書籍をつくれないっていう事情もある。

これって、日本の出版社の「やさしさ」と言えると思っている。結果的なことかもしれないけど、作家たちの自由がより多く確保されているのである。

だけど、たとえば池田信夫さんもトンデモなことを言っていて、「ポットの日誌」に「池田信夫氏の「講談社の『デジタル的利用許諾契約書』について」はひどいでしょう」というのを書いたこともあった。電子書籍化権の契約したいよ、と講談社がいったらトンデモナイ、というのである。いいでしょ、契約したいよと言うの。イヤならイヤと言えばいいだけだ。

そんなふうに批判されているただ中で、あんな「注意喚起文」を呼びかけるなんて、なんというセンスなんだろう。

いま、必要なのは、
・自分でスキャン、デジタル化するのは自由です
・本人と家族の範囲なら「私的」複製の範囲ですからどうぞおやりください
・自分でやることが条件なんだから、業者に頼むのは違法です
であり、できれば、
・これまでに出版した本はPDFの画像データにアクセスできるようにしますので、どんどん捨ててもらっていいですよ
と付け加えたいものだ。

本を買う習慣をもつ多くの人の本棚がもうパンパンだっていうのは、よく聞く話じゃないですか。ならば、その本をどんどん捨ててもらって、また新しい本を買ってもらうことこそが必要なんじゃないだろうか? 出版界にとって。

◇2011.03.12 LIVE勝手にしやがれ Vol.7
< http://www.pot.co.jp/diary/20110207_153409493922370.html
>

はい、ボクのやってるお遊びバンドのライブのご紹介です。
日時:2011年3月12日(土)18:30分開場(飲み放題開始)
19時開演・21時終演予定
場所:新宿ミノトール2 地図→ < http://bit.ly/gq9mhq
>
料金:3,000円 2時間30分飲み放題(18時30分〜21時予定)・軽食付き
定員:50人
申込:申込フォーム= < http://bit.ly/hB56Oz
>
曲目(予定):勝手にしやがれ/伊勢佐木町ブルース/マニフェスト/HotelCalifornia/Sweet Home Chicago/Layla/百恵メドレー/ほかメンバー:青んぼ(g cho)/木谷マキ(d)/ミナ(vo)/沢辺均(g)/ババッチ(p)/ハル(vo)/日野智(b)/本多羅々(g)/&カラオケタイムのみなさま(vo)

飛び入り大募集:バンドをバックに「生オケ」コーナーあります。楽器参加も大歓迎! 事前にご連絡いただければ、歌詞+バンド用のギターコード譜はこちらで用意します。もちろん当日の飛び入り参加も歓迎します! その際は歌詞+ギターコード譜(4部ほど)をお持ちください。

【沢辺 均/ポット出版代表】twittreは @sawabekin
< http://www.pot.co.jp/
>(問合せフォームあります)
ポット出版(出版業)とスタジオ・ポット(デザイン/編集制作請負)をやってます。版元ドットコム(書籍データ発信の出版社団体)の一員。
NPOげんきな図書館(公共図書館運営受託)に参加。
おやじバンドでギター(年とってから始めた)。
日本語書籍の全文検索一部表示のジャパニーズ・ブックダムが当面の目標。