買物王子の家づくり[11]ワークスペースはコックピットに
── 石原 強 ──

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打ち合わせも五回を重ねて、プランも大分詰まって来ました。間取りはほぼ確定して、検討はさらに詳細な部分に進みます。一方でスケジュールも押しているので、のんびりはしていられません。年内の完成のために、工事着工の時期が間近に迫ってきます。その前に「建築確認」を受けなければ家は建てられません。

●構造計算でどんでんがえし

「建築確認」とは、これから建てる家が建築基準法などの法令や各種基準に、適合しているかどうかの審査です。建築主が申請して、確認を受ける先は役所または民間の指定確認機関です。申請から確認済証の取得までには、だいたい三週間かかるそうです。

申請には、仕様書や設計図、付近見取図などの設計図書が必要です。さらに、木造でも三階建ての住宅では、地震などに対する安全性の計算を記した「構造計算書」が必要となります。

フルヤさんからは、構造計算に関しては「ロウファットストラクチュア」という構造設計専門の事務所に依頼すると聞いていました。実績も豊富ということでおまかせします。
< http://www.lowfatstructure.com/
>

打ち合わせでは、構造上の指摘事項について説明がありました。大きく三点です。一階の壁の量が足りないために、少し増やす必要がある。一階の壁の位置が二階三階とずれているが、揃えたほうが良い。入り口の階段の位置は正面右ではなく左が良い。地震があっても安全に永く住むためには、無理な構造にするのは避けたい。デザインと構造の折り合いは重要だ。



●期待のワークスペースが半分に

一点目の壁の量に関しては、「奥行きが長いので、縦方向の壁は十分確保されている、しかしオープンな間取りにしているので、横方向に壁が必要」なのだという。

特に一階は上の階を支えるので、壁の量を増やしたほうがいいとのこと。バスルームと手洗に壁を設けない一体感のあるデザインを要望していたので、そこには壁を作りたくない。かわりに洗濯機収納を新設して壁で囲ったり、収納スペースにも壁を加えることで解決しました。

二点目の一階の壁の位置については、「二階から三階を貫く吹き抜けの壁と、一階の寝室の壁位置がずれていることが問題」。寝室にワークスペースを入れたために南側に少し移動したのです。元のとおりに2.5畳しかないワークスペースがさらに半分の1.25畳になってしまいます。

そもそも、今の家が狭いから、落ち着いて居られる場所が欲しいと、家を建てる決心をしました。それなのに息子二人の部屋より狭い、トイレと同じくらいの広さしか持てないのだと思うと、期待も萎んでしまう。

打ち合わせでいただいた図面を元に、壁の位置や配置を変えてみます。なんとか元の大きさに近いスペースをとれるかもしれない。そのかわり、洗面所は狭くなってしまう。どこかにスペースを増やせばれば、その分減る場所ができるのは当たり前です。諦めきれず、さらに幾つか別のパターンも考えてみる。どれも一長一短です。

ヒントになればと出かけた、OZONEにリフォームの特設展示を見ました。そこには、間仕切りとしてワークスペースを設けるアイデアがありました。一畳よりも狭いスペースで、外からみると窮屈そうでしたが、中に入ってみるとまるでコックピットみたい。狭いけど手が届く範囲に欲しいのものがあるのは便利だ。籠れる感じも心地よい。

うちもノートPCを使うのがメインだから、大きなスペースはいらない。これを見習えば、一畳のスペースで十分だろうと割り切った。息子が独立して三階の部屋が空けば移動すればいい。そのときは収納スペースにも転用できるだろう。

でも長男は6歳、次男は1歳、出て行くのは早くて15年後か、20年後か。絶対にニートにはさせないぞ。

●玄関への階段は右から左へ移動

三点目は階段の位置。階段部分は床抜けている状態なので、構造としては弱い部分になるのだそうです。「屋内の階段と、屋外の階段の位置が右側に揃っているのはバランスが悪い」みたいです。玄関へ上る入り口の階段は、プレゼン時からずっと右側だったので、変えることを考えてもみなかった。

フルヤさんには、1/50の模型を作成してもらっていました。階段を右側にも左側にも付け替えられるのがミソです。前から、横から、下から、いろんな角度から、実際に家の前に立って見上げる姿を想像しながら見比べました。

間取りとしては、階段が左側のほうが、玄関からダイニングさらにリビングへと連続する動線が良い。外からの見た目は、右側のほうがバランスは良い感じ。とはいえ、ちょっとした違いで、どちらも大きくかわらないように見えます。

どうしようか迷っていたところ、妻曰く「できれば玄関を明るくしたいから、左側だとトップライトが入れられるよね」。そう考えると、左側のほうが合理的に感じてきます。打ち合わせでは保留として、再度構造設計で相談してみるという。

次の打ち合わせで詳細に確認してもらった結果は、「階段の位置はどちらでも問題なく建てられそうだ。そのかわり、今度は階段の下に壁が必要だ」という。つまり、右側に階段をつけると一階倉庫の入り口の前に壁ができることになります。オカザキさんは「やっぱり右がいいかな」というけれど、使い勝手を考えると左側に軍配が上がる。

最後は「どちらでも建てられるので、あとは施主の好みで決めてください」とフルヤさんに背中を押されて、使い勝手をとって左側にすることにしました。

●外壁は周りと違う「黒」

家の外壁も重要な検討事項です。雨風を遮って室内を快適に保つ大切な役割があります。家の見栄えを左右します。施工面積も大きいだけに、どうするか決めないと見積がとれません。

当初はガルバリウム鋼板という金属の外壁を考えていました。価格も手頃で丈夫なようです。建築家の住宅ではしばしば登場します。波形に成形した金属板で、シンプルですっきりした外観になります。コンテナとか倉庫といった、無機質な工業製品っぽい印象です。もう少しざらっとした質感が欲しいと感じていました。

気になった外観として雑誌で見つけた写真を見せたて確認したところ、「カラーベスト」仕上げの家でした。屋根によく使う素材で、こちらもそれほど費用は高くないということ。いくつかのサンプルを見せてもらいました。厚いタイルのようなもので、30cm角程の大きさでも意外と重たい。

外壁の色は「黒」にしようと考えていました。道路が近いのでホコリが多そう、でも黒なら汚れも目立たないのではないかと考えました。それに同じ区画に七軒の細長い家が並ぶので、他の家とは雰囲気を変えたい。白やベージュの間なら、黒はコントラストがついて目立つだろう。

そんな風に相談したら、「そういってもらえると嬉しいんですよね。普通は外壁に明るい色を選ぶので、建てる側からはお勧めしずらいんですけど、黒はきっといいですね」と、フルヤさんもなかなか乗り気な感じです。

外観のイメージを固めるために、ほかの家を見て参考にしてみることにしました。しかし、周囲を見回しても、黒い外壁の家が見つかりません。思ったよりずっと少ない。実家のある住宅街も歩いてみましたが、黒い家は本当にわずかです。20〜30軒に一軒くらい。

それからは、歩いても、電車やバスに乗っても窓の外を眺めながら、黒い外壁の家を常に探していました。バスで出かける途中に、黒い外壁の家をみつけると途中下車してみたり。妻が近所を散歩していたら「黒いガルバリウム鋼板の家があった」というので、わざわざ見に行ってみたりしました。

チャコールグレーの左官仕上げ、墨色の板張り、焦げ茶のガルバリウムなど、素材は様々だけど、黒っぽい外壁は、無難にまとめようとすれば選ばれないので、どの家もこだわりのある、センスのいい家ばかりでした。両親に話をすると「なんだってわざわざそんな風にするの?」と言われたけど、これは譲れません。

●自分のものになっていく楽しさ

ほかにも窓の大きさ、照明の配置にスイッチの位置、エアコンの設置、コンセントやテレビなどの屋内配線、といった細かいところをひとつひとつ決めていかなければなりません。しかも柱の位置、既製品の規格サイズ、人間の手の届く範囲などによって制限を受けます。

こちらの要望によっては、図面との矛盾がでてしまいます。それで、「ここどうしましょうか?」と聞かれると、困ってしまいます。迷ってしまうというより、そこまで考えたこともなかったので、どう選べばいいのかわからないのです。そんな時は、フルヤさん、ミヤケさん、オカザキさんにアイデアをいただいて持ち帰って考えます。

これまでの経緯を見直したり、ネットや書籍で調べたり、夫婦で話し合ったり、まわりの人に話を聞いてみたりして、決めるための材料を収集します。好みのものを選ぶのではなくて、生活のどんな場面で、どんな使い方をするのか? という視点でプライオリティを決めて選ばなければなりません。何事も経験が必要だなと感じます。

試行錯誤しながら選び、決めていくのは面倒な作業です。でも、具体的な家族の生活と結びつけて考えることで、単なる「住宅」ではなく、世界にひとつだけの自分達の「家」になっていくことを実感します。たとえ、自分の居場所は「トイレ並」に狭くても「コックピット」だと思えば愛着も湧いてくるのです。

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江東区にある、LIXIL東京総合ショールームに行って来た。
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普段、ショールームですぐに飽きてしまうカケルですが、サッシの展示にあった断熱戦士「インプラスマン」のDVDに夢中でした。
< http://tostem.lixil.co.jp/newsrelease/2010/nr036.htm
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クイズに答えてインプラスマンキーホルダーをもらって、大喜び。