買物王子の家づくり[12]こだわりを積み上げたら予算オーバー
── 石原 強 ──

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いよいよ設計も最終段階になりました。年末入居のスケジュールから逆算すると、着工時期も目前に迫っています。急いで決めなければならないのは、工事の依頼先と金額です。見積に合意ができれば、工事請負契約を結んで着工の運びとなります。しかし、そこに至るまでは険しい道のりでした。

●安心できる工務店との出会い

構造計算が終わって、急ぎ確認申請の書類を提出しました。確認申請は渋谷区役所か、民間機関にするのかどちらがいいか聞かれました。役所は費用が安い、民間機関の方がスケジュールが確実ということです。

7月中の着工は「住宅エコポイント < http://jutaku.eco-points.jp/
>」取得のためにはマストです。そこで民間機関を選びました。複数ピックアップしていただいた中で、構造設計の方からすすめられた「イーハウス建築センター< http://ehousebc.com
/> に依頼しました。申請はフルヤさんに代行いただきました。

確認申請が下りるまでの期間に、見積を詰めていきます。プレゼン時の仕様で概算見積はとっていますが、打ち合わせを重ねる中で、間取り、設備、仕様を追加・変更しています。その内容を反映した詳細な見積を工務店に依頼します。



作成したプランで複数社に相見積することもできますが、今回は一社に絞って、スピードアップをしようと打ち合わせていました。仕様を確定する打ち合わせにも参加していただき、一緒に見積も詰めていくことにします。そうすることで、予算に合わせる施工アイデアも期待できる。

Boo-Hoo-Wooさんから紹介されたのは、大原工務所です。
< http://www.ooharakoumusyo.com/
>
小規模ながら、創業50年を超える実績ある会社ということです。代表のオオハラさんは、構造設計を学んだ方で、木造、鉄骨、RCと工法も幅広く経験されています。建築家との仕事も得意としている工務店とのことです。

50周年で作成した、実績の作品集を見せてもらうと、多数ある建築家との仕事の中にはフルヤさんの手がけた住宅もありました。以前にも何度か一緒に仕事をしたことがあると話していたので心強い。

会社所在地が新宿なので、メンテナンスなどの今後の付き合いを考えると近くなのは安心できます。現場監督は、建てる家の近くに住んでいるそうです。これだけ条件が揃っていれば申し分ありません。それからは、見積の相談も、オオハラさんも交えて進めることになりました。

●こだわりの中でも諦められる部分を探す

いよいよ見積が出てきました。しかし、予算から300万円オーバーです。これは厳しい。予算を組んでローンの金額を算出しているので、オーバーすると完成時の支払いができなくなります。なんとか工面したとして、3年以上のローンの支払い期間が延びる計算になります。

削って削って、なんとかおさめなければなりません。どの項目で費用がアップしたのか、フルヤさんに説明してもらいきました。外壁仕様変更で+25万円、壁の漆喰塗装で+50万円、造作家具で+25万円、スチール階段+20万円など、こだわったところで足が出ています。どの項目も削りたくない気持ち。けれど、一部仕様が未確定で、費用が詳細に出ていない項目もあり、さらに膨らむ可能性もあります。こだわりの中でも諦められる部分を探します。

構造に必要な部材や人件費を無闇に削れません。例えば、地盤工事費はアップしています。地盤があまり良くないことは、事前にわかっていたけれど、想定よりも40万円も高い。外壁については、他の部材でも大きく下がらないということでそのままの仕様としました。

後送りにしても、とりあえず困らないものをピックアップします。二階のバルコニーのウッドデッキや、駐車場を仕切る目隠しの木製格子、造作家具を作るのを諦めました。家を建てた後にあらためて依頼してもいい。

内装のグレードも下げます。フローリングを単価の安いものに切り替えたり、壁の漆喰塗りは一部分をクロス張りにすることにしました。スチール階段やキッチンも費用アップになっているが、デザイン上こだわりたい。このあたりを整理してオオハラさんに再見積をお願いしました。

●すべての項目を見直して泣く泣く減額

2週間後、再見積があがってきました。仕様を下げた割には、まだ予算オーバーです。下がっている項目もあるけど、細かく増えているようです。予算に近づけるためには、細かいところも見逃さず積み上げていくしかない。

見積の詳細と図面を見比べながら、さらに削れるところを、ミヤケさん、フルヤさん、オオハラさんで探すことにしました。こだわったところも泣く泣く諦めます。

まずは設備から見直します。バス暖房乾燥機が9万円。トイレはウオッシュレットを省くけば7万円。このあたりはざっくり削ります。造り付けの照明器具は、ダウンライト2つで8000円、スポットライトひとつは1万円と見直していくと、トータルで4万円程の減額になりました。

スチール階段を木製階段にかえれば20万円くらい下がる。しかし耐火仕様にするので、かなり分厚い階段になってしまいます。すっきりしたデザインにはならない。キッチンやユニットバスも安いものを選べば、それぞれ10万円程度は減額できるという。ここはデザインにこだわりたいところなんだけど、そうも言ってられない。

北側三階のサッシだけ、いやに金額が高い。デザインにこだわってここだけ木製のサッシなので少し費用が高いことは知っていました。でも他の3倍します。理由を聞くと「ここは火事の際に消防士の侵入口になる。サイズに規定があって、既製品がないので特注になってしまう」とのこと。アルミサッシにすれば8万円費用を下げられるが、窓はFIXになって開けられなくなる。家の機能を下げてしまう減額は避けたい。

せめて二階だけは守りたいと思っていた内装のグレードも下げます。フローリングをさらに単価の安いものに落とすと12万円。壁の漆喰塗装を諦めてビニールクロスにすると8万円減額になりました。

なくても何とかなる扉も削ります。子供部屋はもともと扉が付けていないのだけど、さらに減らします。洗濯機置き場を隠すための開き戸なしなら3万5000円。一階のワークスペースの扉24000円も削ってしまおうか。

外にも目を向けてみる。南側のフェンスをブロック詰みから板塀に変更して15万円。費用は落ちるが「10年で取り替えることになるけどいいですね」とオオハラさんに念を押されました。

家の周囲に敷く砂利を止めたら4万円。ないとどうなるのですか? と聞くと、土のままだと雑草が生えてくる。雨などで外壁が汚れることがある。自分で施工できるか聞くと、ホームセンターでも量が多いから4万円くらいするかもしれないという。それじゃダメだ。

見積の数量を見直していったら、サッシを1枚多くカウントしていることを発見。これは減額できる5万円。もともと間違っていたとはいえ、少しでも金額を減らせると安心します。同様に玄関に設置するポスト25000円も余分なものでした。

3時間近くの打ち合わせの中で、ほかにも細々したところを削ってあわせて170万円ほどの減額案ができた。それでも若干の予算オーバーです。持ち帰って検討することにしました。

●自分たちにとって絶対必要なものを見極める

最も予算が大きくて悩んだのは床暖房です。12月引っ越しだから、設置しなければエアコンを追加購入しなければならない。ランニングコストが安いガス床暖房を選んだのだから、今は金額が高くても将来的にコストを回収できるかもしれない。

照明器具や造作家具など、ここで削っても結局、引っ越しで必要になってしまう。そういったものについては費用を比べて、引っ越し費として見積もっていた中から捻出します。

見積の見直しは、プランで夢膨らんだ要望を削っていく作業でした。要望が叶わないのは残念だけど、住みながら変えていくこともできる。部材一点一点すべてを自分で決められるのだから、前向きに削っていくしかない。

あらためて、生活するために必要なもの、いらないものを振り分けました。ほんとうに欲しいものだけをピックアップしたことで、プランが引き締まっていく感じがします。

何度も図面を見ながら新しい家を想像していたので、頭の中で、いつでも家の中の様子が立体的に見えるようになってきました。本当に目に見える形になるのが待ち通しい。予算との戦いは、産みの苦しみと言えるかもしれません。

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ついにコラムの話題が現実に追いつきました。今月末にいよいよ着工です。長男カケルは夏休みに突入。最終日には朝顔の鉢植えを持って帰ってきました。自分もやったなあと懐かしい気持ちになります。