デジタルちゃいろ[03]バスコ・ダ・ガマと黒船と
── browneyes ──

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前回の「どこかの国の音楽」で紹介した、ウルミというマラヤラム語の映画。あれはインドがバスコ・ダ・ガマによって発見され、支配され、ひどい目に遭いました、という史実を題材に、ややファンタジー仕立てなバスコ・ダ・ガマと対峙する非実在ヒーローの物語なのでした。

当たり前ですが、歴史的な、しかも侵略ものやら戦争ものやらは、どの国も基本的には自国側の視点から語り継いでいきます。自国が当事国でない出来事については、恐らく当時力を持っていた側からの大まかな伝聞程度なワケで、映画を観る前のワタシのガマに対する認識もだいたいそんな感じ。「バスコ・ダ・ガマ:インド航路を発見、植民地化と貿易の拡大」というポルトガル視点の知識のみ。なので、インド視点の残忍なガマ像にびっくりしつつ興味をそそられました。

侵略ものと言えばつい最近、米Amazonの契約書案に憤る出版社員の記事を読んで、「黒船来襲」とまで言い切ってしまっているのにこれまたびっくりしました。日本の出版業界の枠組みの中で長らく力を持っていた、出版編集者の立ち位置的には確かにそうなんだとは思います。たまたま出版業界の業界紙でも見かけてこれが書いてあった、とかなら、あー、中の人は正直そう思ってるんだねー、でひっかかりもなく流してしまったかもしれません。

ワタシ自身は出版業界の人間ではないので周辺含めよくわかりませんが、印刷業界や製紙業界は自社でのコントロールすら不能な心配事な気がするので、ある意味もっと深刻...なのか、否か。消費者的には電子書籍便利だね派と、やっぱり紙だよね派は二分してる観もあるし、レコードからCDへの移行ほどがらりと市場が変化する気がしないけど、これは楽観的すぎかな。

更に、自分の周りに多いのが作り手側というコトもありますが、書き手はどうなんだろう。一握りの有名な作家さん以外は実績の有無問わず、この新たな道が悪いものだとは全く言い切れないという気がします。実際にKindle Direct Publishing早く日本に来ないかな、という声も近くから聞こえてます。そして、そもそも読み手と買い手が減ってる今、「彼らがどうやったら再び本を手に取るのか」の部分をそっちのけにしてどうなっちゃうの?



予想外にアツく語ってしまいましたが、実は電子書籍が主題のつもりではなくて、この辺の立ち位置限定な黒船感覚が、ワタシ自身の最近の関心事とも相まって、どこの世界も「主流が正しい」ともいえないし、そもそもどっちが主流か傍流か自体、誰もが自分起点の相対値で見てしまうからわからないものだよな、というコトを、最近よく感じさせられます。

ここで連載し始めたひと月前くらいから、自分の普段いる世界の中では「Webのトレンド」からは遠いと皆に言われてる割に、それなりにユーザーを抱えてるウェブサービスなどを、非IT系な人たちの動向潜入調査(大袈裟)的な視線で彷徨って色々眺めてみています。

実はワタシ、ここ一年ちょっとは多忙過ぎでさすがにアンテナ鈍ってますが、元々ウェブサービス系は早々に飛びつく上に、一通りの機能を使い倒してみなくちゃ気が済まない質で、果ては「IT番長」とか「インターネッツエリート」とか真っ直ぐ賞賛とは受け取れない響きの称号を友人・知人から戴いたりしてるのですが、その使い倒しを、自分自身が箸にも棒にもかけてこなかった国産サービスでも改めてやってみようと思ってるわけです。

食わず嫌いじゃいかんだろう、それらに引きつけられる人が一定数いるのは何故か、そのサービスなら使い続ける人たちがいるのは何故か、で、その上で何がダメだと思うか、そちらとこちらの国境線には何があるか、みたいなのが実は今後のキモなんじゃないかな、って。

だって、ウェブ上での潜在顧客の大半は、今後常に、出版以上に、これまで「こちら」に見向きもしてなかった層が大多数になっていって然るべきで、しかもこれまでと違って彼らの足音は、ほら、とっくにそこまで来てるんですよ、すっごい数で。主流とか傍流とか言ってないで、流れに乗る(乗せたい)なら、彼らの嗜好とか考え方とか、真摯に同じ目の高さに立って理解していかないと、ね。

・今回話題にしたものの関連記事たち

□「こんなの論外だ!」アマゾンの契約書に激怒する出版社員 国内130社に電子書籍化を迫る
└< http://news.livedoor.com/article/detail/5977004/
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□出版社はプラットフォームをどう使うか
└< http://www.ebook2forum.com/2011/11/how-publishers-deal-with-the-platforms/
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■今回のどこかの国の音楽

□Los Tarantos(1963)"Buleria"
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ほっとくと延々印度音楽が続きそうなので、自制してちょいとヨーロッパへ。と言ってもフラメンコ、しかもステージ上のおされ系じゃなくて、映画の中の土着風なブレリアなので欧州感はほとんどないですね(笑)。

これとは別の映画の別の曲でたまたま知って、流れ着いて一目惚れしたのがコレなのですが、動画の中で歌って踊り狂うおばさんはカルメン・アマージャという、没後約50年を経てもフラメンコの女王と言われるロマ出身のダンサーです。もうかっこいいのなんの。知らなかったけどこの映画撮り終えて早々にお亡くなりになってしまい、ご本人は映画観てないとか。

映画はややチープなスペイン版ロミオとジュリエットですが、ダンス見所は結構あります。ローティーンの女の子がパンツ見えるのもお構いなしで踊り狂うシーンもよかったな。でもこのシーンが最高!

【browneyes】dc@browneyes.in
日常スナップ撮り続けてます。
アパレル屋→本屋→キャスティング屋→ウェブ屋(←いまここ)しつつなんでも屋。
立ち寄り先一覧 < http://start.io/browneyes
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週末はワタシには珍しくもの凄い沢山の知らない人に会う会合が二つ重なり、ハシゴして参りました。普段引き籠りな上に非コミュなワタシ的には久しぶりにおかしなテンションでしたが、どちらも違った形で非常に刺激になるイベントだったので楽しかったです。