[3172] 今すぐ幸せになる

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《写真は単なる画像データではない》

■気になるデザイン[70]
 見ているだけで、ほんわか幸せになる本
 津田淳子

■装飾山イバラ道[89]
 今すぐ幸せになる
 武田瑛夢

■おかだの光画部トーク[68]
 2011年を振り返る──クラウドサービスを利用しよう
 おかだよういち



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■気になるデザイン[70]
見ているだけで、ほんわか幸せになる本

津田淳子
< https://bn.dgcr.com/archives/20111213140300.html
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私は今年のコラムは、今日で最後になります。つたない文章をお読みいただき、どうもありがとうございました。

今年は忘れたくても忘れられない出来事が起こった一年でした。東京に住み、仕事をしている私は、直接の被災はしませんでしたが、震災の影響で紙が足りなくなり、インキも不足するかも......とか、物流がストップしたりと、出版、印刷業界にもさまざまな影響がでました。

あれから約9か月がたち、被害の大きかった東北地方の製紙工場も動きだし、インキの供給も通常通りになっています。しかし、廃業せざるを得なかった印刷会社などもたくさんあると耳にし、また製紙工場は動き始めたものの、業績悪化も関係していると思うのですが、用紙銘柄の統廃合がさらに進み、紙の選択肢の幅も狭まっています。

印刷や紙、加工関連の会社の方々からは、景気の悪い話を多く聞きます。思わずしょんぼりしてしまう話も多いのですが、うつむいていも何も好転しないと思いますので、私は来年も自分のできることを少しずつでも、本を通じてやっていければと思っています。

一年を振り返ると、どうしても今年はつらく重い気分になりますが、本屋さんへ行くと、そんな気持ちも吹き飛ぶすてきな本に出会えます。今年最後の気になるデザインの本は、そんなふんわりほんわか、あったかい感じ満載の二冊を紹介します。

一冊は『お絵かきクッキー』(星野彰子著/文化出版局/1,400円+税)。
アートディレクションは高市美佳さん。
< http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4579210980/dgcrcom-22/
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もう一冊は『アイシングクッキー&カップケーキの本』(森ゆきこ著/日本文芸社/1,200円+税)
< http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/453720852X/dgcrcom-22/
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この二冊は、共にカバー写真のかわいさにつきます。クッキーに砂糖を主としたアイシングで絵や模様をつけるということを紹介・解説している本なのですが、こんなにかわいいものがつくれるのか〜と、写真を見ているだけで、うっとりしてきます。判型も、前者は最近の手芸書などに多い、A5横サイズなところもいいですね。開きやすいし、本の雰囲気もかわいくなる。後者も正方形に近い形で、どちらも本のあり方自体もかわいい。

私はこういう本を買っても、試したことはほとんどないのですが(買うときは「やろう!」と意気込んでいるんですが、本を見ているうちにつくった気になるというか、満足するというか......)、この本は、表紙はもちろん、中面も、見ているだけでほんわか幸せな気分になれる本です。

他にも料理関連の本は、カバー写真に惹かれて買うものが多いですね。最近だと、『有元葉子 うちのおつけもの』(文化出版局/有元葉子著/1500円+税)とか、『飯島風』(飯島奈美著/マガジンハウス/1700円)とか。

『有元葉子 うちのおつけもの』
< http://books.bunka.ac.jp/np/isbn/9784579211449/
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『飯島風』
< http://magazineworld.jp/books/all/?gosu=2201
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来年もこうしたすてきな本に出会えることを楽しみに、残った今年の日々は、年明けすぐに校了予定の『デザインのひきだし15』編集作業に励みたいと思います......。みなさま、どうぞよいお年を。

※新刊『特殊印刷・加工DIYブック』が完成しました! カラフルホチキス留め、ビーズ印刷、樹脂盛りシール、小口塗装、活字スタンプ、PP貼り加工風、布に柄染め......などなど、たくさんの印刷加工を自分でやる方法が掲載されています! ぜひご覧ください。
< http://www.graphicsha.co.jp/book_data.php?snumber3=1129
>

【つだ・じゅんこ】tsuda@graphicsha.co.jp twitter: @tsudajunko

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デザインのひきだし・制作日記 < http://dhikidashi.exblog.jp/
>

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■装飾山イバラ道[89]
今すぐ幸せになる

武田瑛夢
< https://bn.dgcr.com/archives/20111213140200.html
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2011年の最後の記事なので、今年を振り返ってみたいと思う。今年は1月、2月に何をしていたか簡単に思い出せないほど3月の大震災が大きな出来事だった。

地震後すぐにネットから情報を得ていたので、原発に関するニュースは表で語られることと、ネットとの差が激しくて混乱した。今思えば、表のメディアでは原発関連の情報は、テレビで伝えることができる程度にボカされたソフトな情報しか得られなかった。情報をボカす意図は「間違わないように」であると思われるけれど、結局はかなり間違ってもいたし、そもそも何にフォーカスするのかを見誤っていたように思う。

あのフラスコのような形状の原発の格納容器の、どこがどの程度壊れているのか、水はどのレベルにあるのか、温度は何度なのか、今思えば初めて見る機器について急に具体的に考えられるはずもないのに、懸命に考えようとしてしまった。急に考えても太刀打ちできる相手ではなかったのに、何がどうなっているかを自分のレベルでも知っていないと不安だったのだ。

しかし、結局自分のレベルで知るのは与えられる情報だけで手一杯で、テレビが薄めて伝えてくるものを拾うしかないという無力感を覚えた。数ヶ月経った今でも、原発に関する知識はそう増えたわけではなく、専門書を取り寄せようとも思っていない。このようなことは本気で取り組まなければ、本当の理解はできないだろうと思う。

私は情報デザインの授業で、個々の人間の感覚センサーの大切さについて取り扱うことがある。同じことが起こっても、人が違えば反応が違うという個体差のおかげで、全体はバランスを保っていることがあるからだ。

今回の大震災の後の放射性物質などの取り扱いに対する反応が、人によって差があるのは自然なことだと思う。自分についたセンサーが赤く点滅しているのに見てみないフリをして生活したり、周囲の人に合わせていると、疲れきってしまうのだ。自分のセンサーを背負って生きて行くなら、それに正直に対応していくしかないと思う。

2011年のこのごろの私のキーワードは「今すぐ幸せになる」。これは正確には今年だけではなく、ここ数年で思っていることだ。世間一般とも合っているキーワードかもしれない。

数年先や何十年先を見越して、過去も今も努力を積み上げきた人が多いのが日本だ。簡単に言えば「勤勉」なのだけれど、計画通りに積み重ねづらくなってきた世界の変化を見渡した方がいいように思う。在り続ける保証のあるものはほとんどない、ということを認めて今を大事にしたい。

マザー・テレサのドキュメンタリー映画で見たシーンがある。「あなたの仕事はすばらしい。手伝いたいけれど何をすればいいか」と申し出た記者に「家に帰って家族を大切にしてください」とマザー・テレサは言った。一人一人ができることはすごく身近にあって、何かに所属したり遠くへ出かけていく必要はない。

「今すぐ幸せになる」の幸せは、周囲にいる人を大切にすることで可能で、それは自分をも大切にしていることだと思う。自ら大切にしたいと思ってすることだから、何の見返りも求めない。好きな人には好きと伝え、不安そうな人には大丈夫かと聞き、トイレが汚れていたら掃除する。

今年は多くの人たちの素晴らしい生き方を、いろいろなメディアで見させてもらったと思う。今年ほど日本に住む人間の良さを感じたこともなかった。自分がちょこっと周囲とつながれば、全体がつながるということを知った年となった。誰にとっても心に刻まれた2011年を、これからも何度でも思い出したいと思う。

【武田瑛夢/たけだえいむ】eimu@eimu.com
装飾アートの総本山WEBサイト"デコラティブマウンテン"
< http://www.eimu.com/
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「ゼルダの伝説 スカイウォードソード」、まだまだ終わりません。なかなかボスキャラが手強いです。集めものはだいぶ揃ったので、逆にゲームの終わりを感じてさみしかったり。

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■おかだの光画部トーク[68]
2011年を振り返る──クラウドサービスを利用しよう

おかだよういち
< https://bn.dgcr.com/archives/20111213140100.html
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早いもので、今回が2011年最後の光画部トーク。あっという間に過ぎ去って行く一年を振り返ってみます。

その前に、前回ご紹介したiPhoneに取り付けるレンズに関して追加情報があります。Qlixが国内での取り扱いを開始しました。海外のサイトから、英語でオーダーフォームに記載して個人輸入しなくても、日本で注文できるので購入の敷居が低くなりますね。それに加え、円高の影響か、わたしが直販で買った時よりも若干安い6,195円(税込)です。
< http://www.qlix.jp/olloclip-1.html
>

とにかく、iPhoneだけでは不可能な広角や魚眼の面白い写真が撮れるので、普段からiPhoneでいっぱい写真撮ってる人にはおすすめです。
< http://flic.kr/p/aExHuq
>
< http://flic.kr/p/aSFBJa
>

それでは、2011年。とにかく3月11日に世界は大きく変わりました。震災復興や原発事故の収束など、色々なことがまだまだ進行形なので、あまり終ったことのように語れませんが、震災後に日本のメディアではなかなか紹介されない外国メディアの報道写真をネットで見て、とてもショックを受けたのはまだまだ新しい記憶です。さらに、半年後には台風による水害がまた日本列島を襲い、あちこちに被害をもたらしました。

日本だけでなく海外でも、タイでは大洪水が発生し日本企業の工場が大きな被害を受け、生産にも影響しました。カメラメーカーも新製品の発売を延期するなど、ニュースになりました。そんな未曾有の災害を目の当たりにした今年は、光画部トークでも多くの回で「クラウド」についてのご紹介をしてきました。

とにかく、現在の写真は誰もがほぼデジカメで撮影しているので、データが消滅すればそれで大切な写真がなくなってしまいます。普段からきちんとHDDやDVDにバックアップ取っているから、カメラやメモリが壊れても大丈夫だと思っていても、今年経験した災害のように、町ごと、家ごと被害に遭うような場合は何の役にも立ちません。

一方、被災地で見つかったアルバムを見ながら笑顔を見せる人々、という報道写真に感動しました。「写真は単なる画像データではなく、誰かが誰かを想った証。」というエプソンのCMのコピーの全文が、まさに人が写真を見て笑ったり、涙したり、感動したり、人と写真との繋がりを言い表していると思います。

ぜひリンク先の映像を一度ご覧ください。ナレーションの言葉にきっと感動すると思います。
< http://www.epson.jp/products/photo/
>

そんな大切な写真だからこそ、ネット上のどこかに、きちんとバックアップがある状態にしておくことがとても大切だと思います。

なかには、セキュリティの問題があるので、プライベートな写真はネット上に置くべきではないという意見も見かけますが、なんとなく自意識過剰な気がしないでもありません。例え写真が漏れたとしても、多くの人はそんな知らない個人の人の写真なんてあんまり興味ないとも思いますし、写真を主とするクラウドサービスは、セキュリティや公開範囲などの設定も自分でコントロールできます。

それよりも、むしろこの世からその写真が消えてなくなってしまう方がつらいことだと思います(クラウドにバックアップするのは絶対にいや! っていう人に無理にしろとは言いませんが...)。

そんなこともあり2011年の光画部トークでは、Flickrを改めて詳しく紹介したり、今年新しく始まったサービスのGoogle+、そしてアップルのiCloudのサービスの一部であるフォトストリーム、そしてAdobeCarouselと各社から続々とリリースされる写真用のクラウドサービスを色々とご紹介しました。

例年は、気になるコンデジや一眼レフなど新製品を重点的に紹介していたのですが、今年はむしろソフト面の紹介が多かったと思います。

思い返してみれば、あまり楽しく明るいニュースは少なかった2011年でしたが、来年は素敵な出来事がたくさんあったらいいなと思います。カメラもどれを買えばいいのか迷うくらい、面白い製品がたくさんリリースされるといいですね。

そんなことを願いながら、2011年の光画部トークを締めたいと思います。来年もまた色々と写真やカメラやデジタルガジェットの面白い話を続けますので、よろしくお願いします。それでは皆さん良いお年を!

【おかだよういち/WEB&DTP デザイナー+フォトグラファー】
< http://s-style-arts.com/
> < mailto:okada@s-style-arts.com >
< twitter:http://twitter.com/okada41
>

今週15日発売の玄光社「コマーシャル・フォト」1月号の特集ページの一部に、各社のクラウドサービスの紹介を2ページ書かせて頂きました。興味のある方はぜひご覧ください。
< http://www.genkosha.co.jp/cp/
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■編集後記(12/13)

・EPSON GT-9700Fが使えなくなった。この機種は2001年9月発売だからそうとう古い。でも、つい最近まで順調に動いていたのである。先日、miniにつないだGTの電源を入れ、スキャンしようとしたら「スキャナーとの正常な接続ができません。スキャナーとパソコンが正しく接続され、スキャナーの電源がオンになっているか確認してください」という警告が出た。IEEE1394で接続しているが、mini側に4ピンのアダプタをつけていて、ちょっとグラグラなので接続不良になっているのかと思い、別の接続方法であるUSB B-Aのコードを買ってきてつないでみた。だが、同じ警告が出る。ケーブルが原因ではないらしい。スキャナの電源を入れたままmac本体側のケーブルを抜き差しするか、OS Xを再起動するとうまくいくことがあると聞いてトライするもダメ。新しく導入したEPSON PX-434A複合機のほうのスキャナは正常に動くから、とりあえず困らない。ただし使い勝手はGTには敵わない。そのうち、EPSONのFAQでこんな記述を見つけた。「Mac OS X環境では、以下の対象機種とそのほかのインクジェット複合機、スキャナー、カラー複合機(レーザー)を同時に使用することはできません」。GTは対象機種に含まれていた。なんだ、複合機とバッティングしていたのか。それではと、PX-434Aとminiの接続をはずしてGTを起動するもダメ。EPSONの単機能プリンターか、キヤノンの複合機にすればこんな不都合は起こらなかっただろう、たぶん。買うときには、そこまで頭が回らなかったんだよね。おかださんの記事にあるEPSONの「写真のはがきで、会いましょう。」のメッセージは感動的だ。でも高齢者にとっては、残された者が処分に困る自分の写真を、いかに残さずに消えるかという重要な課題があるのは事実だ。というと身も蓋もないが......。(柴田)

・おかださんの記事が、コマフォトに掲載されると聞いてとても嬉しい。きっかけがデジクリ。ほんと嬉しい。おかださんの単行本も読んでみたいよ〜。/昨日、キーボードとマウスは〜と書いた。調べると、「USBウォーマー&クーラーキーボード」や、「あったかマウス」なるものが。キーボードは、パームレスト部分三カ所にホットヒーターがついているよ。温度調節も可能。Windows版のみ。どうせなら、ホームポジションが温かくなればいいのに〜。あったかマウスは、約46℃まで温まるそうで温度調節可能。こちらもクリック部分ではなく、手のひら部分がヒーター。いつも使っているマウスで温かくならないかと探してみたら、マウスパッドタイプのものが。こちらは手をすっぽり覆う形。キーボードへの移動はちょっと不便だろうけど、慣れたら良さげ。販売終了商品だが、「USBあったか手袋 クマさんモデル」も気になるわ。/3つあるUSBポートは満席。マウスやキーボードはBluetooth、プリンターは無線LANタイプで、ハードディスクはFirewire。たまにしか使わないものは、使う時だけ接続しているのにな。あったか商品を買うなら、USBハブも必要になるなぁ......。(hammer.mule)
< http://www.thanko.jp/product/pc/keyboard/hotcoolerkeyboard.html
>
USBウォーマー&クーラーキーボード
< http://www.thanko.jp/product/pc/hotmouse3.html
>
あったかマウス3
< http://www.thanko.jp/product/pc/usb-warm-mousepad.html
>
USBあったかマウスパッド
< http://www.thanko.jp/product/usb/hot/hotgloves-bear.html
>
USBあったか手袋 クマさんモデル
< http://www.thanko.jp/product/usb/usb-gloves2.html
>
USBあったか手袋2シリーズ