[3202] サンドヰッチマン

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《おれも地デジはおかしいと思ってた》

■買物王子の家づくり[22]
 年末年始は新居に一人
 石原 強

■ショート・ストーリーのKUNI[111]
 キチュキチュ
 ヤマシタクニコ

■私症説[34]
 サンドヰッチマン
 永吉克之




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■買物王子の家づくり[22]
年末年始は新居に一人

石原 強
< https://bn.dgcr.com/archives/20120209140300.html
>
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ギリギリまで工事して最後の仕上げも終わり、ついに我が家が完成しました。年末の引っ越し日にもなんとか間に合いました。しかし、ここでもアクシデントが続いて、忘れられない年末年始となりました。

●完成した家を眺める

引き渡し日当日、天気が良く気持ちがいい日です。一番乗りで何も入っていない「すっぴん」状態です。早速、家の中を一通り眺めて回ります。

黒い外観の正面、何度も書いたように階段を上がると玄関です。階段を上る途中にインターホンとポストがあります。入り口は黒い壁に囲まれてで暗い感じですが、天窓があって玄関前は光が差します。奥に見える扉は一階の納戸です。床はコンクリートで外からしか入れないので、倉庫として使います。
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玄関は引き戸です。天窓の光が内に入るように、大きなガラスがはめ込まれた扉にしました。正面の扉は納戸の入り口です。玄関から土足のまま入れるようになっています。天井を少し低くしていて、扉をあけて部屋に入るるとより広さが際立つような演出になっています。
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玄関からダイニングに入ります。ここは我が家の中心です。すべての部屋にアクセスする起点になります。三階に上る階段、一階に下りる階段の入り口があり、カウンターの奥はキッチン、その奥がリビングです。天井には二つの天窓があって昼間は部屋を明るく照らします。階段の前には造作の棚を設置。今のところ、唯一の収納です。
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キッチンは一番のこだわりポイント。デザインで選んだエイダイのゲートスタイルS-1です。シンプルなステンレス製で、引き出しはひとつだけ。シンクに取り付けたスワンネックの水栓は、ドイツ「グローエ」のデザインにクリンスイのビルトイン浄水器がついています。壁はこだわりの「メトロタイル」貼りです。
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キッチンの奥はリビングです。大きな掃き出し窓は、網なしでクリアな強化ガラスです。床のナラ無垢材フローリングは、頑張ってワックス塗りをしたところ。きれいに仕上がっています。
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リビングに入ると上にも先にも空間が広がります。我が家の見せ場です。吹き抜けの高さは5m、天井は遥か上に見えます。窓からは南側の緑地を挟んで道路が見えます。歩道を歩く人と高さが同じだけど距離感があっていい。東側の窓は青い空のを切り抜く額縁です。面積は狭くても広がりのある空間は、のびのびできて気持ちよい。
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三階への階段は、見た目を重視したスチール製です。薄い踏み板で、蹴込み板もないので軽快な感じがします。
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三階の踊り場から南側の部屋を向いたところ。前と後ろに部屋があり、二人の息子にそれぞれ割り当てる予定。階段の柵の高さでは、息子二人にはないも同然、しばらくは転落防止のネットを張るつもりです。
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三階南側の部屋。東側の窓だけなので、ちょっと暗い。でも真夏の日射を考えるとこのくらいでちょうどいい。正面はリビングの吹き抜けに面した回転式の窓です。リビングを上から覗けます。
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窓から吹き抜けを見下ろしてみるとこんな感じ。窓を開けなくても、下にいる家族の気配を感じることができそうです。
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三階北側の部屋。正面は嵌め殺しの窓です。低い住宅が並ぶので、思いのほか眺めがいい。東側の窓には隣家の外壁が迫っていますが、お互いに窓の位置がかぶらなくて良かったです。
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一階に下りるのは木製階段、手すりもそれにあわせて、角材をそのまま貼付けたように見えるシンプルなデザインです。下りた正面が部屋で、左側はバス、トイレ、洗面の水まわりです。
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一階の部屋。夫婦の寝室になります。右は壁いっぱいに洋服をかけられるハンガーポール、奥にはささやかなワークスペースがあります。後ろは掃き出し窓です。その外は猫の額どころか「ネズミの額」とでも喩えたい、ささやかな庭があります。余裕ができたら自分で庭づくりをやってみたい。
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一階の洗面室。シンプルな集成材のカウンターに洗面器を置いたもの。上にはミラーボックスを設置予定です。左はユニットバス、さらに飾り気のない白い空間です。
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まだ、生活に必要なモノが入っていないので「我が家」と呼ぶには、よそよそしい感じがします。これから家族で生活をしていく中で、しっくりと馴染んでいくのでしょうか。そんな過程も楽しみになってきます。

●あっけない引き渡し

指定の時間に待っていたら、フルヤさん、続いて現場監督のキクチさんが到着しました。「オオハラさんが家の事情で来られなくなったので、かわりに来ました」とのこと。お二人と引き渡しを進めることになりました。

フルヤさんからは、建築確認の申請書類、検査済証のファイルを受け取りました。キクチさんからは二冊のファイル。薄い方には、竣工届け、鍵・設備の引き渡し書、トラブル時の連絡先のリストが入っています。分厚い方は、設備機器の説明書が一式がファイリングされています。

引き渡しで一番大事な「儀式」は鍵の受領です。キクチさんに促されて、固く封されている家主用の鍵を取り出します。ドアに家主用の鍵を差し込んで、施錠、解錠しました。その後、これまで使っていた工事用の鍵を差し込むと、まったく開かなくなりました。魔法のようです。最後に物件の引き渡し確認書に押印して終了。30分程度のやりとりでした。

二人が帰った後は、家の中がシーンと静かになりました。この瞬間から今は自分の家になったものの、まだ実感が湧きませんでした。昨日までは工事現場として、大工さんが作業をしていました。自分がお客さんの立場です。それが今日から、家族の生活の場になったのです。

その静寂もつかの間、次々と鳴るインターホンの音に遮られました。ガスの開栓、インターネットの回線工事、エアコンの取り付け工事と、入れ替わり立ち代り人が来て慌しく対応しました。

そうこうしているうちに、前日に梱包した荷物を満載した引っ越しのトラックが到着。ドタバタと運び込まれます。三人の運び屋さんの手で、荷物はがどんどん運び込まれていきます。すっきりした家の空間は、あっという間にダンボール箱で埋め尽くされました。

家具の搬入でアクシデントがありました。三階に設置しようとした本棚が階段を上がらないというのです。仕方ないので納戸に収めることにしました。ダイニングテーブルはなんと玄関も入らない。「分解すればなんとかなるかもしれません」と口では言うものの、「無理なので置いときます」と帰り支度をはじめています。結局、駐車場スペースに置き去りになってしまいました。

●年末年始は一人で荷解き

翌日、まずはダイニングテーブルを家に入れなければなりません。購入時には自分で組み立てたので、逆の手順で分解します。止めてあるネジを外して足を外すと、なんなく家の中に入りました。

家族が戻ってくることを見越して、まず階段の入り口に「ベビーゲート」を設置しました。子供が階段から落ちると危ないからと戸建てに住んでいた友人が借してくれました。ダイニングから一階と三階への階段口それぞれに設置しました。

ちょうど取り付けが終わった時、携帯電話が鳴りました。家に預けた息子二人がウイルス性胃腸炎でダウン。看病もあるので「今日は戻れそうもない」という妻からの連絡です。

年越しは一人で荷解きをすることになってしまいました。それなら急ぐこともないと、テレビやネットの配線を済ませて昼休憩。その後、気合をいれなおして、見上げるほどのダンボールの山を解体していきます。

落とし穴だったのは、ダンボールに書かれたメモが、大雑把であまり当てにならないことです。自分で詰めていないので、すべて開けてみないと、実際に何が入っているかわからないのです。日々の生活で必要でないものは、そのままにして次々に開けて選り分けていきます。

ひととおりチェックして、生活必需品の目星がついてきました。近所で夕飯を済ませて、本格的に片付けに入ります。まずはキッチンから。紅白歌合戦を横目に、一人黙々と作業を続けます。なんとか家族が生活できるようになったかなと思えたのは、「ゆく年くる年」が始まる頃でした。

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前回に続いて施主のマンガ紹介。伊藤理佐「やっちまったよ一戸建て!!」家を建てるという目的やきっかけは違うけど、家を土地を買う、施工者を決める、設計するという各ステップでの驚き、迷い、悩みには共感します。いろいろなことが一遍に押し寄せてきて、地に足が着いていない感じになるのがよくわかります。後から冷静に見ると滑稽なんですね。

「一人用一戸建て」注文住宅なんてアリ? って思うけど、天野彰「おひとりさま」の家づくり(新潮新書)という本もあります。一人で住むかはともかく、「個」を大切にした家づくりを考えるというテーマです。いろいろな制限の中で取捨選択する際に、「自分の心地よさ」を重視する考え方は参考になります。

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■ショート・ストーリーのKUNI[111]
キチュキチュ

ヤマシタクニコ
< https://bn.dgcr.com/archives/20120209140200.html
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2011年もあとわずかというころ、やっと丹波くんは地デジ対応のテレビを買った。もちろん、液晶の薄型だ。もちろん紅白歌合戦を見るためだ。

電気屋が新しいテレビを運び込み、かわりに古い29型ブラウン管テレビを処分するために持って帰った。テレビ台はとりあえず古いのをそのまま置いといたので、その上で液晶テレビはすかすかと涼しげに存在している。冬なのでもともと涼しいけど。

丹波くんはじっとその様子を見ていたが、はっと気づいた。
「そうか。そういうことだったんだ」
丹波くんは部屋のコーナーにでんと位置するテレビ台の前に立ち、ぴかぴかのテレビを見下ろして言った。

「テレビをブラウン管方式のごついテレビから薄型に変えたら、こんなに空きスペースができた。見ろ。テレビの後ろには広大な三角形の空間が。測ってみよう...幅75センチ、奥行きはだいたい60センチ...三角形の面積は底辺×高さ÷2だから、75センチ×60センチ÷2...推定面積約0.225平方メートル!」

丹波くんはやおら振り向いた。まるでだれかそこにいるみたいに言う。
「たったの0.225平方メートルか?ってか? 確かに、0.225平方メートルくらいどうしたと言われるかもしれないが、日本全国でこのような現象が起きているのだ。日本全国の世帯数およそ5000万。そのほとんどにテレビがある。

一家に一台とは限らないが、反対にテレビを持ってないところも中にはあるだろう。地デジ政策に腹が立つからこれを機にテレビとおさらばしたという家もあるだろう。もちろんおれもそうしたかった。まったくひどい。なんでお上にテレビを買い換えろなどと指図されなきゃならないんだ。

それに従うおれはあほだまぬけだ根性なしだ。うどんで首くくって死ねと言われてもしかたない。テレビを買い換えなきゃブラックジャック全巻揃いも買えたのに。いや、話がそれた。おれが言おうとしてたのは何だっけ。

あ、そうだ。テレビを買い換えた世帯はおよそ、とても控えめに見積もっても半数の2500万世帯はあるんじゃないか。つまり、おれの家と同じ現象が2500万世帯に起きている。てことはつまり、0.225平方メートルの2500万倍の空きスペースがこの国に生まれたはずなのだ!」

丹波くんは次第にエキサイトしてきた。冷や汗がしたたる。
「こ、これはもしや政府の陰謀では」

これを宇宙のはるか彼方から見ていたのがキチュウ星大統領補佐官だ。補佐官はモニタ画面から視線をはずすとにんまりと笑って言った。
「閣下、チャンスでございます」
「何のチャンスだ。補佐官」

「以前からわが星では生息可能な土地が狭すぎて移住できる場所を探していたではありませんか」
「おおそうじゃ。キチュウ星は小さくてキチュキチュだからな。しかしなかなか見つからないのでもうめんどくさくなってあきらめておった。やっぱり冬もぬくぬくしててまわりに何でもそろってる便利なところとなると、そうそうないようだ」
「それが、あるようです。地球に...」

丹波くんは大学の先輩の山城さんとカップラーメンを食べながら話している。
「というわけで、やばいと思いませんか、先輩!」
「たしかにやばい」
「政府はとっくのむかしにエイリアンと手を組んでいたんです。彼らのためにスペースを提供する約束をしていたんですよ」

「そういうことだな。おれも地デジはおかしいと思ってた。エコポイントも不自然すぎる。やっぱりこの政策には」
「裏があったんです!」
「まさしく。これで何もかも納得できる」

「すでに政権中枢部はエイリアンに占められているのかもしれません」
「当然だ」
「だいたい考えてみてください。テレビ買い換えでできるスペースが日本全国でいったいどれくらいになるか。0.225×2500万というと5625000平方メートル、これは...甲子園140.625個分なんです!」

「広っ!」
「大阪市阿倍野区が5.99平方キロメートル、西区が5.2平方キロメートルですからその間くらいです」
「それだけのスペースがそっくりエイリアンのものになるのか。ううむ。おれたち国民が何も知らないと思ってそんなプロジェクトが進められていたとは」
「これは阻止しなければ大変なことになります!」

キチュウ星ではさっそく地球に向けて先遣隊を送り込んだ。小型スペースシップに何人も、キチュキチュに詰め込んで。

「隊長、ほんとに、地球には空きスペースがいっぱいあるんでしょうね」
「補佐官が言うんだから確かだろう」
「うれしいなあ。広々した新天地でのんびり暮らせるんだ」
「もうきょうだいが多いからって引け目を感じなくていいんだ」
「もう5段ベッドでキチュキチュに寝なくてもいいんだ」

「地球ばんざい!」
「♪ちきゅうよいとこ一度はおいで わ、わ、わ、わ〜〜」
「でもさ。うわさなんだけど、地球を定点観測してるカメラ」
「うん?」
「たった一個所にしかつけてないらしいよ。それも、なんでそんなとこに設置したのか意味不明な場所だとか」
「えっ」

カップラーメンを半分くらい食べた山城先輩は言った。
「ひとつ気になることがあるんだ」
「なんですか」
「ブラウン管テレビをどけたあとのスペースなんだが」
「ええ」
「みんなそのままにしてるのかなあ」

「してるんじゃないですか?」
「そうかなあ」
「現にうちはそのままですし。先輩とこは?」
「うちもそのままだよ。ぽかっと空いてる」
「じゃあそれでいいじゃないですか」
「そうだなあ」

ふたり、ふとお互いを見つめた。
──沈黙。
「だれかほかの人に聞いてみますか」
「うん」
「鴨川先輩あたり...」
「おお」

「もしもし...おひさしぶりです。ごぶさたしてます。丹波です。はい、はい、その節はどうも、あ、はい、いや、あの、それはぼくじゃないです。ぼくは割り箸に仏像の彫刻するなんて、そんな...で、あの、今日お電話したのはですね」
──電話が終わった。

「鴨川先輩はとっくの昔に50型の液晶テレビに買い換えてまして」
「うん」
「それを機にリビングを超おしゃれに模様替えして壁面は最大限活用、テレビは壁に並行に配置してるそうで、別にテレビの後ろに空きスペースはないと」
「やっぱり」
──沈黙。
「京極先輩にも聞いてみましょうか」
「おお」

「もしもし...京極さんのお宅でしょうか。わたくし、丹波と申します。大学時代にお世話になった、あ、はい、ご主人はお出かけ...はい、あ、いえいえけっこうです、その、大した用件ではないのでまたかけ直します...え、私のことをご存じで...あ、違います違います、私はネパールには一度も、ええ、ええ、いえ、スリランカも...わはははは、金魚をおかずにしたりしませんよ...で、その、先輩にお聞きしたかったのはですね、あ、はい、いや、もちろん、ぜひそのうちお伺い...あの、えっと、地デジで、いえ、地デジです、地デジ」

──なんとか電話が終わった。
「京極家ではとっくの昔にテレビはなくし、必要なときはパソコンで見ているそうです。とても快適よ、とすすめられました」
「そうか」
──沈黙。

「ひょっとしておれたちだけなんですかね、テレビのうしろをぽかんと空けてるとこって」
「ひょっとして、そうなのかなあ」
「よく考えると、部屋の大幅な模様替えってしたことないし...」
「おれも」

そのころ、既にキチュウ星の探査船は地球に到着。乗組員は地球の各地で移住可能なスペースを確認していた。各地といっても丹波くんの近所だけなのだが。

「おかしいなあ。地球のあちこちに空きスペースができてて、地球人はそれをもてあましてるって話じゃなかったですか、隊長」
「そう聞いたけどなあ」
「全部でコーシエン100個分くらいとか。コーシエンって何か知りませんが」

「定点観測モニタを通したレポートではではそうなってるらしい」
「でも、どこの家もびっしりと家具を置いてます。余裕もなにもありません」
「みんな、ちょっとでもすき間があるとすき間家具とやらを置いてます」
「すき間じゃないところにもすき間家具を置いてます」

「とんだガセでしたね」
「結局空きスペースがあったのは、このあたりでは二軒だけでした」
「じゃあ仕方ない。あとでゆっくり探すとして、今日はとりあえずそこに行ってみるか」

調査隊はそういうわけで、丹波くんのアパートと山城先輩のアパートとに分かれて向かった。
「おお、確かにスペースがある! 広い!」
「ここに住んでいいのか!」
「夢のようだ」

「前方に大きな黒い壁があるが」
「これが地球人の使っているテレビらしい」
「われわれを守る格好の擁壁になりそうだ!」

みんな興奮気味だ。無理もない。キチュウ人は身長わずか1.5センチ前後。29型ブラウン管テレビの跡地は甲子園ほどではないにしろ、ちょっとしたグラウンド並だ。キチュウ人たちがわいわいキチュキチュ言ってる部屋の隣で丹波くんは山城先輩と電話で話していた。

「いやあ、今日はひとりで舞い上がって、ぺらぺらしゃべってしまってすいませんでした。いや...そんなことないですよ...それはおたがい...いやいや、おかまいなく...あのカップラーメンは特売品なんで...79円だったし...そもそもエイリアンが地球にやってくるなんてありえないですよね。われながらばかばかしいというか何というか...ええ? 先輩とこで何か? テレビの後ろで虫みたいな声が聞こえる?ような? キチュキチュ? はははは。気のせいじゃないですか?」

【ヤマシタクニコ】koo@midtan.net
< http://midtan.net/
>
< http://yamashitakuniko.posterous.com/
>

古いG4をやっと処分。AppleのPCリサイクル窓口で申し込んだが、けっこうめんどくさかった。移動させるのも重くてたいへんだったし。でも、いま使ってるMac Proはもっと重い(うへー)。これがダメになったら、絶対、次はコンパクトなやつにするつもりだ。

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■私症説[34]
サンドヰッチマン

永吉克之
< https://bn.dgcr.com/archives/20120209140100.html
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私は来月56歳になる。大の字に寝転んでいやだいやだと駄駄をこねても56歳になるものはなる。日本人の平均寿命が男性56歳、女性487歳だから、順当に行けば私は来年の3月までには死ぬだろう。

「死」については道理を悟っているつもりだったが、その茫洋たる影が地平線の彼方に姿を現す距離になると、気もそぞろになる。しかしそれは恐ろしいからではなく、自分のこれまでの人生にまったく満足していないからだ。東京ディズニーランド(※)でほとんど何のアトラクションも楽しまないまま閉園時間が近づいてきたような気分だ。
(※ユニバーサル・スタジオ・ジャパンもしくは枚方パークでも可)。

                 ■

200社以上の求人に応募したが1社にもひっかからなかったという、思わず眼をそむけたくなるほどムゴたらしい実話がある。その人が履歴書を買うのに投じた大金が、メモ用紙にしかならない紙に変わってしまったことを考えると胸が痛む。履歴書破産という言葉が流行語大賞を受賞する日は近い。

企業なんてものはみんな、個人のエゴが拡張されることによって出現した伏魔殿なのである。その企業にとって何の利益ももたらさないことには眉毛一本動かさない。そんなものに振り回されて一度しかない人生をスポイルしてはならない。

企業に雇用されてする仕事だけが仕事だという考えを棄てないと、現下の経済状況では遠からず死ぬると思ったので、個人事業主、つまり自営業者として生活の糧を得る道を暗中模索しながら五里霧中を彷徨った。それを存命中に実現することができれば、まあ終わりよければすべてよしと、不敵で素敵な薄笑いを浮かべながら頓死できるかもしれない。

そこで私は自営のサンドヰッチマンを生業にしようと考えた。「おいらは賛同一致マン」という、イムパクトがあり、かつ示唆に富んだキャッチも既にできている。といっても、街中でよく見かけるサンドヰッチマンは念頭にない。彼らは店なり企業なりに雇われているわけで、自営業者ではないからだ。

                 ■

自営業としてのサンドヰッチマンというのは、作詞作曲、歌、伴奏、ステージ設営、チケット販売、ダフ屋を全部ひとりでやるミュージシャンのようなものだ。つまり、広告主を探して注文をもらったらプラカードをデザイン、製作して首から提げて歩く。それらをすべてひとりで行う。それがこの大不況時代のサンドヰッチマンのあるべき姿なのだ。

売り上げが伸びれば、広告主からの注文も増えて、自分の稼ぎも増える。だから、雇われサンドヰッチマンのように、プラカードをぶら下げてはいるが、イヤフォンでラジオの競馬中継を聴いているというわけにはいかない。知恵を絞って通行人の視線を集めようとするだろう。

だから芸のある人は有利だ。ギターの弾き語り、ジャグリング、アクロバット、角兵衛獅子、ろくろ首、眠り男、タコと人間の混血女、燃え盛る建物からの脱出など、人目を引く大道芸を持っていれば宣伝効果は倍増する。

広告も従来のようにローカルな遊興施設や店舗ばかりではなく、一流企業の広告も担当できるようにならなければサンドヰッチマンの地位は向上しない。私の当面の目標はソフトバンクだが、いずれは、JRやトヨタ、国土開発、王子製紙、NATO、シーシェパード、パンダチーズ(※)などにも営業をかけようと考えている。
(※)<
>

サンドヰッチ「マン」というくらいだから動かなければならない。憂愁の面持ちでその場にじっと佇んでいるサンドヰッチマンをよく見かけるが、立っているだけなら茶柱でもできる。多くの通行人に広告を見てもらいたいのなら、できる限り広範に歩き回らなければならない。それに、繁華街ばかりを歩いていてはダメだ。人は都会だけではなく、山奥にも離島にも住んでいるのだ。

私の夢は、鉄板に一流企業の広告を彫り込んだプラカードを提げて鳥取砂丘を歩くことだ。ずっしりとした鉄の重みで足をくるぶしまで砂に埋めながら歩く。サンドヰッチマンとしてこれ以上の喜びがあるだろうか。何とか寿命の尽きる前に実現させたいものだ。

この計画をここで発表したために、雨後の筍のように模倣者が次々と現れてくるだろう。私にもう少し余命があれば隠密裏に計画を進めてパイオニアを目指していたはずだが、もし志なかばで倒れたら誰かに引き継いでほしいとの願いから、敢えて明かした。

近い将来、世界中の街や村で、農耕地や干拓地で、ジャングルや地底でサンドヰッチマン、いやサンドヰッチメンの姿を見ることができる世の中が来ることを願ってやまない。

                 ■

サンドヰッチマンの将来像を描いてみたが、私にはひとつだけ守りたい、過去からの遺産がある。それは《サンドヰッチマン》という呼称の由来となった、その様式だ。

プラカードはあくまで、体の前と後ろに提げる。最近では手に持ったり、オリンピックで選手団を先導するネーちゃんたちのようなスタイルでプラカードを掲げるサンドヰッチマンが多いが、そのせいで「サンドヰッチ」のイメージが薄れて「プラ持ち」という身も蓋もない呼称が生まれてしまった。

そして、山高帽に燕尾服。現在ではこの伝統を守っているサンドヰッチマンにお目にかかることはない。だいたい服装に気をつけているサンドヰッチマンがいなくなった。サンドヰッチの中身が穴の空いたジーパンと踵のすり減ったスニーカーでは、そんなもの誰が食べようと思うだろう。

無闇に過去を拒絶しても新しいものは生まれない。いくら新しいものを創造するといっても、目玉を四つにしたり、乳房を膝につけたりはできない。天から授かったものを使ってやり繰りするしかない。

というわけで読者諸賢には、サンドヰッチマンが山高帽に燕尾服という様式を踏襲するしかないという、抗い難い理(ことわり)をご理解いただけたと思う。

【ながよしのかつゆき】thereisaship@yahoo.co.jp
ここでのテキストは、ブログにも、ほぼ同時掲載しています。
無名芸人< http://blog.goo.ne.jp/nagayoshi_katz
>

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■編集後記(02/09)

・発端は「首都圏でM7レベルの直下型地震がここ4年のうちに70%の確率で発生する(by東大地震研究所)」という読売新聞1月23日のスクープ(?)である。これまでは、文部科学省の地震調査研究推進本部による「30年以内に70%程度」という数値が定説だったため、今度こそマジやばいと思った人は多い。だが、2月1日、京都大学防災研究所が「5年以内に28%」というまったく異なる試算を発表。さらに、2月5日には東大地震研究所による「4年内に50%以下」という再計算の結果が報じられた。なんだよこれは。東大地震研究所のサイトを見ると、「2011年東北地方太平洋沖地震による首都圏の地震活動の変化について」というページで、なんだか弁解じみた背景説明が掲載されている。読売の記事のモトネタは東大地震研究所の学者による「今後30年間で98%(あるいは、今後4年で70%)」という試算のことで、2011年9月に発表されている。その際にも報道には取り上げられた。それ以降、新しい現象が起きたり、新しい計算を行ったわけではない。「読売の記事には4点の正確でない表現や記述不足があった」「政府発表の値とは異なる理由は、見ているもの(評価や試算の対象)の違いである」「(誤差は大きいから)30年で98%や4年で70%といった数字そのものにはあまり意味がない」といった具合だ。結論は「今がその時と思って、対策をとってください」だって。なんだかなあの気分だ。なぜ1月23日のタイミングで読売1面の大きな記事になったのだろうか。その後、各紙、週刊誌が直下型地震の危機を煽る記事で埋まった(今でも続いている)。これって、消費税増税の問題から国民の目をそらすためではないのか。増税もTPPも大賛成の読売のやりそうなことだ。最近、読売ジャイアンツ新聞はじめマスコミの記事がますます信用できなくなった。(柴田)
< http://outreach.eri.u-tokyo.ac.jp/eqvolc/201103_tohoku/shutoseis/
>
東京大学地震研究所広報アウトリーチ室

・偶然にも年末の話が重なってる。うちのテレビの後ろは、可動用スペース。見る位置によって画面を動かします。すまぬ、キチュウ人。/サンドヰッチマンのサンドの意味ってそういうことだったのか〜。/大阪のセミナー情報ばかりですまぬ↓ 3月は忙しいから、行くなら2月中なのよね。/ネタなし。拾ったまとめサイトURLを貼っとく。(hammer.mule)
< http://m2.cap-ut.co.jp/event/col02/
>
すべてのイラレ使いへ、実践的Illustrator快適化テクニック大公開!
< http://www.zusaar.com/event/203005
>
【田口流】Webディレクション ワークショップ(大阪)
< http://re-creators.jp/vol7/
>
Webデザイントレンド&ワークショップ
< http://atnd.org/events/24265
>
a-blog cms ユーザー勉強会大阪 vol.3

< http://gahalog.2chblog.jp/archives/52071782.html
>
東京の会社が設計した新潟の小学校が雪下ろしが超困難なデザインに。Webサイトのデザインでも要件の面でありがち。
< http://kiri550.blog94.fc2.com/blog-entry-2592.html
>
アメリカのスーパーの広告
< http://d.hatena.ne.jp/Imamura/20120204/Dropbox
>
iPhoneユーザーがDropboxのボーナス容量(5GB)をもらうときの手順案
< http://blog.livedoor.jp/news23vip/archives/4089140.html
>
100年前はスマートフォンとか言うのが流行ったらしいwwww
< http://katuru2ch.blog12.fc2.com/blog-entry-2470.html
>
Apple製のマンションにありがちなこと
< http://hamusoku.com/archives/6640797.html
>
世界一有名なイントロ
< http://digital-thread.com/archives/4096385.html
>
「四天王」←これの別人数バージョンください!!
< http://workingnews.blog117.fc2.com/blog-entry-4735.html
>
会社でプリンタのドライバをインストールしておいてねって。何故帰る?
< http://blog.livedoor.jp/nicovip2ch/archives/1744507.html
>
電子辞書の「実際に名言を使ってみる」の男が悲惨すぎる件について
< http://matometanews.com/archives/1520852.html
>
ナースが聞いた「死ぬ前に語られる後悔」トップ5
< http://alfalfalfa.com/archives/5142607.html
>
ちょっと変えたら生活が改善したこと
< http://tenkomo.blog46.fc2.com/blog-entry-2637.html
>
女の子らしいこと(当社比)したらageるスレ。なんだかわかる。