[3274] 2012年──東京の空

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《もう1から10までまったくわかりません》

■気になるデザイン[78]
 明るい書店で出会った正反対の二冊
 津田淳子

■装飾山イバラ道[99]
 2012年──東京の空
 武田瑛夢

■おかだの光画部トーク[78]番外編
 「ふわっと」起業にまつわるあれこれ
 岡田陽一




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■気になるデザイン[78]
明るい書店で出会った正反対の二冊

津田淳子
< https://bn.dgcr.com/archives/20120605140300.html
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シックでモダンな書店が増えている。お店自体はステキなんですが、私は実はあまり好きではない。というのも、そういうお店は、けっこう暗めの照明にしていたり、日の光が入りにくかったりと、ブックデザインを見るには適してない光源のところが多いのだ。かなりの本を買っていたある書店が、リニューアルしたら照明があまりよくなくなって、非常にガックリしています......。

というわけで、若干心がブルーなのですが、他にもいい書店はたくさんある! と自分をなぐさめ、ブックデザインが気になって買った本を今回も二冊ご紹介します。

一冊目は『これからもそうだ。』(田中慎弥著/西日本新聞社/定価1300円+税)装幀は有山達也さん、装画は牧野伊三夫さん。
< http://shop.nishinippon.co.jp/asp/ItemFile/10000315.html
>

なんだろう、この装画の力強さというか吸引力は。そして帯に刷られたタイトルの文字に惹かれる感覚は。このふたつがあいまった、少々重く悲痛な感じがしつつも、そこに何が書かれているのか気になるって、どうにも手を伸ばさずにはいられなかった。

ラフグロスな紙のカバーには、画家の牧野さんの抽象的な絵がドーンと刷られている。帯がかけられた状態では、カバー自体にタイトルも見つからず、装画だけで構成されているかのよう。

帯を外すとそこにタイトルが現れ、さらにカバーを外すと、表紙にもカバーと同じトーンの絵が刷られ、仮フランス装になっている。表紙の絵、私にはどうも、ひとつの目がこちらをじっと見ているように見えてしまう。

抽象画なので、特になにか具体的なものが描かれているわけではないのだが、黒い線が私には、著者の田中慎弥氏の少し斜に構えた三白眼に見えてしまった。こういうのは、自分の心の有り様で、ぜんぜん違うものにも見えるんだろうなぁなどと考えた。

本文の天がアンカットなのも、スピン(しおり紐)が鮮やかな赤なのも、そして判型が若干縦長なのも、どれも丁寧にこの本をつくった感じが伝わって、読んでいて非常に心地いい本でした。

「思索の旅路で作家は何と出合うのか。彼の目に、街はどう映るのか─」芥川賞を受賞した著者初のエッセイ集。造本を堪能しながら一気読みできました。

今回紹介する二冊目は、前述した本とはうって変わって、書店でピカッと輝いていた『実験的経験 Experimental experience』(森博嗣著/講談社/定価1600円+税)ブックデザインは坂野公一さん(welle design)。

カバーの下半分が金! そしてそこにはストライプ模様。上半分の線画イラストと一体となって、非常にわくわくした感じを受けるブックデザインだ。

本書、表紙のつくりも、扉も、本文用紙もと、すべてがいい感じなのだが、なんといってもカバー(と帯)の加工の使い方が抜群。文字で説明するのは難しいので、ぜひ実物を見て頂きたいのですが、それでは話にならないので、舌足らずながら説明を。

カバー(と帯)は、銀のメタリックペーパーが使われていて、そこに上半分は白を敷いた後に墨で線画が印刷されている。下半分はゴールドに見えるよう、黄色とマゼンタを刷り重ね。そしてその上から、太めのストライプ状に、「オフセット印刷機による疑似エンボス加工」が施されているのだ。

この疑似エンボス加工、簡単に原理を説明すると、オフセット印刷機の通常の印刷ユニット部分で「はじきニス」と呼ばれるニスを、マットにしたい部分に刷る。その上からベタでニス(特殊なコーターユニットで)を塗布すると、先ほどはじきニスを刷った部分は、ニスをはじき、マットな質感に。刷ってなかった部分は、ニスがそのままグロス感ある仕上がりになる。この二つの質感を異なった感じにさせるのが疑似エンボス加工だ。

一般的には、スクリーン印刷によりスポットニス厚盛り(透明なニスがモリッと盛り上がっている加工)の代用品などとして、タイトル文字だけグロス感を、他の部分はマット感を出したい、という時などに使われることが多いが、本書では、はじきニスを単なるストライプに刷ってあるのではなく、ストライプをよく見ると斜めに細いラインが入っているのがわかる。これがあるおかげで、非常に立体感ある仕上がりになっている。
< https://bn.dgcr.com/archives/2012/06/05/images/tsuda6_5 >

と、技術的な話は正直どうでもいいのですが(どうでもよくはないけど)、一目見て「すてき!」と思えるところがすごくいいと思うのです。メタリックに疑似エンボスを使ったカバーだと、どうしても技術が勝ってしまい、「すてき!」というより「すごい!」と思ってしまうことが多いのですが、本書はまず「すてき!」という意識で目について手に取ったもの。

いやぁ、他の本でもそう思っていましたが、私が知る中で、本書のブックデザインを担当している坂野さんが、疑似エンボスの使い方一番うまいのではなかろうか。

今週は実は他にもジャケ買いした本が何冊もあるのですが、それはまた次回に。そうそう、私が編集している『デザインのひきだし16』が今週発売となります。こちら、カバーに「ビーズ印刷」がされていて、カラフルな鳥の絵が、ビーズでモザイク加工されたようになっていますので、ぜひ書店で見てみてください!

【つだ・じゅんこ】tsuda@graphicsha.co.jp  twitter: @tsudajunko
デザインのひきだし・制作日記 < http://dhikidashi.exblog.jp/
>

こちらも印刷加工に凝ってつくった『技術もすごい! 予算もクリア! 特殊印刷加工グラフィック・コレクション』、『使い方がうまい! 紙もの・紙加工ものコレクション』が好評発売中です。
< http://www.graphicsha.co.jp/book_data.php?snumber3=1179
>
< http://www.graphicsha.co.jp/book_data.php?snumber3=1166
>

『デザインのひきだし16』は6月初旬に発売です。他にも『クリエイターのための法律相談所』『本づくりの匠たち』、デザイナーの「やりくり上手」の秘密が満載の『予算がなくてもステキなデザインのフライヤー・コレクション』、『装丁道場』『見た目よし! 機能よし! のショッピングバッグコレクション』『グッズづくりのイエローページ』も好評発売中です!

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■装飾山イバラ道[99]
2012年──東京の空

武田瑛夢
< https://bn.dgcr.com/archives/20120605140200.html
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●金環日食体験

金環日食は私も楽しみにしていた。以前の日食の時に買っておいた、安い日食グラスがひとつある。その時の日食は天気が曇りで、日食グラスでは真っ黒で何も見えず、その機能を怪しんでいたものだ。だから、今回の金環日食ではハンズでVixen(ビクセン)の日食グラスをひとつ追加して買っておいた。

当日の東京は、なんとか雲と晴れ間が交互に訪れる天気だったので、近所に住む母を呼んで一緒に見ることにした。だんなさんと私と母の三人で、二個の日食グラスを交換しながらの観察だ。さすがにVixenの日食グラスはきれいに白い太陽が見えた。うっすらかかる雲の繊細な濃淡まで見えて、ドラマチックで美しい。

あの怪しい安グラスも決して使えないことはなく、太陽の色がこちらは赤くはっきりと見えた。後でテレビを見ていたら、小学校で同じタイプのグラスを全員に配っていたので、彼らには赤い輪っかの共通の思い出ができたのだろう。

太陽が徐々に欠けていき、そろそろ金環になりそうだという時に雲の塊が太陽の近くに現れた。「雲来ないで来ないで」という祈りが通じて、環になった時にしっかり見えたので、本当にホッとした。

最初はあまり乗り気でなかった母も、金環日食が見られたのがとてもうれしい様子だ。マンションではかなりの人数の人がベランダや中庭に出て、空を見上げる「特別な日」となった。日本中が空を見上げた日なのだ。

●東京スカイツリーに上る

日食の次の日は東京スカイツリーのオープン日だったけれど、私はWEB申し込みでオープン3日目の木曜日の朝一番(8時〜)のチケットが当たっていた。初日と土日に人気が集中し、第一希望にする人が多かったようだ。私は初日は仕事で行けないし、平日の朝一番だったら人気薄かもしれないと思ったのだ。

WEBで自分の抽選結果を確認して、だんなさんが抽選申し込みした分の確認も急いでもらった。その結果、なんとだんなさんは次の週の木曜日の朝一番(8時〜)が当たっていたのだ。

どっちかがどこかにひっかかる作戦だったのに、朝ばっかり当たってちょっと困惑。チケットは二枚ずつだったので、二人のお母さんを呼ぶプランを考えたり、混雑の中で一人は若くないと上で困るかなとか、いろいろ悩んだ。

最初の週の木曜日は夫婦で出発、天気は晴れのち曇りだった。初日は雨で次の日が晴れ、テレビで見てもその天気の運不運の大きさにびくびくしていた。チケットが当たった人は皆、決定している日時をどうすることもできないので祈るしかない。

当たり前だけれど、だいたい下から展望デッキが見えていれば、上からも下が見える(笑)。ただ、「遠くが見えるか」これは快晴度合いで全然違うので晴れていてもいろいろだと感じた。

朝一番なので建物の外でチケット交換に並ぶ列は整然としているし、ほとんど混乱はなかった。しかし、建物の中に入ってチケットカウンターまで行く時に、テープで準備された蛇行ルートを歩かされたのには笑ってしまった。「何これ何これ」と、まだ人も少ないのに無駄な小走りの蛇行でぐるぐると進む。

こういうのは、最初はストレートの道にしておいて、ある程度人間がたまったら蛇行に切り替える方が自然だろう。スタッフがささっとテープを切り替えて、人をうまく誘導するディズニーランドの臨機応変な対応の素晴らしさを思う。

スタッフは空港みたいなデザインのカウンター周りにたっぷりといて、朝の挨拶をがんばっている。ユニフォームは柄ものでカジュアルな印象だ。まだ三日目なので、至る所で慣れてない感があったけれど、こちらも初めてなのとウキウキウッキー! なので大丈夫だ。

そういえば、人が集まる場所のわりにあまり怒っている人を見かけなかったように思う。ハイな気分というのは人を優しくさせるのかもしれない。

チケットを交換して、荷物チェックのカウンターを通ると四つの季節のデザインのエレベーターのどれかに乗ることになる。エレベーターは天井の一部が透明でワイヤーが見え、入り口上には現在位置を示すメートル表示のアニメーション画面がある。私たちは鳳凰のデザインの秋のエレベーターだった。エレベーターの中もデジカメや携帯電話で撮影している人が多い。

最初の展望デッキには、エレベーターに乗ってから1分もしないで到着してしまう驚きの速さだ。本当にもう着いたの? と皆の声が上がる。窓の外にはミニチュアみたいな東京の街が広がっていて素晴らしい爽快感を味わえる。

建物が小さく見えるのと視界が広いせいか、最初はあまり街の動きを感じない。よく見ると、車は動いているし歩いている人も小さい粒のように見える。確かに街は動いているのだ。車も電車も小さいと動きがゆっくりに感じる。以下はiPhoneで撮影した写真。

・展望デッキからの眺め(アサヒビール付近)
< http://www.eimu.com/col/images/sky2 >

私たちは朝8時〜8時30分の一番の入場組で、30分ごとに次の組が入って来るので、最初だけは最も人間が少ないことになる。今のうちに、そこから約100m上の展望回廊のチケットを買って上がることにした。ただしこの展望デッキには床が透明になっている「ガラス床」があるので、帰りには忘れずに寄ることにする。

エレベーターに乗って展望回廊に行くと、そこは面積は小さめのフロアになっている。てすりの向こうにガラス窓がある作りなので、てすりから身を乗り出すと斜めになったガラスにパンフレットを落としそうになって怖い。

ここは本当に高い場所なのだ。展望回廊でも最も高いソラカラポイント451.2mはぐるっと廻った先にあるので、それまで外を見ながら歩いていく。

・展望回廊
< http://www.eimu.com/col/images/sky1 >

景色は下の展望デッキと比べて100m程の違いなのに、視界が白っぽく感じる。遠方の湾や富士山の方は白くなって見えない。東京タワーや遠くの観覧車は見えるので、本当に晴れて澄み切っていたら、何もかも見える場所なんだろうな。

私たちが回廊から展望デッキへ降りて来た時には、展望回廊への待ち時間が40分になっていたのに驚いた。朝一番の入場は待ち時間が気になる人にはおすすめだと思う。それぞれ場所での滞在時間は自由なので、人がたまってきてしまうからだ。

結局、私たちは次の週も夫婦でスカイツリーに行った。母たちを連れていっても、朝早いのと天気によっては残念な想いをさせてしまうのが心配だったのだ。二回目のツリーは曇りがちな天気だったので、展望デッキだけにして展望回廊へは上らずにソラマチ回りに時間をとった。

・澄川喜一氏のモニュメント(中から見上げ)
< http://www.eimu.com/col/images/sky3 >

・翌週にガラス床から見下ろしたモニュメント(円の中)
< http://www.eimu.com/col/images/sky4 >

スカイツリー前の石柱のモニュメントは、撮影スポットとなって行列ができている。モニュメント内部からツリーを見上げて、ツリーの頭を出して撮影するのが流行っていて、私はミーハーなのでやってみた。二枚目は翌週の朝早くにガラス床からモニュメントを見下ろしたのでまだ人が少ない。

●まとめ──早め早めの移動が吉

今は日時指定の人だけが上れる状態なので、天気は運だ。「今日は天気がいいね、スカイツリーにでも行こうか」と思い立った時にチケットが買えるような状況になったら、ぜひまた行きたい。本来はそういうものだろうしね。季節は秋、空気の透明度の高いドピーカンの時がベストだと思う。

展望デッキからの景色の一番遠いところに自然の「富士山」が見えたら、自分のいる構造物のスカイツリーとの対比できっと素晴らしいと思うのだ。私たちは富士山は見られかったので、次の機会にはぜひ見てみたいと思う。いろんな時間帯の景色の状況を映した横長のモニターが置いてあるので、季節や時間、天気で変わる景色を見ていると何度でも来たくなる。

夜景もきれいだろうし、上から見る隅田川の花火もよさそうだ。ただし、花火のシミュレーション動画では、スカイツリーが高すぎて花火はかなり小さめに見えるようだったけれど。

ここはすぐ行列ができる所だが、できるだけ並ぶ時間を少なくしたいなら、すべてを早め早めで移動するのがおすすめ。朝一入場、早めのお土産購入、早めのお昼ご飯作戦。なぜなら展望回廊への入場待ち、お土産屋さんのレジ待ち、ソラマチのお昼ご飯が長蛇の列ができるポイントで、それぞれは諦めるわけにもいかないからだ。

スカイツリーの入場時間は決まっていても、スカイツリーグッズのお土産店は外部から入るのが可能な場所にある。ソラマチの人気店は開店前から列ができ始めるところもあり、昼ご飯の時間は早めがいい。午後から来る人の方が多いことを考えると、ランチの時間を遅い方へずらすのはあまり効果がないと思う。

ソラマチは若いデザインで蘇った和風テイストのグッズのお店がいろいろあって、テーマ性という点ではとてもおもしろいスポットだと思う。テレビの特集で放送されたせいか、早くも人気のお土産やグッズは売り切れていた。最初の週にあったのに、次の週はないものがかなりあったがまた登場するのだろう。

一回ではとてもまわり切れないスカイツリーとソラマチ、何度も行きたくなるので気長にマメに情報をチェックするのがいいかもしれない。

【武田瑛夢/たけだえいむ】eimu@eimu.com
装飾アートの総本山WEBサイト"デコラティブマウンテン"
< http://www.eimu.com/
>

今回グルメ情報を書ききれなかったので、最後に少しだけ。スカイツリーのふもとにあるミスタードーナッツのポン・デ・ライオンパークに寄って、ここでしか買えないポン・デ・ライオンドーナツを買って持ち帰った。周りがポンデリングで、中央がエンゼルクリーム入りのドーナツになっていて美味しくて楽しい。

・ポン・デ・ライオンパーク
< http://www.misterdonut.jp/enjoy/soramachi/index.html
>
・ポン・デ・ライオンドーナツ
< http://www.eimu.com/col/images/sky5 >

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■おかだの光画部トーク[78]番外編
「ふわっと」起業にまつわるあれこれ

岡田陽一
< https://bn.dgcr.com/archives/20120605140100.html
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感動の金環食から早2週間がすぎ、月が反対側に移動した昨夜、今度は部分月食でした。月の1/4ほどが地球の陰に隠れる天体ショーでしたが、神戸は残念ながら曇っていて、たまにうっすら光が漏れる程度できれいな満月は見れませんでした。

ところで、最近は地元の相生や姫路界隈のことではなく、頻繁に神戸のことを書きますが、それは毎日神戸に居るからなのです。私事ですが、13年間のフリーランスの活動を経て、先月神戸に会社をつくりました。

この連載「光画部トーク」では番外編として、このたび起業に際して感じた様々なこと、勉強になったこと、たくさん沸き起こった疑問や不思議に感じたことなどを、数回にわたって書いておきたいと思います。写真の話を楽しみにしておられる方は、しばらくの間ごめんなさい。

さて、そもそも本格的に会社にしようと思ったのは2010年の秋頃。小さい頃から石橋を叩いて叩いて叩き過ぎて、石橋が壊れて渡れなくなってしまう性格なので、思い立った時から実際に登記するまで一年半以上かかりました。

その間、起業に関するいろいろな本を読んだり、友人に相談したり、ネットで調べたり。行政書士さんや司法書士さん、税理士さんに知り合いでもいれば明解だったのですが、あいにく周りにあまり親しい士業の人がいません。

まず、何がわからないって、いったいいくらお金を用意すればいいのか。そして、どんな手順でどこに何を提出すればいいのか。もう1から10までまったくわかりません。

よく起業にまつわる本には「1円から登記可能!」なんて書いてあります。確かに法的にはそうかもしれませんが、1円で事務所を借りれるわけではないですし、仕事で必要になるパソコンやソフトなど、さらには机や椅子やオフィスで必要なもの。手続きにかかる税金や代行していただく費用など。結局、何が必要で、それにいくらかかるのかがわからないことには、お金の工面もできません。

いったい資本金いくら準備すればいいの? 資本金と、会社設立にかかる様々な費用はまた別に用意しないといけないの? このあたりの疑問は、結局、登記前一か月前くらいまで、かなり曖昧なままでした。

会社を作る手順は、親身になっていろいろとアドバイスしてくれたり、サポートや代行してくれる、いい行政書士さんや司法書士さんを見つけることが始まりなんじゃないかと思いました。

今回、親しい友人が紹介してくれた行政書士さんが本当にいろいろと助けてくださいました。大学時代からの仲良し友達だそうで、わたしにとっても、とてもいい出会いとなりました。

何にもわからない状態のわたしは、ものすごく初歩的なことから、一見関係ないようなことまで、とにかくあれこれ質問しまくり。それにいちいち丁寧に親切に答えてくれて、頭のなかでモヤモヤ霧がかかっていた事柄が、ひとつひとつクリアに先が見えるようになって、その過程はまるでRPGで敵を順番に倒してだんだんレベルが上がっていくような、楽しい感覚になっていきました。

手順の中には、どっちを先にするの? という鶏が先か卵が先かみたいな箇所がいたるところに出てきます。

登記するには会社の所在地が必要なので、不動産屋さんにオフィスとなる物件を探しに行くわけです。今後、法人が賃貸料を支払うわけですから、オフィスは会社名義で借りたい。ですが、まだ会社は存在しない。会社を作るには賃貸契約を結んで会社の所在地を確定する必要がある。ん〜、悩みますね。

資本金を入金するのもそうでした。まず会社がなくては、法人口座も作れない(←これに関してはまた追って書きますが、最近は会社ができたとしても銀行口座を開設するのはひと苦労です)。いったい、資本金はどこに振込むのだろうか?

そうこうしている間にも、法人設立に必要な判子を買ったり、手続きに必要な費用の一部を仮払いしたり、不動産屋さんに手付金支払ったりなどで、資本金として用意していたはずのお金が、資本金の額を確定する前にじわじわ目減りして行くので、早く資本金を確定させたいけど、オフィスの所在地となる物件が決まらないことには定款が作れないので、ひとつひとつのタスクを手順通りに進めないと次へ移れない......。

自分の普段使っている銀行口座に、資本金用のお金が一緒に入っていると、どんどん目減りしている感じで怖かったので、別の口座を一度空にして、そこを資本金振込む口座にすることにして、お金をそちらへ移しました。

すると、行政書士さんから「資本金振込むのはまだです! 定款の認証が完了してからの作業になります」と連絡がきました。

最終的に結果は同じなので、なんだかよくわからないけど、そういう手順らしい。仕方なく、またその口座から引き出して再度入金するのですが、一日に引き出せる限度額を越えているために、引き出すだけで数日かかり、それまで資本金が確定しないために、そこからお金を使うことができないので、オフィス契約の残金をなかなか不動産屋さんに支払えません。

先走って入れていた額を全部一度出金したのですが、その間に利子が付いていたらしく、口座に2円残っていて、一度口座を空にするために、人生で初のATMで2円引き出すってことをやりました。ちゃんと出てきました!(笑)

会社を作る手前の段階でこれだけドタバタしてたのですが、次回はそれらの疑
問をクリアにして、ちゃんとした手順をシェアしたいと思います。

【岡田陽一/Web&DTP デザイナー+フォトグラファー】
と言うことで「株式会社ふわっと」という会社が神戸に誕生しました。
今後ともよろしくお願いいたします。

[お知らせ]
今週末の6月9日(土)、名古屋の「CSS Nite in NAGOYA ♭002」で1セッション90分の担当します。
< http://cssnite-nagoya.jp/b002/index.html
>
そして、平日ですが12日(火)、岡山の「第14回岡山WEBクリエイターズ」で1セッション30分担当します。
< http://www.okaweb.jp/20120612-1.html
>
お近くで興味ある人は是非ご参加ください。

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編集後記(06/05)

●垣谷美雨の「七十歳死亡法案、可決」を読む(幻冬舎、2012)。支持率80%のカリスマ首相が率いる政権の提出した「七十歳死亡法案」が、充分な討議もないまま強行採決された。日本国籍を有する70歳以上の国民は誕生日から30日以内に死ぬことが義務付けられ、施行は2年後の4月1日。おもしろい! この設定で物語はどう展開するのか。来るべき反ユートピア社会というリアルな問題提起なのか、それとも施行前に繰り広げられるドタバタ悲喜劇なのか。設定がいかにも無理筋なので、たぶん後者のストーリーで、オチもこうなるという予測を立てたら、みごとその通りになってしまったのが残念。みごとに裏切ってほしかったのに。

読後にアマゾンの商品説明を読んだら、なんと内容がほとんど完全に書かれているではないか。これでは興味半減だろう。「2年後に法律の施行を控えたある日、ごくありふれた家庭の宝田家にも小さな変化が起こり始めていた。義母の介護から解放されようとしている妻、家のことはすべて妻に任せきりの能天気な夫、超一流大学を卒業しながら就職に失敗し引きこもっている息子、ひび割れかけた家族から逃げ出した娘、寝たきりでわがまま放題の祖母。一番身近で誰よりも分かってほしい家族なのに、どうして誰もこの痛みを分かってくれないんだろう。究極の法律が、浮びあがらせた本当の『家族』とは?」。そう、社会小説というより家族小説なのだ。

2年後には70歳以上の人はすべて死ななければならない。そうなったら、人々は何を考えどう行動するか。このシミュレーションはなかなか面白いが、喧々諤々のテレビ論争の賛成も反対も意見はほぼ想定内である。主人公・東洋子の考え、義母の考えなどよくわかる。無理解で無責任な家族や親戚の言動を腹立たしく思う。でも、それはすでに何度もつかわれてきた家族小説の平凡なお約束だ。心から同感したのは(前々からわたしの持論であるが)「介護で内需拡大が可能なはずだ。ヘルパーを高級な職業にするんだ。実際に給料を高くして、イメージアップをはかる」という首相の言葉だ。日本はこれを目指すべきだ。外国人看護士や介護士に頼らなくても、自前で調達できるはずだ。(柴田)

< http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4344021258/dgcrcom-22/
>
→アマゾンで見る(レビュー10件)

●「ポン・デ・ライオンドーナツ」なるものがあったのか〜! 当選うらやましい〜。案外空いていたので、東京の人は新しいスポットに興味があまりないのかと思っていたが、朝早かったからなのかも。/高級な職業にするには、税金を上げて、社会保障の強い国へ。今の日本にそれはできるのか? そういやホテルで出会ったベッドメイキングさんたちは、中国系、インド系(超美人)の顔だった。挨拶をしたら片言の日本語で返してくれた。たいていサービス側から先に挨拶してくれるんだけどな〜とも思いつつ。

昨夜は岡田さんと仕事の打ち合わせ、にかこつけて、新しい事務所にお邪魔。iPhoneのmapに誘導されたものの行き過ぎてしまい彷徨っていたら、ベランダにロゴマークにもなっているオレンジとイエローの風船を発見して、絶対ここだ! と。ビンゴ。はざくみちゃん(と我々は呼んでいる狭間さん)の天使の笑顔がお出迎え。女の私でさえ頬が緩むんだから、男性ならメロメロなはず〜。シックな濃いブラウンの床材に白い壁紙。IKEAで揃えられたという白と明るいベージュの木材の家具類。ベランダにはテラスセット。社名の「ふわっと」を事務所からも感じる。この事務所スペースとの出会いの話が興味深く、そのうち岡田さんが書いてくださるかも。仕事スペースと打ち合わせにも使えるリラックススペースの機能がきちんと分けられていた。ラグの上での打ち合わせを薦められたのだが、絶対に根が生えると思い、キッチンカウンターにしてもらったよ。まだまだ家具やら電化製品やらを増やされる予定だそう。人間工学に基づかれた、腰や背中に負担の少ない椅子もすてきだったわ。(hammer.mule)

< https://www.facebook.com/events/312657232148087/
>
WEBデザイナーも知っておきたいPHP初級講座
< http://jp.techcrunch.com/archives/20120602android-qa-testing-quality-assurance/
>
トップAndroidデベロッパーはこうしてアプリの品質テストを行っている
< http://www.publickey1.jp/blog/12/ie10flash_playermetroflashsilverlight.html
>
IE10にFlash Playerを統合。MetroスタイルでもFlashコンテンツが利用可能に。
< http://bizmakoto.jp/bizid/articles/1206/04/news038.html
>
文具王たち文具好き6人が選ぶオススメ文具19個
< http://www.style.fm/as/05_column/list2012/list2012_1.shtml
>
TVアニメ50年史のための情報整理