グラフィック薄氷大魔王[306]リッピング違法化、音楽CDが売れない件
── 吉井 宏 ──

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●リッピング違法化

今さらリッピングを違法化して何か効果があるとでも? ディスクメディア自体消えようとしてるのに。やるなら15年前にやるべきだった。まあ、これを働きかけた人たちもこんなの気休めだって薄々わかってるけど、流れ上そうしないと立場が......ってことなんだろう。

音楽CDはリッピングできないのなら買う理由がほぼなくなる。CDプレーヤーで音楽を聴くなんて、21世紀になってからたぶん一度もしてない。え? 従来のCDは違法化の対象じゃないって? あ、DVD映画とか映像のことか。プロテクトをはずすのが違法ってことだそうです。プロテクトをかけるのは、ユーザーの権利を侵害してるんじゃないかって疑問もありますが。

っていうか、僕でさえCDをリッピングしたのって3年前にデジクリに書いたカーペンターズのCDが最後かも。CDまだいっぱい持ってますが、ケースがジャマで全部不織布のケースに入れて段ボールに詰めてある。たぶんそのうち捨てちゃう。

DVDだって近所のTSUTAYAに行けば一枚100円で何万枚も選び放題なのに、リッピングする意味あんまりないけどね。それでも、DVDのコピーってタイムシフト視聴的意味が大きいと思うんだけどなあ。それってまったくの私的利用ですよね。

とかなんとか、実はDVDリッピング違法化よりも「違法ダウンロード刑罰化」のほうがはるかに問題らしいですね。




●音楽CDが売れない件

かつての音楽レコードや現在のCDの購買層と年齢別の人口をくらべてみると、「なーんだ! 売れないの当たり前だよな〜、アハハハハ〜〜!」ってなるよ。

年齢別人口推移グラフをWebで探して見てみてくださいよ。40歳前後の人口がピークです。その世代が中高生の頃は90年代後半。つまりCD購買のピーク。現在の中高生は当時の半分ちょっとくらいです。

ということは、90年代後半のミリオンセラー連発と同じ売れ方をしたとしても、売れる枚数は半分なのが自然な状態。売れる枚数が落ちていくのめちゃくちゃ当たり前!! 同様に、DVDとかの映像メディアもマンガも本もひょっとしたらゲームも、90年代後半にくらべて売り上げ半分になるの当たり前なんです!

もともとピークの半分しか売れないはずなのに、違法ダウンロードやコピーのせいにして手枷足枷がんじがらめにして音楽を楽しくないものにしたら、さらに悪化するわ。っていうか、数字苦手な僕が年齢推移グラフを見て「なあんだそうだったのか!」ってわかることが、なんで周知されてないんだ??

逆に考えると、三分の一とかじゃなく半分程度に留まってるっていうことは、ケータイやゲームをはじめ、限られたお小遣いを奪い合う強敵ライバル乱立の中で、CDを売れる可能性の限界までちゃんと売ってるわけです。

レコード会社、健闘してるんです。けっこうしぶといじゃん! って気もしてくる。レンタルもこれからの主流であろうダウンロード販売もCDの売り上げには含まれてないわけだし。

だいたい、昔の中高生だって自前でLPレコードを買うようなヤツはよっぽどのマニアで(お金もあって)、クラスに一〜二人程度しかいない奇特なヤツだったんじゃない? なにしろLP一枚買ったら一か月の小遣い終了! でしたし。

それで、そうやって売り上げを支えてきた奇特なマニアが、レコードを貸してくれたりカセットに入れてくれたおかげで、聴いて音楽に興味を覚え、ズルズルと音楽に金を注ぎ込むマニアが誕生するんですよね。

どういう経緯で自分がCDやDVDを買うようになったか考えりゃ、導火線の火を踏みつぶすような対策はできないはずなんだけどな〜。あと、レンタルすれば10枚借りられる値段のCDを買う人って、普通に考えればよっぽどファンでなきゃ、どうかしてる。

コピーフリーにして比較的自由に鑑賞できるようになって裾野が広がれば、自分で金出してまで買う人が100人のうち数人くらい出てくるんだよ。それでいいんじゃないの? お金をいつまでも払い続ける音楽中毒者養成をおろそかにし、目先の売り上げばかり追えば、流行ってるから飛びつくだけの一般消費者しかいなくなっちゃう。

僕らの世代なんか、レコードで持ってるのにCDで買い直し、さらにiTunesストアで購入したりしてる。「ディスクや音楽ファイルではなく、聴く権利を購入」のライセンス制希望!

とはいえ、この僕でさえ、新しい音楽を積極的に聴こうってのはなくなっちゃった。普段はネットラジオでほとんど足りるし、iTunesに何万曲も入ってるのは全部何かの思い入れや期待があって買ったCDなわけだし、ちゃんと聴けばすごい好きになる曲もまだまだあるにちがいなく、新しい曲を聴こうって余裕ないなあ。聴きたいポッドキャストも溜まる一方だしね。

●3DCG作業で音楽が聴けない件

Painterで絵を描いてたときは音楽聴き放題だったけど、3DCGに移行した現在は仕事中にぜんぜん音楽かけられない。アイディア出しとかの考え事のときに音楽をかけられないのは当然としても、ほとんどの場合単に「作業」な3DCG作業でなぜ音楽がウザく感じるのか、わかった。

3DCG作業って、「今は頂点の編集中、今はポリゴンの編集中。今はアイテムの作業、時間軸の作業、テクスチャの作業」って風に、数秒から数分単位で細かく細かく超〜細かく作業モードも頭も切り替えなきゃならない。

3DCGがそうやって超細かく別系統の作業を次々にしなきゃいけないのに対して、Painterではほぼ最初から最後までモードはひとつだった。脳への負担がほとんどなかったから、音楽聞いたりしてても手は勝手に動いたんだよな〜、なるほどぅ。

【吉井 宏/イラストレーター】
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アップルストアで新MacBook Pro15インチを見てきた。確かに薄いけど、ゴム足の高さと面取りアールのせいか、そんなに薄くは見えないです。横に置いてあった旧MBPと比べると、「あ、確かに薄いな」くらい。重さも15インチなのでまあ軽くはない。なんとFireWireが廃止! Thunderboltが2個ついててFW変換アダプタが近日登場予定、ターゲットモードも可能だそう。USB3.0は2.0と互換性があるので、手持ちの周辺機器はそのまま使える。

Retina液晶はさすがに高精細できれい! 目を10センチくらいに近づけないとわかんないけどね。環境設定で文字やパネルの見かけのサイズやシャープさはそのままに、画面解像度を変更できる仕組みもいじってみた。短い時間では便利なのかどうかよくわかんない。

外部ディスプレイにつないで、本体は閉じて使う今のスタイルでは、せっかくのRetina液晶も宝の持ち腐れになっちゃいそう。っていうか、ノートパソコンとして超魅力的なのは間違いないんだけど、僕的にはMac Proのほうが切実に必要。次の次にはなんとか。

・iPhone/iPadアプリ「REAL STEELPAN」ver.2.0がリリースされました。
「長押しロール」のオン・オフ切り替えスイッチを追加しました。
「オフ」ではレスポンスが速くなるので、素早い演奏が可能になりました。
REAL STEELPAN < http://bit.ly/9aC0XV
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・「ヤンス!ガンス!」DVD発売中
amazonのDVD詳細 < http://amzn.to/bsTAcb
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・僕のインタビューが載った香港のオンラインマガジン、「NewWebPick」39号のLite版が出てます。Lite版のインタビューは2見開きだけですが、有料版は6見開きあります。
< http://newwebpick.com/_issue/
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・メキシコのPDFデザインマガジン「inkult」15号にも9見開き分載ってます。無料です。
< http://www.inkultmagazine.com/
>