デジタルちゃいろ[18]日本の南米第一次接近遭遇
── browneyes ──

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最近、訳あってブラジル人を中心とした、南米の方々との交流の機会が増えています。ご存知の通り(ご存知かどうか自体があやふやですが)、ワタシはどちらかというと南亜細亜〜中東方面が主に個人的萌えスポットになって久しく、南米は事実上白紙ゾーン。逆に興味がない文化圏だからこその、未知との遭遇をちょっと楽しんでる日々です。

●地方都市の異国

ワタシの暮らしている、湘南としてはいささかイメージの悪い某市周辺は、自動車産業をはじめとしていくつかの小さくはない工場地帯があり、外国人労働者も少なくなく、市内のいくつかの地域は、リトルアジアとかリトルブラジルとか呼ばれてたりするようです。

以前から、日中に何度かその「リトルアジア」と呼ばれる地域には行ったことがあり、確かに異国感漂う食材屋さんや、公園で東南亜細亜系の大人が見たこともない玉遊びをするのを見たり、団地の窓からタイや中国の流行歌がそれなりの音量で流れてくるのを耳にしたコトはありました。

が、南米については、駅周辺で南米人っぽい方々はちょくちょく見かける割に、南米御用達っぽいお店はリトルアジアの入り口にあるブラジル料理店くらいしか見かけたことがありませんでした。「リトルブラジル」「ブラジル団地」などと呼ばれる場所は、調べてみてもみなさんどこを指してるのか、ぼんやりと曖昧。

そんな謎の南米スポットに、とあるきっかけで知り合った日系ブラジル人の方に連れられ、ここ最近足を踏み入れることになりました。




●地方都市の南米

まずはブラジル食材店。「ハイ、ここデスヨ!」と連れて行かれたのは、畑の点在する場所にある小さな日本の町工場。「はぁ?」と驚き戸惑いつつブラジル人の行く先を眺めると、駐車場スペースの奥に階段。階段入口に色褪せたA4の張り紙に、かすれた印刷でうっすらポルトガル語。こんな場所、わかるわけないわ!

恐る恐る階段を上っていくと、中は意外に広く、右手にブラジル製のコーヒー、飲料、缶詰、粉物、お菓子、肉、野菜。左手は老若男女向け衣料品と化粧品。更に奥では店で作っているパン系の調理もの(ポンデケージョと、もうひとつ、名前忘れたけど美味しかった)やDVD、本。

平日の日中に行った時は、地元ベルマーレに今年から所属になったブラジル人サッカー選手と通訳さんがスイーツを買いに訪れ、週末の夜は家族連れのブラジル人が車で、徒歩で続々とやってきては店内や店の外で社交が繰り広げられ、あちこちでHola!という挨拶と共におしゃべりが始まる。

●地方都市で南米ナイトライフ

週末の夜、この食材屋さんを皮切りに、例の「リトルアジア」にあるブラジル料理屋さんに向かう。あれ、またサッカー選手くんと通訳さんが(笑)。まぁ、多様に店舗がある訳ではないので、そんな狭い世界ではありますね。

このブラジル料理屋さんはバス通り沿いにあるコトもあって、前々から店構えは知っていました。ブラジル料理屋な筈なのに看板にはデカデカと「炭火焼ホルモン」と書いてあって、そのミスマッチがまた何とも(笑)。前が何屋さんだったのかはわかりませんが、内装もいささか居酒屋っぽい。

パステルやフェイジョンなど、料理はしっかりブラジルだったけど、日本人が期待するキチンとした異国料理としての「ブラジル料理屋」ではなく、実質、南米人の為の南米人による居酒屋的な位置づけなのかな、基本的には。ポルトガル語・スペイン語(プラス日本語)のカラオケ完備。

ブラジル人によるブラジルポップス(「ブラジルはサンバとサルサばっかりじゃないネー!」と何度も言われつつ)とか堀内孝雄とかX-Japanなどの歌を、料理とともに堪能。ワタシは下戸なのでビールの代わりにガラナばっかり飲んでましたが。

そこで終了の予定が、どうやら近くにボリビア人のやっている店もあり、「ボリビア人は今からどんどん集まるネー! でもちょっと危ないヨ! でも僕がいれば大丈夫!」というので、既に夜の12時は回っていたけど、せっかくなのでそちらにも連れてってもらう。

彼らの拙い日本語だとどの飲食店も「店」とか「レストラン」なのだが、入り口の目の前で漏れ聞こえる音を聴いて、やっとクラブ的な店だと把握。看板もないので、開店してない日中ふらふらしてた時には、よもやこんなお店がそこにあるとは気づかなかった!

かかるのはレゲトンやサルサっぽい音楽。何故か曲と曲の繋ぎはやたらと短くて、どんどん音楽が変わってく。あっ、この曲、カリブ・南米方面が好きな友達に聴かせてもらったコトのある曲だ! 曲はブラジル料理屋さんのブラジルポップスに比べると断然好み。テンション上がる。

フロアでは南米っぽく身体にピッタリ目の服装の豊満なお姉さん達が踊り、彼氏や旦那はそれを眺めつつ男同士の会話を楽しむ、という感じ。そういえばブラジル料理屋も、カップルや家族単位で来店してるものの、店内では巨大な女子テーブルと好き好きにカウンターで語る男子、という形で男女別に。

その時Twitter上でデジクリ師匠のべちおさんに「ブラジルではそういうもんらしい」と教えてもらいました(べちおさん南米詳しいなんて知らなかった!)が、それってイスラム圏の男女カルチャーと案外似てるなぁ、いやいや、そうやって考えてくと「ダンシ〜、ジョシ〜」で分別、って、宗教的云々よりも実は万国共通のニーズとして結構あるもんなんだろうな、逆にパートナー単位・家族単位が主体なのは欧米列強だけなのかもしれない? なんて思ったり。

店内もミラーボールやスポットライト、ブラックライトでいい具合にいかがわしいのですが、ふと見るとあちらのテーブルの奥では3歳くらいのくるくる頭の子供がこの大音響の中スヤスヤ眠ってたりしてる。

あぁ、この店も家族連れありきなんだ。踊ってるのか談笑してるのか、とにかく子供の側に親の姿はないけど、起きちゃったとか何かあった時は周りの誰かしらが見てやる、みたいな隣組的暗黙の了解はあったりするのかな。

●見えない壁

しかし、今のところ連れてってもらったお店の大半が、今回みたいにそのコミュニティの内側にいる人がハブにならない限り、普通の日本で暮らす日本人にはまったく知り得ない世界として広がっているというのは不思議。家に戻ってからググっても、ほんの一握りのその国マニアっぽい人の記事を除いて、情報がほとんど皆無。

唯一、Facebookで日本語での情報発信をしているブラジル料理屋さんも、地域イベントがある毎に出店したり、地元サッカーの選手とサポーター交流会みたいなイベントでは限られた日本人も来店するものの、日常的にふらりと訪れる日本人はそんなに多くはなさそう。立地自体が駅近くではないので、更に外からの流入はハードル高いんですけどね。

ワタシの南米不思議ナイトと同じ頃、Twitter上で近々開催されるという(日本人向け)ブラジル音楽関連イベント会場のレストランの写真を見かけたのですが、普段は、ビールを買ったスーパーやコンビニの店先でまったり飲み集ったりするワタシの知ってる範囲の南米人は、小金のある時でも行かなそうな瀟洒なお店。

なんとなく見えない壁をしみじみと感じてしまったりするのですが、同じ日本にいながらにして、どちらもお互いを見てない感じなのかな。調べてみると日本にいる在日外国人数としては3位なのに、東京にはあまりいないのですね、ブラジル人。確かに東京に住んでた時に、ブラジルやブラジル人との接点ってほとんどなかった。

音楽もスポーツも、結構日本人受けしそうな要素は沢山あるんだから、近くにいるならもうちょっと入り混じっても面白そうなんだけど、在日ブラジル人の多くが東京拠点ではないが故に、接点を持つ機会すらないのかな。ちょっともったいない。

●ポルトガル語とスペイン語

この界隈の南米人コミュニティ、マジョリティはもちろんブラジル人なのですが、ペルーやボリビアの人も結構いるようで、しかし、同じ南米でもブラジルはポルトガル語、他はスペイン語。

そして、ペルー人とブラジル人がおしゃべりする時は片やスペイン語、片やポルトガル語で普通に話しています。「ポルトガル語、スペイン語ととてもよく似てるからそれで大丈夫!」と言ってたけどちょっと不思議。実際どの程度違うんでしょうかね。

会話の折りに、「◯◯はポルトガル語で△△って言うんだけどね...」に続いて「スペイン語では□□って言うんだよ」と教えてくれるコトがあるのですが、似てるって言う割に結構違いがあって、しかも、どちらも知識として完全な白紙状態でいっぺんに教わると、どっちがどっちだかすら解らずに、「こんにちは」はスペイン語だけど「元気ですか?」はポルトガル語で覚えちゃった、という究極のチャンポンに陥ります。

せっかくだから、この機会にどちらかの言葉は軽く勉強しようと思い、当初は「二択だったら個人的にはスペイン語かなぁ」と思ってたのですが、身近なのはポルトガル語話者なので、これではチャンポンな混乱が促進されるばかりだと思い、スペイン語は当面諦めました。ある程度ポルトガル語が解った後ならスペイン語の覚えも早いんだろう。きっと、多分。

ブラジル人との交流はゆるゆる続きそうな予感なので、そのうちまた何か書くかもしれません。当面の予定としては、週末に更なる大量の南米人に囲まれる...かも。

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■今回のどこかの国の音楽

□Daddy Yankee "Gasolina"
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ボリビア人のクラブでかかってたレゲトンです。レゲトンを知ってる方にはとっくに流行遅れだと思いますが。

レゲトンって、北米のヒップホップインスパイヤな南米音楽(?)なのですね。プエルトリコ源流らしいです。

はじめてレゲトンってものに触れた時は、ジャンル名からレゲエの流れの何かかと思いきや、何ともまぁ、お下品で破廉恥で不愉快な! ......と思いつつ、なんとなく欲望に真正直な感じもあり、ジャンクフードを食べるが如くな誘引性もあったり。こればっかり聴くにはお腹いっぱい感がすごいのですが。

このDaddy Yankeeさんは結構メジャーどころなので、動画もそこまでひどくないですが、大概のレゲトンのPV、なんというか欲望直結的でなかなかに破廉恥です(笑)。

ちなみにお店で上の曲を聴いた時、下の子供レゲトンとごっちゃになって思い出したのでこちらも。ワタシの中では歌詞の空耳のせいでこの曲のタイトルはずっと「ぽんぽこりん」だったので探すのに難儀しました。

□Miguelito - "Montala Remix"
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ちっちゃくて味噌っ歯で変声期前だけどしっかり悪っぽい(笑)。

【browneyes】 dc@browneyes.in
日常スナップ撮り続けてます。
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□デジタルちゃいろ:今回のどこかの国の音楽プレイリストまとめ
└< http://j.mp/xA0gHF
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南米づいたまま、先週末は地元の七夕祭り。一応日本の三大七夕祭りらしいのですが、震災後の昨年、規模がやや縮小してたのがショックで、今年はどんなものかと思いましたが、規模は据え置きなものの、結構な観光客動員だったような気がします。大きな笹飾りのメインストリートと屋台のエリアはぎっしりの人でなかなか身動き取れず。件のブラジル料理屋さんも屋台でシュラスコ売ってました。美味しかった!