デジタルちゃいろ[30]身の回りの若者の就職難事情
── browneyes ──

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●聞くだけ相談所

振り返ってみると、ここ一年くらい、色々な女子から相談を受けるコトが多かった気がします。仕事に恋に。昔から面倒見が決していい方ではないのに、気づくとこういう役回りは多いのですが、最近はやたらと集中した気がします。

こうやって、一部をネタにはさせてもらっちゃおうなんて目論みつつ言うのもナンですが、割と口が固いせいか、メンバーの固定してしまったコミュニティに属さずにフワフワしているせいか、その両方のせいか、所謂ロバ耳の穴としては都合がよいんでしょうかね。

中でも、とある子の相談には回数的にも時間的にもかなり費やした。芸術系大学は卒業したものの、就職出来ないまま。一体これからどうしたらよいのだろう、という進路の相談。姉妹というより、もはや母子とも言える勢いの年齢差。

本人に期待をよせてしまう保護者でもなし、かと言って道を示せる成功者でもなし。むしろそんなフラットな状態のオトナに話がしたかったのか、彼女にとってのワタシは、大別すると似てるタイプのようなので、参考にしやすそうに見えたのか、真意はわかりませんが、本人からSOSが来た際には取り敢えず受け止める、程度で聞き役に。




●芸術系大学の就職活動

芸術系大学卒の進路といえば、前職でも苦労してたバイトちゃんがいた。職場に女子が極端に少ない上に、自分の直轄の制作系なので、会社を去るまでは、ワタシが実務も精神面も面倒を見る役回りになっていた子だ。バイトを始めた時、彼女は芸術系大学の2年生だった。翌年が就職活動。

就活前から「美大の就職率なんて」という絶望風をビュウビュウ吹かせていたバイトちゃん、3年生になって早々から就活開始。当初はメーカーのデザイン部門への就職を希望していたものの、思うように行かず。

他部署の一般大学の同学年バイトちゃんが次々に内定を取り付ける中、いつまでたっても決まらない。落ち込む、焦る、泣く。

彼女はバイトの中でも生真面目で緻密なタイプで、当時はもちろんバイトレベルではあったものの、勤務歴が長くなるにつれ、作業によってはそれなりに頭数にカウントして任せられるようにもなり、伸びしろはまだまだある。そこで、ワタシと上司とで、卒業後そのままココに採用でもいいんだよ? と打診。

三度の飯よりサイトの構築が好きな割に、仕事と趣味は分離したかったようで、ウェブ制作での就職は考えていなかったバイトちゃん。志望だった業界での就職が果たせなかったのが、自分の中で自己否定に向かってしまうほどの自信喪失に繋がってしまっていたようで、答えはなかなか出ない。かなり悩んだ結果、そのまま会社に留まるコトに。

彼女が正社員になるのを待たずにワタシは退職してしまったのですが、あれから約2年、現在の彼女を見ていても、仕事は楽しんでる様子。落ち着く所に落ち着いたんじゃないかな、多分。同じ大学の同級生の就職内定率はかなり低いまま卒業に至ってたようでした。

●地方女子の上京

またまた別な子のケース。ほぼ間接的にしか見ていない子なので、若干ボンヤリした事例になってしまいますが、地方で芸術系大学を目指すも挫折して、何もないまま20歳前に上京。写真も文章もそこそこうまいアート志向の女の子。

基本的な能力は割と高めなので、それを見込んで彼女の思う理想形を支援してあげよう、という人もいなくはなかったのですが、理想に対しての本人のこだわりと要求はかなり高く、妥協の余地がほとんどないため、そちら側で安定する時期は少なかったようです。

妥協のない理想が持てるのは大事だし、それ自体が稀有なコトだとは思うのですが、感覚が優れてるばかりでどう磨くかについてはあまり頓着してないし、現時点では聞く耳を持つだけで自己が崩壊してしまいそうな感じなので周囲もどうしようもない。

暮らしも大変な割に、理想に沿った仕事が叶わないと、そこまで堕ちなくても、という極端に破滅的なナニカに近い職業で安直にお金を得ようとしてしまう。自己の人生をアートにつぎ込んでる感覚なんでしょうかね。

まぁ、若いうちしか無茶は出来ない......とは思うものの、無駄に己を削り過ぎてる気はしました。それを糧に大成出来るなら儲けものなんでしょうけど。

彼女の場合、個人的な問題由来な面が多分にあるので、この世代全般の参考にはなりませんが、微妙なラインの能力の高さで原石のまま在るばかりの現状は、彼女にとってはマイナスに働いている気がします。なまじ能力が高いが故の不幸なんですかね。かなり「もったいない感」を感じるケース。

●もういっそ、派遣でよくない? あれっ...。

振り出しに戻って進路相談女子。紆余曲折を経て、短期的な将来の目標を定め、それに向かって現在は、一年以内に可能な限り資金稼ぎをせねばならない。稼いだら次の行動が待ってる。そこまでの気持ちは定まった。しかし仕事がなかなか決まらない。

卒業から一年経過するまでの間は、卒業後の就職先があろうがなかろうが、入社して即、会社を辞めようが、まだ「新卒」扱いなのですね。知りませんでした。彼女の場合、ハロワに行ってもそれが足枷になってしまっている様子。

短期雇用を希望すると「まだ新卒で経験も無いんだから、きちんと長く働ける先で......」と長期雇用の求職を暗に促されるらしい。雇用側も、自社で教育から始めるなら長く働ける人材を求める。

まぁ、そりゃ尤もなのだが、新卒を育てるような余裕のある長期雇用自体がなかなかない、という矛盾を孕んだ世間の状況の中でもその図式は変わらない。

本人的にも、当面は雇用形態よりも条件重視になったし、イマドキは実務で覚えずともOfficeの基本操作も、大学でひと通り習ってるらしいし、なんなら派遣会社もあたってみたら? 一般大学でもそういう子、増えてるんでしょ? とか言ってみた。

その後すぐに彼女は派遣会社何社かに登録して、いくつもの仕事にエントリーを始めたようだが、やっぱりなかなか決まらない。びっくりするくらい難航してる。ハロワ程ではないにせよ、ここでもやはり、新卒なんだから、的なものは出てきているようだ。なるほどそこは盲点だった。

自分も採用側にいたのだから、ちょっと考えれば判ることだったのだが、仮に必要なスキルが満たされていても、「実務経験」という名の担保がゼロでは、直接雇用ならさておき、即戦力を提供する派遣は、確かに紹介しづらいのかもしれない。

ワタシ自身、これまで派遣の雇用形態でもいくらか仕事はしてきた。が、大きな妥協もなしにそこそこの仕事が見つかるというのは、こんなにスチャラカであっても、知らぬ間に重ね続けてきた実務経験あってこそなのだね......。

結局、二か月かけてようやく派遣の仕事が見つかったようだ。当初思い描いてた職種よりは、かなりの妥協が必要な職場になったようだけど、長期的な目標がまだ曖昧な中、今のうちにオフィスっぽい所での体験をしながらお金を稼いで短期目標を叶えるには十分かもしれない。

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今回挙げた子達は全員、ややアート寄りなので、世間一般には当てはめられないとは思うけど、将来の夢や目標があろうがなかろうが、まっさら白紙の新社会人になるべく学んだり成長したりのしやすい環境って、自分の頃と比べるとかなり失くなってしまってるのかなぁ、というコトを折りに触れ感じます。

一般の高卒・大学卒だと違った道は拓けてるんでしょうかね。知り得る周辺を見渡しても、あまりそういう感じはしませんが。まぁ、一様にそういう機会があるコトがよいコトなのかもわかりませんけどね。

最近、政権交代もして、若干円安に寄りはじめて、そろそろホントに景気回復か、なんて話も聞こえてきます。だとよいのですが。既に長い間「社会人になる」というフェーズの環境が不遇な世代があまりに長く続いてる気がします。その世代が中間層になる時代に、経験と能力の空洞化が生じて、どこかに新たにしわ寄せや歪みが、みたいな長期的悪循環がちょっと気がかりでもあります。

■今回のどこかの国の音楽

□Edinburgh Royal Military Tattoo 2012
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もう10年以上前に、訳あってスコットランドに妙な関わりのある時期があったため、せっかくなのでその頃は、無闇にバグパイプの曲を聴いてみたりしてました。

昨今はすっかり南亜細亜に心囚われてしまったので、ハードディスクの肥やしになってたのですが、当時の音源がまだいくらか残っていたので、「おれのバグパイププレイリストが火を噴くぜ」と久しぶりに聴いてみましたが、意外に今でも嫌いじゃない(笑)。

上記はスコットランドで今でも脈々と、そして王道のように毎夏に行われるエディンバラでのミリタリー・タトゥーでの、2012年のフォーメーション演奏。曲もトラッドだし、マーチング・バンドなので正統派なかっこ良さですね。

当時はYouTubeもなかったし、ワタシのググる能力も低かったのでそんなに詳しく知れずに終わりましたが、もっとイマドキなのはないものか、と探してみたら、最近はこんなイマドキバンドもいるようで、イベントの他に、結構ストリートで演奏とかしてるみたいです。

□Clanadonia "Hamsterheid"
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キルトの下は、ノーパンが正式、という話を聴いて以来、そうは言っても昨今はパンツ履いてるんでしょうけど、キルトのおじさまを見ると嫌な連想をしてしまって複雑な心境になります。

【browneyes】 dc@browneyes.in
日常スナップ撮り続けてます。
アパレル屋→本屋→キャスティング屋→ウェブ屋(←いまここ)
しつつなんでも屋。
□立ち寄り先一覧 < http://start.io/browneyes
>
□デジタルちゃいろ:今回のどこかの国の音楽プレイリストまとめ
└< http://j.mp/xA0gHF
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週末、「どこかの音楽」でも紹介したことのあるパキスタン映画「BOL」の希少な日本語字幕上映イベントに行ってきました。おおまかなストーリーは知ってたものの、敢えて周辺予備知識はあまり仕入れず観たのですが、舞台はラホール。

パキスタンも最近は都市部の近代化がすごい勢いで進んでいると聞いてましたが、ラホールの低層住宅の屋上から臨む、ちょっと土埃色のラホールの町並みは、ワタシがあの辺を訪れた10ウン年前とあまり変わらず、ちょっとグッときました。あの風景を再度自分の目で見られる時はあるのかな......。