装飾山イバラ道[116]ショールーミングがターミネーター化する未来
── 武田瑛夢 ──

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実店舗では買いたい商品を手に取ってみるだけで、実際はWEBショッピングで安い店を検索して購入する人が多いという「ショールーミング」問題。小売店にとっては深刻な問題でも、既に多くの人がこの買い方をしているのではないだろうか。

昔の高級家電の買い方は、実店舗を何店か見回ってから一番安い店で買う方法が多かった。だから、秋葉原などの店が集合している電気街が一番便利だったわけだ。

商品の価格は店舗の手描きPOPで随時更新されるので、何度かぐるぐる店回りをして、帰りがけに手描きPOPが赤文字で書き直されているのを発見して購入を決めたりしたものだ。もちろん根切り交渉がうまい人もいただろう。

ただ、全店舗を同時に見ている訳ではないので、この頃は「自分が知りうる範囲の底値」でしかなかった。

今はスマートフォン片手に、お気に入りの家電ショップのブックマークから該当商品の価格を確認すればいい。あらかじめ安い順に並べてくれてる「価格.com」に商品名を打ち込むのも良いし、もっと良い売れ筋商品をみつけて突然購入対象商品を変えることもある。

さほど労力もかからず、簡単に「比較」できる時代なのだからしょうがない。インターネットでの「ほぼ正確な底値」を多くの人が知ってしまう時代だ。

私も最近、トイレに棚を取り付けるために「電動ドリル」を旦那さんと一緒に工具売り場に買いに行った時に、まさにこの状態だった。いろいろと手に持って重さや強さを比較して、購入機種が決まった時に「ちょっと待って」と、結局WEBを探しちゃったのである。

検索の結果、その日は手ぶらで帰ってきた。店内にお客さんが多数いて楽しく商品を選んでいる風に見えても、手ぶらで帰る人の多い時代なのかもしれない。




●安さと引き換えにするものは?

しかし、価格が最も安いところから皆が買うわけではなく、「価格」+「送料」+「保証」+「取付雑費」などを見た上で「店の信頼」を最重要項目として比較して決めていると思う。

私が店舗を決める大雑把なイメージは「5割〜4割引の怪しい店」よりも「3割引の信頼できる店」の方がいいという感じ。故障などのトラブルに合った時によけいに高くついたり、気分を害するようなことは避けたいのだ。

私もこのコラムで海外通販のお得さを何度か記事にしたけれど、海外通販歴が長いとやはり今までに何回かのトラブルもあった。一度、カード明細の書類にびっくりする額の不正請求があったのだ! 私は一度も使ったことがない、海外ではメジャーな電子マネー経由の請求だった。

次の日に恐る恐るカード会社に連絡すると、「この件はこの電子マネーの会社から連絡があり、不正なものとして確認済みで、引き落とされない請求なので大丈夫です」とのこと。

こっちはお金取られるかとドキドキしたので、全然大丈夫じゃないんだけれど、そういったことならすぐに連絡をくれるのが普通ではないのだろうか? 安心しつつも無駄にドキドキしたので、解せない気持ちが残る。

請求はなくてもカード番号などが誰かに知られた恐れがあるので、カードの再発行をすることになって、その後いろいろとめんどくさかった。番号が漏れるようなカードの使い方はした覚えがなかったけれど、トラブル直前になかなか日本では買えないものを海外から購入した覚えがある。

店舗ごとに違う種類の通販のカゴの仕組みや、番号入力の暗号化に序列をつけられるほど詳しくもない。有名ではない小さな店だったので、セキュリティが甘かったのもしれない。やっとみつけた安い店だったけれど、そういった店と関わってしまったのがそもそもの失敗だったのだ。

もしかしたらその店がダメというよりも、途中のどこかで傍受されたのかもしれない。こういうのってオンライン上の傍受なのか、配線がいじられているのか、もっとアナログ的に机の上の管理が甘いのか、こちらはいくら考えてもわからないものだ。

その時はカード作り直し程度の被害で済んだので良かったけれど、引き落とされた後に気づいたとしたらもっと大変だったことだろう。

こんなこともあって海外なら「大手」や「ブランド」の通販サイトが良いとつくづく思っているけれど、何を持って「大手」や「ブランド」とするかは実はかなり曖昧だ。何となく有名だと安心する以外、これと言って根拠はない(笑)。

●レビューで判断はつくのか

日本でも通販サイトをいくつか使っているけれど、店舗のレビューや商品レビューは必ず読んでから購入している。もちろんサクラもいるかもしれないけれど、レビューに実感がこもっているかどうかはなんとなく分かるものだ。

最近では嘘の体験談を掲載するステマも多いので、良い話は鵜呑みにしないように、話半分で聞く姿勢が皆に身に付いている。WEBで価格を比べるのは簡単になっても、実店舗に行けばすぐにわかるような信頼性の把握に、一番に時間がかかってしまうのが辛いところだ。

結局は、昔も今も情報を吟味する力は、店を歩き回って比べるか、WEBを回って比べるかの努力が必要ということだろうか。

IKEAのように通販は一切しないで、WEBで検索できるのは店舗在庫数の目安と価格のみという戦略の店もある。商品のほとんどがオリジナルだからできることだけれど、大手メーカーから仕入れている小売り店は、本当に大変な時代になったと思う。

●実店舗の信頼性

WEBショップのショールーム代わりに使われて辛い実店舗だけれど、実際はまだまだ勝ち目はあると思う。以前書いたけれど、私が昨年末にエアコンを買ったのは実店舗だった。それはWEBで検索した最安値をショップ名と共に伝えた結果、さらにそこから値引きされたのが決め手だった。

ライバルの情報がWEB上で晒されている以上、店側も最安値はすぐに検索できる。WEBページはその時点では止まっている情報なので、その条件をお客さんのいるその場で少しだけ上回ればいいだけなのだ。

そうなれば、お客はWEBページよりも目の前で話をしている店員さんを信用する。見ただけの情報よりも、話したことがある人が勝つに決まっている。

そのうちに、ターミネーターのシュワルツェネッガーのメガネみたいに、家電店で商品を見ると、価格表示のところにWEBの最安値がダブって表示されるようになると便利だな。

なんて残酷な発想だろう。実店舗がメガネの人だらけになった後は、最初からWEBの価格情報が電光掲示板みたいに店の中に流れるようになるかもしれない。それとも、電子タグと連動か? まぐろの価格がセリで決まるように、誰かが掲げた数字を皆が追いかける未来が来るのだろうか。

【武田瑛夢/たけだえいむ】eimu@eimu.com
装飾アートの総本山WEBサイト"デコラティブマウンテン"
< http://www.eimu.com/
>

マツコの深夜のテレビで見た、地方のスーパーでお取り寄せというのが面白い。私も飛騨高山から味付けの油揚げを頼んだりした。送料はネックだけれど、物価が安いおかげでいろいろ注文しても、近所のネットストアと変わらないのでハマるー。