[3459] クールジャパン反対〜!!

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《「ぱらぱら」がやりにくいんだよ》

■Dの憂鬱[21]
 電子書籍の「なんとなく面倒」を探る
 笠居トシヒロ

■グラフィック薄氷大魔王[341]
 クールジャパン反対〜!!
 吉井 宏




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■Dの憂鬱[21]
電子書籍の「なんとなく面倒」を探る

笠居トシヒロ
< https://bn.dgcr.com/archives/20130410140200.html
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まいど、笠居です。4月に入り、もうすっかり春の気候になってきましたね。先日は爆弾低気圧とやらが猛威を奮って、関東以北はエライことになっていたようですが、関西は幸いにして「雨風強いなー」くらいですみました。

とはいえ、週末に予定していたお花見がこの雨でポシャってしまい、ついでにテニスコートのキャンセル料も払わないといけないのでかなりガッカリな状態だったことは間違いないですが。。。(´・ω・`)

さて、「グイン・サーガ」のほうは、とうとう60巻を突破してしまいました。最初のうちは一冊200円だったのが、10数巻を超えたあたりから一冊400円になり「してやられた」感が半端なかったのですが、もう後戻りできません。すでに2万以上突っ込んでいる格好になってしまいました。まぁ、それでも単行本を買うよりは、随分安いんですが。。。

そんなこんなで(グイン・サーガしか読んでないですが)Kindleでの読書というのが、ある意味生活の中にひとつのスタイルとして根付いてきたようなわけですが、これだけはどうにも紙の本のほうがいいなあと思うこともちょこちょこ出て来ました。

主にというか、元凶(は言い過ぎか)となるのは、やはり「ぱらぱら」がやりにくい、という一点につきます。

例を挙げると、とある登場人物の背景というものが物語の後半になって明らかになってきた際に、その人物が登場した時の様子をもう一度読み返したい、と思ったとき、ずっと以前に読んだ巻を取り出してパラパラとページを捲りそのシーンを探す、といったことがやりにくいわけです。とくのこの「パラパラとページを捲り」ってのがやりにくい。

まぁ、そこはデジタルデータですから、検索機能はちゃんと付いています。検索窓に人物名を入力すれば、「ぱらぱら」なんてやらなくてもあっという間に該当箇所を見つけてくれます。現在開いている一冊の中はもちろんのこと、ホームに戻って検索をかければ、書庫に入っているすべての本について串刺し検索が可能です。

「なんだ、それじゃあとくに問題ないじゃん」と思われるでしょうが、これがね、なんとなく「やる気が起こらない」んですよね。なぜかといわれると困るんですが、ほんとに「なんとなく面倒」なんです(^_^;)。

電子書籍というのは、最初のページから順に読んでいくには何の問題もないんですが、この「パラパラ」で表す行為がやりにくい(というか面倒)です。ランダムアクセスもそうですが、興味の薄いところを読み飛ばす「ナナメ読み」もなんとなく面倒で、ついつい「しっかり」文字を追ってしまいます。何なんでしょうね、この「なんとなく面倒」な感じは。

そういう意味で言うと、Webページもそんな感じが若干ありますね。デジタルデバイスというのは、表面に見えている分量の情報しか認識できないからでしょうか、数ページある全体を順に閲覧していくのには問題なくても、肝心なところ(自分がほんとうに必要としている情報)だけを「拾い読み」するのには、なんとなく向いていないのではないか、と最近思いだしています。

Webのページをデザインする際、これまでの印刷物的なレイアウトに倣って、A4サイズ一枚分くらいの分量の情報をWeb一ページに収める、というのが「見栄えの良い」ページを作るためのひとつの基準としてあったと思いますが、じつは読み物として情報を伝えるやり方としては、あまりよい方法ではないのかもしれません(熟考の末の結論じゃないので、あくまでも「かも知れない」レベルですが)。

では、ひとくくりの情報を一枚のながーいページに収めるほうがいいのでしょうか? 長いページは「見た目がダサい」とか、「読み込みに時間がかかる」とかネガティブな印象がありますが、じつは情報を複数のページに分割するよりも、閲覧性の面では優っているのかもしれません。

検索という点で考えてみると、複数ページにわかれている情報を串刺し検索しようとすると、サイト内検索を使うわけですが、長い一ページに全ての情報が詰まっているのであれば、ブラウザのページ内検索が使えます。

検索語はあくまでキーワードであり、ほんとうに必要なのはそのキーワードの前後にある「文章」です。どちらの検索でより素早く、必要とする情報を手に入れられるのかと考えれば、自ずと「長い一ページ」に軍配が上がるでしょう。

もちろんこれは「とある一塊の情報」を分割するか否か、という問題であって、何でもかんでもやたら長いページにすればいいというものではありません。有名な「楽天メソッド」とも、少し角度の違う問題かと思います。

楽天メソッドについてちょっと説明しておくと、これは、楽天に代表されるECサイトやアフェリエイトブログ、ランディングページなどでよく使われる手法で、以下のような構造になっています。

1)商品の画像を掲載。
2)訪問者に対して「あなたには○○○という悩みがありませんか?」と問いかける。
3)訪問者に対して「この商品があればあなたの悩みを解決することができる!」と提案する。
4)商品の魅力を文章やデータを使ってアピール(ココが大量w 且つ繰り返しアリ)。
5)実際に商品を使い、悩みを解決できたというユーザの声を掲載。
6)購入フォーム、もしくは申し込みページへのリンクボタンを設置。

これだけのものを一ページに盛りこむので、当然のことながらながーいページになりますし、ハッキリ言ってこのようなページ構造を好きだという人は殆どいません。少なくともオレの周りでは(制作者ではないコンシューマも含め)このようなページが好きだといった人は一人もいません。

にも関わらず、楽天自身の調査データによると、こういったページは「長ければ長いほど売れる」んだそうで、楽天市場に出店する店舗に対して、楽天ではこういう作りの長ーいページ構成を推奨してるんだそうです。びっくりデス。

ちょっと脱線しましたが、ここまで書いてきたことをまとめると、デジタル化された文章の弱点というか、馴染めない部分(もしくは人が感じる不安要素)は、「一覧性(ひと目で全体が見渡せること)に欠ける」ところじゃないのかな、と思われます。

まず、どの程度のボリュームかが判りにくい(紙の書籍なら本の厚みで全体のボリュームを推し量ることができる)。いま全体のどの辺りを読んでいるのかが判りにくい(紙の本ならこれまた残りのページ数というか厚さで判断可能)。

先ほどの「前の文章を読み返す」にあたっても、「ああ、前半4分の1くらいの所で出てきたよね」といったように、おおまかなアタリを付けて検索することがやりにくい。

まぁ、実体を持たないデジタルデータなんだから当たり前っちゃ当たり前なんですが、「バックリと全体を把握しづらい」というのが、電子書籍の「なんとなく面倒」を醸し出す要因になっているのではないでしょうか。もう少し、インターフェイスに改善が加えられれば、ある程度の問題は解決してきそうな気もするんですけどね。。。

【笠居 トシヒロ/WEBディレクター、デジハリ大学院客員教授、京都嵯峨芸術大学講師】
< http://www.mad-c.com/
> < kasai@mad-c.com >

最近なんか妙に疲れがたまります&抜けません。忙しいとか遊び過ぎとか、まぁ理由はあるんだと思いますが、本格的に老化進んでるんだろうなあ。。orz


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■グラフィック薄氷大魔王[341]
クールジャパン反対〜!!

吉井 宏
< https://bn.dgcr.com/archives/20130410140100.html
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また「無報酬」だってところについ反応しちゃうけど。こないだ天王寺区タダ働きデザイナーの件があったばっかしなのにな。いや、ボランティアならそれでもかまわんと思うけど、今回は「日本中の優秀なクリエーターにひと肌脱いでもらうべきだ」、べきだ、だよ。べきだ〜。

500億円投入って、ハリウッドの大作映画2〜3本分の予算で何か効果を期待するほうがオカシイ! だいたい、日本アニメは激安放映料で繰り返し世界中で放映されてた中で育った人たちが、その「ありふれた安物」の中に価値を「発見」したんじゃん。ジャパンはクールだぞって自分からねじ込んでどうする?? シラケるばかりだと思う。

何を危惧してるかというと、外国人が見て超ダッセー動きかもしれない「クールジャパン」のくくりに、僕らも含まれちゃうんだぞ! がんばって自力で世界進出しようとしてる僕を含む日本のアーチストたちが、その一味と否応なく思われてしまうのはイヤだーー! 「クールジャパンだとさwww」って広まっちゃった後、どんな顔して世界に出て行けばいいんだ?

もちろん「クールジャパン」はマンガやアニメやゲームに限らないわけだけど、牽引力の大きな柱ではあるだろう。国からそんなもん文化じゃないと冷遇され無視され続けたからこそ、ここまで栄えたのだー。少なくともその文化の基礎を作った一人であるはずの手塚治虫に国民栄誉賞をあげてからの話だっ。

だいたい、「クールジャパンはトニー・ブレアがやったクールブリタニアのパクリ」って先日知ってひっくり返ったわ。もう全部なしにしろ〜〜〜!!

イギリスには「かつて世界を制したのに没落した国、でも音楽やファッションで世界を席巻しててカッコイイ!」というイメージがあった。クールブリタニアとわざわざ言い始めたのは90年代半ばなのね。グラフィックデザイン以外の分野で90年代に何か目立った動きがあったかどうか、記憶にないなあ。

日本も同じくブイブイ言わせたのに没落したけど、アニメやキャラクターをはじめ料理やファッション、いろんな文化で世界を席巻。外国から見た今の日本の印象って、たぶん僕が80年代くらいに抱いていた「イギリスってカッコイイ!」と重なるんだろうな。

日本のコンテンツの輸出額は2008年以降激減してるらしく、「クールジャパン」自体もう手遅れと思われるけど、この分野での没落をなるべく遅らせるには、やはり国が何かやらなきゃいけないのかもしれん。

で、クールジャパンって具体的に何やろうとしてるわけ? と思って、Wikipediaのクールジャパンの項のリンクの「日本ブランド戦略」のPDFを見ると、けっこうまともなこと書いてあるじゃん。「海外から人材受け入れて将来の担い手として育成」まであったりする。志はまともでも、実際に動くとグダグダになっちゃうのかなあ。

※余談。先週、「クールジャパン」「無報酬」に関連して、「イラストレーターカタログ本で掲載料を取られる、無報酬を通り越して払って載せてもらうのか! ひどい」って話が広まった。「いや営業用カタログ本に掲載料を払うの当然」って実例を挙げて抵抗を試みるも、あまりの浸透の広さにぐったり。しまいにゃ「お前はいったい何と戦ってるんだ?」な気分に。わかってる人はわかってるんだから放っておこう、スルー力が試される。

「カタログ本掲載料商法」を支持するわけじゃないけど、権威とか実績とか関係なしに、お金さえ払えば載せてくれるカタログ本は、むしろ若い人の味方でもあるんだよ。 「お金の前では平等」を否定すると、昔の年鑑みたいに「権威」しかなくなっちゃうよ。

●Expression終了

某所でExpressionの話が出た。Microsoftに買収されて以後はほとんど存在感なくなっちゃってたけど、どうなったかなと検索してみたら、なんと! 昨年末に終了・無償化してた!

・「Microsoft Expressionが終了へ、「Expression Web」「Expression
Design」は無償化[窓の杜]
< http://www.forest.impress.co.jp/docs/news/20121221_579871.html
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Fractal Designの頃にずいぶん入れ込んだグラフィックソフト。ドロー系なのにペイントっぽく描ける、というよりも、ペイントソフトは将来は解像度に左右されないこのような形になる! と思ってたソフトです。

昔、Painter風に描こうとして、全ストロークが表示されるのに数分かかってあきらめたことがあるのでした。マシンが高速化した今なら、相当複雑な絵を描いても大丈夫にちがいない。

Expressionのストロークの自由自在さは、15年後のAdobe Illustratorでさえ追いついてない部分が多いのです。また、WebやアニメーションでもFlashをひっくり返す存在だったかもしれなかった。いろいろもったいないなあ!

●銀座と日本橋の三越のショーウインドウに吉井作品

まだまだ展示されてます。銀座三越の館内展示は、地下1階〜5階まで、エスカレーター周辺にあるのでわかりやすいです。日本橋三越の館内展示は銀座店に比べて少し地味ですが、やはりエスカレーター周辺にあります。

< http://yoshii-blog.blogspot.jp/2013/03/blog-post.html
>

【吉井 宏/イラストレーター】
HP < http://www.yoshii.com
>
Blog < http://yoshii-blog.blogspot.com/
>

結局、Twitterって食いつきやすいネタが無限に並んでツッコミを待ってる状態なもんだから、面白すぎるし心が持って行かれるし、良くないんだよな〜。ノイズだよな確かに。ちょっと自制しよう。

●iPhone/iPadアプリ「REAL STEELPAN」ver.2.0がリリースされました。
REAL STEELPAN < http://bit.ly/9aC0XV
>
●「ヤンス!ガンス!」DVD発売中
amazonのDVD詳細 < http://amzn.to/bsTAcb
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編集後記(04/10)

●読売新聞4/7トップ記事によれば、厚生労働省は「メタボリックシンドローム」と判定された人の医療費が、その他の人に比べ、平均で年約9万円高くなっているとする調査結果をまとめた。政府は、国民の健康増進と医療費抑制のため、6月にまとめる「健康・医療戦略」で、メタボと判定される人を減らすための施策を盛り込む考えだ、という。わたしは考える。一番いいのは特定健診(メタボ健診)をやめることである。

この健診は生活習慣病の予防と医療費の抑制を目的に、2008年にスタートした。そもそも腹囲が男性85センチ、女性90センチ以上という基準に根拠はないし、一方で高血圧や高血糖などの危険因子を持っていても、腹囲が基準以下ならメタボと見なされないという、強烈にヘンテコな基準なのだ。メタボの判定基準がいい加減だから、メタボに判定される人が増え、医療費の抑制どころか増加を呼ぶ。

生活習慣病なんていうが、老化を美化した用語だろう。現在の医療は老化と死の予防なんかできない。このナンセンスな健診は医療産業界の、健康に暮らしている人の中からわざわざ病気を掘り起こ起こし、治療し、業界が今後も繁栄するためのシステムではないだろうか。

健診が病人を生む例として、血圧の基準値があげられる。基準値そのものをどんどん下げてきたので、健診をやれば「2人に1人は高血圧」ということになった。2000年に正常範囲を140-90と引き下げたら、高血圧患者が2000万人以上も増えた。メタボ健診ではさらに下がって130-85である。その数値の根拠はない。血圧降下剤の売り上げは上がる一方だ。

当日の読売の2面下には宝島社『どうせ死ぬならガンがいい』の大きな広告が掲載された皮肉。近藤誠氏はその本で「それにしても健診・検診は病人を作り出す、実に優れたシステムですよ」「医者不足と言われるのも、意味のない健診・検診をいっぱいやっているから人手をとられて、本当に必要な医療分野に医者がまわらないという事情も大きい」と書いている。わたしは昨年のメタボ健診で、堂々の「メタボ予備群該当」と判定された。フン。(柴田)


●ネタなし。やりたいこと、買いたいものがいっぱいある。これらの仕事の区切りがついたら、思いっきりやるんだ。iPhoneのMailboxやOmniFocus、ToodledoにDueなど全然使えていない。整理できていないものがいっぱい。机の上も頭の中もごちゃごちゃ。ほんま、あほやで。 (hammer.mule)