グラフィック薄氷大魔王[359]「WACOM新製品」「苦痛が快感」など小ネタ集
── 吉井 宏 ──

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●WACOM新製品を見てきた

ヒカリエのコワーキングスペース「Creative Lounge MOV」でWACOM製品体験会をやってたので行ってきた。OS入り13インチCintiqと筆圧つきiPad用ペン。

< http://www.wacom.com/jp/ja
>

「Intuos Creative Stylus」は筆圧付きのiPad用スタイラスペン。Bambooスタ
イラスのワンランク上だからintuosかー。軸が長めってところがイイ。筆圧の利き具合は、前モデルのJot Touchよりぜんぜん自然。ぐいっと丸を描いてちゃんと筆圧が効く。

ちょっと筆圧弱めな人だとしんどいかな。ペンを長く持って描くと筆圧効かずに線が出ないこともある。でも、従来の筆圧なしは不自然だったんだなと思い出す感じ。僕がよく使ってるArtStudioで使える。いいかも。

ただし、日常的にiPadで描いたり液タブの代替として使うことはこれからないだろうから、Intuos Creative Stylusは買わないと思う......。っていうのは、OS入り13インチCintiqがかなり良いから!

その「Cintiq Companion」は、Windows8入りとAndroid入りの13インチ液晶タブレット。WACOM製品として初めて、パソコンに接続せず単体で使えるデバイス。Windowsの人なら迷わず前者を選べばいいと思うけど、僕の場合Macメイン。先日のSurfaceのときも思ったけど、パソコンが増えると、いろいろ煩雑になってめんどくさい。




あと、Windows入りCintiqをグラフィック的に満足に使うには、やはりキーボードが必要になる(別売りで用意されてる)。でも、MacBook Airにつないで使うなら、キーボードを用意する必要ないわけだし、Androidではキーボードショートカットは不要。なので僕はAndroid入りを選びたい。

書き味や性能その他は従来の13インチCintiqと同等で、最高性能の液晶タブレットそのもの。ガラス(アクリル?)が薄いこともあって視差も少なく非常にいい感じ。10インチのSurfaceと3インチしか違わないけど、HDでも画面内容は小さくなりすぎず、普通に使えそう。

すげっ! と思ったのは、パソコンからケーブルを引っこ抜いた瞬間にAndroidに切り替わる。お出かけ用のスケッチパッド兼Androidタブレットに早変わり。これは新しい、楽しい! 逆にケーブルを差したら即液タブに。パソコンに接続すると、USBメモリ的にファイルが利用できる。バッテリーは7時間以上もつそうです。

体験会会場で何か描くと、ウェブの「みんなのスケッチライブラリー」に載るらしいってのは知ってたので覚悟して行ったんだけど、しまったなあ。画面に貼るビニールを持っていけば良かった。

ツルツル画面で絵描くのめちゃくちゃ苦手。ペンも普段はグリップを引っこ抜いて細くして使ってるし、ストローク芯を使うから三重苦。それでも一応描いてきた。そのうち載るでしょう。

「みんなのスケッチライブラリー」
< http://tablet.wacom.co.jp/buddy/event/library.html
>

描いたのはAndroidモードで、WACOM純正のお絵描きアプリ「Wacom Creative Canvas」を使った。出荷バージョンじゃないベータ版だそうで、肝心なところにいくつか不具合があったけど、ちゃんと動けばなかなか使えるスケッチソフトのようです。レイヤーもあるし、投げ縄選択切り取り移動とかできちゃう。

もう一つの新製品が「Bamboo Pad」。基本的にはマルチタッチのトラックパッドで、ペンも使えるというもの。事務用品に近く、グラフィックの人が本格的に使うものじゃなさそう。そういえば最近、いろんなショップのカウンターに、WACOMのサイン用タブレットを見かけるね。

......ここまで書いて、あれええ? 従来のBambooってなくなっちゃったの?! intuosになってる? で、従来のintuosはintuos Proに。......という9月6日の製品ライン大幅刷新を知った。展示されてたかな? 見逃しとったー!

< http://www.wacom.com/jp/ja/creative/intuos-m
>

●苦痛が快感に変換される?

先週の「大型作品集中制作のボヤキ」まとめの最後に「とか言いつつ、一週間もすぎると、キツかったことをすっかり忘れて早く作業に戻りたいとか思ってる自分に唖然。やっぱアホだわ。」の件。結局、今までもずっとそうだったんだよ〜。フィギュア制作もアニメ制作も究極のキツさなんだけど、後で必ずまたやりたくなる。

今までは「経験値上がったし、次はもっと効率よく早く楽しく作れるに違いない!」と思うから、性懲りもなくキツい作業を繰り返してしまうんだろうなと思ってたけど、さすがにこう何度もやってると経験値とか関係なさそうだ。......で、思いついた。

キツければキツいほど、しんどければしんどいほど、しばらくすると「楽しかったな〜。充実してたな〜。よかったな〜」って錯覚しちゃうんじゃないかと。脳がキツかった記憶を楽しい記憶に変換してるんじゃないか? で、また繰り返さずにはいられない。

「楽しいかと思ったらやっぱしんどかった」っていうキツさもプラスされてさらにキツくなる。そのしんどさを、後で思い返して「すごい楽しかったな〜〜!!またやりたい!!」って思っちゃう悪循環。

これって、マラソンなどキツいトレーニングを含むスポーツの魔力・中毒性ってこれじゃないの? 僕はスポーツするの嫌いだからそういう境地になったことないけど、毎日ランニングせずにはいられない人っていっぱいいるじゃん。脳内麻薬とかまでいかなくても、キツさがクセになって毎日走らないと気が済まなくなってる?

まあいいか。脳にだまされてるほうが都合がいい間は、積極的にだまされてやろうじゃないの〜〜っ。

●風立ちぬ

(ネタバレはしてませんが、先入観を持ちたくない人は読まないようにお願いします)

今さらだけど「風立ちぬ」観てきた。これでようやくレビューとかいろいろ読めるw 平日朝の回なのに7〜8割くらい席埋まってました。ロングランするだろうな。あと「パシフィック・リム」を見ないと今年の夏は終わらない。

「風立ちぬ」、イマイチって人が多いらしくて心配だったけど、すげ〜よかった。映像的見せ場やストーリーの牽引力や盛り上がりが少ないのに、画面や演出が非常に緻密なので一瞬も退屈しない。説明がなさすぎてわかりにくいという話もあったけど、大丈夫だった。子供の頃にプラモデルブームだったおかげで、あのあたりの歴史の最低限の知識もあったし。

なんちゅうか、モノ作ってる人っていうか何かやろうとしてる人全部への、応援歌というか贖罪というか免罪符というか、「そういう人なんで見逃してやってね」というか。

時代や環境は選べないけど、とにかくやりたいことを実現しろ、やるべきことをやれ。全力を発揮できるのは10年しかないぞ。力を尽くしてるか? という。その結果、犠牲や蔑ろになるものもあるかもしれないけどね、と。

何か根詰めてやろうとしてたりモノ作ってる人以外には、何の引っかかりもない映画に見えるかもしれない。主人公、なんてひどいヤツだって思うかもなあ。破滅も何もかも全部受け入れるっていうか、実は周囲がどうなろうとあんまり興味ない。

宮崎駿監督の精神的自伝なのは確かだろうな。「僕はこういうヤツなのです」という個人的映画。こりゃ本人が見たら泣くわ。いろんなもの犠牲にしてきた、すいませんね。という。

勝手に純化・誇張すると「ぜんぜんコタえないやつ、反省しないやつ、悪魔に魂さえ売る最低なヤツであることを受け入れて、理想に向かって走り続けようぜ」って話だと思うw

......すんませんw 「これは僕についての映画だ!」とか思って帰ってきてレューを検索したら、少数ながら同じこと思った人がいるみたいで、なんかうれしくていっぱい書いちゃった。けど、鼻息荒く書くほどに「周囲蔑ろにしてモノを作ってる自分は特別」に陥りそうだったのでかなりカット。危険な映画だなあw

●パシフィック・リム

(こっちは読んでも大丈夫です)

今さらだけど「パシフィック・リム」も観てきた〜〜。日本語吹き替え3D上映。暗さはそれほど気にならなかったけど、2Dでしっかり見えるほうがいいなあ。

巨大ロボットアニメって、マジンガーZと最初のガンダム以外ほぼ見たことないし、ウルトラシリーズもセブンまでしか見てないし、ゴジラとかの怪獣映画もそれほど好きじゃないので、「男の子の夢!!」的な思い入れはあまりなかったんだけど、「究極の実写」で見せられると圧倒されるね〜! 「こういう映像を見てみたかった」のオンパレードは、さすがに響く。

日本の特撮やアニメを、日本では考えられないくらいの予算を使ってものすごいレベルで実写化したらこうなる、というサンプル。日本人が見たくても見れなかった映像。すごいわ。ヘタすると、もう巨大ロボットものも怪獣ものも、これで終わりでいいや。ってくらいの。

誰かも言ってたけど、「特撮だから、アニメだから」っていう、リアルに見えなくても脳で補完したり、様式美だからってことであたたかい目で見たりって部分を完全排除! 情け容赦のないリアル描写! 海底のシーンはちょっと「う〜ん」な部分はあったけど。

芦田愛菜ちゃん、すごかった。泣いて走ったり怖がったりしてるだけなんだけど、圧倒される。愛菜ちゃんが出てくる数分だけでもこの映画を見る価値がある!! あと、こういう映画に「お笑い担当」がいるのってお約束なんだろうけど、科学者コンビがちょいと鼻についた。っていうか、J・J・エイブラムスと杉本哲太に見えてしょうがなかったw

......二本の映画を二日続けて観に行って、ようやく夏が終わったw

【吉井 宏/イラストレーター】
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大型作品制作から帰ってきてずっとやってた仕事がいくつか片付き、先週は映画見に行けるくらいにはゆったりしてた。けど、よく考えたら制作途中の4点とまだ影も形もない2〜3点を、冬までにまた実家制作に行って、今度は完成させなくちゃいけないのだった。ゆったりしてる場合じゃない! 全力で急がないとー。