[3604] アーティストステイトメントを考え抜く

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《剥がしたい脱がしたい》

■武&山根の展覧会レビュー 特別編 
 アーティストステイトメントを考え抜く
 武 盾一郎&山根康弘

■グラフィック薄氷大魔王[371]
 「普通のディスプレイ買った」他、小ネタ集
 吉井 宏


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■武&山根の展覧会レビュー 特別編 
アーティストステイトメントを考え抜く

武 盾一郎&山根康弘
< https://bn.dgcr.com/archives/20131211140200.html
>
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武:こんにちは。昨夜は呑みすぎたww

山:こんにちは! いや〜、呑みました。

武:何時頃まで呑んでたんだ?

山:覚えてない。。。で、年末のチャットはどうするか。

武:まあ、ありきたりの「今年一年を振り返って」だね。

山:去年はやらなかったんやな。2011年の平行世界みたいなん作るか。
< https://bn.dgcr.com/archives/20111207140200.html
>

武:今年はそこまで作り込まなくても良いよ。テキトーにサクサク終わらせましょうw

山:やる気なさそうやな〜。

武:凝ったものが出来そうな気がしないだけです。

山:なんでやねんw じゃあとりあえず、今年を振り返って見て下さい。

武:そうですね。いやあ、忙しい一年だったよ。。まあなんと言っても家をリフォームしたことかな。で、ようやくギャラリーの床も白く塗った。
< http://d.hatena.ne.jp/Take_J/20131209/1386575848
>

山:全部終了したんかいな。

武:厳密にはまだです。階段と二階はこれから、、ってリフォームの話は先月のチャットでも言ってるんじゃん! 他に今年を振り返るとなると……そうか、ようやく展覧会でポツポツと絵が売れたり、「なんとなく絵を売ることがフツーな感じ」になってきたのかな。
トンド展 < http://d.hatena.ne.jp/Take_J/20130807/1375861819
> とか、
ゼロネロ < http://d.hatena.ne.jp/Take_J/20131013/1381639867
> とかで。

地元のカフェ「森の音」での展示もポストカードが売れまして2500円くらいの収入になりましたw
< http://d.hatena.ne.jp/Take_J/20131208/1386579741
>

山:「なんとなく絵を売ることがフツーな感じ」になってきたんやったら、今度は「きっちり売ることがフツー」にしていけばいいってことやね。

武:おお! そうだね! しっかし、ここまでも長い道のりだったよ。「売る」という意味も感覚も分からなかったからなー。

山:もう思い切って会社にすればいいんちゃう?

武:そこまでまだ儲けが出てないw

山:じゃあまず経営理念でも作ればいいやん。

武:経営理念かあ!

●武盾一郎のアーティストステイトメントを添削する

山:絵描きやとアーティストステートメントってことやな。作品の解説文。きっちり作ったことは? アーティストステートメント。

武:前に一回書いた。これ

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僕は線画(ドローイング)を描いています。音楽を内包している「楽譜のような絵」でありたいことから「線譜」と名付けています。「線譜」は直感的な楽譜です。

不協和音が調和する旋律。ミニマムでクラシカル。アンビエントでノイズ。自然発生のような。微生物が増殖していくような。結晶が法則的に形成されてくような。

すぐそばにある「平行世界」。今の宇宙に少しだけ姿を現してる「未出現の宇宙」。風や水や空気、音や時間、目に見えないもの、触れないものに宿る「霊」。「物語り」を感じさせる絵でありたい。「言葉」が産まれる前の状態の絵でありたい。

上下左右の無い世界。始まりも終わりも無い世界。線を紡ぎ刻み重ねて象(かたち)にして行く「線譜」。楽譜はそれを見ただけでは音楽は聴こえません、観る人の心の中で音楽を奏でて貰えたら嬉しいなあと思っています。

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添削してください! あ、でもギャラが出せないか。線譜一点あげる。

<ポイント1◎言い切る>

山:こんなの作ってたんや。そうやな、、わかるようなわからんようなw まあ、言い切ってしまった方がいいんかもね。「そうありたい」ではなく、「そうである」と。

武:なるほど! 自分の絵を買って貰うためにステイトメント書くんだから、言い切らないとだよね。

山:そうやな。希望ばっかり言われてもな。

武:俺が他人のを読んだら同じこと言うんだろうなw

山:ありえる。では書き直していこう。『音楽を内包している「楽譜のような絵」でありたいことから「線譜」と名付けています。』ここの「ありたい」をなくそう。

武:『私は「線譜」を描いています。「線譜」とは直感的な楽譜です。音楽を内包している「楽譜のような絵」です。』どうだろう?

山:『楽譜のような』ってのも、もう『楽譜』でいいんちゃう? 『楽譜です』って言ってるし。

武:『音楽を内包している「楽譜」です。』

山:『楽譜です』が被るね。

武:あ、『音楽を内包している絵です。』

山:ふむ。

武:『私は「線譜」を描いています。「線譜」とは直感的な楽譜です。音楽を内包している絵です。』

山:『「線譜」とは直感的な楽譜であり、音楽を内包している絵画です。』

武:おお。

山:できたやん。

武:素晴らしい!

<ポイント2◎短くする>

山:じゃあ次。『不協和音が調和する旋律。ミニマムでクラシカル。アンビエントでノイズ。』よくわからんw

武:リリカルでしょ? けど、要らないってことか。。。

山:かもなw 『不協和音〜始まりも終わりもない世界』、までをまとめよう。『「物語り」を感じさせる絵でありたい。「言葉」が産まれる前の状態の絵でありたい。』これは要らないかな。

武:ふむ。

<ポイント3◎問い直す>

山:『自然発生的に微生物が増殖し、結晶が法則的に形成される』ことが、なぜ美しいのか? なぜそこに美しさを感じるのかを、考えてみたらどうやろ。

武:数学が隠されているから。法則性と調和があるから。あと、人為的、作為を、極力消したい。

山:なるほど、じゃあそのことを伝えた方がいいんかもね。

武:無意識に描く、オートマティックに描く。という画法を説明したいんかも。

山:無意識を使ってオートマティックに描く事が、なぜ法則性と調和に繋がるか、やね。

武:無意識は自然や宇宙と繋がっている。意識は人為や作為と繋がってる。この「無意識が宇宙と繋がってる」という仮説に基づいて自動筆記法で無意識的に描いてるんだよな。間違ってるかも知れないんだけどさw

山:まあね。でも要は、「線譜」とは一本の線から始まり重なっていき、最終的に調和で終わる物語、ってことだ。

武:はい。例えば、カビが増殖して飽和すると増えなくなる、ってのが「調和」ってことだろう、と。

山:あ、最後の方に書いてるな。『線を紡ぎ刻み重ねて象(かたち)にしていく』って。これが「線譜」の説明としてはシンプルかな。

武:てことはそこだけでいいのかな。。?

山:絵の説明、描き方の説明としてはそれでいいんやろうけど、なぜそれをするに至ったか、という過程の表明はあってもいいかも。

武:過程の表明って?

山:いや、つまり何をもとにしてるか、とか。

武:何をもとにしてるのか? うーん。。。

山:だからそれが、自然のフラクタルだったりするわけでしょ。

武:はい。あ、なるほど。そうですw で、具体的には、上尾の近所の風景にそのフラクタルや自然の法則や渦のような流れやらを見いだしてるんですよね。

山:じゃあそれを書いたほうがいいんちゃう?

武:上尾の世界だ、と。

山:まあ、上尾を強調しなくてもいいかとは思うけどw

武:近所の風景で観るフラクタルや小宇宙をサンプリングして無意識でミックスして線で奏でてる、ってことなんですよね。

サンプリングするものが「フラクタル」であったり「平行世界」であったり「未出現の宇宙」だったり「霊」だったり。それらを無意識でミックスすると、「アンビエント」で「クラシカル」で「ミニマム」で「ノイズ」な音楽になる、と。そしてそれを自動筆記法で描くと「不協和音が調和する旋律」になる、と。

山:じゃあそれを端的に書いてみようw

武:こんなんだとどうかな? 『近所を歩いていてふと目にする風景や植物や空などから小さな宇宙の片鱗を集めて、無意識の中に溶かし、一本の線を紡ぎ出します。』

山:いいやん。

武:『それらの線を時と共に刻み重ねて象(かたち)にして行く、「線譜」です。観る人の心の中で音楽が奏でられて完成となります。』

山:もうちょっと、一本の線から増殖していく過程を書けないかな? 線が増殖、変化していくことを。

武:『それらの線は感覚に任せた自動筆記法で自然発生的に増殖し、植物が成長していくように、常に天候が変化していくように、描かれて行きます。』

山:『感覚に任せた』ってよくわからんな。

武:要らないってことか。

山:かもなw

武:『それらの線は自動筆記法で自然発生的に増殖し、植物が成長していくように、常に天候が変化していくように、描かれて行きます。』

山:すっきりした。

武:『常に』も要らないかw

山:そうね。

武:あともうひとつ言いたいのが、そこに「時間」が封入されて行くってことなんですよ。

山:なるほど。

武:そう書けば良いのかw

山:えーと、時間を感じさせる自然現象、でもなんでもいいけど、なんかいい説明はないかな?

武:楽譜って結局、時間を指示してる訳ですよね。で、僕の絵も「時」が封じ込められた状態だってことなんです。時間って言っても制作にかかった時間というよりも「悠久の時」みたいな観念的なものなんだけどね。

けど、その悠久の時を醸し出すためには制作時間を長くかけて描きたいんです。時間が圧縮されてる、または封入されている、または折り畳まれている、という感覚なんです。時間が圧縮されて平面にひっついてる、っていうか。。絵を観るとその圧縮された時間が解放されて音楽を奏でる、というイメージ。で、まあ、それをうまく端的に言葉にしろって話しだわなw

山:そうやなw

武:そして額装されてタブローとして絵は完成してても、足りないんです。観る人が時を解放させて音楽が奏でられたら完成で、僕の作品はずっと未完のまま誰かを待っているんです。この、「足りてない」っていうのも俺の中では大切な要素なんです。

山:それは最後に語られてるね。

武:それらを要約すれば良いんだな。

山:つまり、楽譜がただの音符の配置ではなくて、音楽という時間が封入されている。線譜もそうだ、と。

武:そうそう。「時」とは「音楽」のことなんです。

山:ちょっとまとめてみよか。

武:まとめてみました。

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『武盾一郎は「線譜」を描いています。
「線譜」とは直感的な楽譜であり、音楽を内包している絵画です。

近所を歩いていてふと目にする風景や植物や空などから小さな宇宙の片鱗を集めて、無意識の中に溶かし、一本の線を紡ぎ出します。

それらの線は自動筆記法で自然発生的に増殖し、植物が成長していくように、天候が変化していくように、描かれて行きます。

そこには描かれているのは封印された時間です。時とはまさに音楽のことです。そして、観る人によって時が開封され、心の中で音楽が奏でられて初めて「完成」となります。

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山:ふむふむ。端的では、ある。

武:ステイトメントとしてはどうなんだろ?

山:どうなんやろね。
< http://d.hatena.ne.jp/arthonyaku/20110603/1307139627
>

1.作品の目的、制作の動機、制作やアイデアの発展の過程。
2.作品の基盤となる考え、コンセプト、その他の作品影響をあたえたもの。歴史的、批評的、理論的な作品の位置づけと作品の枠組みの説明。
3.作品の制作過程やマテリアルの説明(作品の理解に必要と思われる場合のみ)

う〜ん、ステイトメント完成への道のりは長い。来年の目標ってことでw

武:来年はきっちり売ることがフツーになります!


【武 盾一郎(たけ じゅんいちろう)/納税芸術家】
ゼロネロ@中津でオンライン投票できます!
ぜひ武盾一郎にご投票ください!!
< http://zeronello.jimdo.com/%E3%82%AA%E3%83%B3%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%B3%E6%8A%95%E7%A5%A8%E6%96%B9%E6%B3%95/
>

facebookページ < http://www.facebook.com/junichiro.take
>
Twitter < http://twitter.com/Take_J
>
take.junichiro@gmail.com

【山根康弘(やまね やすひろ)/お手数おかけします!】
yamane.yasuhiro@gmail.com


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■グラフィック薄氷大魔王[371]
「普通のディスプレイ買った」他、小ネタ集

吉井 宏
< https://bn.dgcr.com/archives/20131211140100.html
>
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●普通のディスプレイ買った

実家で困るのは、MacBook AirやWACOM Cintiq Companion Hyblidの13インチ画面では小さすぎて、長時間の作業がしづらいところ。安い液晶ディスプレイを買っておけばと、春の制作のときから思ってたけど、ようやく購入。

「iiyama 昇降・ピボット機能対応 IPS方式パネル+ホワイトLEDバックライト搭載 23型ワイド液晶ディスプレイ ProLite XB2380HS-B2」。これ非常にイイ。画面の高さが大きく変えられる。23インチフルHDは、全体が見渡せる上に操作しやすい。
< http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00CHIH27M/dgcrcom-22/
>

27インチシネマディスプレイは広すぎて文字が小さかったり、ボタンなど小さくなるからクリックするのもけっこう神経を使う。以前のシネマHDディスプレイと同サイズなわけで、あれはやはりよかったんだな。

ピボット回転。ディスプレイって横位置で見慣れてるから、縦位置にしてみるとギョッとするほど長いw (いわゆるスクエア液晶ディスプレイを見ると、ぜんぜん正方形じゃないのにスクエアという名称がなるほどと感じるほど正方形っぽいよね)。

書籍自炊したPDFなど表示してみると、ページがデカい! 見やすい! 見開きで見れないのはしかたないけど、ビジュアル関連の本を見るには最低でもこのくらいの縦サイズは必要だよなあ。

デジクリの原稿を書くためにテキストエディタを表示すると、一本分が画面に収まってしまう。テキストのあっちこっちに飛びながら手を加えるには最高! すごく気に入りました。東京の自宅用にも買おう。

●自由な環境?

WindowsではなくMacを使っているのは、1992年時点でのグラフィックデザインの業務用マシンがMacだったから。Windows95が出る前の話ですよ。わざわざデザイン業務のためにWindowsを使うのはありえなかったはず、とか思って調べたら、Adobe Illustratorって90年以前からWindows版あったんですね。Windows3.0とかだけど。

91年頃、Mac導入しなきゃと思ってたとき、パソコンに詳しい学生に教えてもらったのが、「デザインや映像とかするパソコンには3種類ある。MacとWindowsと、アミガ」。その時は興味引かれなかったけど、Amigaがどんだけすごかったかってのは後で知った。

やっぱ「ウゴウゴルーガ」の衝撃はすごかった。当時「Amigaで作ってる」って聞いても、ものすごい高価な業務用マシンなんだろうなって思い込んでた。安かったって知ったのずいぶん後ですもん。その学生、値段を教えてくれたらよかったのにな。つい買ってたかも。

Amigaの3DソフトはAmiga由来のが多いんですよ。LightWaveやCINEMA4Dやアニメーションマスターなど。まあ、今みたいに自分が3Dやるとは思ってなかったわけだけど。

で、MacやMacのOSを使いやすいと感じてずっと使ってきたとはいえ、囲い込まれた感がちょっとウザい感じはある。多少使いづらくてもWindowsメインのほうが自由があるかもしれない。マシンや周辺機器など選び放題。自分で組むこともできるわけだし。

そのへんの量販店の安いノートPCと、安いペンタブと、投げ売りみたいな複合プリンタを買ってくれば、僕的にはほぼ完全な環境で仕事できちゃう。自由だ!

iiyamaのディスプレイは予想外に良かったことも含め、Apple製品以外の「普通の機材」だけで仕事したいあこがれが強くなりつつあるところ。

ところで、仕事するのにソフトをパッケージで買わなくて良くなったってすごいことだよね。ネットさえ通じれば、世界中のどのソフトも使える。フリーのいいのも多いし。昔はマイナーなソフトは秋葉原に買いに行かなくちゃ手に入らなかったんだから。

●ビニールを剥がす

Twitterでこんなのがリツイートされてた。「【急須からのお知らせ】注ぎ口のビニールチューブは運送の際に保護する為のものです。必ずはずしてご使用下さい。」

< http://sumdai.tumblr.com/post/67946929035
>

そうだったのか! うちにもあったぞ。湯切れ良く注ぐための工夫だと思ってたw 確かにカッコワルイし汚らしいなあと思ってたけど、疑問を差しはさむような余地はなかった。もう必需品と考えられてるっぽく、百均でも売ってるらしいw

< http://matome.naver.jp/odai/2138492671330733601
>

似たようなアレで、新品のアクリルやプラスチック部品の貼り付けてあるビニールを、まっ先に剥がすのが大好き。下取りや中古で売りに行くパソコン周辺機器や電子楽器とかを最後にきれいに掃除してて、透明パーツに貼られたままのビニールを見つけると、「くっそ〜〜! 損した!」って思うもん。

で、奥さんが買ってきた折りたたみ傘の柄のビニール。「それ剥がそうよ」って剥がしてもらったら、革の縫い目の糸が出てきてビロビロに。剥がしちゃいけないものだった orz

新車の内装、ドアの内側とかに貼ってあるビニールって今あるのかな? あれつけたままの人を見ると、中古で売るとき優先で、今おまえは新車を味わえないで損してるが、いいのかそれで? と思ってました。

立体制作で、塗装のマスキングを剥がすのが快感ってのも同じかな? ビニールを剥がすペリペリ感触と、誰も触れていないまっさらのツルツルの表面が出てくるのが好きなんだなw

●「偽バリエーション」について補足

先日書いた、アーチストの作風を知り尽くしたファンが、「未発表曲」という設定でそっくりな曲を作ったら楽しいぞ、の話について。ライムスター宇多丸氏のポッドキャストを聴いてたら、それに近いことやってる芸人さんがいるんですね。知らなかった!

作詞作曲ものまね マキタスポーツ
< http://matome.naver.jp/odai/2134954196613503501
>

芸としての「ものまね/歌まね」の発展形としての「作詞作曲ものまね」。なるほどね〜〜。すごい! と感心したところで、僕が考えてたことに大きな欠陥があることが判明。

それっぽく作るにはそっくりに歌う必要があるじゃんね! クラフトワークとかのインストルメンタル曲を基本に考えてたから思い至らなかった! そっくりな曲を作った上に歌まねまでクリアするってのは、やっぱ相当ハードル高いわ。そんなのできたら、それで食えるわw

【吉井 宏/イラストレーター】
HP < http://www.yoshii.com
>
Blog < http://yoshii-blog.blogspot.com/
>

また実家制作中。今回は比較的短期で、すでにほぼ完成して仕上げのコンパウンド磨きをしてます。あと一息。ところが、この時点になって、「大型作品集中制作をなぜ始めたか?」の根本的な部分がひっくり返りそうな可能性が。来週には結論出てるかも……。

・INTER-CULTUREの3Dプリント作品販売
< http://inter-culture.jp/Buy/products/list.php?category_id=63
>

・Cubifyの吉井ストア
< http://cubify.com/community/stores/yoshii_store.aspx
>


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編集後記(12/11)

●太田直子「字幕屋に『、』はない」を読む(イカロス出版、2013)。フリーランスの字幕屋30年近いベテランが、映画の日本語字幕制作の哀しくもおかしい舞台裏を描いたエッセイで、あまり知る人のない職業に興味津々である。嘆き節、怨み節の軽妙な文体は擬態で、言葉を扱うプロとして誠心誠意仕事に取り組んでいる姿が見える。絶妙のパロディ系の見出しは、おもしろいにもほどがある。「紙々の黄昏」「気遣いピエロ」「シスター・ウォーズ 経刻の逆襲」「次はどっちに出ている」「原稿に手を出すな」とか。

タイトルの意味は「映画字幕に句読点はない」ということ。知らなかった。気がつかなかった。映画字幕では句読点の代わりにスペースを用いる。「。」は一字分、「、」は半字分だ。すぐに画面から消えてしまう字幕は一瞬の誤読が命取りなので、それを防止するテクニックだ。ところが、字幕から句読点が排除された理由は、はっきりしないという。この本の正しいタイトルは、「字幕屋に『、』『。』はない」ではないか。まあいいけど。

映画のセリフひとつひとつの長さを計測しリスト化する、スポッティングというプロの仕事がある。このリストがないと字幕翻訳は始まらない。字幕にはセリフ1秒=4文字という制限があるからだ。例えば、I'm not lying. というセリフはリストでは1秒以下、3〜4文字にしなければならない。直訳の「嘘じゃないわ」では2文字オーバー、そこでどうするか。You didn't know? 「知らなかった?」も同様にオーバー。そこでどうするか。解答はあとで。

「厳しい字数制限のもと、いかに老若男女すべての観客に映画を楽しんでもらうかを追求しているので、辞書にある訳語に縛られていたら話になりません。原文メッセージの裏の裏まで深読みし、さらに場を読み表情を読みます。そのセリフを己の血肉と化すくらいのプロセスが必要です」

お客が知らない言葉は使えない。使ってはいけない言葉がある。移り変わる禁止用語がある。ひらがなかカタカナか。数字の表記、単位の換算で悩む。言葉選びの苦悩が続く。斎藤美奈子が「最近の若い人は比喩と伏線が読めなくなっているそうだ」と書いたのが10年以上前だ。これは本当らしい。大変な世の中になってしまった。字幕屋の苦労はいかばかりか。

翻訳全般に言えることだが、字幕にマニュアルはない。「字幕に正解があってたまるか。永遠にテメーの頭で悩み続けるしかねーんだよ」。筆者の参加する映画翻訳家協会は会員20名、異様に平均年齢が高く、なんと最年少が48歳とか。大丈夫か、この業界。がんばってほしい。サルでもわかる字幕にすればいい、はずがない。ところで解答は「本当よ」と「初耳?」。さすがだ。(柴田)

< http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4863207808/dgcrcom-22/
>
太田直子「字幕屋に『、』はない」


●言い切るのは難しい。でもそうしなきゃダメなんですよね、わかります。相手のことを考えて、譲歩・余白を残しているつもりが、自信なさげと思われてしまう。言い切ると相手とのズレが生じるし、いらない議論が起きるから極力避けたくなる。いま話したいのはそこじゃないのよ、と。言葉遊びしたい時もあるよ。/最近はビニールつけたままにしちゃう。汚らしくなってから初めてはがす。と、古い製品なのに新品の顔を見せるので、なんだか嬉しい。/初耳はわからなかったな〜。

iOSの英単語学習アプリ『えいぽんたん!』が面白い。スマホゲームのハマリ要素がこのアプリにはある。出題される問題はキクタンシリーズのTOEIC350〜990点レベル。

最初に実力テストがあり、出題レベルが確定する。レベルは41に分かれており、最高がS6。レベルに応じているため、ほとんど間違うことなく、すいすいステージクリアできる。クリアするとおやつがもらえ、架空の生徒たち(キャラ)に与えることができる。どうも自分は先生らしい。

生徒たちは食べたおやつの栄養単位「tan」の数で勉強が進み(アニメーションのみ)、一年生から三年生にまでなり、卒業させることができる。卒業アルバムまである。

何時間でも勉強できるかというとそうではなく、問題にトライする際に体力ゲージが減り、ゼロになったらパン類を購入するか、回復するまで待つことになる。10分で1回復。レベルが上がると体力上限が上がるため、あそ……勉強する時間は増やせる。もしかしたら高いステージだと消費体力が多くてトータル時間は同じになるかもしれない。ステージクリアごとに、今の英語力は○○ぐらい、とイラストつきで表示される。続く。(hammer.mule)

< http://eipontan.smacolo.jp/
>  えいぽんたん!
< http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4757414889/dgcrcom-22/
>
聞いて覚える英単語 キクタン TOEIC Test Score 600

< https://twitter.com/nagomix/media
>
見知らぬ方のTwitterに画像があったわ。私はこのレベルに到達していません……