[3641] 平仮名計りで文を書く事に何れ程の意味が有るのか

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《たんさん、こんばんわ〜》

■私症説[55]
 平仮名計りで文を書く事に何れ程の意味が有るのか
 永吉克之

■ショート・ストーリーのKUNI[150]
 準備中
 ヤマシタクニコ

■どうしたらできるかな?[step:16]
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 平山遵子

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■私症説[55]
平仮名計りで文を書く事に何れ程の意味が有るのか

永吉克之
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ひらがなばかりでかくことに、どういういみがあるのか、じっさいにひらがなばかりでかいてみればわかるかもしれないというたんきゅうしんから……といえばきこえはいいが、かんじへんかんなどというめんどうなことをしなくていいから、というのがしんそうなのであった。

●ひらがなでかくことの《でめりっと》

なんといってもよみづらい。ともだちどうしでのめーるのやりとりなら、かってにしやがれ(かんとく/じゃん=りゅっく・ごだーる/ふらんす)だが、めんしきどころか、なまえもきいたことのないどくしゃからひらがなおんりーのめーるをもらったときは、さすがにあたまにきてぜんぶもーるすしんごうのへんじをかいてやった。というのはうそだ。

とくに、ふだんのかいわではつかわれないことばをひらがなでかくと、いっそうよみづらくなる。

たとえば「ひがのさ」などとかかれると、どこかのほうげんかとおもってしまう。「そりゃおめ、ひがのさぁ」「んだなぁ」なんてかいわがきこえてきそうだ。だから、ここはかんじで「彼我の差」とかけば、このかんようくをしらなくても、じぶんとあいてのさ、といういみであることがたちどころにわかるではないか。ひょういもじのべんりなところである。

ひらがなばかりのぶんしょうでとくにこまるのは、たんごがせんてんすのなかにまいぼつしてしまうことである。そのけっか「ぎなたよみ」がはっせいする。

▽「ぎなた読み」の由来[Wikipediaより]

「弁慶が、なぎなたを持って」と読むべきところを「弁慶がな、ぎなたを持って」と読むように、句切りを誤って読むこと。弁慶読みとも。

いくらなんでも、そんなよみまちがいするやつおらんやろ、とおもったが、ひとりいた。わたしだ。こどものころにがっこうで「ほたるのひかり」をうたうときはいつも、「ぞけさ」ってなんだろうとおもっていたのだが、これは「開けてぞ今朝は別れ行く」を「あけて/ぞけさはわかれゆく」とよんでいたのだった。

おりじなるのぎなたよみをつくってみた。

「こんどるすはだいじょうぶか」

・今度留守は大丈夫か
・コンドル素肌異常部下

ふう。これしかかんがえつかない。

●わかちがきにしてみる

おうべいのげんごは、たんごごとにすぺーすをいれるから、たんごがぶんのなかにまいぼつすることはない。にほんごのかきかたで、これにそうとうするのが「わかちがき」である。

わかちがきとは、「ぶんやぶんしょうをわかりやすくするため、ごとご、あるいはぶんせつとぶんせつのあいだをあけてかくこと。また、そのかきかた」とある。(だいじせん)

だから、どうしてもひらがなでかかなければならないじじょうがあるのなら、わかちがきで、たとえば こんなふうに ぶんせつ ごとに くぎれば かくだんに よみやすくなる。それでもまだ よみにくいのなら、ひんし ごと に わけて かく の も いい。いや それ でも よみ にくい と いう の なら い ち も じ ご と に わ け て も い い 。 た だ こ う す る と わ か ち が き の い み が な く な っ ち ゃ っ た り な ん か し て 。

●ひらがなでかくことの《めりっと》

「ひどい」「むごい」は「酷い」。「どれ」「いずれ」は「何れ」。「さいちゅう」「さなか」「もなか」は「最中」。「とげ」「いばら」は「棘」。

ちなみに、「あかぎれ」も「ひび」も「皹」もしくは「皸」とかくのだが、このふたつのかんじ、へんとつくりがいれかわっただけ。なぜこんなあんちょくなかんじがうまれたのだろうか。

「ぬるい」も「ぬくい」も「温い」とかく。「温かい」は「あたたかい」とよんでもらえるが、「温い(ぬるい)」も「あたたかい」とよまれてしまいそうで、いつも、つかうのをちゅうちょする。「温くなったビール」を「あたたかくなったビール」とよまれると、ほっとびーるのことだとごかいされかねない。

こういうときは、やはりひらがなをつかってかきわけるべきだが、そんなこといちいちいわれなくても、だれでもやっているのだろう。たぶん。

●ひらがなのこうせき

がいこくにりょこうをして、ああ、このくににきたのだな、とかんじさせてくれるさいだいのようそは、なんといってもそのくにのげんごだろう。

もう、にじゅうねんちかくまえのことだが、にゅーよーくにりょこうをした。はじめてのべいこくだったが、どちらをむいてもえいごばかり。ぜいかんのしょくいんまでえいごをはなすので、わたしは「こ、これは、まちがっておーすとらりあにきてしまったんじゃないのか?」とろうばいし、もうすこしで、にほんたいしかんにほごをもうしでるところだった。

まちをあるいて、えいごのかんばんばかりでは、そりゃだれだっておーすとらりあとまちがえるだろう。

がいこくじんりょこうしゃがにほんのまちをあるきながら、みせのかんばんにかんじがつかわれているのをみて、じぶんがちゅうごくにいるのかたいわんにいるのかわからなくなった、なんてはなしをきかないのは、ひらがながあるからである。

いっぽう、ちゅうごくにりょこうして、ちゅうごくごのかんばんをみて、じぶんがちゅうごくにいるのかほんこんにいるのかたいわんにいるのか、わけがわからなくなって、きがくるうがいこくじんがあとをたたない。

やはり、ひらがなはすばらしい。げんじものがたりだって、げんぶんはひらがなでかかれていたのだ。ひらがなだけでじゅうぶんだ。

【ながよしかつゆき/ぎぶんさっか】thereisaship@yahoo.co.jp
ここでのてきすとは、ぶろぐでも、ほぼどうじけいさいしています。
むめいげいにん < http://blog.goo.ne.jp/nagayoshi_katz
>


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■ショート・ストーリーのKUNI[150]
準備中

ヤマシタクニコ
< https://bn.dgcr.com/archives/20140220140200.html
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毎日寒い日が続いておりますが、こんなときはだれかを誘うて熱燗のいっぱいでもひっかけ、暖まってから帰ろうという気にもなるものでございます。ある日ある会社の課長さんも、そういうわけで帰り際にまだ残っていた若いもんに声をかけ、飲み屋へとまいりました。

「ふー。残業で疲れた体に熱燗はようきくわ〜」

「ほんまですねえ課長」

「まあ飲め飲め。おごったるさかい何でも頼め。するめのてんぷらでも大根サラダでもざくざくキャベツでも」

「ありがとうございます。ほな刺身盛り合わせとエビの天ぷら、生ガキを」

「耳が悪いんか。まあええけど。それより君も彼女とかいてへんのか。若いいうてももう30すぎてるやろ。結婚もそろそろ考えたほうがええんちゃうか」

「よく聞いてくださいました。というか聞いてほしくなかったんですが」

「どっちやねん」

「実は一年前にふられました。プロポーズしたんですが断られまして」

「ああそうか。それは悪いことを聞いた。ふふふふ」

「おもしろがってるやないですか。そのときにいろいろ考えまして。今後は生まれ変わったら結婚しようと思ってます」

「なんやそら大げさやな。別に生まれ変わらんでも結婚したらええやないか」

「いや、どうも間に合いそうもなくて」

「何がやねん」

「彼女に『ぼくのどこが気に入らんのん』と聞くと『私、筋肉質の人が好きやねん』と言われました」

「確かに君は筋肉質とちゃうな。どっちかというとぜい肉質」

「あと『やっぱり教養のある人がええし』とか『ユーモアもないと』と言われました。どっちもぼくにはありません。それでそれ以後、毎日筋トレをしながら読書しつつYouTubeで吉本新喜劇と笑点とM1をみているんですけど、なかなかハードで、正直疲れました。これだけで毎日が終わってしまいます」

「たいへんやな」

「だいたいぼく、のんびりしてるほうでして。ひとよりさっさと何かできた試しがありません。筋肉質で教養があってユーモアのある男性に死ぬまでになれそうもありません」

「はあ」

「それであきらめました。そもそも人生は短すぎます。一度の人生でそんなにいろいろできるわけないじゃないですか」

「まあな」

「なので今回はとりあえず準備をしておいて、続きは生まれ変わった次の人生でやろうと思います。二部制やったら十分時間がありそうです」

「けったいなこと考えるやつやな。ごちゃごちゃいわんと結婚したかったらしたらええがな」

「いやー、そもそも結婚には安定した収入が必要ですし、そのためにはもっとしっかりした会社に就職しないといけないし、その点も準備が」

「悪かったな。しっかりしてない会社に20年も勤めてて」

「課長、卑下しないでください。部長は25年です」

「どんな慰め方やねん。ほんまにきょうびのやつは…まあ飲め」

「はい。ほんとはぼく、お酒は飲めないんですが、生まれ変わったら『お酒の強い人』キャラでいきたいんで、今からがんばって練習しておきます。うー…あー、胸がかっとします。これがお酒なんですね。ああ、これはきつい…でもがんばります。もう一杯…あ、課長、何食べてはるんですか。なまこですか。ぼく、見た目がグロいもんはあかんのでそれも苦手なんですが、生まれ変わったらなまこくらい食べられる人になりたいんです。グルメキャラでいくつもりなんで。ちょっといただいていいですか。うわ〜〜、ここ、これがあの不気味な生き物を切り刻んだものなんですね。どんな味なんでしょうね。うわ、うわ、うわ〜〜〜〜」

「うわうわ言いながら全部食うてしまいよった。おまえ、ひょっとしてさっき言うたこと全部うそとちゃうやろな。あ、おれの酒まで飲んでしもた。どこが『お酒は飲めないんです』や」

「練習ですってば。う〜〜〜…次はうにをばくばく食べる練習したいんですけど、注文していいですか。お酒もどうせやったら大吟醸の方が練習にいいと思うんですけど」

「おまえな」

「げー。気分悪くなってきました。ちょっとトイレ行ってきます………戻りました。あーしんどかった。いやあ、こういう練習はふだんあんまりできないんですが今日は課長がおごってくれるというので思い切り練習ができて、ぼく、うれしいです」

「しばくぞ」

「なんだか楽しくなってきました。ねえ課長、どう思います。こんなふうに常に生まれ変わったときのことを考えて準備してるて。ぼく、自分がこんなに前向きな人間とは思いませんでした。わはははは」

「前向きか後ろ向きか判断がむずかしいとこやけどな」

「バク転もできたら生まれ変わったときにもてるかもしれないと思って、いま一生懸命練習してるんですよ〜。あ、それから、生まれ変わったらスカイツリーに登りたいなあ」

「いま登れよ。それより生まれ変わられへんかったらどうすんねん」

「それは心配ありません。夢は強く願えばかなうというじゃないですか。ぼく、思い切り強く願ってますから。う〜〜。ああ、飲み過ぎた。げー。げー。げげげげ〜〜おえ〜〜〜」

「おまえ、二度と誘わんからな!」


それから数か月後のある日。

「あーあ。あんなあほなこと言うてたけど、まさかあいつが翌日に交通事故で死ぬとはなあ。人間の命てほんまわからんもんやなあ…ん?」

見ると一匹の子犬が近寄ってきて、なれなれしくまとわりついてきます。

「なんやえらい人なつっこい犬やな…ついてきよる…しかし、あいつ、生まれ変わったら、生まれ変わったら、て言うてたけど、ほんまに生まれ変わったんやろか」

すると犬がしっぽをちぎれるばかりに振ってアピールします。課長さんに無視されると、なんとバク転してみせるではありませんか。

「バク転? おまえ、まさか?!」

犬、もう、むちゃくちゃしっぽ振る、うなずく、課長さんのまわりをぐるぐる回る。大喜びです。

「そうかー。おまえが…いや、生まれ変わったんはええけど、なんで犬やねん…え? そこがうっかりしてた? そやろなあ。まじめなようで抜けてたからなあ…まあええがな。犬の世界でもてて、いけてるメス犬と結婚したらええねんから…え? この腕みてみい、て? おお、確かに筋肉質や。というか、犬としてはふつうと思うけど…え? 酒はないのか? なまこは?って? おまえには二度とおごらんて言うたやろ!」

犬はどてっとずっこけてみせました。ずっこけたりバク転できる犬はそうそうないと思われますので、ひょっとしたらボリショイサーカスにでも就職できるかもしれません。

【ヤマシタクニコ】koo@midtan.net
< http://midtan.net/
>
< http://koo-yamashita.main.jp/wp/
>

Magic Mouseを使ってたら電池切れだと言われた(Macに)。それで開けてみたら単三電池が2本入ってた。単三。たんさん。こういうとき、つい「たんさん、こんばんわ〜」と言いたくなるのって私だけですか。


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■どうしたらできるかな?[step:16]
ぬいぐるみを手渡ししてみた

平山遵子
< https://bn.dgcr.com/archives/20140220140100.html
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ホームページも完成し、卒業制作も残りわずかとなりました。あとは自分の作品の総合まとめです。その前に私はひとつやりたいことがありました。それは「自分の作ったぬいぐるみを直接渡して、子供達の反応を見たい」ということでした。

もちろん、反応を見ることが第一の目的であるのですが、卒業制作の進捗を確認する定例会において、ある先生から「イメージ広告みたいなものがあると説得力が増すのでは?」とのアドバイスもあり、私自身も「思い出を形に」の広告を作りたかったのです。この計画に協力してくれたのが、子供の絵の貸し出し等に協力してくれた先輩のSさんでした。

Sさんは子供のための絵画教室の先生をしています。今回作ったぬいぐるみの大半は、その教室に通うお子さん向けです。ぬいぐるみを渡す時の写真撮影がOKで、私のホームページ、卒業制作展でその写真を掲載してもいいという方がいないか、協力してくれる親御さんはいないだろうか。Sさんに相談すると、すぐに見つけてくれました。

今回協力してくれるのはある姉妹でした。この姉妹は工作とパズル遊びが大好きということなので、ふたりのために「パズルくん&パズルちゃん」というペアのぬいぐるみを作りました。それをきれいにラッピングし、おまけのキャラクターの絵と一緒に、お子さんの名前の入ったトートバッグに入れました。

次の日、Sさんの絵画教室を訪問しました。Sさんと親御さんのKさんと挨拶を済ませ、レッスンが終わるまでしばらく教室で待つことに。子供たちが楽しそうに工作したり、絵を描いたりしています。そして、いよいよぬいぐるみを渡す時がきました。Sさんが自然な感じで一部始終を撮影してくれます。

「これ、二人のために作りました。これでたくさん遊んで下さい」
私はドキドキしながらも二人にぬいぐるみを渡しました。すると……
「うわ〜これ凄い!」姉妹はキャッキャッいいながら遊びだしました。妹さんはトートバックがとても気に入ってくれたようで、片時も離しません。

「これ、パズルみたいに手と頭が繋がるよ!」
「うわっ!見せて〜!」

うれしい! 姉妹はぬいぐるみに施した遊びに気が付いてくれたようです。ふたが笑顔で遊ぶ姿を見て、私は本当に嬉しくてなんとも言えない気持ちで一杯になりました。

撮影も終え、姉妹と親御さんにお礼を言うと
「どうしてうちの子が青とピンクが好きだってわかったのですか」
「二人から借りた絵や工作の写真から想像してみたんです。たぶん青とピンクが好きかなと。それと工作が得意そうなので、何か組み合わせて遊ぶのではないかなと」
「へぇ〜不思議ね。写真を見ただけで子供たちの好きなことがわかるなんて」

教室に私とSさんだけになりました。
「あのふたり本当に喜んでいるよ。良かったね。いい写真も沢山撮れたし」
「えっ、そうなの?」
「本当だってば。あの姉妹、普段はあんなにはしゃいだり、キャッキャッ言わないもの」

自分でも上手く言えませんが、本当にうれししかった。自分の作ったものであれだけ喜んでもらえるなんて、生まれて初めてだったので。

この様子は以下「思い出を形に」を参照
< http://www.j-allstars.com/ordermade.html
>

さぁ、卒業制作審査会、卒業制作展の展示準備と展示、頑張るぞ! と活力がわいてきました。作り手の勝手な思い込みかもしれませんが、この貴重な体験から、相手に喜んでもらえるかもらえないか、作品が評価されるかされないかは別にして、丁寧に心を込めて作ることが大切だということだけは忘れてはいけないと思ったのです。

【平山遵子・ひらやまじゅんこ】
J★(Junko allstars)〜思い出を形に未来につなぐハンドメイド〜
< http://www.j-allstars.com/
>
夢は「世界一楽しいぬいぐるみ」を作る!


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編集後記(02/20)

●会社員時代に大変な読書家である同僚がいて、よく「広辞苑なんか間違いだらけだ」と言っていた。浮世離れした坊ちゃんなので、もしかしたら本当に広辞苑を読んでいたのかもしれない。わたしのデスク脇の書棚に昭和44年発行の「広辞苑」第二版がある。わたしの就職祝いに、大学のクラブの後輩たちがお金を出し合って買ってくれたものだ。当時でも3200円と高価だった。かけだし編集者の頃はよく使っていたが、2500ページに迫る厚さと重さに閉口して、やがてコンパクトな新潮や岩波の国語辞典に乗り換えたため、もう何10年もページを開いていない。

「広辞苑によれば」と引用されていれば、その信用度は絶対だったが、いまもその権威、神通力はあるようだ。テレビのクイズ番組で出題の権威付けに「広辞苑によれば」と言っている。広辞苑はたんなる国語辞典ではない。国語辞典兼百科事典である。ところが、その百科事典部分、とくに近現代史の用語にとんでもない罠が仕掛けられている。それは日本悪者論ともいうべき、偏向に満ち満ちた解説のオンパレードなのだ。水野靖夫「『広辞苑』の罠──歪められた近現代史」(祥伝社新書、2013)でその具体例を知った。

岩波書店だからさもあらん。じつは以前もどこかでそんな記事を読んだ覚えがある。この本では筆者が不審に思った点、版を重ねるに従って偏向の度合いを増している点を拾い上げてまとめたもので、ある見出しについて広辞苑の「偏向した解説」を取り上げ、それに対する厳しい批判・反論をしたうえで、「正確にはこう記述すべきであるという解説」をつける構成だ。日本と朝鮮、シナ、ロシア・ソ連、アメリカとの関係史/日本の近代史・戦後の外交関係史の六章にわたり、虚偽の歴史と本当の歴史が対照されていてまことに興味深い。

「従軍慰安婦」という項目が立つ。解説は「日中戦争・太平洋戦争期、日本軍によって将兵の性の対象となることを強いられた女性。植民地・占領地出身の女性も多く含まれていた」と韓国側の言い分をそのまま掲載している。筆者はこう書けという。「日本軍が将兵の性の対象とするため強制連行したといわれた慰安婦のこと。実態は、日本人がでっち上げ、朝日新聞が煽り、政治家が韓国政府との間で政治決着するため認めた事実無根の話」そのとおりだ。

「概して、日本が加害者の場合(真偽が疑われる場合も含めて)は、ことさら強調して記述し、日本が被害者の場合は、その事実自体を無視するか、扱う場合でも、きわめて冷淡である。しかもその傾向は、版を改めるにつれて強くなる」。「東京裁判」については、その不当性については一言も触れていないばかりか、「パール判事」は記載なし。「拉致事件」は記載なし。

広辞苑を権威と思い込んで利用するのは極めて危険で有害である。鵜呑みにしたら洗脳されて、日本が大嫌いになる。第六版刊行にあたり岩波は「今日では1100万人の読者を持つ国民的辞書に育ち、日本語の規範として、ゆるぎない信頼をいただいております。そしてここに、21世紀に入って初めての全面的な大改訂を施した第六版をお届けします」「日本語を私たちの手で守りたい──『広辞苑』は生まれたときからそう希ってきました」と社告で書くが、たしかに日本語を守る点では信頼できるが、日本を守る点では真逆でほとんど売国の機能しかもたない。岩波には正しい記述の第七版を出す義務がある。やるわけないとは思うが。(柴田)

< http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4396113501/dgcrcom-22/
>
「『広辞苑』の罠──歪められた近現代史」


●昨日の補足。最近は優先順位を変えたため、寝られるようになったよ。/たんさんに挨拶をしたことはないですが、たしなめたり、ねぎらったりはあります。

続き。iPhoneだと横断検索はできないから、サジェスト機能付きのアプリ『MyFind』を使う。起動して入力しはじめると候補が出てくるので、検索先をタップして選ぶと、該当アプリが立ち上がり結果を出してくれる。別のアプリで検索したかったら、MyFindに戻りタップするだけ。

MyFindをインストールして最初に起動すると、既にインストールされている辞書系アプリアイコンが自動的に列記される。入力しはじめるとサジェストが出るので選ぶか、最後まで入力する。確定を押すと、デフォルトではgoogle検索、辞書アイコンを押すとそちらで検索される。無料なのでお試しくだされ。

えいぽんたんにはスペル問題や、穴埋め問題もあることはあるが主流ではない。ここで最高レベルまで行ったら、たまに復習のためにやる程度にして、次は例文や派生語を含めて定着させないといけないだろう。開発者さんたちに感謝。いまだ無課金でごめんなさい! 面白そうなイベントの時に、授業料代わりに課金してみるね。(hammer.mule)

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