[3643] 不老不死時代のデータ・デザイン

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《できそうでできないのがKobo》

■データ・デザインの地平[38]
 不老不死時代のデータ・デザイン
 薬師寺 聖

■クリエイター手抜きプロジェクト[378]電子書籍編 
 Kobo arc 7/HDで自炊したPDFを表示するまで
 古籏一浩

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■データ・デザインの地平[38]
不老不死時代のデータ・デザイン

薬師寺 聖
< https://bn.dgcr.com/archives/20140224140200.html
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20XX年。"存在 X"の脳内イメージは、惑星間ネットワークを介して、複数の"存在 X"の脳に届き、埋め込まれた記憶装置が起動する。複数の生体と機器の間で、つぶやきがこだまする。

──かつて「死」という言葉があった。それは我々が体験する「一時停止」とは異なるもののようだ。我々は、生・死・言葉という音の概念、それが喚起していたらしい感情を、残存するデータの中にもとめる。決して体験しえない概念への憧憬。──

●死の概念の変化が、データ構造を変える

我々は、生死の概念が大きく変わる、スリリングでエキサイティングな時代に生きています。なにしろ、科学技術の発展は、この地上の時間・空間・個体の制約を、取り払いつつあるのですから。

医学や生物学上の発見は(★1)、不老不死への歩を進め、死の概念を無効化します。我々の子孫は、受容する「死」を知らず、主体的な「生」の中断(スリープ)を理解するようになります。

また、宇宙工学の実用化は、人類を地球外へと導きます(★2)。

公転周期や重力の異なる環境に適応した個体は、現在地球に生きる我々とは異なるタイムスタンプを使い、固有の時間・空間感覚を持つようになるでしょう。

さらに、脳科学とITの連携は、脳とマシン、個体と別の個体のパーツ、複数の個体同士を接続します(★3)。

記憶や思考の一部を機器に依存したり、身体のパーツ制作を電子商取引したり、他の種の持つ運動機能を獲得したり、複数の脳をダイレクトに接続して思考や感情を共有するなど、個体の境界は不透明化していきます。

これら三つの進化は、「私とは何か?」という認識を変容させ、データベースで識別子として働く「一意なもの」の定義に変化を巻き起こします。ヒト同士や、ヒトとマシンを接続する「インタフェース」が意識されなくなった暁には、「私(I)」という一人称の概念が失われる可能性すらあります(★4)。

我々は、生と死の間にあるデータで表現される最後の世代となるでしょう。子孫たちは、境界の曖昧な集合体としての意識を持ち、「主体的な生の中断」を選択するでしょう。彼らの社会には、「個体の一生」に限定されないデータ・デザインが必要です。

●概念の変化は、ビッグデータに拍車をかける

生死の制約のない個体に付随するデータは、現在の長寿者に付随するデータとは比較にならないほど大きなものになります。

また、センサーの進化によって、現時点ではセンシング困難な情報の取得も可能になり、巨大なデータが蓄積され始めます。

たとえば、五感からの高精度な入力情報、それらを認識した結果の脳内情報、湧き上がる感情や思考の断片、創作途中の作品のイメージなどです(★5)。

これにより、恐るべき量のデータがクラウドに蓄積されるようになります。

そうでなくとも、現在すでに、世界中のデータが膨張し続けています。宇宙や地球の観測データ、SNSへの投稿データ、電子商取引のデータ、画像や動画などの非構造化データなど、どれもが増える一方です。

このうえに、センサーデータが蓄積されていくとなれば、ペタ、エクサ、ゼタ………と、桁違いのビッグデータへの歩は早まるばかりです。

そして、センシング対象である個体が、自ら生の「中断」を選択しない限り、データは増え続けるのです。

さらに、自ら生の中断を決断する個体、迷う個体、(年金不正受給よりも発覚しにくい)「生の中断」の阻止を実行する個体、が増えることも考えられます。そうなると、記録済みデータの変更や追加が相次ぐようになります。

生死の概念が変化した社会に合うようにシステムが変更されると、それは生活に影響を及ぼし、生活上の変更が、ふたたびシステムの変更を促す、という悪循環が生じて、データベースには大量の無意味なデータが残る可能性すらあります。

もはや、(革新的なデータ形式、それを走査可能なパーサー、高速の実行環境、という三つがセットで開発されない限り)混沌としたデータの肥大化に歯止めをかける方法はないでしょう。

●旧構造と新構造のデータ併存は長期化する

現行のデータベースは、「生死ある個体」を前提として設計されています。個体が解体・改変されたり、他の個体と接続したり、他の個体を起源とする部分を包含するような事態は想定されていません。

想定外のデータが現れた時点で、その時々の社会に合う暫定的な構造変更が「その都度」なされることになるでしょう。

たとえば、ひとつの個体と一対一対応の〈生年月日〉が、複数の個体で共有する〈製造年月日時分秒ミリ秒〉という構造に変化することをイメージしてみてください。

旧構造のデータを利用する場合は、データをサルベージして、新規構造へと変換処理を行います(これは現在一般的に行われている作業です)。こういったデータの構造変換は、なかなか厄介なものです。

IT業界から離れた位置にある人々は、システムを一時停止し、大人数のエンジニアが徹夜で作業すれば何とかなる、高速のマシンに任せればよい、などと考えるかもしれません。しかし、それはユーザー視点の夢物語にすぎません。

宇宙、軍事、医療、交通、などの社会基盤を支えるシステムは、365日24時間稼働し続ける必要があります。メンテナンスを理由におわびの一文でサービスを停止することは、ほぼ不可能です。社会基盤をテクノロジーに依存すればするほど、永年継続稼働は必須となるのです。

変換処理を実行するあいだにも、生命の形や社会のあり方は刻々と変化し続けます。システムを停止させず、増え続けるビッグデータの中の主要なデータを(すべては不可能です)将来にわたって利用可能な形に変換する作業には、最速の計算機を使ったとしても、とてつもない時間がかかるでしょう。

旧構造のデータと新構造のデータの併存は、長期化を避けられません。
「一意なもの」の変化の影響は、はかりしれないのです。

●データ・デザインは、存在の概念設計へと向かう

こうした変化の中で、データ設計者にとって唯一できることは、未来の社会システムへの移管を頭の片隅に置いて、現在の設計業務をこなしていくことです。これから先、データ設計者の扱うデータは、次のように、三つに分かれていきます。

(1)生体に付随する情報

社会的に認知されているヒトに付随する情報、認知されることを前提としたヒトに付随する情報です。

前者は、住民に付随する個人情報、DNA情報、患者に付随する医療情報など、既存の生命に付随する情報です。後者は、受精前の細胞から誕生前の胎児に付随する情報です。

(2)生命を構成する情報

ヒトの組成や構成を規定する情報、いわゆるヒトの設計図です。遺伝子の組み合わせ情報、身体と外部マシンの接続情報、身体への組み込み機器情報、他者の思考との接続情報、薬剤エンハンスメントの服薬情報、などです。

(3)存在を構築する概念

生命が占有する時間・空間・拡張範囲(境界)を表現する、存在の構造の定義、概念のスキーマです。

これらは、平たく言えば、(1)どのようなデータを付加した、(2)どのようなヒトを形作り、(3)どのように存在させるか、といった情報を扱うようになるということです。

現在、データ設計者が扱っているのは、(1)のような、ヒトやモノといった「存在ありき」の情報です。しかし、生死の概念が変化するにつれ、(2)のような情報を扱う機会も、間違いなく増えていきます。

ただし、倫理面の議論と社会的合意が必要となること必至であるため、実行は慎重に検討する必要があります。

(3)は、非常に抽象的な作業であり、この30年間で実務が生じることは、まず、ないといっていいでしょう。ただし、これを常に意識しておくことは非常に重要です。

なぜなら、存在(ザイン。sein"独")の概念設計こそが、データ・デザインの地平にあるもの、デザインという仕事の本質だからです(★6)。

これからのデータ設計者は、存在、時間、空間について、考え、理解を深めようとする姿勢を持たなければなりません。

自身の深くに沈潜し、最新の知見を受容し、思索し、地平を見渡せる場所へと歩を進める姿勢が、もとめられるようになるでしょう。


★1 「体細胞の分化状態の記憶を消去し初期化する原理を発見」独立行政法人理化学研究所 Webサイトを参照。
< http://www.riken.jp/pr/press/2014/20140130_1/
>

★2 火星移住計画、mars-one のWebサイトを参照。
< http://www.mars-one.com/
>

★3 臓器を作る細胞シートや、ヒトの脳のダイレクト接続などの実験例は、ネット上に情報が多数あります。関心のある人は、bing ってください。

★4 一意なものの変化が引き起こす雑多な問題については、本連載 2011年の記事を参照。
「第2回 そのデータは誰のもの?」
< https://bn.dgcr.com/archives/20110124140300.html
>
「第3回 子ノード化する脳」
< https://bn.dgcr.com/archives/20110214140400.html
>
「第4回 多重CRUDの脅威」
< https://bn.dgcr.com/archives/20110314140200.html
>


★5 現在のSNSに見られるような行動記録のデータ──何をしたか、何を話したか、どのような知識を得たか、いかなる成果を上げたか──という事実よりも、「その体験中に、何を感じ、何を考えたか」というデータのほうが、個体をより的確に表現するでしょう。

★6 筆者の個人事業所の屋号「SeiSeinDesign」は、存在(Sein)と設計(Design)を連結したもので、「存在の概念設計」を予定して付けた名前です。ただし、高齢なので、そのような時代になったときには隠居しています。心意気だけ、かってください。

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子を失った人々、子を遺せなかった人々に捧げる頌歌。未来の計算機が見つけた、女性名 LAETITIA(レティシア)のバイナリコード"4C 41 45 54 49 54 49 41"。
共感能力を備えたマシンは、子孫を遺せなかった存在を想う。
アルバム「Oyt of Imagery」収録。
< https://itunes.apple.com/jp/artist/yao-shi-si-sheng/id543503414
>

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【薬師寺聖/個人事業所 セイザインデザイン】
個人事業所 < http://www.seindesign.net/
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< infosei@seindesign.net >

絵・音・詩・文・コードを扱うフリーのクリエーター、思索家。
エンジニアリング会社を経てデザイン事務所に勤務後、XML1.0勧告翌月に退職して開業。科学論文や電子カルテを扱うXML案件を手がける傍ら、XMLやRIAに関する書籍や連載を多数執筆(主にPROJECT KySS名義)。
現在は、受託業務から独自開発にシフト中。
Microsoft MVP for Client Development (Oct 2003-Sep 2014)


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■クリエイター手抜きプロジェクト[378]電子書籍編 
Kobo arc 7/HDで自炊したPDFを表示するまで

古籏一浩
< https://bn.dgcr.com/archives/20140224140100.html
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Koboの文字を見た段階で「あぁ!またか!」と思った人もいるかもしれません。どうしようもないKobo(本当はKoboが悪いのではなく楽天でしょうけど)。端末を次々出す前に本をたくさん出してくれっていうのが本音です。

しかし、どうしようもないものほど愛着がわくというものです(嘘)。これまでに購入した愛着のあるKobo端末は、例外なく箱の中で眠ってます。何10年かしたら新品のKoboが発見され、「何でも鑑定団」に出す奇特な人が出て来るかもしれません。

さて、今回購入したのはKobo arc 7とKobo arc 7 HDです。主にレビューするのはKobo arc 7です。というのも、高級機であるKobo arc 7 HDにはマイクロSDカードスロットがないからです。

低級機であるKobo arc 7にはマイクロSDカードスロットがあるのに、なぜか高級機のKobo arc 7 HDにはついてないという不思議さ。まあ、これがKoboなんだよと頭で理解してみるものの心が納得しない。

マイクロSDカードスロットがあれば自炊したPDFが読めるに違いない、というのが低級機であるKobo arc 7を購入した大きな理由です。

ということで、早速セットアップ。初期のKoboに比べると何もかもが楽になっています。もっとも、Kobo arc 7はAndroidタブレット(バージョンは4.2.2)なので、Androidと同じように使うことができます。ブラウザもChromeですし、ホーム画面以外は全部Android。ある意味、これは安心材料です。すでに数多くあるAndroidアプリも使えるはずですし。

設定も無線の接続も無事に完了。すると、早速アップデート確認の画面になりましたが、さすがKobo。簡単にアップデートさせてもらえません。問題が発生したためプロセスを終了します、と出た。

どうしようもないのでOKボタンをクリックして次へ。すると、アップデートが必要です、とまた出た。今度は、なぜか正常にアップデートされ無事にホーム画面が表示されました。

< http://www.openspc2.org/reibun/kobo/arc7/initialize/first/0002/index.html
>

それにしても、カラーでKoboのホーム画面が表示されると、かなり雰囲気が変わります。あの、モノクロのKobo Touchの画面がカラーになっているのを見ると感慨深いものがあります。一年半前に発売されていたら、結構売れたかもしれませんが。

それはともかく、自炊したPDFをKobo arc 7に表示したいところです。マイクロSDカードの扱いが分からないので、付属のマニュアルを見てみます。紙のマニュアルは役に立ちません。というか、書いてません。

ということで、Kobo arc 7のユーザーガイドを見てみます。ユーザーガイドはWeb上にPDFとして用意されているようです。ブラウザからユーザーガイドのリンクをクリック。すると損害を加える可能性があるけど、どうする? と表示されます。そんなに危険なマニュアルなのでしょうか?

危険なマニュアルをダウンロードして読んでみるも、マイクロSDカードのどこにPDFを保存すれば、Kobo arc 7で表示できるようになるのかが書かれていません。

仕方がないので、マイクロSDカードのルートディレクトリにPDFをコピーしてから、Kobo arc 7に差し込んでみました。しかし、ホーム画面にもどこにもPDFが表示されません。SONY Readerなら簡単に自炊PDFを表示できたのですが、Kobo arc 7は簡単に自炊PDFを表示させてくれません。

もしかして、マイクロSDカードでは駄目なのかも。ということで、Webから自炊PDFをダウンロードしてみました。すると、なぜか画面が真っ白。他の自炊PDFも真っ白。

しばらく原因がわかりませんでしたが、どうもアプリのメモリ不足のようです。一度ホームに戻ってからダウンロードしたPDFを表示すると今度はうまくいきました。

でも、WebからダウンロードしてPDFを表示するというのは本意ではありません。なんとかして、マイクロSDカード上にあるPDFを表示したい。

多分、同じことを考えている人がいるはずだ、ということで検索すると出てきました。2chに書かれていました。どうやらSideBooksというアプリを使えば、マイクロSDカード内のPDFが表示できるとのこと。

・SideBooks
< https://play.google.com/store/apps/details?id=jp.co.tokyo_ip.SideBooks
>

早速、SideBooksをダウンロードしてインストール。設定でホームディレクトリをマイクロSDカードのディレクトリに変更します。これで、マイクロSDカードのPDFが自動的にスキャンされて本棚に表示されます。

< http://www.openspc2.org/reibun/kobo/arc7/app/sidebooks/2001/index.html
>

本棚に表示された自炊PDFをタッチすると……ようやく表示されました。簡単にできそうでできないのがKoboですが、Kobo arc 7はAndroidタブレットなので、いろいろなアプリが使えるのは助かります。でも、買うならNexus 7にしましょう……。

最後に間違ってKobo arc 7を買ってしまった人のために、いつものページを用意しておきました。

Kobo arc 7使い方辞典
< http://www.openspc2.org/reibun/kobo/arc7/
>


【古籏一浩】openspc@alpha.ocn.ne.jp
< http://www.openspc2.org/
>

大雪で、まだ道路が駄目です。大雪の対応は同じ長野県でも、かなり異なっていました。Twitterを活用して賞賛されたらしいのが策士じゃなくて佐久市。
< http://www.xanthous.jp/2014/02/20/mayor-of-saku-twitter/
>

地元の塩尻市はどうかというと、情報を集約できず分散したまま何がどうなったのか分からず。毎日道路を通行止めにして除雪作業。除雪というか、すでに道路に巨大な氷塊として鎮座している状態です。もう、手作業では難しく重機で削りまくる状態。そして、どんどん雪が積み上がってますf(^^;

< http://t.co/lLlzsQAXvN
>

・D3.js例文辞典
< http://www.openspc2.org/reibun/D3.js/
>

・Dart例文辞典
< http://www.openspc2.org/reibun/Dart/ver1.1/
>

・Adobe CS2〜CS6,CC JavaScriptリファレンス&ライブラリ
< http://www.openspc2.org/reibun/AdobeJS/index.html
>

・Adobe JavaScriptリファレンス(検索できないのはKindleのバグらしい)
< http://www.amazon.co.jp/dp/4844395955
>

・ハイビジョン映像素材集
< http://www.openspc2.org/HDTV/
>

・Nexus 7(アンドロイドタブレット)使い方辞典
< http://www.openspc2.org/reibun/Android/Nexus7/
>

・JavaScript逆引きハンドブック
< http://www.amazon.co.jp/dp/4863541082
>

・クリエイター手抜きプロジェクト
< http://www.openspc2.org/projectX/
>

・Adobe Illustrator CS3 + JavaScript 自動化サンプル集
< http://www.openspc2.org/book/PDF/Adobe_Illustrator_CS3_JavaScript_Book/
>
吉田印刷所の「印刷の泉」でも購入できるようになりました。


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編集後記(02/24)

●あなたもデジクリで書いてみませんか。「締切のある生活」って充実してますよ。いや、ほんと。「デジタルクリエイターズ」というタイトルにこだわりは、ありません。まったく。どんなジャンルでもOKです。投稿は info まで。

●POV(主観ショット)、モキュメンタリー系ホラー「エビデンス -第6地区-」を見たのは昨年の6月。「史上最速&最長、驚異のワンショット映像」が延々と続いたわけのわからん映画だったが、そのシリーズの「エビデンス -全滅-」を見た。懲りない男である。今回は、モキュメンタリーの一種であるファウンド・フッテージ型のサスペンス作品だ。ネバダ砂漠の真ん中の廃墟で起こった、凄惨な殺人事件の現場から回収されたデータが破損したフッテージ(動画映像)を、捜査官とエンジニアが次々と修復し鮮明化していく。映画を見ている者は、彼ら捜査陣と同じ画像を見ながら、事件のあらましを知ることになる。

これはおもしろい趣向だったが、その動画は従来通りの手持ちのブレボケのダルい映像だから、見ていておもしろいわけでなく、従来通りに苦痛である。しかも、怯えて発する音声付きだから、そのやかましさにウンザリして早送りしたくなる。見せ場は、被害者の身体を切断しバーナーで焼き殺したり、メッタ刺ししたりといった、とんでもない殺人鬼の所業だ。あまりはっきりとは見えないが臨場感バッチリ。しかし、その動画を撮っているあんた。なぜ逃げないんだ。撮影なんかしてるから殺されるんだ。と言ってたら、ファウンド・フッテージ映画はできないんだけど。

捜査陣は画像を分析し、7人の被害者を特定し容疑者を割り出して行く。その辺のテンポはなかなかいい。ところが、どうにも辻褄の合わない動画から、捜査官はこれは編集されたものだと判断する。犯人は虚偽の映像証拠をわざと現場に残していたのだ。そのとき、インターネットの動画サイトにこれらの映像が投稿されていることをテレビが報じる。なんということだ。捜査陣は犯人に翻弄されていたのだ。映画を見てる者もね。そういえば、殺人鬼がビデオカメラ、ケータイなどの画像データを、現場に置いたままにしたってのもよく考えるとおかしい。そして明かされる意外な真犯人。そんな動機で大量殺人かよ、愉快犯。ブレボケのダルい映像さえ我慢できれば、とても楽しめるサスペンス作品であった。

次の夜に見たのが、タイトルがなんともなホラー映画「死霊館」である。ロッキングチェアに座った女、斜め後ろからなので顔は見えない。抱かれた不気味な顔の人形がこっち向いている。パッケージのビジュアルから期待大。「人間の耐え得る限界を超えた凶暴な恐怖が、今、解き放たれる」だって。有名な超常現象研究家のエド&ロレイン・ウォーレン夫妻が、これまでに調査したものの中で「最も邪悪で恐ろしい事例」として封印してきた、1971年に体験した衝撃の事件を基に描く。実話であると。関係者の写真も最後に出る。そんなの映画にして大丈夫なのか。

シンプルにいうとお化け屋敷騒動+悪魔祓い。前半は「悪魔の棲む家」、後半は「エクソシスト」といった趣きだ。この種の映画はいままでいっぱい見て来た。悪趣味な男である。だから、なんとなく見覚えのある展開で、ああなったあとは、きっとこうなるという予想通り。そこでそんなことしてはダメ、とつい口に出したりして。オーソドックスな作りだから安心して(というのも変だが)見ていられる。でも、徐々に恐怖をもりあげていくから、怖いことは怖い。ビギナーにはきついかもしれない。すれっからしのホラーマニア向きといえるだろう。ホラーやサスペンス、SFはやめられない。怪獣もな。(柴田)

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「エビデンス -全滅-」
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「死霊館」


●続き。ラストは予想がついてしまい、どんでん返しによる感動はなかったのだけれど、悲劇が好きではないので満足。安心できるというか。

ストレートプレイは、シリアスすぎると眠くなる。それでも魅せてくれるものもあるけど、大抵眠くなるシーンがある。そして、私は笑える映画やお芝居が好き。笑ってストレス解消する方だ。

地名が当然ながら大阪で、大阪城の外堀ってどこだったんだろう、真田丸は今のどこかな、十勇士らが目指した徳川家康はどこに布陣していたのだろう、観光地であり遠足先の大阪城は、この話の大阪城だよね、それがあれだよね(当たり前だ)、とか考えながら観ていた。続く。(hammer.mule)

< http://www.ntv.co.jp/sanada60/index.html
>
真田十勇士