グラフィック薄氷大魔王[410]東京デザイナーズウィーク2014 関連の小ネタあれこれ
── 吉井 宏 ──

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一昨日、東京デザイナーズウィーク2014、終了しました。会期中に思ったこと
いろいろ。

今回のブースの全景。
< http://www.yoshii.com/dgcr/TDW2014-PB031841 >


●10日間という長さ

あまりにも長いので、ほとんど気を失ってる状態になってくる。知り合いが来ると我に返るw 仕事のアイディアやデジクリネタなどの考え事もほとんどできない。足は痛かったけど、3〜4日目から一日中立ってるのが平気になっちゃった。三連休の人の多さにも参った。

何がキツいって、10日間ほとんど仕事できなかったこと。11時〜21時の開場時間と行き帰りや準備だけで13時間以上かかる。「部屋で仕事できる時間は2〜3時間しかないかも」とか思ってたけど、甘かった。1時間もMacに向かって仕事できないんだよ〜。その1時間も業務連絡や処理とかだけでほぼ終わる。

海外旅行とか含めても、10日間を完全に拘束(違う)されたのはフリーランスになって以来初めてだったかも。

●何でもほしくなる

10日間、ブースからほとんど離れられないと、普段気にも留めていないことが気になったり、ほしくなったりする。

近所のブースでバッグや革の財布を売ってた。財布をほしいなんて思ったことないのに、ものすごくほしくなって困った。ああ、あの財布をバッグに入れたらどんなに幸せだろう! とかw

隣のブースの何の変哲もないDellの23インチ液晶ディスプレイの裏側が見えてたんだけど、黒と銀色カッコイイ! Dellのロゴがステキ! ほしい! あれで仕事したらどんなに快適だろう。検索したら古いモデルで、今は手に入らないんだけど、それでもほしい!

あと、やはり近所のブースで展示してた高級一体型オーディオ。大音響で鳴らしすぎて音が割れてる。オーディオ屋さんにあるまじきデモw なのに、ああ! あのオーディオセットほしい!

●床置き作品キック事件

東京デザイナーズウィーク、8日目。「作品に触らないで」にキレた小さい男の子が、床置きの作品を足で思いっきり蹴るという事件発生。どう蹴ったかというと、腿を大きく上げて体重をかけてかかとで着地して、何かを踏みつぶすときのアクション。思わず悲鳴上げちゃったわw

詳しく書くと、5〜6歳くらいの男の子が台の上の作品を触っていた。台の上に貼ってある「手を触れないで」マークを母親に示したところ、母親は男の子に注意。そしたら今度は男の子が床置きの作品をいじり始めたので、母親が男の子を引き戻した。男の子はキレて作品に引き返して、キック! ぎゃー!

母親は謝らないし、「台の下にもマークを貼ってもらえれば」とか言う始末w うちの奥さんが「これは作品で、大切なものなんですよ」と言ったらマズいと思ったのか、ようやく「すみません」と小さく謝ってそのまま立ち去ったのでありました。そういう世代だか種類だか…… orz

被害にあったのはガラスマットを入れず樹脂だけで軽く仕上げた作品。制作中に20cm落としたら割れたものと同じく、強度がないもの。とりあえず、ヒビは入ってなかった模様。三連休で人も多いし、こわいのでその作品は展示しないことにした。

子供は悪くない。親の責任が100%。子供を連れてきてる親でちゃんとした人は、子供が悪さしそうな状況だったら手をしっかりつかんで離さないなど、しっかりコントロールしてる。それができないのなら連れてくるべきじゃない。こういう会場やお店だけの話ではなく、家の外へ出る場合は全部! 子供が危険な場合だって同様。

Facebookに書いたら、みなさん「作品やアートにそんなことするなんて信じられない」とか書いてくれましたけど、東京デザイナーズウィークって作品展でも美術展でもないもんなあ……。一点物の「作品」をああいうところに展示すること自体、適当ではないかもしれないと思ってます。複数ある作品や量産のプロダクトならいいんだけど。

事件直後、「もう作品片づけて帰る!」とか口走ったり、子供連れが近づいてくると作品に近寄れないようにマークしてブロックするくらいにテンパってましたw その後、友人たち何組か来てくれて、いっぱいしゃべったので気が晴れました。

僕の立体作品は子供に大人気(?)で、ほっとくとみんな触りに来ます。まあ、普通、作品じゃなくオモチャか遊具に見えるよなあw オバチャンもオッサンもペタペタ触ります。本当は触ってもらってもぜんぜんかまわないんですけど、管理がたいへんになるんで一律に「触らないで」ということで。

「ペンキ塗り立て」が効くかなとも思いましたが子供相手じゃ無効かー。もう冷静に「これ、○○万円なんですけど、どうします?」とか。

●「在る」ことのメリットと恐怖

立体作品を初めて展示したわけだけど、仮想的な存在であるデジタル作品と違って作品が「在る」ということのメリットとデメリットが、今回の出展で明確になった気がする。

モノが実在してて目の前に在るのはものすごい説得力があるのは確実。「パソコンの中でデザインして、プリントやディスプレイで提示した作品」と「何週間も何ヶ月もかかって手で作った、質量がある作品」ではパワーが桁違い。

でも、僕的には「大きな物体として見せたい」の気分は、プロジェクターで壁に巨大に投影するのとそれほど変わらない(いや、ぜんぜん違うんだけど、その気分は残しておきたいと思ってる)。しかし、大きな立体はどうしても「時間や手間をかけた労作」と思ってしまうのが、ちょっと足枷っぽい。作品が、自分にとって必要以上に「重い存在」になってしまう。

あと、「一点物」という恐怖。複製を前提にせずに制作することは、手軽さと自由さの一方で、「一個しかない」はいつも不安の種だった。オリジナルはCGなのでそれほど不安に思う必要もないのにもかかわらず。

ついでに書いておくと、東京デザイナーズウィーク2014のクリエイティブライフ展で「作品」を展示してるのはごくわずかでした。やはり、ちょっと場所が違ったかも。次回参加するとしたら、展示場所を変えるつもり。

●来場人数の多さ!

それでも、出展してる意味は大きい。作品に対する反応がすごいリアルにわかる。いや、「かわいいー!」「ツルツル〜!」がほとんどだけどw 東京デザイナーズウィークは撮影可なこともあって、みなさん写真撮って行かれる。作品と並んで撮ったり。それもうれしい。

一日に一組くらいの来場者の人から「ちょっとすごいことに繋がるかも」っていう感じの話があったりする。こういうクリエイター系の大きな展示会(デザフェスやクリエイターEXPOなど)のブース展示は、通りすがりの人数の多さがやはりメリット。数万人〜十数万人が展示作品を目にするわけで、個展に数百人来場するのとはわけが違う。

個展に来るのはあらかじめ作品に興味を持ってた人だけだもん。ブース展示ではほとんどの客が予備知識なしに初めて作品を目にする。そういう人たちの反応はすごく参考になります。

●非売品

今回の展示は主に「初めて展示する立体作品がどう見られるか?」を確認するためで、販売はなし。せっかく作ったのでまだ2〜3回はどこかで展示したいし。なので、最初は単に作品を展示台に並べてあっただけだった。ところが、妹(橋田規子 東京デザイナーズウィーク常連のプロダクトデザイナー)の助言、値段がわかるようにしておくほうがいいとのこと。

確かに、何の説明もなしに変な立体キャラクターを並べておいても、見る人には何が何だかわからない。頭の上に「?」マークを出したまま立ち去る人も多い。あと、欧米人が大きい作品をほしがるんだけど、非売品なことを説明するのが面倒。

それで3日目から値段表を作って台に載せておいた(大きい作品は非売品、小さい作品は受注生産ってことにした)。そしたら「あ、売ってるものなのか」と頭の上の「?」マークは出なくなったw 外国人も値段表を見て一応納得。

それでも受注生産の小さい作品に興味を持ってくれる人がよくいたんだけど、「すみません、作るの面倒なんで注文しないでいただけると助かります」とかw

●その他いろいろ

・10日も何度も繰り返してると、作品の説明がだんだん洗練されて上手くなるw ウケる部分を集約/強調したり、立て板に水だったり。良くないw

・「iPadでお絵描きや音楽制作」について、「どうせ一日中Macの前にいるんだから、わざわざ使いにくいモバイルデバイスで制作なんてアホらしい」とか思ってましたが、一日中外出してると「どうにかこの状況でも制作できたらなあ!」などと思い始めたりする。通勤通学してる人の気分を、久しぶりに味わえたw

・「材料/素材は何ですか?」と聞かれて「FRP、グラスファイバーです」って答えが通じない人は、どうすりゃいいんだ? どんな材料を知ってるんだ? というw あと、英語の準備をすればよかった。「発泡スチロール」さえ英語で言えなくて困った。

・近所のブースのオヤジがサイテー。いかにもふんぞり返って女の子たちに呼び込みさせてるのはおいといても、僕のブースに来て「これはどういうものかね?」とパンフレットの背でカンカンカンカンと作品を叩きながら話すとか(怒)。最終日の撤収作業中の透明ゴミ袋に、僕のパンフが思いっきり見えてたとか(怒怒)。捨てるのはかまわないけど、ちょっとは気を使えよ!(怒怒怒怒)

・こういう営業的な展示会は10年前から何度も出展してるわけですが、特に期待してる来場者はもちろん「大きな仕事に繋がりそうなコネや力を持ったおじさん」w 今回、大きな勘違いが判明。

僕自身が52歳になってしまったため、10年前に考えたイメージ「10歳くらい年上の仕事バリバリ風のおじさん」がいなくなってる! そういう人は同世代か年下なんだよ! 気がついたときはちょっとショックだったw

・後半の三連休なんて、通路に人がぎっしり。次から次へ知らない人が押し寄せる中で、友人が来るとホッとするw え? もう行っちゃうの? もっといて、ずっといて! とか。

・10日間もあると、基本的に人見知り&無愛想な僕でさえ、周囲だけでなくあちこちのブースの人たちと仲良くなっちゃった。同志なのかな。あいさつさえ楽しいなんて!

・蹴った子供とは別の子供が「そんなに大事な作品なら展示しなけりゃいいじゃん〜!」だってさ。もっともでございますw そのとおりでございますw

【吉井 宏/イラストレーター】
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翌日、「今日から東京デザイナーズウィークに行かなくていいんだ!」って思ったw 会社を辞めた直後の気分。期限を延ばしてもらった仕事にようやく取りかかれる〜。

・rinkakインタビュー記事
『キャラクターは、ギリギリの要素で見せたい』吉井宏さん
< https://www.rinkak.com/creatorsvoice/hiroshiyoshii
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・ハイウェイ島の大冒険 < http://kids.e-nexco.co.jp
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