[3797] 七人のスマファー(造語)と愛のサドンデス

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《旧世代だっていいじゃないか、人間だもの》

■私症説[63]
 七人のスマファー(造語)と愛のサドンデス
 永吉克之

■私症説[29]再掲載
 スマホを持てなくてもいいじゃないか、人間だもの
 永吉克之


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■私症説[63]
七人のスマファー(造語)と愛のサドンデス

永吉克之
< https://bn.dgcr.com/archives/20141107140200.html
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今回のコラムを読んでいただくにあたって伺いたい。読者諸賢は《モンティ・ホール問題》という言葉を耳にされたことがおありだろうか? 確率論の問題らしいのだが、今回の内容とは何の接点もないので、興味のある方だけ、調べるなり調べないなり好きなようにしていただければ結構である。

                 *

いやしかし驚いた。昨日のことだが、仕事の帰り、南海本線の電車に乗ると、座席がひとり分だけ空いているのが眼に入ったので、ヘッドスライディングをして席を確保。やれやれ今日もしんどかったなと溜め息をつきながら腰掛け、おもむろに顔をもたげると、向かいの座席にいる七人全員がスマホを見ているではないか。

スマファー(造語)が七人も一列に並ぶなんて! 惑星直列を目撃したような驚愕を覚えて顎の関節がはずれた。

私は何かというとすぐに顎がはずれるのだ。プロ野球日本シリーズ第5戦で、阪神タイガースの打者が走塁妨害の判定でアウトになって優勝を逸した時も顎がはずれた。自販機でコーヒー一本分の硬貨を入れたのに、二本出てきた時もはずれた。

顎がはずれると顔の長さが倍になる。それを見た七人の乗客たちはみな眉をひそめて、一斉に言った。

「あんたなあ、今どきこんなん普通やで。みんながガラケー見とったら、そっちの方がびっくりするやろ」

やや問題のすり替えがあるように思えたが、なにしろ顎がはずれているので、何も言えず、「あーあー」と言いながら頷くことしかできなかった。

堺駅で降りてからも、このみっともない顔のまま、溢れた涎がだらだらと流れ落ちるにまかせて家に帰ったものだから、涎から発生するオゾンに反応して、無数の業者が自宅までついてきた。

それに気がついたのは、マンションの18階にある自宅の玄関ドアを閉めた後で、すでに業者の群が家のなかに入り込んでしまっていた。そして冷蔵庫から発泡酒を出して飲んだり、掃除をしたり、畳をむしったり、洗濯物を取り込んだり、好き放題をし始めた。

                 *

《ほう、新刊が一冊もありませんね!》

本棚を隅々まで眺めていた業者が言った。彼らはみなテレパシーで話しかけてくる。だから私の考えも読み取ってくれるので、顎がはずれたままでも会話ができるのだ。

たしかに私の蔵書といえば、ほとんどが古本屋で買ったもので、著者もすでに歴史の人となっているものが多い。

私が古典の鑑賞を愛するのは、あまねく知られているものでありながら、まだ自分自身は見たことのないものをその眼で確認した時に似た感慨がそこにあるからである。

《ほう、古典を紐解くことの価値を普遍的な概念で説明するわけですね!》

私がパリで、ヴェルサイユ宮殿を初めて見た時(フランスには行ったことがない)、嗚呼これがベルばらか、嗚呼あれがオスカルか、と胸が打ち震えた、あのときの感慨に似ている(ベルばらは読んだことがない)。

また、中国で北京観光をした時(中国にも行ったことがない)、天安門広場を見て、民主化を要求する若者たちの希望と肉体が戦車によって圧し潰された現場はここか、と当時のニュース映像が脳裏をよぎった時の感慨に似ている。

《ほう、グローバルな視点ですね!》

また時には、この本を若い頃に読んでいれば、いまの自分はもう少し違っていたはずだと、過ぎ去った時間を取り戻そうとするかのようにして読むのである。

《ほう、死んだ子の年を数えるようなものですね!》

その時、台所のガスコンロの上で天ぷらを揚げていた業者が、ゴキブリを殺そうとスタンガンで放電したため、煮えたぎる油に引火させてしまい、炎が天井まで吹き上がって、たちまち台所が火の海になり、爆発音とともに私のいる居間にまで一気に燃え広がってきた。

                 *

昨年、私は、デジクリ編集部のご厚意で、電子書籍を出版することができたわけだが、これが永吉の遺作ということになったら、あまりにも私が可哀想なので、焼け死ぬ前に書き下ろしで出版しようと思った。

そこで、無料のEBUP編集ツールであるSigil(シギル? シジル?)をダウンロードして、自家薬籠中のツールとすべく習得に励んだのだが、バージョン0.7.2を使っていたら、0.7.4が出たのでバージョンアップして起動しようとしたら《予期しない理由で終了しました》というメッセージが出た。火がそこまで迫っているというのに、なってこった。

ちなみに、私のMacのOSは10.7.5だが、このバージョンだとエラーになるのだろうか。Sigilの次のバージョンが出るのを待つか(というか、出るのだろうか?)、Calibreなど他のツールを試してみるしかない。

しかし、起動してもいないのに《終了しました》とは横柄なソフトである。交際してもいない女に、「別れましょう」と言われたような気分だ。

とりあえずは、旧バージョンを使うことにして、Sigilの練習を再開したが、どうも腹の虫が治まらない。

「貴男とはもうやつていけないわ。別れませう」……旧制高校時代、タツヱにそう言われた時のことを苦々しく思い出していた。

「勘違ひするなよ。君と僕は一度、昼食の席をともにしただけぢやないか。それを、ステデイな関係になつたんだと君が勝手に思ひ込んでゐるんだらう」

「わからないの? 私達の愛はサドンデスなのよ!」

意味がわからない。

                 *

家中のものを燃やし尽して火は消えた。出版は間に合わなかった。業者たちはすでに炭になって、あちこちに転がっていた。私も炭になって転がっていたところ、炭になった電話機が鳴った。マンションの管理事務所からだった。

顎がはずれているので、「もしもし」の代わりに「あー」としか言えなかったが、苛立った様子の管理人はお構いなしにしゃべり始めた。

「永吉さん。居住者台帳の提出、期限すぎてまっせ。こない言うたらなんやけど、管理組合の総会の出欠の返事にしても、工事の承諾書にしてもなんにしても、提出期限が過ぎて、いつもこっちから催促せんと提出してもらわれへんの、どないかしてもらえまへんやろか」

「あ、あーあ」

私はあわてて、炭になった公共料金や固定資産税などの督促状の下から、炭になった居住者台帳を探し出して、炭になったボールペンで記入して、一階にある管理事務所に持って行った。

「わははは。こらまた永吉さん、えらい炭化しはって。前も後ろもわかりまへんがな。この時期になると、業者が家に入り込んで好き勝手しよりまっさかいな。とくに天ぷら揚げる業者には気ぃつけなはれや。絶対にスタンガン使わせたらあきまへんで」

「あーあ、ああ。あーあ」

電話では怒っていた管理人だったが、私が炭化しているのを見て気持ちが和んだ様子だった。こういう感情の移り変わりの早い人は、どこか微笑ましく、決して嫌いではない。

【ながよしかつゆき/戯文作家】thereisaship@yahoo.co.jp
ここでのテキストは、ブログにも、ほぼ同時掲載しています。
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筆者は50歳前後で独身の貧乏アーティスト、元専門学校講師。デジタルアートの作品展で、彼の作品自体の妙なところに加えてその解説がやたらおもしろかったため、「日刊デジタルクリエイターズ」編集長から芸術についておもしろおかしいエッセイを書いてみないかと誘われる。

連載当初の数回は比較的まともだったが、徐々に独特の確信犯的思いこみエッセイに変身、その妙なおもしろさが爆発的な人気を呼び、本人も文筆の才能を開花(?)ますます不条理な世界を突っ走っている。

不自然なまでに誇張された表現、真実だかフィクションだか判別しがたい話、あたかも人生の本質であるかのように装っているが実は空疎な話、一行で済む話を何十行にまで水増しして書く根性、針小棒大。

内容は、芸術、人生、社会、言語などと分類できないこともないが、そもそもあまり意味のない内容なので、全部ごちゃまぜにして上・下各26編を掲載。それぞれタイトル下に、不条理イラストを添付。また個展などで発表した作品も20点ほど収録、そのタイトルと解説もじつに独特な世界。

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■私症説[29]再掲載
スマホを持てなくてもいいじゃないか、人間だもの

永吉克之
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先月、大阪の天満橋での飲み会に参加するために、ぼくは南海本線の堺駅から電車に乗った。時間に余裕があったので、のんびり腰かけて行こうと各駅停車を選んだ。

電車の座席に腰かけるという行動が刺激となって、パブロフの犬のように反射的にケータイを取り出して開いたのだが、そのとき突然、異次元に迷い込んだような、そう、まるで女性専用車両にうっかり乗ってしまったときのような恐怖に襲われて眩暈(めまい)を催し、次の犬林檎駅で足をもつれさせながら降りると、両膝をつき、orz の体勢になってじっとしていた。

すると駅員が走ってきた。

「どうしました? あなたを絶望させた原因はいったい何なのですか? わたしに話せることですか? 絶望とは死に至る病ですか?」

「いや。絶望してるんじゃなくて気分が悪くなったんです。ぼくの両隣、そして向かい側の乗客たちみんながスマートフォンを使ってるんです。新世代に生きている人びとに対する圧倒的なルサンチマンによって、自分自身を車外に弾き出したと考えるのが妥当でしょう。こんな旧式のケータイをまだ使ってるなんてぼくくらいのものですからね」

そう言って、ぼくは手に持っていた折りたたみ式の古色蒼然としたケータイをぱくぱくさせて見せた。

気分が回復しないので、駅の事務室にあるソファで寝かせてもらうことになった。とはいえ約束があるので、しばらく横になってから立ち上がろうとすると、駅長と名乗る、年齢不詳のぶよぶよした男がにこにこしながら現れて、ぼくの向かいのソファに腰かけた。

「いま駅員から効きましたが、スマートフォンをお餅でないとか。そりゃ波の神経の持ち主なら誰だって気分が割るくなりますわ。いやぁ、まったく細菌は誰も枯れもがスマートフォン......スマホですな......で、振るいケータイを塚っている人間を見ると、そのケータイ、ずいぶん長餅するんですね、なんて火肉を言いよります。駒ったもんですわ。歯歯歯歯歯......」

誤字が多いのが耳障りだったが、親切にしてもらったので我慢して話を聴いていたら、さっきの駅員が、がちゃがちゃと音をさせながら段ボール箱を抱えてやってきた。駅長はそれをテーブルの上に置くように指示をした。

「これですよ、これ」

「何ですか、これ?」

「スマホですよ」

「......?」

ガムテープや配送伝票をひっ剥がした跡があちこちにある「とろろ昆布」と書かれた段ボール箱を開けると、いろんな色をしたスマホらしいものがジャガイモかなんかのように詰め込んであるのが見えた。

「実は旧世代のケータイを漏っているおドのスマホを開発したっ宙わけですわ」

駅長の言い方を借りると「芽には芽を、葉には葉を」「武力近郊」。つまり、スマホをもってスマホを制するべきだという信念から、スマホに恐れをなして犬林檎駅で降りた旧世代の乗客には、奉仕価格で犬林檎ブランドのスマホを販売しているそうで、ぼくも薦められた。

「OSはアンドロギュヌス。キャリアはコモドオオトカゲ。で、メーカーが犬林檎駅というわけです。この腸新世代の奇怪が今なら2,980円という歯欠くのお値段でお飼い求めいただけます」

専門的なことはよくわからなかったし、そんなことはどうでもよかった。とにかく安いし、何よりも新世代という言葉に乗せられて買うことにした。奉仕品ということで、身分を証明するものも要らないし、契約書もない。取扱説明書がなかったが、奉仕品ですから、ということで納得した。

電車のなかで、買ったばかりのスマホをいろいろいじってみたのだが、さっぱり使い方がわからない。ディスプレイの上で指を動かしてみたが何も起こらない。試しに、誰もいない自宅に電話をしてみようと番号を入れたが、発信の仕方がわからない。まあ、その後で会うことになっていた連中がこっち方面に詳しいので、その時に聞くことにして、ぼくは天満橋に向かった。

                 ●

酒の席でさんざんっぱら笑いものにされて、ぼくはやっと自分がだまされていたことに気づいた。スマートフォンではなくて、普通の電卓だったのだ。電車の中で、ぼくが懸命に電卓のディスプレイで指を動かしているのを、隣にいた乗客はきっと好奇の眼で見ていたことだろう。

ぼくは憤慨し、怒り心頭に発していたのみならず怒髪天を衝いていた。いや、それだけではない。ガチでムカついていたのだ。酔った勢いにまかせて犬林檎駅で大暴れしてやろうと、途中、コンビニで買った鈍器のようなものを持って電車に乗った。七道駅を過ぎた。次が犬林檎駅だ、さて何から壊してやろうかと、鈍器のようなものを車内でぶんぶん振り回していたら、堺駅に着いてしまった。なんと犬林檎駅が消えていたのだ。

なるほどそういうことだったのか。連中の正体がわかった。駅を装った新世代の詐欺集団だったのだ。偽装した駅に降りた無知な客をだまくらかして偽スマホを売りつけて、バレる直前にその駅をさっさと解体して、また別の路線に偽装駅を作るということを繰り返していたのだ。そう推測するのは容易だった。

                 ●

今にして思えば、うさん臭い駅だった。駅長の他には駅員がひとりしかいなくて、ふたりとも血の滲んだ包帯を頭に巻き、あとは全裸だった。これを見た時点で、こいつらは何か怪しいと判断すべきだったのだ。だいたい犬林檎なんて駅名、南海本線は昔から使っているが、一度も聞いたことがない。

そんな見え透いた詐欺にひっかかってしまったのも、ぼくが旧世代と呼ばれることを何よりも恐れていたからだった。しかし今回の事件で、そんなことよりもずっと大切なものがあることを教えてくれる珠玉の言葉を思い出した。それは「旧世代だっていいじゃないか、人間だもの」(詠み人知らず)。

予想した通り、同一犯と思われる詐欺の被害があった。今日(7/7・棚畑)の新聞によると犯人はまだ特定できていないが、警察に届け出があっただけでもすでに4人が被害にあったということだ。阪急、阪神、近鉄、京阪といった、近畿では大手の路線ばかりを狙った犯行で、被害総額は11,920円。あまりに恥ずかしいので、届けを出さなかったぼくの分を加えると14,900円。

駅を建造するために投入されたであろう費用からすると、割に合わない犯罪だ。これは金儲けを目論んだ犯行ではない。しかも犯人は絶対に捕まらないだろう。なぜなら彼らはある種のメタファとして存在しているからである。

【ながよしかつゆき】thereisaship@yahoo.co.jp
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編集後記(11/07)

●ヤマシタクニコさんの人気連載「ショート・ストーリーのKUNI」が、今年の1月末に電子書籍化された。デジクリ文庫02「午後の茶碗蒸し」ショートストーリーのKUNI[Kindle版]である。出版前には何度も校正して、内容を覚えてしまったほどだったが、先日あらためて読んでみたら、まるで初めて読む感覚で、たちまち夢中になってしまった。

不思議におかしいヤマシタWORLDが20篇。目茶苦茶・不合理・背理・悖理・不道理・荒唐無稽・頓珍漢な世界観に翻弄される。ヤマシタさんは大阪ネイティブだから、全体に関西風味があるというのも特徴だと思う。トホホなへたうま漫画も収録されている。20本中から、ヤマシタさんもお気に入りだという作品10本のあらすじを書いたので紹介したい。

あいまいでいこう:どこかの国の選挙の結果、現政権のあいまい派が敗れ明確派が政権を奪った。明確派総裁は、日常のあいまいな表現を禁止すると宣言した。あいまい派総裁は、なんとなく負けてしまったようで残念とかいう感じですとコメントした。明確派が政権を執るまであと40日。あいまいな表現をつかえる最後のチャンスだ。そんなとき国民がとった行動は──。

いま残業してるんだ:たったひとりで残業していたがビールを飲んだらむなしくなって、あちこち電話かけまくって、こっちにこないかと誘うのだが、だれも迷惑そうで相手にしてくれない。でも、コダマは違った。いくら愚痴をこぼしても、聞いてくれる相手がいるとうれしいものだ。でも──。

ドンドンチク:ある会社で、創業祝いにもらった観葉植物の手入れを怠っていたら枯れてきた。そこへその鉢植えをくれた社長が来るという。これがバレたら今後のお付き合いもなくなるかもしれない。さあ大変、そこでトホホにバラエティ豊かな異能社員たちが、次々と対策に乗り出すのだが──。

バックアップしたい!:自分の経験や感動や心に思ったことあれこれが、色あせることなく完全にバックアプできるシステムが開発された。それは等身大サイズで、購入した人そっくりに作ってくれるという。さっそくフルタ君が買ったのだが、いろいろ問題が出てきて──。

ぼくの炊飯器:炊飯器をネットで買った。注意書きに「おおいそぎメニューはなるべく三回までにしてください」とある。おおいそぎメニュー? なんとご飯が5分で炊きあがるという。うっかりボタンの押し間違いで一回、あと二回はいきなり訪ねてくる友人と母のために使い切ってしまった。そして四回目──。

愛妻家:公園のベンチにすわった男がふたり。あごひげ男と帽子男は、互いに「世界一の愛妻家」を自負している。愛妻を守るための奇想天外なシステムを構築している二人だ。そのあきれかえるばかりの仕組みを、交代で次々と披露していくのだが──。

ワライタケ:ワライタケを食べて笑いながら死んでやろうと思った男が山に出かけた。しかし、キノコの判別は素人には難しすぎる。ケータイで先輩に聞くことにした。どんどん進みながら、手当たり次第に食べたキノコについて聞くと、その度に先輩は明解に判断して指示を出す。それにしてもばかばかしいキノコの名前と効能で──。

技術回収します:「不用になった技術をお引き取りします〜」という車がまわってきた。金も仕事もなくてだらだらしていたおれが呼び止めて聞いてみると、たとえば「猫の鳴きまねができる」が30円、アトムの顔が手描きできる」は480円、スケートの四回転半は高額で国家レベルの取引だとか。よし、引き取ってもらおう。しかし、おれが持ってる技術って──。

反省してもらおう:小部屋でパソコンが取調官と向き合っていた。パソコンはユーザーの抗議をうけてここにいるのだが、反省が足りない、しばらく世間を勉強してこい、と宣告される。気がつくとパソコンは立ち食いそば屋の券売機になっていた。いままで経験したことのない世界。プライドは打ち砕かれ、罵声を浴び、蹴っ飛ばされ、あげくのはてに廃棄処分になり──。

夜明け前:思い出したくないことを思い出して悶々としていたカンバヤシくん、まあしょうもないことばかりなんだが。そこへ「思い出したくないこと処分会社」の社員が現れる。彼は記憶を消す4つのコースの提案をするのだが──。

ね、おもしろいでしょ。どうなるか心配でしょ。デジクリのバックナンバーを探れば、これらの作品は出てくるはずだが、Kindleならば1-Clickですぐ読める。なんと238円。すぐに買って読みましょう。(柴田)

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デジクリ文庫02「午後の茶碗蒸し」ショートストーリーのKUNI[Kindle版]


●どなたかデザイン、WordPress、コーディング、Flashなどのお仕事を手伝ってくださいませんか? フットワークが軽く、連絡を密にしてくださる方。実績や費用目安などを教えてください。zacke@days-i.comまで。手を挙げてくださった方々、ありがとうございます。

シジル、みたいです。EPUB2しか生成できないという記事を見つけました。今年の4月の記事でした。/バックナンバー……。

「TAKARAZUKA 1万人のラインダンス」続き。

当日の予報は雨で、警報以外は雨天決行。そりゃそうよね、これだけの人数が集まるイベントだと、よほどのことがない限り順延はないわ。当日はやはり雨。一気にめんどくさくなってくる。休日に早起きして雨の中にラインダンス? 応募した時は雨のことはまったく考えていなかった。

本当にこれでやるの? 前日にレインコートとレインパンツを買い、スポーツウェアにリュックで参加。傘をさして持ち場で待機。肌寒い。荷物は地面に置くつもりが、雨で置けずリュックを背負った上にレインコート。

人がなかなか並ばない。おしゃれやコスプレしたり、おそろいのウェアを着た人たちはいて、レインコートで隠れて残念そう。そんな中、完全雨用装備の児童を退屈させないようにママが遊んであげたり、地元企業の若いグループが大学生のノリで元気に騒いでいたり。 (hammer.mule)

< http://www.materialize.jp/art/ebooks/5173/
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電子書籍は「Sigil(シジル)」で作成してはいけない 「EPUB2」と「EPUB3」の存在